"Stay, Heaven's Blade" Fate said.  “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。”   作:haru970

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今回キリの良い所+ストック切れまでなのでまた少し短めです。

すみません…

何時も感想ありがとうございますハクア・ルークベルト! とても励みになります!

誤字報告ありがとうございます宇宙戦争さん! いや~、まさか慎二の名前を間違えるとは恥ずかしいです………一応今までの話は全て直しましたと思います!


第13話 怒れる拳、笑顔に当たらず

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 衛宮士郎、遠坂凛、間桐慎二 視点

 ___________

 

 地面に倒れた三月の身体を凛が起こし、診る。

 

「お、おい三月は大丈夫なのか遠坂?!」

 

「前から体は弱かったけど、ここまで酷いのは────」

 

「────正直あまり良くないわね。 体が冷え切っているのに、脈が早い。 それに、魔力も……このままだとヤバイわ。慎二! この結界は貴方のモノじゃないのよね?!」

 

「そ、そうだ! これは学園全部覆っているが、僕のは本校舎だけの筈だ!」

 

「ならば、考えられるのは────ああ、もう! 先ずはこの子(三月)ね! 衛宮君! この子を背負いながら魔力を常時発動、少しでも魔力をこの子に流すように! 慎二はライダーを呼んで!」

 

「わ、わかった!」

 

「よ、よし! ライダー、来────!」

 

「────マスター、これは────?」

 

「────おわああああああ?!」

 

 突然現れたライダーに慎二は尻餅をつきながら叫び、士郎が三月を背負いながら身構える。

 

「単刀直入に訊くわライダー、この結界は貴方の仕業?」

 

「……………」

 

「ラ、ライダー! 答えてくれ!」

 

「違います」

 

「そう。 でも見た所、結界の拠点が以前の呪刻の場所なのだけど?」

 

 ライダーは慎二と士郎の方を一瞬向き、凛の問いに答える。

 

「…確かに以前設置した呪刻が発動しています。 ですが、これは恐らく他の誰かが発動したモノかと」

 

「ハ、ハァ?! ど、どう言う事だライダー?!」

 

「成程ね、じゃあこれはライダーの結界を利用した別の何かよ」

 

「ハイ、ですので私やマスターは弱体化の対象外となっているのもその所為でしょう」

 

「ハァ…ハァ…」

 

 士郎の頭のすぐ横で浅く息をして弱っている三月を見ているかのように思えるライダーの視線に士郎は身構えたまま睨む。

 

「お前の結界を利用しているのなら、お前に解除も可能な筈だろ?!」

 

「いいえ衛宮君、恐らくこれはキャスターの仕業。 そして彼女ほどの魔術師がそんな穴を術式に空けたままにする訳が無いわ。 でも利用しているから効果と解除条件は似ている筈よ。 それを教えて、ライダー。 でないとこのままじゃここの生徒全員いずれ死んでしまうわ」

 

「「な?!」」

 

「…………」

 

 士郎と慎二は驚きの声を上げ、ライダーはただ黙っていた。

 

「どういう事だライダー! お前に命じたのはそんな危険な────!」

 

「────待って慎二。 これも私の推測だけどこの結界は本来のモノより強化されていると思うわ」

 

「いいから解除条件を言ってくれ! このままじゃ三月が危ない!」

 

 士郎が痺れを切らしたのか苛立ちから話を遮る。

 

「………元となった結界の名は『他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォート・アンドロメダ)』。 内部の人間と地形を溶解し────」

 

「────な?! ライダー、おま────!」

 

「────魔力として使用者に還元する結界を張る対軍宝具。 ですがこれは宝具では無いので恐らくは内部の人間を魔力に変換しているだけみたいですね」

 

「じゃあ早い話が『巨大生物の胃の中』ってところね。 で、核となる呪刻は?」

 

「…………………」

 

「そ、それは位置が動いていなければ一階の化学教室の筈だ!」

 

「おい、遠坂! 三月はどうなんだ?! さっきから魔力を流しているが何も変わらないぞ!」

 

「やっぱり衛宮君じゃ…………でも私の両手が塞がって…………」

 

「えええい! 令呪を以って命ずる! 『セイバー、来い!』」

 

「え?!」

 

「な?! 衛宮?!」

 

 士郎のそばに光が輝き、甲冑姿のセイバーが現れ、士郎は掻い摘んでセイバーに結界の事を説明し、ライダーと慎二は今敵ではない事を宣言した。

 

「シロウが、そう言うのなら……」

 

「驚いた、今度は躊躇無しで令呪を衛宮君が使うなんて………」

 

「当り前だ、こんな局面で出し惜しみなんてしてられるか。 三月もだがここには桜も、藤姉達もいるんだ! (それに、正義の味方(ヒーロー)なら尚更だ!)」

 

「ッ。 ライダー、聞いた通りだ。 セイバーと一緒に一階の化学教室で結界を解除するぞ」

 

「分かりました」

 

「遠坂、それでいいか?」

 

「うぇ? え、ええ」

 

 何時も以上に切羽詰まった状況の中で延々と行動を起こす士郎に凛が驚く。

 

「しっかりしてくれ遠坂! ガンドで雑魚を蹴散らして、デカい奴らはセイバー達に任せよう! 慎二、俺のそばにいてくれ」

 

「衛宮のくせに僕に指図するな!」

 

「いざとなったら三月を頼む、慎二」

 

「…………ハ! 頼まれてやるよ! おら、行くぞ凡骨共! 僕に続け!」

 

「貴方こそ私に指図するな、このワカメ!」

 

「ワカメって言うな!」

 

 そして四人+二騎のサーヴァントは校内の通路を塞ぐ竜牙兵を蹴散らして行った。

 

 行ったが────

 

「数が多すぎるわよ、まったく!」

 

 ────一体壊せば二体がその穴を埋めるかのように、文字通りウジャウジャと、次から次へと竜牙兵が前後から迫る。

 

 殿を務めるライダーを凛が援護し、セイバーは大振りな剣さばきで前を投げ払い、打ち漏らしを士郎が片手で強化した棒で粉砕していた。

 さっきからこの状態が続き、凛が苛つき始め────

 

「────もうあったま来た! 慎二! 私が道を開けるからその隙にライダーと一緒にこの結界を壊して!」

 

「な、僕に指図────!」

 

「慎二! ライダークラスは機動力に長けているんだろ?! 頼む! ここは俺と遠坂が暴れまくる! ()()()()()()()()()()!」

 

「え、えみ────」

 

 返事を待たずに、凛は宝石を何個か投擲して手榴弾のような爆発が起きる。

 

「────マスター、行きますよ!」

 

「おわあああああああ! ラ、ライダー~~~~~!」

 

 何時になく気合の入っているライダーが慎二を(物理的に)引きずりながら通路を駆け抜ける。

 

「(頼むぞ、慎二!)」

 

「(まさかあのワカメの為に宝石を使う羽目になるなんて! 金庫の中身が………いや、今はここを切り抜けないと!)」

 

 

 ___________

 

 間桐慎二、ライダー 視点

 ___________

 

 

「ふひゃああああああああ?!」

 

「……………………(まったく、何故私が)」

 

 勿論慎二は慎二で、まるでF1レーサーの車体に首の根っこから体を後方に引っ張られている感覚に恐怖から叫んでいたのは誰もが理解できよう。

 ただその素っ頓狂な声を上げる慎二に対してライダーは内心苛ついていた(自分の所為だとは微塵も思っていない)。

 

 そのまま(乱暴に)慎二を引きずったまま、一階の化学教室の扉を(ライダーが投げた慎二が)体当たりで壊し、中へと突入する。

 

「あら、意外ねライダー」

 

 そこには愉快そうなキャスターの姿がいて、ライダー達へと振り返った。

 

「キャ、キャ、キャスター本体だと?!」

 

 体を起き上げた慎二がキャスターを見ると後ずさる。

 

「ちょうど良いわ、戦うのはやめないかしら? 貴方、魔術師になりたいのでしょう? 私は貴方の魔術回路を『()()()()』事が出来るわ」

 

「戯言を────」

 

「────『待て』、ライダー!」

 

「ッ」

 

 腰を低くしたライダーを慎二が制し、ライダーの動きが急に止まる。

 

「どういう事だ、キャスター?」

 

「ふふ、賢明ね。 貴方は魔術の家系で、『魔術回路は完全に失われている』と言われていた()()よ」

 

()()…だと? 何が言いたい!」

 

「貴方の()()()()()()()()()()だけの事。 古来の時代ではこれを『魔路昏睡』と呼んでいたわ。 要するにその者の回路が生まれつき閉じたままで、自己の意志やちょっとの刺激では起きる事は無い。 だけど私なら()()()()()。 どうかしら?」

 

「…………何が条件だ?」

 

「簡単な事よ、ただ()()()()()()()()()()だけよ」

 

「………………………」

 

 

 ___________

 

 衛宮士郎、遠坂凛 視点

 ___________

 

 

「まだか、慎二!」

 

「衛宮君、やっぱり慎二は────!」

 

「────いや、後もう少し粘れば────!」

 

 ライダーが抜けた事で士郎、凛、セイバーは苦戦していた。

 ()()ならこの()()()で乗り越えられるような局面。 

 だが()()と違い、衛宮士郎は自ら前線で活動できず、背中の子を守りながら消極的に戦っている。

 ()()と違い、遠坂凛は先程慎二達に道を開ける為に宝石たちをいつもより使い、魔力もいつも以上に消費していた。

 そして()()と違い、セイバーはこの三人を守る為に前後を行き来していた。

 

「────シロウ! やはり先程からライダーは動いていません! 彼らは────!」

 

「────言うな、セイバー!」

 

 怒りの籠った声で士郎がセイバーを黙らせる。

 

「で、でも衛宮君────!」

 

「アイツは、慎二は捻くれた奴だけどやる時はやる奴だ!」

 

「ウ……………お……にい………ちゃ……………」

 

「どりゃあああ! (早くしてくれ、慎二!)」

 

 士郎自身焦りながら来る敵を粉砕していく。

 

 ___________

 

 間桐慎二、ライダー 視点

 ___________

 

 

「アッハッハッハッハッハ! 傑作よ、これは! あの坊や、私の『提案』を受けなかっただけにこんな事になっているなんて思ってもいないでしょうね!」

 

 キャスターが『遠見』を施した床の水溜まり経由で士郎達の事を見聞きしていた。

 それは彼女の後ろで壁に背中を預けている慎二と、そばで立っているライダーも同じだった。

 

「へー? 衛宮にも声をかけていたのか?」

 

「ええ、セイバーと令呪を私に寄越せと言ったのよ。 でも今更()()()()()()()()()()わ」

 

「ん? どういう事だ?」

 

「だって、そんな物よりもっと価値のあるモノが見つかったんですもの」

 

「……………それがこの結界か? よっと────」

 

 慎二は近くの冷蔵庫の中から缶を数本取り出すと、数本が床に落ちて中身が零れると慎二は舌打ちをする。

 

「チッ、勿体ない事をした………一つどうだい?」

 

 そう言いながら慎二は一つの缶を開けて、飲み始める。

 

「ップハー! 炭酸飲料、最高だな!」

 

「遠慮しておくわ。 後もう少しで終わるし、貴方の『魔路昏睡』の治療準備も出来るわ」

 

「へー、もしかしてこの結界で得た魔力を使うのかい?」

 

「あら、意外と鋭いわね」

 

「伊達に魔導書など漁っていなかったさ。 となると、この結界で得た魔力量は凄いんだろうね」

 

「ええ、()()柳洞寺なんて目じゃない程ね」

 

「そうかい…………ところでさー、僕、思っていたんだよねー。 この結界、いつまで張っているのかな?」

 

「そうね、少なくとものあの坊やと小娘が干からびるまでになるわね」

 

「へー…………それにさー、僕って()()()()()()()んだよね」

 

 慎二の言葉に違和感を持ち、キャスターは彼を横目で見る。

 

「何を今更────」

 

「────だからさー、さっきも言った様に本を漁っていたんだよねー」

 

 ニタニタとした笑みを浮かべる慎二にキャスターは憎悪がぐつぐつと煮え始めるのを無理矢理心の奥に押し込めた。

 ()()()と同じ顔だった。

 かつての()()()()()()()()が悪巧みをする時のような────

 

「────面白いよねー、『錬金術』ってさー」

 

「だから何を────ッ?!」

 

 そこでキャスターは気付く。

 

 床に広がる液体と()()()()()()()が────

 

「────やれ、ライダー」

 

 ライダーは素早く短剣を投げ、床の液体に飛び散った火花が合図になったように、液体全体が着火し、すぐさまキャスターへと燃え移る。

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「おーおーおー、やっぱりよく燃えるね。 『()()()()の火』だけに」

 

『ギリシャの火』。 かつての東ローマ帝国で使用された焼夷兵器で、海戦において典型的にこの兵器が使用されたと伝えられている。 水上に浮いている間ずっと燃え続けて多大な効果を上げたと言われている『()()』の兵器を元に人工的に作られた『表』の兵器。

 

「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ギ、ザ、マ゛────」

 

「苦労したよ、これを作るのに。 元々は使う相手が違うけど、いい試行実験になったよ。 僕ってさー、お前みたいな奴が大の嫌いなんだよね」

 

 キャスターは火の中でもがき、苦しむ。 水など使えば状況は悪化し、これは『表』の『ギリシャの火』ではなく、『裏』の『ギリシャの火』に近い素質を持っていたのもさっきの()()で彼女は知っていた。

 

『表』の『ギリシャの火』は水さえあれば燃え続ける。 

 では『裏』の『ギリシャの火』はどうだろうか?

 

「う~ん、やっぱりいいね。 燃える『魔力』ってのは」

 

 そう。 『裏』の『ギリシャの火』の糧は『水分』と『大気』ではなく、『魔力』と『大気』で燃え続ける。

 神代で『水さえあれば燃え続ける火』などのような芸当は()()()()止まり。 水さえ無くせば終わってしまうのだから。

 

 では()()そのものを燃やせばどうだろうか? 神代は魔力と神秘に溢れていた時代、余程の事情でなければ誰もが魔力に満ちていて、『裏』の『ギリシャの火』はこの事実を逆手に取っていた。

 

「ハハハ! どうだいキャスター?! 『魔女狩り』に会っている気分は?!」

 

「グアアアアア! ナ、ゼ────」

 

「『何故』? な~に、簡単な事さ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────貴様は僕を怒らせた

 

 ヘラヘラと笑っていた慎二が静かな怒りを持つ者の形相へと変わり、キャスターを見る。

 

「お前は僕の大切なモノ達を亡き者にしようとした。 それは万死に値する。 こんな僕を信じ切る、馬鹿たちをな────」

 

「────マスター!」

 

 ライダーが急に慎二を掴んで投げると、何者かの打撃で彼女の肋骨がメキメキとヒビが入る音を立てて、身が慎二近くに投げ出される。

 

 シュバー!!!っとする音が聞こえ、辺り一面が白い粉状のモノで満たされる。

 消火器の消火剤、炭酸水素ナトリウムが場の空気を一時的に吸い取り、火が収まっていく。

 

「ラ、ライダー?! ケホッケホ!」

 

「無事か、キャスター」

 

「も、申し訳ありません」

 

 慎二は咳をしながら男の声とキャスターの声が聞こえる方向を見る。

 

「引くぞ────」

 

「────ですが────」

 

「────気は逃した、引くぞ」

 

 そこで慎二が見たのは転移魔術で消えて行くキャスターと────

 

 

 

 

 

 ────教師である、葛木宗一郎の姿だった。

 

 

 ___________

 

 衛宮士郎、三月 視点

 ___________

 

 あの後キャスターが姿を消したあと、結界は崩壊し、救急車や警察達が殺到して来て、衰弱していた生徒や教師達の治療と事情聴取を始めていた。

 

「スゥー…………スゥー…………スゥー…………」

 

 場所は校舎近くの森の中に移り、背中で静かに寝息をしている三月を見ていた士郎は慎二の話に戻った。

 

 キャスターのマスターは自分が何とかすると。

 

 勿論、士郎と凛は反対した。 そしてもしキャスターのマスターを知っているのなら教えてくれと。

 

 だが慎二は断った。

 かつてないほどの怒りを露にしながら「僕にやらせろよ」と言った彼に、あの士郎でさえ狼狽えるほどに。

 

 そして凛は士郎を褒める、「よくあんな状況で頭が回るわね」と。 「自分だったら倒れている生徒達とかで頭が回らなかった」と。

 

「ああ。 俺、死体を見るのは慣れているからさ」

 

 士郎のこの一言で凛、慎二、セイバーはビックリする。 何故なら士郎の表情がまるで()()()()()()()()()を言う感じで顔色一つ変えていなかったのだ。

 

 これにはどう声を掛ければ良いのか分からなかった凛と慎二達と別れ、士郎は三月を何時かのように背中に負ぶって衛宮邸へとセイバーと共に帰った。

 帰り道すがら、セイバーは未だに士郎に迫っていた。

 

「やはり自分がシロウの部屋で寝た方が良い、今の部屋ではシロウが危ない」

 

「なんでさ?! 駄目だ! (危ないけど、()()()の意味で俺が危ない!)」

 

 結局は士郎の隣の部屋に落ち着いた(と言うか士郎が無理矢理落ち着かせた)。

 その夜、士郎はやはり意識して眠れなかったが。

 




三月(バカンス体):ええ、今回作者の調子が悪いのでコントはほぼ無しです。 申し訳ありません

雁夜(バカンス体):お前が畏まっているのって鳥肌立つな

三月(バカンス体):うっさいよそこ! お気に入りや感想、評価等あると嬉しいです! よろしくお願いします!
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