"Stay, Heaven's Blade" Fate said.  “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。”   作:haru970

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『時』はただ動きだす、『運命』と歯車達同様に。

くるくる回る歯車達はこのまま回るのか否か?

変わった運命は変わったままどのような結末を迎えるのか?

回転の狂われた歯車の『運命』や如何に?
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第25話 「ずれ」の捉え方

 ___________

 

 セイバー運営、アーチャー運営、イリヤスフィール運営 視点

 ___________

 

 その日の昼ごはんは所々歪な和食系中華だった。

 

「…………これって和食系中華?」

 

「ち、違うわよ! 和食よ?! ね、桜? 確かに中華っぽく出ちゃったけど…」

 

 三月の疑いの目+声で半ギレになる凛が桜に同意の言を求める。

 

「は、はい。 そうですね、姉さん」

 

 たが桜はただ苦笑いするだけで完全な同意はしなかった。

 

「ウ……え、衛宮君から見てからどうかしら?」

 

「ん? 旨そうだなと思うけど?」

 

「でしょう?! 分かってるじゃない衛宮君!」

 

「でも何か『初めは中華を作り始めたけど気が変わって和食にした』無理感が出ている」

 

「ングッ」

 

 士郎の言葉に一瞬安心した凛だが三月の全く悪気の無いツッコミでその笑顔がヒキつく。

 

「多分リンの事だから気ままに料理し始めたら何時もの癖で()()()()調理し始めたんじゃない」

 

「ええ、お嬢様の言う通りです」

 

「カハァ?!」

 

 イリヤとセラのトドメの二連撃に凛の笑顔は崩れる手と膝を床につける。

 結局セラはイリヤの侍女+世話係と言う事で衛宮邸に二人が止まっている間、家事などの手伝いをする事となった。

 最初はブツブツと不満そうにやっていたので三月がこっそりと「主の為の毒見」という名目で買ってあった駄菓子などをほぼ全て貰う事に。

 基本的に駄菓子類は来客用の為に買ったものだが何故か手作りの方が圧倒的に減っていたので衛宮邸ではずっと持て余していた。

 

 三月の「美人北欧系成人女性ツンデレのホクホク顔ゲットだぜー!」宣言も聞こえていなかったほどその時のセラは浮かれていたらしい。

 

「モグモグ…………あ、やっぱり美味しい! さすが遠坂さん♡」

 

 だが三月の満面の笑顔と「美味しい」と「さすが遠坂さん」宣言によって少し凛の心が救われた事実を彼女は胸の奥にしまった。

 

 更に「昨日と稽古の汗を流す」と言い残し、居間を後にした三月は服を脱ぐ途中、鏡を見て一瞬動きを止めた。

 

「??? 『()()()()()()()?」

 

 三月の胸には前より着替え中に鏡の中で見た痣模様が以前よりハッキリと映り、若干大きくなっていたかに見えた。

 

「(『()()』って変わるものなのかな?)」

 

 三月が一通り頭と体を洗い、お風呂に入っている間彼女はボンヤリと天井を見ながら気の抜けた声を出し、今日の朝の事を考えていた。

 

「フニャ~…………(うーん、やっぱりこの()()()()()()()()()()()()』ってのは便利ね~)」

 

 今朝三月がセイバーの斬りかかりに対応できたのは超人的な反応速度からではなかった。

 

 単純に三月には事前に行動が()()()()()()

 

 これは以前切嗣と大河が稽古をしていた時視た現象の応用で、集中さえすれば行動がある程度視える。

 

 なので三月はセイバーが打ち込んでくるであろう一撃の軌道に竹刀を構えただけなのだが………まさか竹刀が壊れるほどの勢いで来るとは思わなかった。

 

「やっぱ視るだけじゃ駄目か~」

 

 

 同時刻の頃、桜に士郎たちは三月の趣味とか興味の引くものを聞いていた。

 が、結果はあまり芳しくなかった。

 

「趣味や興味を言われましても……私達がほとんど喋る事と言えば家事や料理ですし」

 

「それ以外の物とか無いの?」

 

「う~~~ん…………」

 

「あ、じゃあ苦手な物とか嫌いな物とかってあるかしら?」

 

「え? どうしたんですか皆さんいきなり?」

 

「「あー、そのー」」

 

 士郎と凛が言い淀み、イリヤが溜息を出しながら代わりに答える。

 

「ミーちゃんに私がお礼したくてお兄ちゃんとリンに相談したんだけど良く分からなくて!」

 

「あら、そうだったんですか? 嫌いや苦手なもの…………確か…………」

 

「「「あるの?!/あるのですか?!/あるのか?!」」」

 

 凛とイリヤ、セイバー、そして士郎の迫り込むような勢いに桜の体は「ビクゥ!」とする(桜の髪の毛が一瞬「ブワッ!」とするほど)。

 猫であるなら天井に張り付くような勢いと言えば分かりやすい例えだろうか?

 

「えっと……幼い頃、三月先輩とお買い物でお出かけになられた時にその………帰り道の道路照明灯が壊れていて私は迂回しようかどうしようか迷っていたんですよ………その時は暗闇が()()苦手でして」 

 

「…………………」

 

 桜の表情が一瞬暗くなるのを凛は見逃さず、凛は気まずそうに唇を噛む。

 

「でも、三月先輩は臆する事無くただ暗闇の中を突き進もうとしたんですよ」

 

「え? こう、止まらずとも何も?」

 

「はい。 びっくりしましたよ。 そして急いで三月先輩の事を思わず抱き着きながら聞いたんですよ、『怖くないんですか?』って」

 

「そ、それで? どうだったのサクラ?」

 

 何故か怪談じみた空気になっているのに桜は若干(?)楽しみを得ていたのを他の皆に気取られないようにしていた。

 

「そしたら三月先輩は顔色一つ私の方を見て『ああ、ごめんなさい。 桜()怖かった? 私、そういうのって良く()()()()()から。 次からは気を付けるね?』と」

 

「「「「……………………」」」」

 

 士郎達には思う所などがあるのか、黙り込み、桜は気まずくなりモジモジとしていた。

 

「…………あ、あのー?」

 

 凛が突然桜の肩をガッシリと掴む。

 

「桜、他には何か無かったかしら?」

 

「え? ね、姉さん?」

 

「お願い、桜」

 

「ハ、ハイ………えっと……同じように出かけていた時、車か何かに轢かれた猫が道路の隅にあって、三月先輩は()()()()()()()()()近くのゴミ箱に()()()んです」

 

「ウゲッ、それは……………ちょっと」

 

「え? そうですか? 手はちゃんとその後三月先輩は洗いましたよ?」

 

 更に顔色が悪くなる凛に桜の背中がゾクゾクしたのを桜は胸奥深く埋める事に決めた。

 凛の表情を脳内記憶に焼き付けて。

 

 それから桜は更に先程のような、三月の常人からすれば()()()言動を話し始める。

 

「瀕死の犬は助けようと必死になり、自分の服が汚れるのを恐れず近くの獣医に持って行った」。

「コケて膝に怪我をした見知らぬ子供の看病をした」。

「道ですすり泣く少女を素通りした」。

「親からはぐれて泣いていた子供をあやし、親を一緒に探した」。

「探偵ドラマや映画は退屈そうな表情で観るが逆に政治家達が出る議論などは面白そうに笑っていた」。

 

 等々といった具合だった。

 

 そこに士郎が入り、二人の言い分を凛とイリヤが聞いていった。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ねえ、桜はどうする?」

 

「……………え?」

 

 三月が風呂から出て皆が静かに居間で寛いでいると三月は居間から凛と桜の声が聞こえてきた。

 

「(何だろう?)」

 

「今日も衛宮君の家に泊まるのかしら?」

 

「えっと……」

 

「俺は別に構わないぞ? 藤姉も、多分まだ学校での事で忙しいしさ」

 

「(あ、成程。 葛木先生絡みでまだ帰り遅いのか藤姉)」

 

「で、でも────」

 

「と言うか留守を頼んでくれるか?」

 

「………………………え?」

 

「いやこの頃物騒だろ? 俺はちょっと見回りをするだけさ」

 

「……………………セ・ン・パ・イ?

 

「うぃえ?! な、何で私ぃぃ?!」

 

 三月がタイミングを計らったかのように居間に入ると怖~い笑顔をした桜が青ざめる凛を見ていた。

 ちなみにイリヤは桜に弄られる凛が楽しくて静かに紅茶とお菓子をポリポリと食べていた。

 

「えっと……………どゆ事、これ?」

 

 

 ___________

 

 間桐慎二 視点

 ___________

 

 

「ど、どういう事ですか?! 爺さ────お爺様?!」

 

 同じ日に同じ問いだが場所は変わり、冬木市のとある()()()に変わる。

 

「何、簡単な事じゃよ。 儂は()()を手に入れればその他に文句は無い」

 

「けど、それがどうして()()()を倒す理由になるのですか?!」

 

 間桐慎二は青くなりつつある顔色で、前に立っている臓硯に何か乞うような声を上げていた。

 

『桜()を巻き込みたくなければマスターとなり、魔力を間桐邸に捧げろ。 それで事は済む』。

 

 これが聖杯戦争直前に慎二が受けた頼み(命令)で、それをせっせと今までずっと励んでいた(留守の衛宮邸で時々休憩を挟みながら)。

 臓硯は例としては広範囲の魂食いなどを進めたが慎二は()()()()()()()()()()()()()()()()を優先的に贄として狙っていた。

 大抵の場合、そのような奴らの周りにも()()がいるからだ。

 要するに一匹叩けば30はいると言う様な芋づる式で()がわんさか出てくる。

 

 そしてついさっき、臓硯が慎二に言って来たのだ。

 

『魔力も順調に溜まりつつあるので頃合いかも知れん。 ()()()()()()()()()()』と。

 

 これに慎二は震えた。 間桐家の()当主の臓硯がこの聖杯戦争で誰かを明白に()()()()()と言ったのだ。

 そして慎二の知る限りでも臓硯は念には念を入れるタイプで宣言した事は()()成功する。

 

「何もお主がやれとは言っておらんだろう?」

 

『だからお前はそのままで良い』。

 

 最後の方はそう慎二に聞こえていた。

 まるで()()()()()()()()()()()()な言い方で。 

 

「え、あ、でも」

 

 それでもまだ何か言いたい事を探していた様子の慎二に臓硯は目を細めた。

 

「ほう? ()()()頼みでキャスターを始末して、()()()()()()()このご老体では不満と?」

 

 慎二の身体がビクリと反応する。

 実はキャスターがライダーの結界を利用して慎二がどうキャスターのいる場所にどう攻め込むかブツブツ言っていた独り言を臓硯が()()()()()聞き、声を慎二にかけた。

 

『キャスターは儂に任せろ。 お前はそのままライダーと魔力を回収しておけい』

 

 慎二がその夜、間桐邸に戻ると何時もよりおぞましい空気に満ちた間桐邸にアサシンを連れて()()()()()臓硯がいた。

 

『良い拾いものが出来た』と()()で臓硯を見た慎二は思わず体の震えが止まらなかったほどだった。

 

「お、お爺様。 ど、何処で彼らと事を構えるつもりなのでしょうか?」

 

「む? なんじゃお主、やはり手伝いたいのか?」

 

 ニィーっとおぞましく笑う臓硯に慎二は全力で否定した。

 

「い、いえいえいえいえいえいえいえ! お爺様の邪魔になりたくないだけです! 巻き込まれたら、僕は一溜まりも無いですから!」

 

「…………フン、良かろう。 それにもうここまで来れば儂だけでも────

 

「え?」

 

 最後のぼそぼそとした臓硯の言った事がイマイチ聞こえなかった慎二に臓硯は大体の場所を伝える事だけにした。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そしてその地下室の影からしっかりと彼の言った事を全て分かったモノがいたのを慎二やライダー、臓硯や彼のアサシンでさえ気付かなかった。

 

「(フフフ。 大丈夫だよ()()()()()。 聞いちゃったからさ、君にはちょ~っとお灸をすえないとね~♪)」

 

 ___________

 

 セイバー運営、アーチャー運営 視点

 ___________

 

 その夜、出掛けようとした士郎、三月、セイバーは話し声を玄関の方から聞こえてきた。

 

「────」

「────!」

「────?」

「────」

 

 声だけしか聞こえなかったが、二人の女性と士郎は聞き取り、通路の角を曲がると玄関には予想通りの二人がピタリと話を止める。

 

「あら衛宮君、遅かったわね」

 

「あ、先………輩………」

 

 そこには私服姿の凛と、桜がいた。

 

「どうしたんだ二人とも?」

 

 士郎の問いに、表情の沈む桜と答える凛。

 

「桜が『衛宮君(先輩)に危ない事を強要するな』って言って来てね、私は『寧ろ心配で付いて行っている』と説明していたのよ。 衛宮君って頑固だからさ」

 

「そうなのか、桜?」

 

「……………はい」

 

 桜の更に沈む顔に士郎は安心させるように、張り切りながら言葉を続ける。

 

「大丈夫だって桜! ちょっと夜の様子を見に行くだけだ。 それに、遠坂って頼りになるからさ!」

 

「え?」

 

 目を見開き、士郎を見る桜。 その顔を見た三月は────

 

「────(ん? あれって、『失望』?『恐怖』???? 何だろう?)」

 

「だから俺達が安心して帰って来れるように留守を頼む、桜!」

 

「ぁ……………は……………い」

 

「ハァー……………桜、これだけは信じて頂戴。 これは衛宮君が望んで出て行っていて、私達はこのバカが暴走して無茶しないように見張る為に付いて行っているの」

 

「………遠坂、何か怒っていないか?」

 

「うっさい、バカ! とっとと行くわよ!」

 

「お、おい待てよ遠坂!」

 

 ズカズカと玄関を出ながらコートを羽織る凛を士郎が急いで靴を履き、セイバーと共に曇るつつある夜の中で後を追う。

 三月も同じくブーツを履こうとすると桜が三月の腕を強く掴んだのに三月はビックリする。

 

「??? 桜?」

 

 そして泣きそうな顔と、悲痛の満ちた声で桜は心苦しく口を開ける。

 

「三月先輩…………先輩を……先輩()()()()()

 

()()()()()()

 

 殆ど即答した三月に桜は一瞬呆気に取られそうになるが、桜はすぐに頭を三月に深く下げた。

 

「ッ………お願い………します………」

 

 それはかつての切嗣の頼みと三月の受け答えの状況にどことなく似ていた。*1

 

 三月を見送る桜の表情は居間に帰って来ても暗かった。

 

「大丈夫よ、サクラ」

 

「えっと…イリヤスフィールさん?」

 

「イリヤで良い。 留守を任されたからにはどっしりと構えましょう?」

 

「…………でも…………私は……………」

 

「お兄ちゃんの事が心配?」

 

「え? ………『お兄ちゃん』って────?」

 

「────私の母親の名前はアイリスフィール・フォン・アインツベルン。 そして、父親の名は────」

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 そして空がさらに暗くなった町を士郎達は歩きながら話していた。

 

「なあ、三月? お前怖い物とか無いかな?」

 

「んえ? 何か激突だね」

 

「まあ、暗闇が怖いとか無いかなって」

 

「(衛宮君、いくらなんでどっ直球過ぎるわよ)」

 

「ええと、桜がさ」

 

「え? 桜が?」

 

「あ、ああ。 少し前に三月が怖いもの無しみたいな話をしていたからさ」

 

「いや、別に暗闇が怖いなんて事は無いけど」

 

「そっか」

 

「じゃあさ、グロいモノとかはどう? 例えば死体とか」

 

「え? ん~? どうだろう? ()()()()()()()()()()

 

「「「え?」」」

 

「え? 何その反応? だって()()じゃないかな?」

 

「「…………」」

 

 凛とセイバーが黙り込み、士郎が次の問いをし始めた。

 その日の昼、桜から話を聞いた皆はこっそりと互いに三月に確認を取ろうとする事に決めた、彼女の行動原理を。

 

 そして以下の返事が返ってきた。

 

「え? あああの死にそうだった犬ね。 だって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()じゃん?」

 

 これに士郎達は共感できた。

 

「え? 膝を怪我した男の子? よく知っているね~、あの子が泣こうとしないからちょっと()()()したかったの。 もし泣いたとしても消毒液の所為に出来るでしょ?」

 

「(何だ、意外と普通じゃない)」

 

 そう凛も思い始めていた頃だった。

 

「じゃあさ、すすり泣く少女を無視したのは?」

 

「え? ()()()()()()()()()()()わよあの子?」

 

「「「????」」」

 

「だってあの子、ただの『かまってちゃん』でウソ泣きしていただけだし? 言動、表情、泣き方と声の使い方が()()()()()()()()()()()()()()()()の。 あの子、女優を目指せるわよ」

 

「………で、では迷子の子供の親を探す事はどうなのでしょうかミツキ?」

 

「別に良いと思う。 それが本当に迷子で、事情があって親か子供が意図的に置いて行かなければ良いんじゃない?」

 

 三月の段々と()()()説明にさすがの士郎も違和感を覚え始めていた。

「それは違うんじゃないか?」と。

 

「そういう見方もあるわね。 あ! そういえば三月って探偵ものとか好きそうね! 何かおススメとかあるかしら?」

 

「え゛? ()()()()()()()()()()()()わよと遠坂さん」

 

「え? 何で?」

 

「だって()()()()()じゃん。 あんなネタバレだらけの番組に何で皆ワァワァ騒ぐのかが分からない。 あんなのすぐに分かっちゃうじゃん」

 

「そ、そうか? その割には議論とかは面白く無さそうじゃないか?」

 

「えー?! 士郎こそ何言っているのよ! あんなに良い()()()がタダで観られるのよ?! ()()()じゃん!」

 

「ちゃ、『茶番劇』ぃ?」

 

「ふわ~、今日は降るのかな~? 雪かな? 寒いし」

 

 三月が空を見ながらセイバーの隣で独り言を出す。

 

「……………そうね」

 

 凛が士郎の近くに行き、身体を寄り添うかのように近付づく。

 

「と、遠坂?!」

 

黙って聞きなさい。 見張られているわ

 

 凛がセイバーの方を見ると彼女は頷き、同じく三月にこの事を伝える。

 そして皆が冬木中央公園の開けた一部に出ると凛が口を開ける。

 

「姿を現したらどうかしら、間桐のご老公?」

 

 誰にでも向けていない凛の問いに、士郎達の前に大勢の蟲「キィキィ」と鳴き声を出しながら集結し、一人の老人がその中から姿を現す。

 

「ほう、流石は遠坂の娘。 優秀よのぅ」

 

 先程アーチャーから凛に連絡が入ったのだ。

「誰かの蟲に見られている」と。

 

 この何者かを釣る為に凛達は敢えて人気が無く、開けた場所に歩き出ていた。

 勿論、アーチャーが『蟲』といった時点で間桐臓硯と当たりを付けていたので半分ブラフのつもりで凛は彼の名前を言った。

 

「あ、アンタは間桐臓硯?!」

 

 士郎の驚く声で今まで「誰このお爺ちゃん?」と?マークを出しっ放しの三月が聞く。

 

「『間桐臓硯』って、慎二君や桜の………えっと、誰?」

 

「フム、こうして会うのは初めてか」

 

「あ、ああ。 俺も前に桜を見送りした時に一度だけ会ったから詳しくはないが、慎二達の祖父だそうだ」

 

「ええ。 そして『間桐』の中で()()魔術が使える正真正銘の()()()よ」

 

「クカカ。 この老いぼれに何を期待しておる? 儂はただの死にぞこないじゃ」

 

「で? その『老いぼれ』が何で私達の監視をしていたのかしら? 恐らくは慎二絡みでしょうけど」

 

「成程。 あのご老体が間桐家のメイガス(魔術師)ならば、ライダーのマスターに加勢し、聖杯戦争を有利に進める筈」

 

「ハッハッハ、確かに()()絡みだが的を射ておらんな。 何、ただ可愛い可愛い甥の()()()が気になっただけよ」

 

 一瞬だけ笑っている間桐臓硯の視線が三月を見た瞬間、彼女の背筋に冷たい感覚と身体が思わず「ゾクリッ!」と震え、咄嗟に士郎の後ろに隠れる。

 

 グループの前にアーチャーが突然現れ、セイバーが士郎の隣に立ちながら甲冑姿に変わり、警戒を続ける。

 

「ほう、変わった風習だな。 自分の甥の学友達を()()()()為だけに()()も放つとはな」

 

『アーチャー、動きを見せたら牽制。 仕掛けてくるようなら即座に戦闘開始よ』

 

『分かっている、凛。 君も気を付けろ。 このご老体、油断ならない相手だぞ』

 

()()、じゃと? ハ、これはただの挨拶じゃよ」

 

 カツーン!

 

 臓硯は笑いながら持っていた杖を地面に叩くと耳を劈くような音が発され、異様な空気が場に満ちていく。

 

()()とはこう言う物じゃよ」

 

 この空気は士郎や三月、ましてや凛でさえ初めて経験するような、まるで自身の身体が地面に上から押しつぶされるような感覚から股を着きそうになった。

 それは「今から殺す」と言った生ぬるい物ではなく、「もう既に死んでいる」と錯覚させるぐらい異質なものだった。

 

「あ…………グッ……」

 

「おも………たい…………」

 

「シロウ、ミツキ?!」

 

「なん…なのよ……これ……」

 

「慌てるな、セイバー。 これは呪詛の類、気を失わなければどうという事は無い」

 

「ほう? 一瞬で見破るとは。 そこなサーヴァントはかなりの場数を踏んでいると見た、クカカ」

 

「黙れ、妖物」

 

 フッとすると場の空気が正常に戻り、士郎達はよろめきながらも立ち上がり、一足先に回復した凛が口を先に開く。

 

「………それで間桐最後の魔術師の貴方がどうして夜分遅く、こうして出迎えたのかしら?」

 

「何、簡単な事じゃよ────」

 

 臓硯はニィーと笑う。

 

「────お前達にはここで()退()して貰う」

 

 アーチャーがすぐさま動き、セイバーは空中を薙ぎ払うかのように見えない剣を振るう。

 

 ガキキキキィン!

 

 金属音と共に士郎達の周りに黒く塗りつぶされた短剣が落ちる。

 

「これは、先日の?!」

 

「黒く塗りつぶした短剣(ダーク)! やはりアサシンか!」

 

「フム、流石はセイバー」

 

 セイバー叫びに未だに笑う臓硯は面白いものを見るかのように言う。 そして突進してくるアーチャーの前に突然数十名の人達がゾロゾロと現れ、彼は目を細める。

 

死霊魔術師(ネクロマンサー)の真似事か」

 

「え?」

 

 士郎達がその()()を見るとボロボロの服の下の肌は腐りかけ、生気が全く感じられず、目が虚ろの上に動きがぎこちなかった。

 所謂『ゾンビ』だった。

 

「左様。 お主等サーヴァントに魔術は聞かぬ故、他の方法を取るとしよう────」

 

「────ッ! 皆しゃがめ!」

 

 アーチャーが叫ぶと同時に、現れた死人達は手の中の物を構える。

 

「え?!」

 

「アレは?!」

 

「うぃえ?! 旧ロメロタイプじゃないの?!」

 

 驚く凛と士郎、そして別の理由で驚く三月。

 何せゾンビ達はそれぞれ『銃』を構えて、引き金を引いていたのだから。

 

 ダダダダダダダダ!

 

 文字通りマスター達である士郎達を狙った銃弾の雨の中、アーチャーが次々とゾンビ達を斬り伏せて、セイバーは士郎達の前に出て弾を見えない剣で弾いていた。

 

「さて────」

 

「────フン!」

 

 ゾンビ達を斬り終わったアーチャーはすぐに臓硯の首を刎ねる。

 だが臓硯の身体は蟲の群れへと変わり、同時に動かぬ死体と戻ったゾンビ達の身体が爆発し始め、辺りは土煙と死臭に包まれる。

 

「奴はまだ近くにいる!」

 

 アーチャーの叫びにセイバーは後ろにいる士郎達の周りを気にかけ────

 

「────シロウ!」

 

「え?」

 

 セイバーが煙の向こうで見たのは士郎の頭上に群れた黒い()()()()

 そしてその塊が臓硯の形を取っていた。

 

 無数の蟲が土煙に、翅の音は爆発音に紛れて集まったのだ。

 

 そこで三月の声が響く。

 

「────汚物は消毒だぁぁぁぁ!!!」

 

*1
第三話より




作者:ストックがずっと切れるか切れないかの状態が続いていましたが今回で切れました。 明日の投稿も頑張りますが保証しかねます…

マイケル:と言うかゾンビ? マジ? 何だこの『ロメロ』って?

三月(バカンス体)/ラケール:アンタ知らないの?!

マイケル:ちょ、近い近い近い近い!

作者:頭痛薬飲んで寝る。

雁夜(バカンス体):最後のあれ、何だ?

三月(バカンス体)/ラケール:一人のモブ役の五秒間グローリー

雁夜(バカンス体):え?

三月(バカンス体)/ラケール:しかも火炎放射の

雁夜(バカンス体):意味分かんねえよ!

チエ:慣れろ、雁夜

作者:もし楽しんでいただけたのならお気に入りや評価、感想等あると励みになります。 宜しくお願いします!
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