"Stay, Heaven's Blade" Fate said. “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。” 作:haru970
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セイバー 視点
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時をほぼ同じにして、場所は柳洞寺の山門へと変わり、そこでは激しい金属音が響いていた。
士郎の姿が無く、柳洞寺にて
彼は自分の事を『アサシンの佐々木小次郎』と名乗り、セイバーを少なくとも剣術では凌駕していた動きで彼女を翻弄していた。
「くッ!」
「む。 上は上で思惑通りとはいかぬらしい。 主の危険故、手の内を隠す余裕はなくなった」
アサシンは階段を下りて、セイバーと同じ場所へと立つ。
「頭上の有利を捨てて、何のつもりだアサシン」
「何、無名とは言え剣に捧げた我が人生だ。 未だに死力を尽くせぬのならその手の内を隠す信念────力付くで抉じ開けようか」
アサシンのひょうひょうとした、昼行灯のような怠惰は一気に真剣な物へと変わり、セイバーは直感で悟る。
「『秘剣、燕返し』!」
セイバーは
「我が秘剣を凌ぐとは、いやはや大したものよ」
「今のが宝具か、アサシン?!」
「そのような大した物ではない。 偶さか燕を斬ろうと思いつき、身に付いただけのものだ。 線にすぎぬ我が太刀では 空を飛ぶ燕は捕らえられんが、その線も二、三本なら話は違う」
アサシンは話を懐かしむような声で話を続ける。
「しかし連中はやはり素早くてな。 事を成したければ、一呼吸のうちに重ねなければならなかったが…そのような真似は人の技ではない。 だが、生憎と他にやることもなかったのでな。一念鬼神に通じるというヤツだ。 気が付けばこの通り、
これに対してセイバーは内心苛立ちを感じる。
何故ならアサシンが言ったように確かにただの斬撃ではあった。
あったが
それは『魔術』のレベルの芸当ではなく、『魔法』の空域に達していて、『次元屈折現象』に酷似していた。
アサシンはただの剣技のみで『魔法』という現象に酷似した技を『宝具』の域に達していた。
「黙れ! 俺はお前なんかとは違う!」
不意に頭上から士郎の叫ぶ声がセイバー達に届く。
「シロウ?」
「ふむ?」
「俺は勝つ為に! 結果の為に! お前みたいな奴なんかに周りを犠牲にするなんて絶対にするものか────グア!」
そして体に新しい切り傷を負った士郎が階段に投げ出されて落ちる。
「シロウ!」
セイバーはすぐに階段を上り士郎の元へと行き、体を支える。 アサシンはこれをただ見ていた。
「ぐ…………」
「しぶといな、エミヤシロウ」
「アーチャー?! 何故ここに?!」
「何、簡単な事だセイバー。 アーチャーは根本的には狩人や弓兵、狙った非力な獲物がノコノコと目の前に出て来たところを見逃すほど甘くはない。 それにマスター達同士が『当面の間は敵対しない』という事にサーヴァントは入っていなかったと思うが?」
「貴様!」
「アーチャー………町の人間に危険が迫っていると分かっていて、見捨てるのか?!」
「英霊とて全ての人間を救うことは不可能だ。 誰かを救うということは、誰かを助けないということなんだ。 無関係な人間を巻き込みたくないと言ったな? ならば認めろ、一人も殺さないなどという方法では結局誰も救えない末路だけが待っている。 そして自分の為ではなく誰かの為に戦うなどただの偽善だ。 エミヤシロウ、貴様の望むものは勝利ではなく平和だと言っていたが、そんなモノはこの世の何処にもありはしない」
「アーチャー……貴方は………」
そこで今まで黙っていたアサシンが間に入り、アーチャーを見る。
「横槍は入れたくはなかったのだがな、一応ここの門番としているからにはそうもいかん」
「何が言いたい、サムライ?」
「何、立ち去るのか否か聞いておきたいだけよ。 そして立ち去るなら女狐目が返って来る前に早々にする事だな」
「アサシン………」
「今宵はここまでだセイバー。 見たところ、其方のマスターはまだ意識はあるが傷は深い」
「アサシン………何故?」
「何、門番故にここは酷く退屈でな。 良い好敵手と出会うなど私にとってこれ以上の事は無い」
「感謝する────」
セイバーがアサシンに感謝の言葉を贈ると同時に、アーチャーが士郎を切りつけるのをアサシンは刀で流していた。
「邪魔をするつもりか、サムライ?」
「私はここの門番、そして行きと帰りの者たちに対して義務があり、セイバー達は立ち去る事を決めた。 貴様がその邪魔とするのなら、それを止めるだけの事」
「フン、キャスターの手駒風情が」
「貴様こそな。 あの女狐めの肝を冷やそうと見逃したというのに、我が身可愛さで逃げ帰るとは失望した────!!!」
そこでアサシンとアーチャーの激しい衝突に見入りながら体をセイバーに支えられる士郎は体を引きずりながらその場を後にした。
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??? 視点
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そこはキィキィというモノがひしめく、暗くてジメジメしたところだった。
何処にも自然な光源は無く、不気味な緑色の光を体内から発する
そこで不意に老人の声が響く。
「おおお!」
この喜ぶ声の持ち主は間桐臓硯。 本名は「マキリ・ゾォルケン」で、元々は日本人ではなくロシア系の出身の魔術師であったが日本に根を下ろし、以降は現在の名の「間桐」に変えているマキリ家の500年前の当主であり、戸籍上では鶴野と雁夜兄弟の父、桜と慎二の祖父に当たる。
そして陰ながらに間桐家の当主を担っている。
魔術の力で肉体を人のものから蟲に置き換える事で数百年も延命を重ね、既に「人ならざる者」と成り果て生き続けてきた文字通りの「人外」。
200年前の御三家の遠坂、間桐、そしてアインツベルンによる聖杯戦争の立ち上げにも実際に参加して立ち会っており、サーヴァントと令呪のシステムを考案したのも彼である。
それも全ては『悪の根絶』後の『理想郷』を創立する尊い夢の為だったが、自らの身体に施した延命の処置が200年と言う年月を経て現在では目的と手段が逆転し、自身が生き延びる事に固執する「不老不死」を求めるモノに変わってしまっていた。
言うなれば長すぎた時が彼の夢を歪めてしまったのだ。
「素晴らしい! 素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしいィィィィィィィ! 待った甲斐があるとは良く言ったモノよのぅ! クカカカ!」
そして男か女、果ては大人か子供かも分からないような、様々な声帯が混じりあった声がどこからともなく答える。
「気に入って貰えた? でも完全には程遠くてね────」
「────わかっておる。 此度の聖杯戦争は予期せぬ時期に起きた事もあり、慎二
「では手はず通りにお願いします」
「うむ。 今度はこちらが取引に応じよう。 カカ、ようやく……………ようやくじゃ。 不老不死はもう、すぐそこまで来ておるのだ! クカカカカカカカカカカ!」
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セイバー運営 視点
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昨日の夜、アーチャーに付けられた傷はまたみるみると見ている内に塞がって治っていき、衛宮邸に着く頃には完治していた。
不気味ながらも、いろいろあって十分な休息も取れなかった士郎は次の日の稽古の為に体を休み、セイバーに今度こそ何かあったら令呪を躊躇無く使う事を自身に誓った。
朝早くに起きた士郎はセイバーに自分が以前頼んだ実戦形式の稽古を付けて貰っていた。
そしてすぐに圧倒的に戦闘技術が足りない事が判明した。
これは当たり前のこと。 士郎は一応三月と共に稀に剣道は続けていたが、ましてや殺気などの尋常ではないプレッシャーや魔術が絡む文字通りの死闘とは程遠い生活をして来た。 だがバーサーカーの時にも、昨日にも感じた無力さが士郎を焦らしていた。
いざという時に防御もロクに出来ないのであれば誰も守れないからだ。
そこでセイバーが意外な人物を誘う。
「へ? 私?」
「はい、三月は大河のように武術をある程度心得ているかと思ったのですが」
「あー、うん。 確かに剣道やっていたけど…………何で私? セイバー滅茶苦茶強いじゃん」
「失礼ながら、私は他人に教授した試しが無いので実戦形式になるのですが、シロウは戦闘で使える型と言う型も無いので、基本から学ばした方が良いかと。それに二人の自衛能力が上達するのは時間稼ぎにも繋がる筈」
「う~~~ん」
「俺からも頼むよ、三月」
「士郎?」
「三月は体を使う運動とかはあまり好きじゃないのは分かっている。 でも昔からお前は『天才だ』、『神童だ』っていう藤姉達の事を真に受けるんだったら、これ以上ない師が俺には二人いるように思えるんだ」
「『神童』? それは真ですかシロウ?」
「え? ちょ、なに────」
「────ああ。それに子供の頃、三月はじいさんに一本入れたんだぜ?」
「キリツグに?! しかも子供の頃?!」
「ちょ、私の話を────」
「三月、試合をお願いします! 力量を確かめるにもそれが良いかと!」
セイバーが何時の間にか『戦士の目』から『新しい玩具を見つけた子供の目』で期待に満ちていた。
「…………ど、どういう事なの~これ~?」
私服に着替えたセイバーと半分諦めた三月が対峙する。
「では、良いですか三月?」
ピリピリとした空気が辺りを埋め尽くし、士郎は戦場の緊張感に包まれ、三月も構え────
「────あ、ちょっと待ってセイバー」
セイバーと士郎が三月の日常ペースの声にガクリと肩を落とす間、三月は防具を脱ぎ取り、私服姿となる。
「よーし! バッチコーイ!」
「み、三月…何で防具取ったんだ?」
「いやー、これって実戦形式でしょ? だったら想定が『とつぜん てきに おそわれた』とかになるじゃん」
「そうですか、では遠慮なく────!」
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「おはよう桜」
「おはようございます、先輩」
士郎の声が朝ごはんの用意をしていた桜に聞こえ、桜は返事をする。
「さ~く~ら~お~は~」
「ハイ、三月先輩もおはようご────ッ?!」
そして何時もとは違う三月の声に振り返りと、グッタリとしながら元気のない三月を背中に乗せた士郎を見てびっくりする。
「────おはようございます、桜」
「え? セイバーさん、三月先輩はどうしたんですか?!」
「も、もうダメ…………ゴメン、桜…………」
「え?! 三月先輩?!」
「私……私…」
グゥ~~~~~~~~~~~~~~~~。
ビックリする桜に返事したのは誰かの胃が豪勢に鳴る音だった。
「あー、三月がお腹が空き過ぎて…な」
そして────
「桜ちゃん! 特盛おかわり!」
────そこは三月がご飯を自分の口に込めてすぐにおかわりをキョトンとした桜に頼む姿と、士郎が苦笑いを浮かべていた。
「あ、はい」
「み、三月。 何時もよく食べるのは良いとして、今日はどうした?」
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅと食べ続ける三月。
いわゆる「口に食べ物を詰め込むハムスター」状態だった。
「だって────もっきゅもっきゅ────久しぶりに────もっきゅもっきゅ────剣道、朝から────もっきゅもっきゅ────したんだから! 褒めても────もっきゅもっきゅもっきゅ────良いぐらい!」
ゴクゴクとお茶を飲んで喉に詰まりそうなものを流し込み、また食べ始める。
「弓道部の朝練とかの時はどうしていたんだ?」
「菓子パン三つ」
「「朝から?!」」
三月の『菓子パン三つ』の答えに驚く士郎と桜。 そしてこれをじっと見ていたのはセイバーだった。
「………桜、私もおかわりです」
「え?」
「ちょ、セイバーまで?!」
そしてその朝炊いたご飯は無事(?)二人の大食いモンスターによって蹂躙された。
朝の内に。
「……………………………バ、バイト増やして貯金していて良かった」
ホクホク顔でお茶を飲む三月とセイバーを見ながら独り言を言う士郎だった。
朝の実戦形式の稽古については、三月が最初割と善戦していたものの、途中で動きが鈍くなり、瞬く間にセイバーに(ボコボコに)やられた。
理由は至極単純。
三月の身体が動きに付いて行けなかっただけの事。
技術が幾ら有っても、身体がソレを活用出来なければ意味が無い。
時々忘れそうになるが、三月はそもそも体作りの為に以前から士郎に付き合っていたのだ。 陸上部並みの走り込み然り、弓道部然り。
そして朝早くから過激に動いたのが良くなかったのか、お腹を空かせ、三月は目を回しながら(セイバーにボコボコにやられながら)道場で倒れた。
セイバー曰く「三月は大変素晴らしいモノを秘めています。ですが、まずは体作りからですね」、と暖かい眼で見られ、士郎は「ああ、短距離走特化した陸上部員みたいな感じか」、と同情の目で見た。
三月はこの視線に対してヤケ食い+空腹を満たす為にたらふくご飯を食べた。
「よぉーし! おっ昼♪ おっ昼♪」
そしてその日の学校でのお昼休み、ウキウキしながら三段弁当箱を開けようとする三月。
「三月ちゃんホント小さいのに体のどこにこれ全部なくなるの?」
「うっさいよそこ! 『成長中』と言いたまえチミィ~!」
「ハハァ! …で? 今回のおかずは世界のどこの────?」
教室の扉がガラガラと空く音がして、ドア付近にいた生徒達から次第に教室が静かになる。
「あら、三月。やっと見つけたわ。 ちょっと一緒にお昼をしないかしら?」
「???」
三月が弁当箱を再度開けようとしたところに、自分のクラスに遠坂凛が現れてお昼を誘われた。
これに対してヒソヒソ話で情報が一気に広がり、「遂にあの『ミス・パーフェクト』から『月の天使』と接触した~!」との事だった。
士郎も自分の弁当を食べようと何時もの生徒会室へ移動する為にドアへ向かうと、ドア付近辺りに食堂組が何故か戸惑い、人だかりを作っていた。
「おう、お前らどうしたんだ? 食堂に行かないのか?」
そこに士郎の近くにいた生徒が答える。
「いやオレ達も行きたいのは山々なんだが、珍しい光景を見ている途中でな?」
「珍しい光景?」
士郎が廊下の方へ出ようとすると同じ生徒が事情を説明する。
「ほれ見てみろ。 我が学園内でも指折りの女性の二人がおるでござ────」
そこではどこか遠慮しているのか、どうしたら良いのか分からなくて慌てている遠坂凛を無理矢理引っ張ろうとする三月がいた。
ただ体格差によって無駄に終わっているので、脳内フィルターを使うと『お姉ちゃんを引っ張る妹』絵図になっていた。
「────だ、だからここで待っていれば何時か出て────!」
「────そんなん! 言っていたら! 何時まで経っても! ぐぎぎぎ────!」
「────あれ? おーい! 三月ー!」
士郎は何事もないように凛を説得しようとしている三月に声をかけると周りの人達がギョっと目を見開く。
「「「「「(衛宮が行ったー?!)」」」」」」、と思った男子生徒たち。
「「「「「(うわ! 衛宮君、大胆~!)」」」」」」、と思った女性生徒たち。
だが彼らは知らない。
更なる爆弾宣言が待っていた事に。
「あ、やっと出て来た。
「「「「「「「
何を隠そう、普段三月が食べ終わる頃には自分のクラスから出ずに昼休みが終わってしまうのだ!
と言うか終わらせてしまう。
無理もない、完食出来るとは言え、口自体が小さいので食べるスピードが知れている。
なので彼女がおかずを誰にもあげずにただ静かにご飯を食べている時は「ノータッチ状態」になるのが暗黙のルール。 話しかけて良いのはおかずを分ける時、または食べ終わった時だけにしている。
これを覆せると言えば余程の人物でない限り不可能(例えば教師とか)。
以上の事により殆どの生徒は未だに士郎の『衛宮』が三月の『衛宮』と同じなのを知る生徒は少ない。
何せ士郎は士郎で生徒会室にすぐさま行って弁当を食べているのだから『衛宮士郎』=『衛宮三月の兄』とは結び辛い。
今日までは。
「あれ? 遠坂まで? 余計に珍しいな」
「ほら、遠坂さん!」
三月が凛の後ろに回り、押そうとする。
「ウェ?! そこで私ぃぃぃ?! あ、え、衛宮君、三月っていつもこうなの?!」
「え? そうだけど?」
「あー! もうー! 休憩時間無くなるから行くわよ二人とも!」
三月が二人の手を引っ張ろうとして(体格差で)失敗するが士郎も凛も目を合わせ、観念したように歩き出す。
「「「「「「「(あの『月の天使』が『
と驚愕しながらも、「やはりご飯を食べている三月は『ノータッチ状態』だな」と再確認する。
先頭で歩く凛と三月、そして後から付いて来る士郎はどこの通路へ行っても誰もが止まり、視線を集める。
無理もない。 『ミス・パーフェクト』と『月の天使』が一緒にいるだけでも珍しいのにそこに『学園の便利屋』と有名な士郎までいた。
「おい、遠坂。 どこに行くんだよ?」
そして『学園の便利屋』が気軽に『ミス・パーフェクト』に話しかけていた。
「お昼なんだから、昼食を取りに行くに決まってるでしょう?」
「駄目だよ遠坂さん、そんなんじゃ伝わらないって」
「じゃ、じゃあどうしたら良いの?」
「『オウ、衛宮ンとこの小僧。
「それ、藤姉に聞こえていたら竹刀が飛んでくるぞ……取り敢えずここまで来れば屋上だろ?」
「あ、ナイスよ士郎! 良く分かったね」
「もう階段までくりゃあ俺でも分かるさ」
「ね? こんな風に誘えばいいのよ、遠坂さん」
「な、なんだか釈然としないわ」
屋上に上がった三人のうち一人はすぐさま弁当箱を開けて、猛スピードで食べ始める。
「ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ!」
「え、衛宮君? あれって大丈夫なのかしら? 喉詰まらないのかしら?」
「まあ、俺も最近見ていないが、中学からずっと二段箱だぞ?」
「一人で?! しかも今は三段箱よ?!」
「ああ、そうだな」
「モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ!」
「『そうだな』って、衛宮君の分も入っていなくて?!」
「だからそうだってさっきから言ってんだろ?」
「ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!」
「で、遠坂は何で俺達を誘いに来たんだ?」
「え? な、何で────?」
「フゥー、次の段を────」
「嘘?! 早?! もう?!」
「
「あ、ああ。 その………昨日の事を衛宮君に謝りたくて………アーチャーに襲われてごめんね? アーチャーには令呪を使ってまでもこの敵対しない状態を取り敢えずキープしたい事を伝えたわ。 当面はね」
「それは…………遠坂は悪くはない。それに俺も認めたくないが、
「でも、彼のマスターとして責任は私にあるわ」
「遠坂がそう言うんだったらそれで良い…で
「……家に置いてきた」
「ゴクゴクゴクゴクゴク……ぷはー! ごちそうさまでした!」
「「早いよ!」」
「え?」
士郎達がまだ自分たちの弁当をようやく半分食べ終わったところに三月は完食した上に全てを胃に流し込むように500mlのペットボトルのお茶を飲み干した。
「呆れた………この子、本当に面白い性格しているのね」
「そういう遠坂だって」
「ウッ」
「それで、遠坂さんは私に何を聞きたいの?」
そう言い、三月はチョココルネの封を開けて食べ始める。
「ハムハムハムハム」
「ちょ、そのチョココルネはどこから出て来たのよ?」
「デザート袋」
そう言い、三月は弁当箱とは違う袋を指さした。
「…………ま、まあいいわ。 三月。 貴方は先日、『アインツベルン』と酷似した魔術を使ったわね? あれはどういう事?」
それは初めてバーサーカーとそのマスターと対峙した夜、凛を助けた魔術の追求だった。 彼女はその事を忘れた訳では無く、ただ聞くタイミングを見計らっていた。
彼女から見たところ、士郎はその事を知らずに一緒に生きて来たと言う感じに取れた。
これは同じ『衛宮』と言う名字から普通、部外者である凛が言う立場では無いし、追及するべきではない事情かも知れない。
だが、今は聖杯戦争。 そして『衛宮士郎』はマスター。
ならば『衛宮三月』は何だ?
これを凛は知りたかった。
「ああ、あれ? おじさんから習った」
「は? (そ、そんな? あっさりと……)」
「おい、俺はそんなの聞いていないぞ?!」
「まあ、おじさんが『秘密にしろ』って言っていたから。 それに今まで言う必要なかったし」
「(『おじさん』? いえ、それより今は────)────じゃあ参考までに聞くけど、貴方が使える魔術は何?」
「えーと、遠坂さん? それはちょっと言いにくいと言うか────」
「────何だったら衛宮君と貴方に同盟を正式に組んでも良いわよ。 貴方、私から見たら衛宮君より腕は立つでしょ?」
「ッ。 悪かったな、遠坂」
「あ、じゃあそれで良いわ。 私が使えるのは『治癒』、『解析』、『強化』、『錬金術』、『再構築』────」
「────え、ちょっと待って。 最後のは、何て?」
「『再構築』」
「……………………………………私……聞いた事無いんだけど」
「「え?」」
三月と士郎が驚く。
何せ切嗣曰、『再構築』は『強化』の分点の一つと二人に説明していたからだ。
別に切嗣は間違っていなかったが、三月が使う『再構築』はどちらかと言うと『錬金術』と『強化』を混ぜたような
ただ切嗣は
「……そ、それで『再構築』ではどんな事が出来るのかしら?」
「ん~、例えばこのプラスチックバッグをプラスチックスプーンに変えたり、このナプキンに含まれている炭素の原子構造をダイアモンド並みに変えるとか……って、どうしたの遠坂さん?」
三月が見ると凛は頭を抱えていた。
「…………あのね、一応言っておくけど前者の例えは立派な『錬金術』よ。 でも後者は『強化』の範囲を超えているわ」
「「え? そうなの(か)?」」
「良い? 衛宮君に三月、そもそも────」
凛の言葉が昼の休み時間の終了のチャイムに遮られる。 これを聞いた三月と士郎は立ち上がって教室に戻ろうとするが凛が「たまには良いじゃない?」といい、魔術の話を続ける。
そしてそこで如何に自分が
やはり切嗣が言ったように秘匿したのは正解だったと痛感し、凛と士郎の話を静かに(菓子パンを食べながら)聞いた。
三月は自分が使えるのが『治癒』、『解析』、『強化』、『錬金術』、『再構築』などというモノに対し、凛は簡単な力の蓄積、流動変化、色々なものに魔力を転換して保存しておく事が出来、士郎は『
これだけでなく、三月は昨日イリヤに使った
先程凛が言ったように、三月の『再構築』は『錬金術』に似ているが原子構造を変える事はその物質の本質を変えることに等しい。 本来の『強化』ならばナプキンは『紙』としての能力が強化される。 だが三月の『再構築』の場合、見た目は紙だが炭素の部分がダイアモンドに変わってしまっている。
余談だが凛には喉から手が出るほどの魔術だった。何せ彼女の魔術は宝石などに魔力を備蓄し、ストックする事に長けている。 だが媒体が高価なもので使い捨てである為予算が嵩張って……………いや、今は遠坂家の経済難の事は置いておく事にしよう。
「────それにしても、ライダーのマスターは誰なのかしら?」
と、突然ボソリと言う凛。 士郎はこれについて追及すると、どうやらキャスターの事件を調べていく内に、キャスターが洗脳した『裏』の人間、いわゆる『裏社会』の人達を始末してくれているおかげで、キャスターの動きが表沙汰になるまでの影響を施し、これのおかげで凛は若干対処がしやすくなっていた。
優秀な魔術師とは言え、洗脳されている『普通の人間』を相手にするのは多少気が引くみたいで今まではアーチャーと共に対処していた。が、この所、そのような人間が既に何者かによって始末されていてキャスターの動きに乱れが生じていた。
なので聖杯戦争の事は別に置いて、遠坂家として礼の一つを言いたかったのだ。
「あ、それ多分慎二だぞ」
「……………………………………………………………は?」
凛の表情は心底いっや~~~~~~~~~~な顔へと変化した。
士郎はここぞとばかりに凛と三月に話した。
エセ神父から聖杯戦争の説明があったあの夜、凛と別れてから慎二とライダーに会った事を。
「………衛宮君、ちょ~~~~っと正座してくれる?」
「え?」
凛の問い詰めに士郎は説明した。 しようとした。
先日、ライダーに襲われたのは何か理由がある筈だと。
三月は三月で士郎から説明があったものの、士郎の行動原理は理解していた。 何せ凛ならば躊躇なく慎二を襲いかねないからだ。
そこで三月は何か気付いたかの様に(三つ目の菓子パンを食べ終わった後)、未だに続く尋問に横から言葉を挟んだ。
「ねえ、もしかして慎二君は遠坂さんみたいに士郎にマスターとしての自覚を持たせたかったんじゃないかな? だって話を聞いたところ、ライダーは手加減していたんでしょ?」
「あ、慎二ならあり得るかも」
「え゛? あの『間桐』よ? 『慎二』よ?」
「まあ、アイツは昔から素直じゃないからな」
「うんうん、良く皆に間違われるけど彼は説明不足なだけだから」
「…………貴方たち、意外とアイツの事を高くかっているのね。 でもアイツはマスターじゃないわよ。 そもそも魔術師でもないわ」
「「え?」」
これに士郎と三月はビックリする。 凛いわく、『間桐』は魔道の家としては廃れていて彼女の父親によれば魔術師としての血脈は既に途絶えているとの事。
そこで凛は士郎に持ちかける、キャスターと門番を務めているアサシン達の打倒を。
この話を聞き、士郎はアーチャーの言った言葉が頭をよぎる。
『誰かを救うということは、誰かを助けないということだ。 無関係な人間を巻き込みたくないと貴様は言ったな? ならば認めろ。一人も殺さないなどという方法では結局誰も救えないという事を。そして自分の為ではなく誰かの為に戦うなど………………ただの偽善だ』。
三月はと言うと、午後に行く切嗣のお墓参りには何を持って行けばいいのか迷っていた。
作者:な、何とか投稿できたどー!
三月(バカンス体):おー、しかもちょっと長めじゃん
作者:是非お気に入りや感想、評価等あると嬉しいです! では拙者ベッドにバタンキューしてくるでごじゃりゅ
マイケル:仕事の徹夜明けに無理したからだよ
ラケール:何か言語可笑しくなっていないかしら?