"Stay, Heaven's Blade" Fate said.  “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。”   作:haru970

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拙い文章が所々あるかも知れません、すみません。

後にもう一度読みながら直す予定ですが内容は変わらない筈です。

誤字など以外に何か変わる事などがあればこの前書きと次話の前書きにてお知らせします。


第22話 弓を使わないアーチャー

 ___________

 

 セイバー運営、遠坂凛、バーサーカー運営 視点

 ___________

 

固有時制御(タイムアルター)四重加速(スクエアアクセル)

 

 その声が士郎と凛に聞こえ、目の前のイリヤは文字通りブレた後に消えた。

 

固有時制御(タイムアルター)』。 それはかつて衛宮切嗣の父の衛宮家四代目継承者の衛宮矩賢という稀代の天才が魔術協会から封印指定されるまでに至った小因果の時間操作に特化した家伝の魔術を衛宮切嗣がさらに改良し、『体内』に限定したうえで戦闘特化させた。

 何某ゲーム負風で言うと『ヘイスト』がしっくりと来るだろうか。

 

「ほう、体内展開した固有結界とはまた珍妙なモノだ」

 

 青年は笑顔を崩さずに部屋の端を見るとイリヤを両手で所謂お姫様抱っこで支え、片膝を床に着いていた。

 

()()()()()()()()

 

「………ミツキ?」

 

 三月はイリヤをおろしてから頭を垂れ、声を続ける。

 

 【告!!! 即座に撤退を再度────】

 

「(────うるさい! ()())」

 

 三月は先程から【  】の声から来る、今までにない警告を無理矢理ねじ伏せていた。

 

「お初にお目にかかります。 王よ」

 

 三月の最初の行動にビックリした士郎、凛とイリヤが更にビックリした視線を送る。

 

「フン、今更挨拶をされてもな……だが我は寛大故、その敬意を表してやろうではないか」

 

「……………」

 

 三月は何も言わずにただただ吐き気と頭痛に眩暈、喉から出ようとする物を無理矢理捻じ込みながら思考をフル回転していた。

 

「次はどうする?」とだけ考えていた。

 

 先程の『固有時制御』は昔、切嗣に引き取られて間もない頃彼が魔術師として三月の事を診ようとした時に彼女が会得した魔術の一つだった*1

 

 そして先程この青年の周りから飛び出していた武具から発する【  】の声の情報量に三月はさっきから気を失いそうなのを必死に我慢していた。

 何せ一つ一つが神話やお伽話などに出て来る武器その物やその原点になった物ばかり。

 情報量は未だかつてない程で、三月は自分の脳が焼きついて頭が燃えるかと錯覚したほどだった。

 そして両腕を切り落とされたリーゼリットとイリヤの悲痛の叫びに朦朧としていた意識が目覚めて、虎の子の『固有時制御』を発動している間に何度も脳中でシミュレーションを行っていた。

 

 そして今取っているこの行動以外すべてはこの青年に少なくとも自分と士郎とイリヤが串刺しにされ、殺される末路しか浮かんでこなかった。

 

『数多の武具の保有者』。

『面貌に溢れんばかりのオーラ』。

『圧倒的強者』。

 以上の事からだけでも目の前の青年が何処の『支配者』である事は明白。

 

 そしてその様な者は(三月推測ではあるが)堂々と物を言いかつ最大の敬意をもって接すれば興味を持つ。

 

 だが思考はそこまでで三月の脳内達は『どないしよ』や『えらいこっちゃ』状態。

 今はただ昔の王や皇帝の謁見などの情報を漁っていたり、最大限の礼儀作法を駆使して時間稼ぎをしていた。

 

「…………………」

 

 三月は青年の許したかのような態度に頭を上げず、ただ頭を下げたままだった。

 礼を尽くし、目の前の者から許可が出るまでは決して声を出さない。

 

 この未だに切羽詰まった空気と威圧感に他の者達はただ息を潜めていた。

 

「………そこそこ芸達者のようだな。 面白いぞ? 許す、面を上げよ」

 

「勿体無きお言葉、感謝致します」

 

 三月は初めて頭を上げると青年は頭を傾げる。

 

「ほう? 先日会った時もそう思ったがやはり貴様は()()()。 故に我の所有する槍に触れる事を光栄に思え」

 

 青年が方手を上げて空気が揺らめき、一つの槍が姿を現す。

 

「(ヤバい! もう少し時間を────!)────発言を申してもよろしいでしょうか、王よ?」

 

「話せ」

 

「ありがとうございます。 かの王は何故このような事を自ら行うのでしょうか?」

 

「何、簡単な話だ。 今の我の家臣共では話にならんのでな、当世で言う所の()()だ」

 

「(考えろ! 考えろ考えろ考えろ考えろ! 今私達が生き延び────!)」

 

「────ここまで我を享受した礼だ。 褒美を受けよ」

 

「ッ」

 

「「「ミツキ!/三月!」」」

 

 三月は自分の後ろの空気が動いたと思い、振り向こうとした瞬間何かが彼女の背中目掛けて飛来するのを横目で見た。

 

「(固有時制御(タイムアルター)二重加速(ダブルアクセル)!)」

 

 三月は反射的に『固有時制御』を行使して横の飛んでその大剣を躱して内心ホッとする。

 

「(ホ! 体が小っちゃくてよk────ハッ?! 私は何を────)────イリヤ?!」

 

「────」

 

 三月がイリヤの方を見ると青年は何時の間にかイリヤの胸を手で抉って何かを取り出していた。

 

「────ぇ」

 

「「セイバー!/アーチャー!」」

 

 そして血を胸から吹き出しながら倒れるイリヤを真っ白になった頭で見る三月と、怒りの籠った士郎と凛の声が響く。

 

「「『来い!』」」

 

 青年は手の中で鼓動する()()()から視線を動かし、令呪によって現れた二騎のサーヴァント達を面白おかしく見る。

 

「ッ! 貴様は、まさか?!」

 

「奴を知っているのか、セイバー?」

 

「ほう! これはなんとまあ、久しい顔だ! 十年ぶりだな、セイバー?」

 

 壁が破壊された一つの穴へと青年は歩く。

 

「逃げるのか貴様?!」

 

「勘違いするな。 我の用が済んだ故、()()()()()()()と言うのだ。 だが次こそお前を我の者にしてやるぞ、セイバー」

 

 青年は笑いながらその場を後にするとセイバーとアーチャーの視線は横たわっているイリヤの胸を手で押さえていた三月の方へと向ける。

 

「イリヤスフィール…」

 

「アレはもう駄目だな、心臓をやられている。 もう…助からんだろう」

 

「三月! イリヤ! 遠坂、何とかならないのか?!」

 

「馬鹿言わないで! 貴方の時とは違うのよ?!」

 

「イリヤ! イリヤ、イリヤ、イリヤ!」

 

 士郎は凛に何か出来ないかと悲願するが、凛の言った通り士郎の場合心臓は破壊されたが修復可能の状態だった。

 だがイリヤの場合、心臓自体が抉り出されていた。 治療以前に修復する心臓自体が無くなっていた。

 

 そして三月は未だにただイリヤの名前を何度も呼びながら、昔切嗣が亡くなったあの夜を思い出していた。

 

「イリヤ、目を閉じるな! 閉じないでくれ!」

 

「ん………一体、何が────お嬢様?! リーゼリット?!」

 

 士郎達の叫びで気を失っていたセラが目を覚まし、アインツベルン城の惨状の目に混乱しながらも、イリヤとリーゼリットの容態で完全に目が覚める。

 

「(何とかならないの?! 何とか────?!)」

 

【……………告。 修復に部品を要シマス】

 

「え? どういう事?」

 

【修復可能デス。 が、部品を要シマス】

 

「………………」

 

「三月? どうしたの?」

 

 三月は周りの人達を見、虫の息である近くのリーゼリットを見る。

 

【修理に部品を要シマス】

 

「………リーゼリットさん、イリヤを助けたい」

 

「……う……ん…………良い………………よ………………」

 

 リーゼリットは絶え絶えの息で三月に若干微笑みながら答える。

 

「リーゼリット?! 貴方、何を────?!」

 

「ッ……ありがとう」

 

 三月の手が光り、その輝きは部屋全体を白く変える程だった。

 

「何ですか、これは?!」

 

「何、この光?!」

 

「うおわ、眩しい!」

 

「クッ!」

 

 セラや凛、士郎とセイバーが声を出し、目を圧倒的な光源から守る。

 

 数分後、光りが徐々に静まっていき横たわっていたイリヤの胸の傷は塞がっていたかのように見えた。

 これを見た三月は────

 

「ッ! や────った~?」

 

 ────元気良く勢いの付いた万歳をした瞬間、力が体に入らずそのまま受け身も取れずにその場で倒れた。

 

「衛宮君、三月を! 私はイリヤスフィールを診るわ! セイバーとアーチャーは周りの警戒を!」

 

「わ、分かった!」

 

「ッ! 分かりました!」

 

 凛はイリヤの傷などを────

 

「────え? (何これ?どうなっているの?)」

 

 凛が見た所、服だけがボロボロで下の肌やイリヤの身体は不自然な程健康に見えた。

 

 そして士郎は倒れた三月を抱き上げて────

 

「────お、おい三月! 大丈夫か?!」

 

「うん。 大丈夫じゃない」

 

「え?! ど、どこが調子が悪いんだ?!」

 

「……………体中痛いし、力入らないし、吐き気はするし、眩暈はするしで………もういい加減寝たいから寝る」

 

「そ、そうか」

 

 セイバーは未だ微動だにしないアーチャーを不思議に見ていた。

 何時も余裕と言うか、物事を冷静に見ている彼が目を見開いたまま立っていたのだった。

 

「………アーチャー?」

 

「……………………」

 

「衛宮君、そっちはどう?」

 

「あ、ああ。 取り敢えずは大丈夫。 だと思う」

 

「『だと思う』? どういう事?」

 

「何か体中が痛くて気持ち悪いみたいだ」

 

「………そう。 こちらも大丈夫みたいよ。 イリヤスフィールはただ眠っているみたい」

 

「ああ、お嬢様! 良かったです! …………ハッ?! リーゼリットは?!」

 

 最後に泣いていたセラがホッとすると周りを見る。

 あそこまでになったリ-ゼリットが見当たらないのだ。

 そして床にあった彼女の服はまるで()()()()が消え失せてしまったかのようだった。

 

「リーゼリット、どこなのです?! リーゼリット!」

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 結局リーゼリットは見つからず、士郎達はイリヤをボロボロになったアインツベルン城に残すのは得策ではないとセラに言い聞かせ、衛宮邸へと連れていく事となった。

 

 森の中で士郎は三月を背中に負ぶって、セラはイリヤを。

 そして何故か凛がイリヤとセラの荷物が入ったトランクを。

 

「ちょっと! 何で私が荷物を持つのよ?!」

 

 これに対してセラがムッとした顔で凛へと振り向く。

 

「何を今更。 サーヴァントを失った我々を守れるのは同じサーヴァント。 そしてそこの少年は妹君を背負い、私はお嬢様を。 ならば自然と荷物を運ぶのは貴方ではなくて?」

 

「遠坂、俺が変わろうか?」

 

「…………ハァー、良いわよ。 三月を背負っておきなさい。 その代わりに、セイバーはあのサーヴァントの事を知っているんでしょう? 話してくれないかしら?」

 

「……………」

 

 あの金髪青年が現れた時からセイバーは浮かない表情だったので士郎も気になっていたが、無理矢理に聞く事も躊躇していた。

 

≪久しい顔だ! 十年ぶりだな、セイバー?≫

 

 そう青年は言っていた。

 

「…………奴は前回の………第四次聖杯戦争のアーチャーでした」

 

「な?!」

 

「そ、それじゃあ何? 十年前のサーヴァントだっていう事セイバー?!」

 

 セイバーはただコクリと驚きを隠さない士郎達に頷いた。

 

「そ、そのような事はあり得ません! サーヴァントは聖杯の援助無しでこの世に居続けるのは至難の業!」

 

 セラが眠っているイリヤを背負っているのにも関わらず声を上げて抗議するが、凛が答える。

 

「だけどそれも不可能事では無い……でしょう?」

 

「確かに、理論的にはそうですが…………」

 

「どういう事ですか、リン?」

 

「…………………」

 

 セイバーの問いに凛はただ黙るがそこでアーチャーの声がグループに聞こえてくる。

 

『察しが悪いなセイバー。 それとも考えないようにしていたか? サーヴァントは依り代と魔力のセットさえあれば存在し続けられる使い魔だ』

 

 アーチャーの説明で何かに気付いた士郎は足を止める。

 

「…………まさか」

 

『そのまさかさ、エミヤシロウ。 “魂食い”だよ』

 

「つまり町の仕業はアイツって事か?!」

 

「…………ええ、盲点だったわ。 最近になって行方不明者や昏睡事件の数がなどが急増加して話題になっていたけれどこの十年、確かに行方不明者などが出ていたわ」

 

「ま、マジか………あれ? でも俺この町に住んでたけど、そんな話は最近まで聞いた事が無いぞ?」

 

「当たり前よ。 行方不明になったのは犯罪者とかホームレス。 消えても誰も気にしない奴らばかりよ」

 

 凛の冷たいような言い方に士郎は足を止めたまま唖然と立ち尽くす。

 

『どうだエミヤシロウ? これでもまだ貴様はほざくか?』

 

「…………アーチャー?」

 

「………俺が………知っていれば────」

 

『────お前が知った所で死体が一つ増えていただけだ』

 

「だからと言って何もしない訳にもいかない!」

 

『それはどうしてだ?』

 

「何だと?」

 

『言葉通りの意味だ、エミヤシロウ。 お前は周りの人間を救うと言ってはいたが、現にそこの小娘も救えなかった。 その点ではお前の義妹の方が立派だったな』

 

「黙れ」

 

『どうした? 真実だろう? それとも────』

 

「黙れ!」

 

「アーチャー! いい加減にして! 今はこんな事をしている場合じゃないわ! 衛宮君も落ち着いて!」

 

『“こんな事”? 今だから言っているのだ。 このバカには……………凛、君は聖杯戦争を続ける気は無いと言ったな?』

 

「え? も、もちろん今の状況では無いわ」

 

『そうか』

 

 それ以来、アーチャーは黙り込み、士郎はイライラしていた。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「あの、先輩? その方達は何方ですか?」

 

 衛宮邸に戻るとイリヤを背負ったセラを見てキョトンとする。

 

「ああ、桜。 丁度良かった、この人達は────」

 

「────貴方がこの少年のご婦人ですか?」

 

「んな?!」

 

「え?」

 

 セラの言葉に固まる桜とビックリする士郎。

 

「あらおめでとう衛宮君」

 

 そして悪戯っぽく笑う凛に更に赤くなる士郎。

 

「ち、違う! 桜は家事を手伝いに来ているだけだ!」

 

 不定をした士郎に桜はしゅんとし、これを見た凛が恨めしそうに士郎を睨む。が、彼はセラの方を向いているためこれらに気付く事はなかった。

 

「あら、これは失礼しました。 私の名はセラと申します。 今背中でお眠りになられているのは我が主のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンです」

 

 そしてシレっとするセラの話の流し方に一瞬戸惑う桜だった。

 

「あ、えっと…間桐桜です」

 

「と、とにかく! 彼女達のsh────屋敷がちょっと大変な事になって少しの間だけここに世話になるから!」

 

「「え」」

 

 桜と凛が同時に声を出して、セラが士郎を睨む。

 

「と、取り敢えず部屋の用意とかしてもらえるか? 来る途中三月とイリヤが疲れちゃって」

 

「は、はい…………わかり………ました」

 

 パタパタと衛宮邸の中へと消える桜の気配が遠くになってからセラが口を開ける。

 

「一体これはどういう事ですか?」

 

「あ、いや。 別に深い意味は無くて────」

 

「────ではなぜ勝手にお決まりなられるのです? それにここはあまりにも無防備すぎます。 確かに優秀な結界ですが────」

 

「────ここで良いの、セラ」

 

 イリヤの声にセラがビックリしながらホッとする。

 

「お嬢様! 良かった、意識が戻られたのですね。 ではこのような粗末な場所から────」

 

「────ううん。 ここが良い。 ここに居させてくれる、シロウ?」

 

「な、ですがお嬢様。 ここはあまりにも無防備すぎます!」

 

「セラと私が頑張れば少しマシになるわ……それにマスターでなくなった私にセラは聖杯戦争を私達だけで続けさせると言うのかしら?」

 

「………………」

 

「シロウ。 リン。 話はミツキが起きてからにしましょう……………セイバー」

 

 呼ばれたセイバーは体を若干固くなる。

 

「………何でしょうか?」

 

「少し遅いけど、キリツグが貴方にさせた事は間違っていないと思うわ。 だから気にしないで」

 

「ッ…………ありがとう…………ございます」

 

 

 眠っている三月は夢を見ていた。

 見ていたと言っても周りには何もない平原と、様々な色の花畑の中に立っていただけだが。

 

「(これはまた久しぶりに平和な夢だなー)」

 

 そうボンヤリと三月は考えていた所に声何処からとも聞こえてきた。

 

『ありがとう。 イリヤを助けてくれて』

 

「……………ん? リーちゃん?」

 

 声の主に三月は覚えがあり、彼女のあだ名(命名者は自分)を口にした。

 

 『私は後悔していない。 イリヤが死んだら私も死ぬ。 でも私はイリヤの中で生き続けられる』

 

「え、ちょっとまってリーちゃん。今なんて?」

 

 段々と聞きにくくなった声に三月の胸はザワザワし始めていた。

 

 『胸がどきどきした。 これは…………そう、“楽しかった”と言うのね。 さようなら。 イリヤとセラにもよろしく』

 

「ま、待ってリーちゃん!」

 

 『後、セラに謝っておいて。セラが楽しみにしていたクッキーをコッソリ食べちゃったから』

 

「リーちゃん!」

 

 気付けば三月は布団の中で泣いていた。 そして自分の上には知っている天井。

 

「………あれ、私は何時自分の部屋に………と言うか夢だった?」

 

「あら、お目覚めのようね」

 

「…遠坂さん?」

 

 三月は寝ながら横にいる凛に気付くと、凛は三月が倒れた後の事の説明をし始める。

 

 士郎達はアインツベルン城から衛宮邸に移動中、セイバーとアーチャーの相手をしていたサーヴァント達は未だに健在という報告。 イリヤとセラは住んでいた住居に問題が出来て、知り合いである凛を頼ったところ衛宮邸を薦められ、少しの間お世話になると言う事を桜と大河に話したと。

 

「そっか、イーちゃん無事だったんだ。 良かった」

 

 ホッと息をする三月を凛が眼を細む。

 

「ええ、無事よ。 ()()のおかげで」

 

「遠坂さん?」

 

 トーンが変わった凛に対して三月は?マークを浮かべながら疑問形で彼女の名を呼ぶ。

 

「貴方は…………いいえ、これは後で聞くわ。 それより今はイリヤスフィールの話を聞きに行きましょう。 立てるかしら?」

 

「…………無理。 体が全然動かない」

 

「そう、なら肩を貸してあげる…………わ?」

 

 三月に肩を貸して彼女を立たせる凛は何か呆気に取られたような声を一瞬出す。

 

「??? どうしたの、遠坂さん?」

 

「三月、貴方………ううん、何でもないわ」

 

「じゃあ、お世話になりまーす」

 

 凛が三月を支えて(と言うか凛がほぼ立たせながら)まだ起きて居間にいる士郎、セイバー、(服を着替えた)イリヤスフィールとセラの所へと着く。

 

「おー、みんな元気―? 私は元気じゃなーい」

 

 あっけらかんとした、マイペースな口調で言う三月に、そこに居た者達はそれぞれ複雑な表情を浮かべていた。

 

「ま、まあそこまで言えるのなら疲れているだけじゃないか?」

 

「ミツキ、体調が優れないのでしたまた後日に改めますか?」

 

「そうよミーちゃん、無理は良くないよ?」

 

「…………そうですね。 今の貴方にきちんとお嬢様の事で感謝しようにも迷惑に終わるだけなようですし」

 

「いや~、照れるな~…………でも体が動かないってだけで意識は結構はっきりしているから良いよ~」

 

「「「「良くない!/良くありません!」」」」

 

 そこに居た人達のツッコミが一斉にハモリ、三月はただ笑う。

 

「…………彼女が良いと言っているからとっとと始めるわよ。 アーチャー、桜はもう寝たかしら?」

 

『ああ、グッスリとな。 余程疲れたと見える』

 

「何か変化が起きた時に伝えて頂戴。 イリヤスフィール────」

 

「────イリヤで良いわ、リン。 じゃあ、話す前に────」

 

 イリヤが立ち上がり、一礼する。

 

「アインツベルン城の城主として礼を言うわ、エミヤシロウにエミヤミツキ。 助けてくれてありがとう」

 

「あ、ああ。気にするなイリヤ」

 

「そうよ~? 寧ろ遅れた事にごめんね~」

 

 凛が士郎の横に座らせた三月の身体が重力によって彼の肩に寄りかかる。

 

「み、ミツキ?」

 

「これは~………不可抗力で~………意識ははっきりしているけど~………超ダルイ感じなの~」

 

「そ、そうか」

 

「そう、なら仕方ないわね。 今回だけ許すわミーちゃん」

 

「いや~アハハハ~。 寛大な処置に感謝で~す」

 

 コホンと咳払いをしたセラを合図にイリヤは他の皆に説明をし始める。

 

 アインツベルン城で調査した第一次、二次、三次、そして第四次聖杯戦争の書類や経歴を。

 

 そしてその後自分が第三次聖杯戦争に持った違和感について。

 

 その間に三月は目を細めながら眠気に抗い、懐かしい気分に陥っていた。

 

「(あ~、お兄ちゃんの匂いだ~。 懐かしいな~。 何かタンポポのあのフワフワしたような気分になるな~。 スーハースーハー思わずしちゃうよ~)」

 

 士郎はと言えば体が寄りかかってきた三月からの甘いミントのような独自の匂いや、すぐ頭の横から彼の耳や頬に当たる三月の息遣いなどを思わず意識していて胸がドキドキしっぱなしだった。

*1
第3話より




ウェイバー(バカンス体):おい、アイツらがいないぞ?! どういう事だライダー?!

ライダー(バカンス体):うーむ、留守か。 まあ、そういう事もあるという事だ坊主! 花束を渡すのは次にせい!

ウェイバー(バカンス体):な?! ち、違うからなライダー! ただ近くに寄った時に外に花を売っていた奴がいて────!

ライダー(バカンス体):(こりゃあ、少し長引くな)
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