"Stay, Heaven's Blade" Fate said.  “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。”   作:haru970

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第12話 血涙を絞る少女達、そして夢は逆夢

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 三月 視点

 ___________

 

 学校が終わり、三月は商店街で買い物をした後、前日イリヤ達と会った公園のベンチで足をブラブラしながら待っていた。

 

「♪~」

 

 そして今回歌っていたのはとあるアニメのOVAでインサート曲として出て来た、「Watching You」だった。

 

「『You're lookin' for how they live~、その痛みを分かちあい~』(あのテーマと雪が降るシーンは良かったな~)」

 

バアー!

 

ハピャア?!

 

 突然後ろから声を掛けられながら、肩を掴まれた三月は心臓が口から出そうな感覚で素っ頓狂な声を出すと、後ろから笑い声が聞こえた。

 

「アハハハ! 何、『ハピャア』って?」

 

「ちょ、ま、まって! い、今のは駄目でしょうがイリヤ?!」

 

 未だにドキドキとうるさく鼓動する心臓に手を当てて、未だに笑うイリヤへと振り向く三月。

 

「ってあれ? 他の二人は?」

 

「車で待っているわ。 さ、行きましょ」

 

 イリヤを先頭に三月が付いていくとメルセデス・ベンツ・GクラスのW463型の外に待機していたセラとリズが見えた。

 

「おー、昨日ぶり~。 こんちゃーす」

 

 三月が片手をあげながら挨拶するとセラはムッとした顔を出すが何も言わなかった。

 

「……こんちゃーす」 ←棒読み

 

 リーゼリットの方は多少躊躇いしつつも、三月を真似て挨拶を返す。

 そしてお約束と言うばかりに『キッ!』と睨むセラ。

 

「あ、こちらはお世話になりますのでお詫びのケーキとクッキーです」

 

「……………ありがとうございます」

 

「うん。 昨日のロールケーキは美味しかった」 ←棒読み&わずかなホクホク笑み

 

「わぁ。(リーゼリットさんの微笑み顔、ゲットだぜー!)」

 

「…何?」 ←棒読み

 

「ううん、何でもない」

 

「それじゃあ、行きましょう。 三月はどこか知っている?」

 

「あ、うん。 柳洞寺の裏手の霊園」

 

 これを聞くとセラは体を固くしてイリヤに向く。

 

「お嬢様、私は反対です。 あのような場所に────」

 

「────そう。リズ、運転をお願いね」

 

「分かった」 ←棒読み

 

 イリヤはセラの言葉を最後まで聞かずにメルセデスに乗り、セラは観念したかのように溜息を出し、イリヤの後に車に乗る。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 そして柳洞寺へと続く石の階段を前に車が止まり、三月とイリヤが車から降りる。

 

「お嬢様、やはり我々もご一緒させてください」

 

「リズは車を待機していて。 セラはリズが変な事しないように。 恐らく何もないと思うけど念の為にね」

 

「念の為?」

 

「……ここには『魔女』がいるの。 私達が何もしなければ何もないと思うけど、一応ね」

 

「ふ~ん。 じゃあ、いこっか。」

 

 三月は鼻歌を再開しながら、ショッピングバッグを持ちながら階段を上り始め、イリヤはその後を追う。

 

 そして山にある柳洞寺の山門では────

 

「────あ、お疲れ様です! 先日は兄がお世話になりました! こちら、お詫びの品です」

 

 三月はセイバーに『アサシンの佐々木小次郎』と名乗っていた青年剣士に保温の効いた熱燗と弁当セットの袋を渡していた。

 

「おお! これはかたじけない。 だがはて、『兄』とは?」

 

「ああ、赤がかかった髪の毛の青年です」

 

「何と! あの者にかような可憐な妹がいたとは!」

 

 そして何故か上機嫌なアサシンと三月が仲良く話し始めた。 これを見ていたイリヤは困惑しながらも黙って距離を取っていた。

 

「して、今日は何用かな? 見た所、面妖な主に似たものを連れて来ているようだが?」

 

「あ、今日は親のお墓参りに来ただけです」

 

「…………何?」

 

 流石のこれにはアサシンも戸惑い、三月を疑いの目で見る。

 

「あれ? 駄目、ですか?」

 

 不安そうになる三月に対してアサシンはイリヤの方も見るが────

 

「────まあ、良いだろう。 まだ夜ではないとしても、用件を終えた後は早々に立ち去るがよい。 でなければ何も保証は出来ん」

 

「ありがとうございます! と言う訳で行こう、イリヤ!」

 

 三月はいそいそと座りながら熱燗と弁当を取り出すアサシンに頭を下げ、イリヤと共に柳洞寺の裏手の霊園へと歩きだす。

 

「ねえ、三月。 さっきのは何だったの? もしかしてサーヴァント?」

 

「ん? ああ、うん。 そうだと思う」

 

「…………………へ?」

 

 イリヤはビックリしながら振り返り、ご機嫌なアサシンが弁当を食べながら熱燗を飲んでいる山門の方を見てみるが、三月から離れすぎないようにすぐに彼女の後を追う。

 

「その、良いの? 襲ってこないのかしら?」

 

「ん? 何で?」

 

「だって最後のサーヴァントはアサシンの筈、なら────」

 

「────ああ、大丈夫だと思う。 彼は義理堅いらしいから。(セイバーから聞いた兄さん曰くだけど)」

 

 そして三月とイリヤは柳洞寺の裏手にある墓地へとやって来た。 イリヤは目の前に在る墓石に刻まれた文字を見たまま動かず、三月はただ彼女を見守る。

 

 ここは何年も前から何度も三月が墓参りに来た()()()()()の前だった。

 

『衛宮家之墓』

 

 イリヤはただ真っ直ぐ、無表情に墓石を見ていた。 時が止まったかのように動かず、世界から彼女だけが切り取られた光景がそこにあった。

 

 数秒か数分、あるいは数時間にも感じられるような、周りの音は何もなく、ただただ静かな時間だけが過ぎていった。

 

「…………お墓を綺麗にして、お供え物をするわね」

 

 三月は未だに微動だにしないイリヤの横を通り、布を出して墓石を拭き、買ってきたお供え物を置く。

 缶コーヒーに菓子パン、そして野菜ジュースとタバコだった。

 タバコは藤村組経由で切嗣が吸っていた物を昔から取り寄せていた物の一つで、先程アサシンに渡した熱燗もお供え物と称して昔から良く行っている酒屋さんで買ったものだった。

 

 ライターの炎でお線香に火を点け、タバコの一本にも火を点けた後、手でお線香から炎を消し、タバコと共に供える三月はイリヤの方を見るが、一向に動いていなく、視線も未だに墓石を見つめていた。

 

 三月がイリヤの隣で手を合わすと、ここで初めてイリヤが動き、三月同様手を合わせた。 三月が目を閉じると風が優しく過ぎ去って、お線香の匂いと共に切嗣が吸っていたタバコの匂いも来て、三月は一瞬懐かしい気持ちになり、これはイリヤも同じだったらしい。

 

「…………グスッ……………スン……………」

 

 三月は隣から来るすすりながら泣くイリヤに声をかけた。

 

「…………私的には、おじさんはイリヤとやっと会えて嬉しがっていると思うよ? イリヤの考えも声に出してみたらどうかな?」

 

「…………………キリ…………………ツグ……………………」

 

 そこからイリヤはポツリポツリと切嗣への、生前にかけたかった言葉を言い、最後はダムが崩壊したような勢いで涙を流しながら嘆いていた。

 

『キリツグの嘘つき』。

 

『どうして自分に会う前に死んじゃったの』。

 

『また会いたかったよキリツグ』。

 

『キリツグが嘘つきでも良いからもう一度会いたい』。

 

『もう一度一緒に雪ダルマを作りたい』。

 

『もう一度一緒に笑いたい』。

 

『もう一度一緒に雪の中を散歩したい』

 

 

 等を延々と震える声で次々と言い、最後に────

 

 

 

 

 

 

『我儘な子でごめんなさい、パパ』

 

 

 

 

 

 ────と言った後、イリヤはただ泣いた。

 

 気が付けば何時の間にか三月の目からも涙が流れていて、これに三月自身も驚いた。

 

 何せ最後にこうなったのは切嗣の葬式以来だったのだから。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 冬の曇り空の下、暫くの間涙を流すイリヤ達が泣き止んだのは辺りがこんがりと赤がかかった夕焼けから黒のかかった赤の、夜になる寸前頃だった。

 

 柳洞寺の山門へと戻る二人は手を繋いでいた。 

 

 イリヤが頼んだのだ、「せめて、階段を下りるまで手を繋いで欲しいと」。

 

 山門を通りながら空になった弁当箱などをアサシンのいる場所から三月が回収すると、イリヤが彼にペコリと頭を下げた事にアサシンは目を一瞬呆気に取られるが、優しく微笑んだ。

 

 階段を下りる道も二人は一言も喋らず、ただ手を繋いで歩いていく。

 

「…ねえ」

 

「うん?」

 

「貴方は………『()』?」

 

 不意に中段辺りで足を止め、イリヤが三月に問いかける。

 

「えーと、『()』って…何?」

 

「………………」

 

 イリヤはただ静かに三月を階段から見下ろし、ジッと三月の目を見ていた。

 その間に三月は考える。

 

「(『()』、か…………)」

 

 今日の昼、遠坂凛の話から推測すると自分が行使、会得できる()()は規格外も良いところに思えた。

 それに世の中には『人間(ヒト)』以外の種が存在する事も切嗣から聞いた事もある。

 

『吸血鬼』、『使徒』、『真祖』、『精霊』、その他。

 

 そしてこれまでの出来事を考えると、恐らく自分はセイバーが言っていた『アインツベルン』が造るような『()()()()』が一番当てはまると三月は思い始めていた。

 

 ただ三月は「それがどうした?」と思い、今まで生きてきた。

 

 何故ならもしそうだったとしても、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 一度は死にかけた命、恩人に恩を返す為に使えればそれで良い。

 ならば────

 

「────私は『衛宮三月』。 それ以外なんでもないわ」

 

 三月はイリヤの目を真っ直ぐ見返しながらそう答え、数秒後にイリヤは溜息を出す。

 

「そう、ならいいわ。 でも、ちょっと悔しいかな」

 

「え? 何が?」

 

「だって貴方、私の魔眼に対して無防備と思わせるよう感じがするのに、何のリアクションも無いんだもの」

 

「え゛? ちょ、『魔眼』って────」

 

「────私のは耐性のない者を注視するだけで拘束可能な、簡単な奴よ」

 

「そ、そうなんだ。(ホ、何か『右手から竜が出てくるー』な奴じゃないのか)」

 

「さ、セラ達が待っているわ」

 

 イリヤは階段を下り、三月を通ると────

 

「(ありがとう)」

 

 ────とイリヤの声がしたような気が三月にはした。

 

 その後ケーキのクリームとチョコチップクッキーの後が頬っぺたに若干付いているセラ達とイリヤ達が合流して、分かれる前にイリヤが三月に伝言を頼む。

 

 士郎や三月、セイバー達がアインツベルン城に来たいのであれば、客人として何時でも迎えると。

 

「えと、遠坂さんは?」

 

「どっちでも良いわ、でも条件はアナタかシロウが必ずいる事よ」

 

「ええ、伝えるわ。 何か欲しいものでもある?」

 

「リズはケーキ1ホール、セラはクッキー」 ←棒読み

 

「ちょ、リーゼリット?!」

 

「あ、じゃあ私もケーキ!」

 

「お嬢様まで……………」

 

「分かった」

 

「貴方も貴女で、そんな簡単に了承しないで下さいよ………」

 

 三月は運転をするイリヤを見送り、手を振る。

 

「(おお、あれは慣性ドリフト! すごーい)」

 

 そう思い、夜になってきた道を歩く。

 

「うう~~~! さっぶ! それに何か頭痛と吐き気もする……風邪かな?」

 

 そう独り言を言いながら手袋をして急いで帰る事にした三月はある男と会う。

 

「あ! 葛木先生、お疲れ様です!」

 

「三月か」

 

 葛木宗一郎、穂群原学園の教師で遠坂凛のクラスの担任でもある彼は何かと藤村大河と三月に縁があった男。

 

 縁と言っても、大河が何かと彼に助けを求めたり一緒に居ようとする。

 

 そして三月とは意外と彼が頼みごとをする時も多く、昼休みのごはん中の三月に声を掛けられる例外の一人だった。

 彼は口数が少ないが必要な事は言う性格な為、三月も彼と持っている『』ビジネス関係を割と気に入っていた。

 

「こんな時間遅くにどうした?」

 

「あ、お墓参りに少し」

 

「そうか。 この頃は物騒だ、早く帰ると良い」

 

「は~い」

 

 三月と葛木宗一郎が別れて、夜道をそれぞれ歩く。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 その夜、三月は夢を見た。

 

 そこはどこかの荒原で、彼女一人が大きな道の交差点を一人でポツンと立っていた。

 

 周りは静かで、風も無く、人が住んでいたと言う痕跡も見当たらない、色も無い灰色の世界。

 

 その中で立っている三月は不思議と寂しくは思わなかった。

 

 あったのはたった一つの思いだけ。

 

「(ああ、()()())」

 

 と、なんともドライな感じがした。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 次の日の朝、三月は学園の屋上でまたお昼ご飯を食べていた。

 

「お、おい衛宮。 み、三月はいつもあの位の量を食べているのか?」

 

「あれ? 慎二に言わなかったっけ? 昔から三月は大食いだぞ?」

 

「あー、私の反応を思い出すわー」

 

 そして今度は慎二が加わっていた。

 

 事は慎二がライダーのマスターだと先日士郎が言ってから始まった。

 これに対して遠坂凛が律義に礼を言いたいとの事で士郎が三月に頼んだのだ、「慎二を屋上まで誘って欲しい」と。 

 そして士郎は三月に「慎二を誘ってくれ」と頼んだ。

 

「え? 何で私が?」

 

「その方が慎二本人、喜んで来るからだよ」

 

 ニヤニヤとした士郎を思いだしながら三月が慎二を誘うと、彼の取り巻きガールズが嫌な物を見るかのような視線を出すが────

 

「────ぅぃえ?! ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ────?!」

 

「────上手く着火しないライターの真似?」

 

「ちゃぐ!」

 

 慎二が噛み、真っ赤になりながら言い直す。

 

「ち、違うぞ。 よ、よろけべ(よろこべ)よ三月。 ぼ、僕と一緒に食事するこひょ(こと)を光栄に思えよ!」

 

「あ、うん。 ハイ。 じゃあ、屋上行こうか」

 

「お、お、お、おおおおお屋上?!」

 

「(何赤くなってんのこのワカメ? 私、海苔は間に合ってるんだけど…)」

 

 何処かギクシャクした動きで付いて来る慎二はただ目の前の三月の揺れるポニーテールを見ていた。

 

 そして屋上に着くと────

 

「────何で衛宮がここにいるんだよッ?!?!?!

 

「────お、やっぱり早かったな三月」

 

 士郎の姿を見た瞬間、不機嫌になる慎二。

 

「まあまあ、私の弁当分けてあげるからさ」

 

「ああ、やはり良い────じゃなくて貢げる事に感謝しろよ!」

 

「あ、だから今日は四段弁当箱だったんだな三月?」

 

 慎二は三月から弁当箱の一段を取り、食べ始めると士郎は周りを見て何故か隠れている凛に声をかける。

 

「おーい遠坂! 何端っこで隠れているんだよ! 慎二来たぞー」

 

「ブゥグォアアアアアアアアにぃぃぃぃぃぃ?!」

 

 突然食べている物を噴き出しそうになる慎二は無理をして耐えているのか、変な叫び声が上がる。

 そして不機嫌そうな凛が不機嫌な慎二の前に出る。

 

「な、何で遠坂が?! ……あ!」

 

 そして慎二は何かに気付いたのか三月の方を(正確には三段弁当箱を)チラッと見てニタニタと笑う。

 

「成程ね~、あの遠坂も三月に弁当を分けて貰っているのか~。 流石経済難の遠坂家────」

 

「────違うからハッキリ言うわ。 気味が悪い『間桐』に言われたくないわ」

 

「何だと!」

 

「何よ!」

 

 立ち上がる慎二に凛が迫って────

 

「二人とも食べないの? モグモグモグモグ」

 

 のほほ~んとした声で三月が凛と慎二に話しかけると二人は渋々とは座り、食べ始める。

 丁度凛、士郎、三月、慎二の並びで皆それぞれの弁当を食べ始め、慎二が士郎と凛が自分の弁当を持って来ている事に気付く。

 

「??? お前ら、三月から弁当箱貰わないのか?」

 

「? 三月は何時もあの位は食べているぞ?」

 

「モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ」

 

 そして以上の状況へと至る。

 丁度三月が一段目を食べ終えて、二段目の半分まで食べたところだ。

 

「お、おい衛宮。 み、三月はいつもあの位の量を食べているのか?」

 

「あれ? 慎二に言わなかったっけ? 昔から三月は大食いだぞ?」

 

「あー、私の反応を思い出すわー」

 

「ハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグハグ」

 

 静かに弁当を食べる三人+食物を口に掻き込める約一名。

 

「…………で? 遠坂は何でここにいるのさ? もしかして僕と共闘する気になったのかい?」

 

「誰が────?!」

 

「────ああ、何か遠坂がお礼したいんだって」

 

「はぇ?」

 

「もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ」

 

 慎二は士郎の言葉で呆気に取られ変な声を出し、凛は気まずそうに視線を逸らし、三月は未だに弁当を食べる。

 そして士郎が慎二に確認を取り始める。

 この頃ライダーと共に夜の街で犯罪者の人達を討伐していないか?と。

 

 これを聞くと慎二は得意げそうに髪を弄りながら肯定する。

 

「(何でこっち見てんのかな、ワカメ。 今三段目食べて────まさか一段だけじゃ足りなかったとか?!)」

 

 肯定する慎二に士郎が言う、「そのおかげで遠坂は柳洞寺にいるキャスターを突き止めて、妨害に出ている」と。

 そして慎二の行っている事がソレの助けになっていた事も。

 

「へー、あの遠坂が僕にお礼をねー」

 

 ニタニタとした笑いの上にネッチャリとした視線が凛を襲い、彼女は自分の身体を抱きしめながら士郎の後ろに隠れる。

 

「な、何よ! 御三家の、遠坂の当主として当然の事よ!」

 

「んん~~~~? その『礼』がまだなんだけどね~」

 

「うッ」

 

 凛が目を逸らす、慎二の笑いがさらにデカくなる。

 

 が、ここで三月の三段目を食べ終わったところで菓子パンを食べ始める事に慎二は驚愕した。

 さらにチャイムが鳴ったのに微動だにしない三人にも。 

 慎二は教室に戻るため、立ち上がるとここで三月が慎二の制服を引っ張り、彼が座っていた場所に手をパタパタとして、慎二は座りなおした。

 

「って、まだ食べるのかよお前は?! そもそもその量はどこに消えているんだ?! 質量保存の法則に喧嘩を売ってんのか?!」

 

「えー? だってお腹空いているんだもん。 あ、もしかして欲しかった? ワカメ入りご飯パンあるけど?」

 

「あ、じゃあ貰っておこうか」

 

 そして上機嫌になる慎二を見た凛がコソコソと士郎に話す。

 

「ねえ衛宮君。 慎二っていつもこうなの?」

 

「三月限定だな」

 

「ふ~~~ん?」

 

「おい遠坂、慎二をあまり弄るなよ。 気持ちは分かるけどさ」

 

 ここで初めてニヤニヤし始める凛に対して士郎は釘を打つ。

 

「ちなみに何で衛宮達と遠坂がここにいるんだ?」

 

「あ、そうだよ遠坂。 何でだ?」

 

「モムモムモムモムモムモムモムモムモム」

 

「そうね、ライダーのマスターに礼をするのは良いとして────」

 

「────おい! 良くないぞ────!!!」

 

「────ハイ慎二、卵サンド────」

 

「────あ、ありがとう────じゃなくて!」

 

「えい♪」

 

「もが?! …………………モグモグ」

 

 三月は話を進める為に慎二の開いた口に無理矢理卵サンドを捻じ込み、目配せで凛に合図を送る。

 そしてその間、実に幸せそうな慎二の表情に多少(?)苛つきながらも説明する凛はそこに居る皆に提案をする。

 キャスターとアサシンの打倒を。

 

 冬木市の管理者(セカンドオーナー)としてキャスターの行為とルール違反は見過ごせないと。

 

「お、おい遠坂」

 

「何よ慎二? まさか文句がある訳ないでしょうね」

 

 更に苛ついた声で凛が返事をすると慎二は三月の方を一瞬見て、凛は理解する。

 

「ああ、その子なら大丈夫よ。 下手したら私までは及ばないけど、かなり良い線行くわよ? 何処かの誰かさんよりわね」

 

「なッ?!」

 

 慎二がビックリしながら幸せそうに五つ目の菓子パンのチョコチップメロンパンを食べている三月を見る。

 

「ま、それはあくまで魔術師としての話ね。 サーヴァントがドンパチするところに本格的に関わったら一溜りも無いわ」

 

「…………………」

 

「だから提案しているの。 キャスターとアサシンを打倒するまでは一時休戦を」

 

「遠坂、バーサーカーは後回しで良いのか?」

 

「そうね、バーサーカーは脅威だけどキャスターと違ってちゃんと聖杯戦争のルールは従っているわ」

 

「僕としては先にバーサーカーを────」

 

「────ダメだ」

 

 ここで今まで黙っていた士郎が強くキャスターを後回しにするのに強く拒否したのに凛と慎二、そして三月は驚きに目を見開く。

 

「「「衛宮君?/衛宮?/士郎?」」」

 

「アイツは……キャスターは冬木の町中から生気を吸っている。 今はまだ犠牲者は出ていない。 けど、何時かは出てしまう。 なら、早くて手を打った方が良い」

 

「衛宮…お前……」

 

「(兄さん……)」

 

「………ま、と言う訳でこの提案よ。 別に争うなとは言わないけど────」

 

「────いや、僕も賛成しよう」

 

「「慎二?」」

 

 今度は凛と士郎がビックリした。 何せさっきまでキャスター打倒にはあまり気乗りしていなかったように見えたからだ。

 

「生気を吸っていたのは知っていた。 けどそれが遠坂の言うような規模なら…」

 

「(え? 何でワカメはこっちをチラッと見たの? このアンパンあげないわよ?)」

 

「どういう心境の変わり? さっきまでバーサーカーを打つ気だったのに」

 

「何、少し興味があるだけさ。 キャスターと言う魔術師にね────ッ」

 

 慎二が顔をしかめて、苛ついたような声を突然出す。

 

「あああ?! 何叫んでいるんだよライダー?!」

 

 そして学園は突然、雲の影に入ったかのように辺りは暗くなる。

 

「な、何だこれは?!」

 

「慎二! 貴方、結界を発動したわね?!」

 

「慎二、お前…」

 

 凛が怒りながら慎二に迫って彼の胸倉を掴み無理矢理立たせ、士郎は「信じられない」といった顔で彼を見る。

 

「し、知らない! ぼ、僕は知らない!」

 

 何故凛と士郎が慎二を攻めているかと言うと先日、凛が士郎を襲った後日、二人は学校に結界の呪刻が設置されていたのを発見して、次々と消していたのを慎二に注意された。

 一応「保険の為の結界」と称した慎二の事を凛は全く信用していなかったが、慎二は確かに範囲が巨大だったのを認めて規模を小さくすると言い、次の日から結界の呪刻が確かに「攻撃的」から「防衛戦」向けの規模に変わったのを確認した。

 

「ほ、本当なんだ! あの日に僕はちゃんとライダーに変えさせたんだ! こ、こんな────」

 

 そこでドサリとした音がし、三人が見ると三月が悪い顔色をしながら震え、歯をがちがちと音を鳴らしながら自分の体を抱きしめながら気を失っているのを見た。

 




作者:お気に入りや感想、評価等あると嬉しいです!

三月(バカンス体):後書き今回は短いわね?!

作者:次の話を書かなきゃあならんのだ! ウオオオオオオ!

チエ:あ奴め、意外と楽しんでいるな

マイケル:え゛? あれでか?

ラケール:まあ、笑ってはいるけど…………

作者:フ、フヒ。 フヒヒャハハハハハハハハハ!
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