"Stay, Heaven's Blade" Fate said.  “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。”   作:haru970

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歯車達の回転がズレ始める。

このズレについて行けない歯車は無くなって行く。

くるくるくるくる回る歯車達。

無くなる歯車達無しで回る歯車達はどうなるのか?

それははたまた、『運命』のみぞ知る。
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ではお楽しむ下さい!


第16話 気に病むヒトの子等

 ___________

 

 セイバー運営 視点

 ___________

 

 キャスターが消え、士郎の提案で生存者を探そうと行動に出る直前に三月が倒れて、士郎が三月の状態を見る。

 

「三月?! これは………()()()()か?!」

 

 三月は深く息をしながら、酷い熱を出していた。

 

「待って下さいシロウ、それはどういう事ですか?」

 

「この子、昔からこういう事があるの? 私はそんなの聞いた事ないけど」

 

「あ、ああ。 中学に上がるまで、昔は結構このように突然熱を出していたんだ。 中学からは最近までこんな事無かったんだけど…………」

 

「衛宮君、彼女を医者に見せたのかしら?」

 

「あ、ああ。 最初の頃はじいさんが何回か、な。 で、薬を出してもらっていた」

 

「その薬は?」

 

「場所を変えていなければ家の薬箱の筈だ」

 

「分かったわ、じゃあアーチャーと私は彼女を衛宮君の家まで連れ戻してエセ神父に連絡を入れるわ。 その間衛宮君たちは生存者を探してちょうだい」

 

「な、それだったら俺が三月を家に────」

 

「私達の方が素早く行動出来るし、アーチャーの索敵で敵の撃破も回避もしやすいわ。 それにここには昔から山自体に施された結界がまだある。 いざとなればセイバーに帰り道一点突破はアーチャーより彼女の方が向いているわ────それにアーチャーは生存者を探すのにあまり気乗りしていない見たいだしね」

 

 最後の言葉を凛は士郎の近くに行き小声で伝えると、士郎が観念したように彼女を見る。

 

「………分かった。 じゃあ三月を頼むぞ、遠坂」

 

「貸し一つよ、衛宮君。 行くわよ、アーチャー!」

 

「やれやれ、今に始まった事ではないが君の我儘っぷりには骨が折れるよ」

 

 ア-チャーは肩をすくめ、そこで凛たちは三月を連れて衛宮邸へと移動をし始める。

 

 その後、士郎とセイバーは驚く事に柳洞寺の敷地の端で気を失った一成や寺の坊主達などが一か所に集められていたのにびっくりした。

 

「これは、一体どういう事だ?」

 

「成程…………こういう事だったのですね、キャスター」

 

 セイバーが何かに築いたかのような一言に士郎は彼女に問う。

 

「どうしたんだ、セイバー?」

 

「実は先程キャスターと対峙した時に最初の魔術行使の際に魔術が放たれていなかったのです。 最初は動揺などからの行使失敗、または大きな魔術の布石だと思ったのですがそのようなものを使ってきませんでした。 ですので、考えにくいのですが…………」

 

「まさか、キャスターが皆を動かしたって言うのか?」

 

「…………はい。 今更なのですが、彼女は魔術を最初の一撃こそはシロウやリン達を狙っていたものの、その後は全て私とアーチャー目掛けて撃たれたものでした。 その時は脅威である私達の排除を優先したと思ったのですが………」

 

「………『もしかしてキャスターが躊躇していた』、か」

 

「………………………………はい」

 

 シロウとセイバーは眠っている生存者達から視線を宗一郎の遺体のある本堂へと変えた。

 

『もしかしてキャスターが生存者達を戦いに巻き込まれないように動かした』。

『もしかしてキャスターはマスター達(士郎や凛)を本気で狙っていなかった』。

『もしかしてキャスターが躊躇していた』。

 

 等の考えが二人の頭を過ぎった。

 

 だが考えても真意は分からない。

 

 どんなに堕ちてもキャスターはキャスター、『裏切りの魔女』で『コルキスの王女』。

 

 そしてそれを知っている者達は()()()()のだから。

 

 ___________

 

 アーチャー運営 視点

 ___________

 

 アーチャーと凛は素早く円蔵山の麓まで降り、近くの公衆電話を使って新都の境界にいる言峰綺礼に連絡を入れて、再度移動を開始する中、三月を背負い移動をする凛はアーチャーに話しかける。

 

「………ねえアーチャー、少し聞いていいかしら?」

 

『何だ、凛?』

 

「貴方、衛宮君に何か恨みでもあるの?」

 

『………そうだな、彼の考え方に苛つくのは君も同じかと思ったんだが?』

 

「ングッ…………痛い所を突かれるわ、貴方と話していると。 ま、気持ちは分からないでもないけど………」

 

『“けど”、なんだ?』

 

「嫌いになれないかな? 何と言うか…ちょっと『理想的』っていうか、『子供』っぽいっていうか……………そういうところとかが気になるわね」

 

『…………………………………………』

 

「??? どうしたのアーチャー? 珍しいわね、貴方が黙り込むなんて」

 

『何、そのような考え方で奴の事を思っていただけだ。 だがやはり好きにはなれん。 それに本題に入ってみたらどうだ、凛?』

 

「『本題』って、何の事?」

 

『とぼけても無駄だ。 君がこの様に話の話題を私に振るという事は、何か尋ねにくい事を私に訊きたい時だろう?』

 

「流石私の召喚したサーヴァントね。 もうそこまで理解しちゃっているか。 じゃあ聞くけど、()()()()()()()?」

 

 凛は道を歩きながら、体温がこの冬の夜の中でも感じ取れるほど熱を出して、背中にいる三月を見る。

 

『“どう思う”、とは?』

 

「この子、性格や姿は違うけど何処となく『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』に似ていると思っているのは私だけかしら?」

 

『つまり“ホムンクルス”だと?』 

 

「もしくはそれに酷似した『何か』よ」

 

 衛宮邸に着き、扉を開けると────

 

「────あ、お帰りなさいせんp────え?」

 

「あら、こんばんは桜。 三月が具合悪いみたいで連れ帰ったのだけど、薬箱を持って来てもらえないかしら?」

 

「え? え? え?」

 

 戸惑う桜をお構いなしに衛宮邸に凛は上がり、三月を近くの部屋に連れ込み、部屋の布団などを探している凛に桜が薬箱ごと持ってきた。

 

「取り敢えず、全て持って来ましたけど────」

 

「────ありがとう、お水を持って来てもらえるかしら? 私は薬を探すわ」

 

「三月先輩、病気なんですか?」

 

「んー……衛宮君曰く、昔あった発作のような物がぶり返したみたいね」

 

「え?」

 

 凛の発言に対して呆気に取られる桜は目を見開き、汗を掻きながら息をする三月を見下ろす。

 

「私………知らなかったです」

 

「まあ、元々小学生の頃は結構こういうのあったみたいよ? 衛宮君から聞いた話だけど」

 

「……………あの、先輩は?」

 

「何か気になる事があるから調べるって言っていたわ。 お水、まだかしら?」

 

「あ。 い、今持って来ます!」

 

 桜が立ち上がり、キッチンの方へと早歩きで向かうとアーチャーが薬箱の中身を漁っている凛の名を呼ぶ。

 

『……凛』

 

「何?」

 

『……さっきの話の続きだが、君の言う通りそこに居るものは私から見ても“アインツベルン”の娘と似ている』

 

「……………そっか」

 

『だが似ているというだけで、在り方の系統は違うように感じる。 恐らくは“アインツベルン”とは違う出所だろう。 推測に過ぎないがね』

 

「なら別の魔術師一族の産物…………か」

 

『そうだな、そうかも…………知れん………』

 

「あら、貴方にしては歯切れが悪いわね? 何か思う所があるの?」

 

『いや、何でもないさ』

 

 そこで凛はアーチャーの気配が遠くなるのをなるのを感じた。

 恐らくは警戒に屋根の方へ行ったのだろう。

 

「変な奴…………………ッ?! これは………………」

 

 そこで凛が見つけたのは錠剤が瓶の中に入っていた物。

 それを見て、凛の顔は厳しくなり、睨む。

 

「お水をお持ち────ッ。 と、遠坂先輩?」

 

 桜が凛の表情を見て、恐怖から言葉を言いよどむとこれに築いた凛は表情を解いて、安心させるかのように桜に笑顔を向ける。

 

「あらごめんなさい、少し考え事を────」

 

「────アアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 そこで三月が突然叫びだして凛を遮る。

 

 ___________

 

 三月 視点

 ___________

 

「……………ん?」

 

 三月が気付くとそこはどこかの平原で、自分は立っていた。 

 

「…………こんな場所、冬木にあったかk────?」

 

 シュボボボボボボーン!

 

 何処か乾いたような、水中の中で銃声を聞くような音が次々と聞こえると同時に三月は痛みを体中感じる。

 

「ぁ……………ぇ……………?」

 

 自分の身体を見ると所々穴が開いており、赤い染みが服に広がって行く。

 

「(私…………さっきのは…………?)」

 

 彼女がの視界は地面に向かって落ちて行き、体が倒れると後ろから数人の人の声が聞こえてきた。

 

「We got her! We got the witch────!」

 

 そこで視界の横で見えたのは数人の男や女たちで、服装はボロボロで彼ら自身も小綺麗とはお世辞にも言えないような状態だった。

 そして手にはマスケット銃、16世紀から19世紀辺りまで使われていた前装式銃に似た物や、西洋の熊手(ピッチフォーク)、鎌などの物をもって、怒りと錯乱と恐怖の形相で三月を見下ろしていた。

 

「────Don’t let her speak────!」

 

「────Get the torch here now────! 」

 

「………………ッ……………コポォ」

 

「まって」と言いたい三月の喉からは空気が液体()を通る音だけだった。

 何が何だか分からないので、周りを見ようと体を動かそうとすると、周りの人達はビックリしながらさらに叫ぶ。

 

「────She’s moving────!」

 

「────Use the bayonets and pitchforks────!」

 

 グサグサグサグサグサグサ!

 

「────ァガアアアアアア?!」

 

 三月は喉に引っ掛かっている液体ごと声を出して叫んだ。

 それはそうだろう。

 

 周りの人達が突然マスケット銃の先端に装着されている銃剣や西洋の熊手(ピッチフォーク)で彼女の身体のあらゆる所を貫き、文字通り地面に無理矢理固定し、痛みに三月の視界が涙でぼやけ、声にならない叫びを出来るだけ続ける。

 

 少しでも痛みから思考を逸らす為。

 

「────!!!(痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイ! 何で?! どうして────?!)」

 

 三月は突然ぬるい液体が体に振り注ぐのを匂いで感じた。

 

「────! ────!!!(何これ? お酒? なん────?)」

 

 そして三月の身体が突然熱くなり、視界がオレンジと真っ赤が混ざった色へと変わる。

 

 火を付けられたのだ。

 

「(熱い熱い熱い熱い熱い熱いアツイアツイアツイアツイィィィィィィィィィィ!!!)」

 

 さっきまで血で潤っていた喉はカラカラになり、息をしようとする度に肺が焼け、皮膚が燃えていく。 動いて火を消そうにも四肢や体は標本みたいに地面に釘付けられ、出来る事と言えば周りの人だかりを燃える炎の間から見るだけ。

 

 そこで見たのは三月をあらゆる顔の人達だったが、一つだけ共通していた。

 

 

 

 

 

 

 それは『喜び』や『安心』の感情だった。

 

「(何で? 何で何で何で何で何でナンデナンデナンデナンデナンデ熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いアツイアツイ痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイィィィィィィィィィィアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ────!!!)────アアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

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 凛、桜、三月 視点

 ___________

 

 

 三月が叫びながら目を覚まし、自分の身体を抱きしめながら起き上がるとビックリした凛と桜が彼女に声をかける。

 

「み、三月?!/三月先輩?!」

 

 だが二人の声が聞こえていないのか、聞く余裕が無いのか、三月は震え、深呼吸をしながらただ真っ直ぐ前を焦点の合っていない目で見ていて、聞いた事のない言葉で何かをブツブツと言っていた。

 

「57ɼ68¢Ͷ617¡4¤776ȢͶ17¢3ɼ7ΏͶ468¡617¤44ȢͶ¢96ɼ46f6e2ɼͶ774756eͶ¢6ɼ46Ͷ5Ȣ727Ͷɼ374616¡eͶ4Ȣ776¢ͶΏ86174ɼ27Ͷ7Ȣ3676fͶ6ɼ96eΏͶ¢676¤fͶ6eɼ7¡7686Ȣf776ɼ5¢7ͶȢ2ɼ65746Ͷ¤8ɼ6f7Ȣ36¡5ɼ2Ͷ070¤6ɼ¢56ΏͶɼȢf706c65¡77Ȣ68ɼ7Ͷ9646Ȣ9¢647Ͷ4686ɼȢ57Ͷ¡961747ȢͶ¢4616ɼͶ3Ȣ6Ͷb¡65¤6dɼ¢6Ͷ275ȢͶ726ɼe6dͶ6¡57ɼ7Ͷ68¢7Ȣ¤9Ͷ77ɼ6879Ͷ7ɼ768¢79Ͷ7ɼ768797Ͷ7¢ɼ68ͶΏ79ɼ77¢68ɼ79776¤Ώ8ɼ79────」

 

 そこで桜が急に三月の頭を抱いて、撫でながら優しく声をかける。

 

「────大丈夫、大丈夫ですよ」

 

 かつての自分に三月がしてくれた様に。*1

 あの頃の桜は間桐邸で魔術の鍛練に疲弊していながら、兄である慎二に衛宮邸での暖かさを一度体験し、衛宮邸に行くのを禁止され、士郎が怪我をした口実でまた「衛宮邸に通い続け」と命令されて、間桐邸と衛宮邸を行き来する時に何度も思わず体が酷く震えた。

 その度に三月がこうやって桜を落ち着かせたのを今でも覚えている。

 

 そうすると三月は震えるのをやめ、寝息が聞こえてきた。

 

 三月を寝かせた後、熱があるものの今更彼女を起こしてまで薬を飲ませるのは忍びないので薬とお水を近くに置き、桜と凛が部屋を出て、気まずい静寂が二人の間に流れる。

 

「「…………………」」

 

 そのまま二人は衛宮邸の廊下を歩き、この沈黙を先に破ったのは凛だった。

 

「でも意外ね、桜がああいう事を咄嗟にするなんてね」

 

「あ……その………昔、三月先輩にしてもらった事があったので…………」

 

「ッ…………………」

 

 桜の言葉に凛はどこか複雑な顔を桜が見えない所で浮かべ、玄関へと着くと丁度士郎とセイバーが帰って来た時だった。

 

「ただいまー」

 

「あ、お帰りなさい先輩にセイバーさん。 ごはん、温めてきますね」

 

「ああ、ありがとう桜」

 

 桜がパタパタと家の奥に消える間、凛は靴を履きなおした。

 

「じゃ、お邪魔したわね衛宮君」

 

「あれ? 遠坂はもう出るのか?」

 

「ええ、三月も今は寝ちゃっているし…………調べたい事もあるし」

 

「調べたい事?」

 

「こっちの話。 あと、生存者は見つかったかしら?」

 

「…………………それが────」

 

 士郎とセイバーが目を見合わせ、凛に柳洞寺の生存者が思ったほど多く、恐らくはほぼ全員気を失っていたとの事を説明した。

 これには凛も驚き、何故キャスターほどの『魔術師』がそんな()()を犯したのか思わせた。

 そう思いながらも柳洞寺の事を言峰に任して、明日また学校で会おうと話し合っている内に、士郎は思った。

 

「そう言えば慎二達はどうしたんだろう?」

 

「さあ? 彼も準備中なのをキャスターが察知して今日のように引き払う準備をしていたとか?」

 

「でも、これで事件は減る筈だ。 そうだろ、遠坂?」

 

「ええ、冬木の管理者(セカンドオーナー)として礼を言うわ。 じゃ、また明日。 おやすみなさい、衛宮君」

 

「ああ。 お休み、遠坂」

 

 凛はその夜、遠坂邸に戻るとポケットの中から衛宮邸で見つけた錠剤を何個か出し、それに昔父親(時臣)が使っていた器具などで調べた。

 その結果、彼女は信じられない物を見ているかの表情に顔が染まった。

 

「………………何よ、()()?」

 

 凛は思わず声を出すほど「得体の知れないモノの塊」を視ていたのだった。

 

 

 

 

 士郎は衛宮邸にて、セイバー達と一緒に晩御飯を食べていた。

 

「…………先輩? 大丈夫ですか?」

 

「ん?」

 

「その、何時もより難しい顔をしているもので……」

 

「あ、ああ。 ちょっと、な。 (まさか桜に『キャスターの事が気になっていた』とは言えないしな)」

 

「………そう言えば遠坂さんともこの頃仲が良いんですね?」

 

「まあ、割とこの頃会う機会が増えて、自然にな。 どうしたんだ桜? 浮かない顔をして?」

 

「……私はあまり…………その…………」

 

「???」

 

 モジモジと、何かを言いにくそうな桜を士郎はただ見ながらご飯を食べていた。

 

≪自分の為ではなく誰かの為に戦うなどただの偽善だ。 エミヤシロウ、貴様の望むものは勝利ではなく平和だと言っていたが、そんなモノはこの世の何処にもありはしない≫

 

 あの夜から、アーチャーの言葉が頭から離れず、夜は遅くまで起きていて、今日も天井を見ていた。

 ()()()()()()()()()

 

「アイツの考えは駄目だ」と思っていた。

 何が「諦めろ」だ。

 何が「絵空事」だ。

 

≪英霊とて全ての人間を救うことは不可能だ≫。 

 セイバー達を見ると嫌でも分かりそうになる。

 

≪誰かを救うということは、誰かを助けないということなんだ≫。

 本当にそうだろうか? 方法はある筈だ。 それが力か時間か何かの要因不足故からではないだろうか?

 

『そんなものはやってみなくては分からない』。 これが士郎の考えていた思考だった。

 

 だがこの頃、彼は『正義の味方(ヒーロー)』と言う、切嗣に()()()()夢の事を考えていた。

 

『やってみなくては分からない』。 でもそのやり方が『分からない』。

 

 これが士郎を悩ませていた。

 さっき思った様に何かの要因不足の筈なのだが、一向に糸口が見えない。

 この聖杯戦争で、『何かを掴めるかも知れない』という希望も未だに実っていないように士郎は思えた。

 

 その様な考えがグルグルと士郎の頭を回り、彼は眠りに落ちた。

 

 そして就寝した士郎は夢を見た。

 それはアーチャーとアサシンの戦いだった。

 

「…………」

 

 アーチャーの人柄は嫌いだが、白と黒の短剣を使うその技術はどこか()()()()()()があった。

 今まで士郎はこの事を考えないようにしたが、今日の夢で確かに見たのだ。

 

 戦いの最中に、士郎を見下すような視線をアーチャーが時折送っていたのを。

 まるで『貴様に付いて来れるか?』と言っているような────

 

「(────やってやる。やってやるさ!)」

 

 何事も始めなければ見えてくる道も見えない。

 

 そんな考えで士郎は深い眠りに落ちた。

 

 

 三月はその夜眠り続け、夢を見ていた。

 何時もとは違う夢。

 さっきとも違う夢。

 自分は素振りをしていた。

 

 そこは()()()()()()で、今は()()()()()()()()()()()()()()()()()を手に、ただただ素振りを続けた。

 そして春が夏に、夏が秋に、秋が冬に、そして冬がまた春にと延々と四季が変わってゆく。

 最後に刀の素振りを続けて手がシワだらけになっていった日に、やっとあの()()()()()()()()()()

 悔いがあるとすれば────

 

 

 

 ___________

 

 士郎、三月 視点

 ___________

 

 

 次の日の朝、セイバーとの稽古を士郎と三月は行っていた。 そこでは士郎が何時もの竹刀ではなく、()()()()()()()()()()()に使っていた。 本来より短い竹刀だがその分軽くて小回りを利かせていた。

 

 それはまるで────

 

「────アーチャーの戦い方ですか」

 

「ああ、別にセイバーの戦い方が悪いとかじゃない。 だけど今は好き嫌いなんて言っている場合じゃない」

 

「へー。 確かに今日の兄さんは何時もよりもっていますね」

 

「確かに、一刀でも以前より動きに無駄が無くなってきました。 ですがそれは三月にも言える事です。 まさかあれほど上達しているとは思ってもいませんでした」

 

 先程までセイバーと打ち合っていたというのに、三月は少々の汗を掻くだけでかなりの進歩を見せていた。

 

「あ、やっぱりそう思う? 何かグッッッッッスリ寝たような気分でもう今かつてないくらい最高なの! 『ハイ』ってやつよぉぉぉぉぉぉ!」

 

「…………最後のは何だ、三月?」

 

「表現の表し方?」

 

「何で疑問形なのさ?」

 

 そこでセイバーがプイっと顔を士郎から逸らしながら頬をぷっくりと膨らませていた。

 

「ミツキは私の剣技を使い、シロウがアーチャーですか」

 

「わぁ、可愛い~(ってあれ? もしかしてセイバーって、妬いているの? 兄さんが自分ではなく、アーチャーを見本にしているのを? それとも────?)」

 

「────あ! べ、別に俺はセイバーを蔑ろにしている訳じゃ────!」

 

「────いえ、シロウが彼の戦い方が合うと思っているであれば、私からは何も」

 

 そう言い残し、セイバーは道場を後にして、士郎は三月を見る。

 

「………セイバー、怒っていたよな?」

 

「どっちかと言うと『不満』? 『不服』?」

 

「あちゃあ~、やっぱりそうか……三月がそう言うのなら、そうなんだよな」

 

「セイバーはアホ毛を見ると良いよ、兄さん」

 

「へ? あ、アホ毛?」

 

「彼女の感情を映してくれるから」

 

 そして三月が士郎と同じく素振り用の竹刀を二つ出し、構える。

 

「あれ、三月? その構えは────」

 

「────私も興味があるから、ね? それにさっきも言った様に気分最高の感じなの! まだまだ動けるわよ~? 私は」

 

 そして士郎は二かッと笑い、二人共稽古を再開する。 

 一人はアーチャーの戦い方を()()ながら。

 もう片方はアーチャーの動きに沿()()ながら。

 

 このおかげで士郎の腕はかなり上達した。 目の前にまるで小柄のアーチャーと対峙しているかのようだったので見本としてはこれ以上ない事もあった上に何故かすんなりと()()()()()()()()()()()()()()()、体がそれを()()()()のだ。

 ちなみに今日の三月はストレートに戻した髪を簡単に頭の後ろで畳んで、バレッタで留めていたので激しく動いても後ろ髪が邪魔になる事は無かった。

 

 三月としては何とか自分の身体能力のみに見合った戦い方を探していた。 いくら魔術が良くても、セイバーのように対魔力を持った相手やそれが通用しない状況の時の為に。

 一応その他の手を三月は()()しているが、出来ればソレには頼りたくなかった。

 

 そして手応えはあった。 セイバーの剣筋は同じ小柄の体格で真似しやすいのだが如何せん、一撃一撃に入れる腕力が足りていなかった。 これは魔力で『強化』を施せばある程度解消出来るが、三月はそれ以外の戦い方を探していた。

 

 アーチャーの使う二刀流スタイルはセイバーとは違い正面からのぶつかり合いを主流としていなく、あまり腕力を必要としない相手の攻撃の捌き方を中心に、カウンターや足腰を駆使するヒット&アウェイ系だった。

 

 ただやはり元から身体能力があまり高くない三月に長時間の戦いは向いていなかったので最後の方はやはり『強化』を自身に使い、双方に有意義な稽古は終わった。

 

 そして朝ご飯を食べている間、凛から士郎への電話があり一成達の状態が伝われる。

 葛木宗一郎以外の者たちは全員衰弱していたか、昏睡状態に陥っていて死者は一人もいなかったと。 これにホッとしている士郎とは別に、ダイニングでは────

 

「────ごちそうさまでした」

 

「……………………え?」

 

 三月の食事が終わった宣言で桜はお釜の開ける手を止めた。

 ()()()()()だというのに三月は食事を終えていたという事に桜は目を見開く。

 普通なら後二、三杯は食べるのにと思いながら三月に確認を取ると、どうもお腹が空いていないとの事。

 

 あまり三月の事を知らないセイバーからすれば「ふーん?」と思いながらバクバクと食べ続けていたが、桜は多少ショックを受けながら今日の朝御飯に何か問題があるかどうかを彼女に聞いていた。

 が、本当にお腹が空いていないだけとの事だった。

 

「や、すまないな。 食事中に席を立って………ってどうした、桜?」

 

「それが、三月先輩がもう食べ終わったんですよ」

 

「え? 俺ってそんなに長く電話に出ていたっけ?」

 

「士郎、流石にそれはちょっと傷つくんだけど」

 

「先輩、私も同感です」

 

「モグモグモグ」

 

「でも大丈夫なのか? 昨日の事もあったし、今日の朝も────」

 

「────それが本当に不思議なくらい調子良いのよ。 さてと、ちょろ~んと土蔵に籠ってくるね~! ♪~」

 

 そう言いながら三月はご機嫌のまま居間を出て、桜に今日はセイバーと用事があるので留守と三月を頼むと士郎は言い残し、衛宮邸を後にした。

 

 歩いている途中、セイバーと柳洞寺の昏睡状態の人達の事を話しと、キャスターがいなくなった今、その人達は時期に目を覚ますだろうとセイバーは言っていた。

 

 ただ士郎は安心しながら心の中では悔しかった。

 あの死体(葛木宗一郎)は助けられなかった、と。

 恐らく彼は『行方不明者』として生死不明のまま人々の記憶から忘れられるのだろう、と。

 キャスターの件もどこか違和感がある、と。

 

 そしてそれらを考えれば考えるほど、とてもやるせない気持ちに士郎は染まって行く。

 

*1
第5話“雨の中のワカメと雨も滴る良い女”




マイケル:何か………しっくりこないな

作者:スマヌ………

ラケール:てか三月って本当に身体弱いのね?

三月(バカンス体):ま、まあね~ (汗汗汗

雁夜(バカンス体):それにしては、俺とはかなり張り合っていたじゃねえか

作者:まあ…これは前日譚ですし、一応

雁夜(バカンス体):……え? という事はこれ全部俺と会う前って事か? え? え? え?

三月(バカンス体):では次話で会いましょう! お気に入りや感想、評価等あると嬉しいです

雁夜(バカンス体):待てこら、説明しろや!  説明しろお前ら!
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