"Stay, Heaven's Blade" Fate said.  “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。”   作:haru970

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注、少し長くなってしまいました。

楽しんで読んでくれると幸いです。

ちなみに中編辺りに自分か聞いていたイメソンは川井憲次Ver.2の方です


第34話 さいこのガキ大将(後編)

 ___________

 

 衛宮士郎、遠坂凛 視点

 ___________

 

 二人は息を切らせながら柳洞寺の池に着くと────

 

「────ほう? セイバーも連れずにその不出来な顔を見せるとはな、贋作者(フェイカー)

 

 池の中の異界の塊のようなグロテスクな物を池岸から見ていたギルガメッシュが士郎と凛に振り返った。

 

「ギル…………ガメッシュ」

 

「『王』を付けんか、不敬者めが」

 

「あれが……『聖杯の器』?」

 

「おっと、そうだ。 これは返すぞ────?」

 

 ギルガメッシュが手に持っていた物を士郎達に投げると、凛はそれが何だったのか見えて、それを拾い上げる。

 それは小さなトランプカード箱状の魔術礼装だった。

 以前に三月が「体の調子が良い」と言って人数分作り、身近な者達にあげていた物だった。*1

 

「誰が製作者かは知らぬがかなり腕が良い。 何せ『聖杯の器』の()()をあのワカメから弾ける程だったからな。 まあ………貴様らをただ殺すだけでは芸がないのでな、ここまで辿り着いたその生に僅かばかりの猶予をやろう」

 

「…………猶予ですって?」

 

「聖杯も見届ける者が我だけでは寂しかろう? この行く末を共に見届けると言うのなら雑種と言えど、その生にも意味があるでは無いか」

 

「…………貴方は、人類の大量虐殺なんて本気で考えている訳?」

 

 ギルガメッシュがピクリと反応する。

 

「小娘が。 殺される程度の覚悟で我に問いを投げるとはな…恐ろしく『()()()()()()()()()()()()』とは良く言ったものよな。 だが、それこそが答えだ娘。 このように有象無象の()()が跋扈する今の時代はあまりに醜い。 かつての我の世には 無駄なものなどなかった。 奴隷であろうと、家畜であろうと、魔の類であろうと、全てに役割はあり意味はあった」

 

「今の世の中じゃあお前は『駄目だ』と言いたいのか?」

 

「今の世の中を見ろ。 役割も価値も席も全てが埋まってしまって、種が『雑種』から『寄生動物』に変わろうとしているではないか! そんなもの達を我が手ずから間引いてやろうというのだ。10年前は数百人足らずだったが、此度はこの世の全てに災厄が降りかかり、余分なものが淘汰された後、どれほどの『人間(ヒト)』が生き延びるか、我には楽しみでしかない」

 

「この………とち狂った変態野郎が────」

 

「────衛宮君。 私が()()の核になっている慎二を取り出しに行くわ。 あんなんでも……桜達を助けようとしていたし」

 

 凛は聖杯戦争中に三月が慎二を屋上まで誘うまでの印象は最悪だった。

 それこそ間桐家の魔術系統と彼と桜の噂しか知らなかった『女性に対してクソみたいなヘラヘラ笑うお調子者のチャラ男』としか認識していなかった。

 

 だがこの間、学園の屋上から彼の言動を見た凛は少しだけ理解した。*2

 

「ああ、こいつも素直じゃないだけなんだな」と。

 

 これは(自分は決して認めないが)ある意味捻くれた性格の者同士だからこそくる「同族嫌悪」から自分と慎二の互いにイラつく要素だったと最近になって感じた。

 

 そんな彼が桜達をひたすら助けようとしていたのを桜本人から聞き、慎二に対しての考えを改めていた。

 

 凛が池岸に近寄り、中のドロドロになった液体を見ながら覚悟を決めるとギルガメッシュは鋭い目で彼女を睨んだ。

 

「この受肉した呪いの中を進む決死の覚悟か、魅せるが…………我の前から去る事を誰が許した?」

 

 ギルガメッシュから数本の武具が突然、凛へと飛来する。

 

「『トレース、オン』!」

 

 士郎の両手に双剣が現れ、ギルガメッシュの放った武具を弾く。

 

「お前の相手は、俺だ!」

 

「衛宮君────」

 

「────()()()()()()()()。慎二達を頼む」

 

「ッ…………分かった」

 

 凛が持ってきた宝石を一つ飲み、三月から貰った魔術礼装に魔力を流しながら池の中に充満した泥の中に足を踏み入れる。

 

 するとどうだろうか? 泥が独りでに凛を避けるかのように引き下がる。

 かのモーゼスの伝承みたいに。

 

「(ほんと…状況が状況じゃなかったら、こんな神話めいた場面に私が直面している事に感動しているところなのに────!)」

 

「ほう? 中々やるではないか、あの小娘。 決めたぞ、奴は────」

 

「────遠坂に手を出すな!」

 

 ギルガメッシュは自分の言葉を遮った士郎を鼻で笑う。

 

「フン、貴様なぞセイバーを迎える前の余興だ。 だがそこまで死にたいとは………その身をもって真偽の違いを知るがいい、贋作者(フェイカー)!」

 

 士郎はギルガメッシュが放つ武具を受けなしながら思う。

 

「アーチャーとの戦いをなんとなく思いださせる」と。

 

 そう思いながらも士郎は抹消面からギルガメッシュの武具を弾き落とすのではなく、時には受け流し、時には躱すといった、芸術めいた動きを見せていて、闘いの場所はボロボロの柳洞寺の敷地内へと変わった。

 士郎の動きがギルガメッシュは大層気に入ったらしく、彼がバテ始めていた士郎に宣言していた。

 

「存外に面白いぞ、贋作者(フェイカー)! 故に一分の休憩を挟んでやろう! 光栄に思えよ? この時代、退屈と思っていた矢先に貴様らの様な者達が我の前に現れようとはな! フハハハハハ!」

 

 士郎は荒い息を何とか深呼吸に切り替え、出来るだけ新鮮な酸素を取り込もうとする。

『いくら技術があっても、体が付いて来なければ意味がない』。

 それは三月がこの前セイバーと初めて稽古を始めた頃に感じていた事を士郎は今感じていた。*3

 その間ギルガメッシュは面白そうに池の方を見ると、空にはぽっかりと()のようなものが出来ていて、そこから池の中にあったような()が溢れていた。

 

「小僧、あれが何か分かるか? 聖杯が汲む願いだ。 ()()人間の悪性そのものだ」

 

 士郎がチラリと見ると先程見たものより更に大きな穴が空に出来上がり、冬木市の様々な場所から光の『魂』みたいなモノが飛来し、穴に入り、おぞましいほどの空気と共に『泥』が辺りに溢れ出ていた。

 

「『あらゆる願いを叶える願望機』。 それは『全てのあらゆる苦しみから解放される』のではなく、『全ての苦しみを克服する為』にお前達は『聖杯』を作り上げた。 平等も平和も幸福も同じ事、『肉体』と言う『皮』に囚われたお前達では永遠に満たされる事は無い。 世界を変革する程の強い欲望なぞ、人間の悪性をおいて他に無い。 そしてその手段は自滅となり、あの『聖杯』の在り方こそがこの時代に即した願望機だ」

 

 ギルガメッシュの宣言した一分はとうに過ぎていたが、彼は気付かなかったのか敢えて自分の言葉を士郎に言いたかったのか、ただ喋っていた。

 

「だから喜べ、雑種。あとは時間の問題であるが故に我は本気にならん。 本気になった時点で我の敗北よ」

 

(ギルガメッシュ)はお前達に任せる≫

 

 凛から移動中に伝えられたアーチャー(エミヤシロウ)の言い残した言葉が士郎の頭をよぎった。

 

「(あの野郎、俺にどうしろと言うんだ?! 待てよ────)」

 

 その時、ギルガメッシュの『武具を放つ』戦い方をアーチャーがアインツベルン城でやっていたのを思いだし────

 

「────『トレース、オン』!」

 

 士郎はギルガメッシュの周りにある空気の歪みから出ている武具を片っ端から『解析』し始める。

 

「ほう? 視界にある全てを見様見真似とは、つくづく面白い」

 

「『憑依経験、共感終了! 工程完了! 全投影、待機!』」

 

 士郎の周りにギルガメッシュの周りにある武具と同じようなものが作り出され、彼は自身の体が軋むのを感じる。

 

 魔力はあれど、体は人間(ヒト)のまま。 アーチャーのように『英霊』ではない。

 

「(『だがそれがどうした』?!)」

 

「では採点だ、贋作者(フェイカー)

 

 ギルガメッシュと士郎が互いの武具を放ち、辺りに爆発が連打する。

 

「ほう? ガラス細工にしてはよく持つではないか! その猿真似、どこまで持つかな? フハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 士郎の体が更に軋み、彼とギルガメッシュの「撃ち合い」を続行した。

 

 

 その間の凛はと言うと、気持ちが悪くなる一方のその場所からさっさと『逃げ出したい』と叫び続ける本能を『慎二を救い出す』という理性で押さえつけていた。

 

「気持ち悪いのよ! このワカメみたいなウゾウゾとしたヤツ! そういうのはアイツの髪の毛だけで十分よ!」

 

 それは皮肉なのか、血肉で出来たワカメのようなモノが無数に生えていて、凛に近づいては離れるのをずっと繰り返していた。

 

 凛が血肉の塊を登り(ちなみに感触は生の肉を掴む様な、ヌルっとした生々しいモノだった)、頂上に慎二を見つけた。

 

 慎二の顔は苦しそうで、大量の汗を掻きながら、肉の中に半分埋まっていたような姿だった。

 

「こんのぉ!」

 

 凛が慎二のはみ出ていた腕を力ずくに引っ張り、彼の体がズルリと出る。

 所々皮膚の色が変化していて、赤く腫れていた。

 

 『■■■■■!』

 

 その瞬間、お腹に響くような唸り声に近い何かが辺りを埋め尽くし、無数の手みたいな物が凛と慎二に近付いては何かに怯える様に戸惑い、退く。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ほとほと愚考よな! 我に勝ち得ないと考え、『聖杯』だけでも取り外す判断は正しい!」

 

 ギルガメッシュはさっきと同じように心底面白そうに藻掻く士郎に喋りかける。

 

「だがあの男を『救う』とはな。それならば殺してしまえば良かろう? 聖杯を止めたいのであれば始末する事こそ確実の筈。 だと言うのにまだ『救おう』というその判断、まさに今の貴様ら雑種の具現よな」

 

 『■■■■■!』

 

「ん?」

 

 ギルガメッシュが池の方を見ると影のようなモノが彼と士郎のいる場所へと向かっていたのに舌打ちをする。

 

「核を失って代わりを求めるか────」

 

 ────ギルガメッシュの周りにある歪みが一つに絞られ、彼は赤い光を放つ文様を備えた三つの円筒が連なるような()()()みたいな物を手に取っていた。

 そしてこの物体を見た士郎は思う。

 

()()()()()?」と。

 

 何しろ『解析』が()()()()

 

 彼が魔術を切嗣から習い7,8年程になるが、今まで『解析』出来なかったモノは()()

 

 そう思うのも束の間、暴風か荒れ狂い、迫って来た影もろともボロボロになっていた柳洞寺を更に壊しながら士郎は吹き飛ばされた。

 

 

 

 

「最っっっっっっっ悪ね、これ」

 

 凛は慎二を支えながら周りの文字通り「肉の壁」を睨む。

 

「どうあっても『格』が欲しいわけね」

 

 まるで先程の暴風に反応するかのように凛達の周りにこの『壁』が出来上がった。

 獲物を捕食する為に閉じたハエトリグサのように。

 そしてその例えは凛も思いつき、彼女を少し焦らした。

 

「(こっちの魔力が尽きるまでの根競べ…………という生易しいもんじゃないわね)」

 

 凛が息を浅くしながら考える。

 これは別に焦りからの息遣いではなく、先程から空気が薄くなっていく為である。

 

 本来、魔術師は無意識でも自身を守る為に魔力を常時体中に流し、外部からの干渉から身を守る。

 それは勿論その年でかなりの天才である凛も同じだが、相手が『聖杯』ともなると意味がない。

 

「ハァ………ハァ………ハァ………(不味いわね……このまま気を失ったりしたら……『聖杯』に二人とも取り込まれる……)」

 

 凛は宝石を取り出し、壁に向かって放とうとして────

 

「『ガンド』!」

 

 ────止めて、逆に自分のワンアクション魔術の最大出力に宝石から自分の体に流れてくる魔力上乗せをしながら前へと()()()

 

 正確には凛がこじ開けた穴に向かって『強化』を施した体でジャンプした。

 

 その外では今しがた追いついたセイバーは凛が息を切らせながら慎二と共に池岸に落ちて転ぶのを見てすぐに駆け寄って。

 

「リン! ギルガメッシュは────?!」

 

 『■■■■■!』

 

「セイバー、先に『アレ』を壊して!」

 

 セイバーは池の塊を見ると徐々に何かの形を模って行くのを見てすぐに宝具を撃つ用意に入った。

 

「『この灯りは星の希望。地を照らす命の証! 見るが良い! “約束された勝利の剣(エクスカリバー)”』!!!」

 

 セイバーから放たれた宝具が起動しつつある『聖杯』に直撃し、幻想的な景色が見えて、それはまるでセイバーの中での未練を彼女が断ち切る様な場面だった。

 

 

 

 

 

 時はほんの少しだけ遡り、ギルガメッシュが先程取り出した()()()をしまい、立ち上がろうとする士郎をボロボロの柳洞寺の屋根の上から見下ろしていた。

 

「どうした? この我をどうにかするのではないのか? 立て、雑種」

 

「言われ…………なくても!」

 

「ククク、しかし驚いたぞ。 これでは()()()()と言いたいところだが、それ以上に面白い。 以前聞いた『正義の味方』や『誰も傷つかない世界』などの世迷言を吐くのなら吐き気が出て早々に貴様を葬っていただろうよ」

 

「何………を────?」

 

「────いやなに。 我にとって『今の時代の人間』とは犠牲や損失がなくては生を謳歌出来ぬ、獣の名だ。 『平等』という飾り事は闇を直視できぬ弱者の戯言、醜さを覆い隠すだけの言い訳にすぎん、と言う事だ」

 

 これを聞いていた士郎は心の何処かで納得していた。

「腐ってもギルガメッシュは英霊だ」と。

 

 確かに以前の自分の中は空っぽで、以前までの想いは「誰かを救う誰かの姿を見て真似ただけの借り物(飾り物)」だった。

 誰もが()()()()()()あの光景で、あの時()()()()()()()()()()と思うと、「人間なんてそんなモノだ」と納得していたような気がする。

 

 でも────

 

「(────それは、俺の『正義』じゃない)」

 

 士郎が立ち上がるとギルガメッシュの顔がにやける。

 

「ん? 出し惜しんだとはいえ、『乖離剣エア』の風圧に触れた筈だが────」

 

「────そんなに山ほど宝具を持っておいて、今更出し惜しむモノがあるのかよ」

 

「あれは覇者にのみ許されしモノだ。 本来、貴様などの様な者に拝謁する権利すら持たん」

 

 士郎は立ち上がり、下りてきたギルガメッシュを見る。

 

「しかしまあ、そろそろ飽きてきた。 早々に消し去るとしよう。 貴様の様な、()()()()()にする者の行為など、ただの偽りに過ぎぬ」

 

「『偽善者』、か………………確かに、それは俺に当てはまっていた言葉なんだと思う」

 

≪この身は『誰かの為にならなければ』と! 強迫観念に突き動かされて来た! 傲慢にも走り続けた! だが所詮は『偽物』だ! そんな『偽善』では何も救えん! いや、元より()を救うべきかも定まらん!≫

 

 それは()()であって、()()ではない者の言葉だった。

 

「ん?」

 

 士郎の様子が変わった事に眉毛がピクリと反応するギルガメッシュ。

 

「勘違いしていたんだ、俺は色々と。 そしてそれならば『無限の剣製(Unlimited Blade Works)』にも()()()()()()()()()()()()

 

「…………さっきから何を────」

 

「『体は()()で出来ている!

 血潮は()()で心は()()

 幾度の戦場を()()超えて不敗』────」

 

 士郎が詠唱し始め、ギルガメッシュが宝具を放つと士郎は先程みたいに迎撃するのではなく、アーチャーが使った『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を展開した。

 

 士郎は自分の体が更に軋み、頭痛に似た痛みを頭に感じるが詠唱は破棄せずにただ続ける。

 

「『────ただ一度の()()もなく、ただ一度の()()も無し。

 担い手はここに、()()の丘で自身を鍛つ!

 ならば我が生涯に意味はあり、この体は“無限の()()”で出来ていた』!」

 

 そこには、以前士郎がアーチャーとの対峙中に生死を彷徨っていた時に見た景色の延長があった。*4

 

 違いがあるとすれば見渡す限りの草原に花畑、優しい陽光とそよ風に今まで数々の士郎が解析した武具が新品同然の状態で地面に刺さりながらもツタなどがそれらに絡まっていた。

 

 そして最大の違いと言えば────

 

「ほう、固有結界とは────なッ?! 貴様、()()()()()()()?!」

 

「あら、驚く事は無いんじゃない?? 固有結界は()()()()()()ものじゃなかったっけ? なら、()()()()()()()()()()()()()?」

 

「三月………なのか?」

 

 士郎の隣にはいつか見た髪の毛をバレッタで上げた動きやすいヘアースタイルとワンピースドレス姿の三月(?)が立っていた。

 

「ん~、()()? 私は私であっても私じゃない…………かな? まあ、貴方の『心の中の私』って思えば良いかな?」

 

「そうか」

 

「あり得ん、こんな事は……」

 

「ありゃ。お客さん、結構頭に来てらっしゃる?」

 

 ギルガメッシュは初めて「優越感」などと言った見下したモノから「不快感」に近い何かが籠った感情を乗せた言葉を吐く。

 

「断じてあり得んッッ!!!」

 

()()!」

 

「ああ!」

 

 ギリガメッシュが武具を放つ寸前に、士郎達の周りから()()武具が飛び出て、ギルガメッシュの攻撃を()()()()

 

「なッ?! 馬鹿な! 贋作如きが────?!」

 

「────なあ、一つ聞きたいんだが────?」

 

「────『偽物』と『本物』って何が違うのかしら?」

 

 初めて驚愕の表情をするギルガメッシュに士郎と三月(?)が問いを掛けると、ギルガメッシュは明らかに不機嫌に顔をしかめる。

 

「何を────」

 

「────だってそうだろ────?」

 

「────『人の定義は所詮、多数決』。 結局は多い方の…………つまり『本物』と「偽物』、どちらなのかは個人の主観とその時点における多数派の観点に拠る」

 

「だから貴様らは何の事を────!!!」

 

「ここに()()()()が『()()』と思う人、手を挙げて。 ハイ」

 

 士郎と三月が手を挙げると同時に今度は士郎が()()をあげながらギルガメッシュに問いを掛ける。

 

「と言う訳だ、英雄王。 武器の貯蔵は充分か?」

 

「~~~~~~~~!!! 貴様ら如きが! 思い上がるなよ!」

 

 怒りを露わにするギルガメッシュに士郎と三月(?)が襲い掛かる。

 

 ギルガメッシュが放つ武器を士郎と三月(?)が()()()()を手に取りながら()()()()()()

 

「チッ! 小癪な────!」

 

 次第にギルガメッシュの苛つきを具現化したかのように、更に武器が放たれようとした時に、舞い上がっていた土煙の中から士郎と三月(?)が彼目掛けて飛び出して剣を振るう。

 ギルガメッシュは近くの剣を取り、二人の一撃を()()()()()

 

「馬鹿な?! この我が、貴様らなんぞに────!」

 

「確かにお前は強い! 並大抵のサーヴァントが相手ならお前は確かに最強さ!」

 

「でもね、『最強』だからと言って『最優』とは限らないわ!」

 

「だが今のお前は『王』であって『戦士』じゃない!」

 

「ッ! 戯言を────!」

 

「────それに家臣もいない、()()の『王』がなんぼのもんじゃーい!!!」

 

 さっきまでギリギリとした剣同士の歯軋りが次第に何かがヒビ割れて行く音へと変わり────

 

 

 

 

 

 

 ────ギルガメッシュ達が持っていた剣が割れる。

 

「おのれ!」

 

 武具が割れる。

 

おのれ!

 

 更に割れて行く。割れる、割れる、割れる、割れる、割れる、割れる。

 

「おのれ!おのれ!おのれ!おのれぇぇぇぇぇい!!!

 

 割れて、割れて、割れて、割れて、壊れていく武器達と士郎の軋む体と彼の隣で戦う少女。

 ギルガメッシュの苛立ちが次第に激怒へと変わり、これと一緒に士郎は自身の関節、筋肉と脳が悲鳴を上げるのを無理矢理に無視しながらただ眼前の敵を倒す事に集中する。

 

 そして────

 

「なっ?!」

 

 

 

 

 ────()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これを見たギルガメッシュは思わずヘラクレスを葬ったような最上級の武器を自分近くに飛ばし、士郎達を無理やり自分から引きはがした事にギルガメッシュは彼らと自分自身にブチ切れた。

 

「貴様らに…本気を出すとは何たる屈辱! 死ねぇぇぇい!」

 

 今までにない数の武器をギルガメッシュが放ち、士郎達の周りの武器の追撃が追い付かなくなる。

 

()()!」

 

「行くぞ、()()!」

 

 二人は武器を両手に取り、撃ち漏れる武器を薙ぎ払い、背中を互いに預ける二人の姿にギルガメッシュはさらに数を増やし、自分の在庫の出し惜しみをそこでやめた。

 

 大気の歪みの数、ざっと数百。

 それらが全て不死殺しや竜殺しの類の、ギルガメッシュの保有する最大級の武器達があられのように、一斉に士郎達に飛来して大爆発が起きる。

 

 だが────

 

「────馬鹿な?! こんな事が────!」

 

 ────ギルガメッシュは恨めしそうに上を見ると、無数の花弁が舞う中と共に、三月(?)を抱えながら上へとジャンプした士郎達の姿があった。

 

 あの一瞬の中、三月(?)が『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』を展開し士郎が彼女を抱え上空へと離脱した。

 

 その二人の姿は何処か痛々しかった。

 

 少女の方は顔色と肌が更に青白く()()()()かのように、士郎の方は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────髪の毛の色と肌が変質し始めていた。

 

 赤がかかった髪の毛に白と灰色が混じり、皮膚は所々()()したかのように色が濃くなっていた。

 

うおぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 ギルガメッシュが宝具を撃ち始め、士郎は三月の手を取り、二人の空いた手には翼をモチーフにした双剣が一本ずつ現れ、二人はギルガメッシュの武器達を払い落としながら彼へと落下する。

 

「…………………チィ!」

 

 最後の最後まで躊躇っていたギルガメッシュはついに『乖離剣エア』の柄を手に取り、三月(?)は着地した瞬間に士郎を手放し、彼の背中を押した。

 

ギルガメッシュゥゥゥゥゥゥゥ

 

 士郎はギルガメッシュが取り出し始めた『乖離剣エア』を全力で斬りつけ、ギルガメッシュの腕はミチミチと生臭い音を立てながら肘の先から強引に引き千切られる。

 

贋作者(フェイカー)なんぞにぃぃぃぃ?!」

 

「────終わりだぁぁぁぁぁぁ!」

 

 今まさに士郎が返しの刃で距離を取ろうとするギルガメッシュの胴体を真っ二つにするところで不穏な音が彼の耳朶に響く。

 

 ブツリ。

 

「────ぁ」

 

 瞬く間に士郎の全身から力が抜けて、彼は地面に倒れ、辺りは元にいた柳洞寺の場へと戻っていた。

 時は丁度、セイバーが宝具を聖杯に直撃させた直後だった。

 

「な…………あ……………………が………………?(な、何だ? どうなったんだ?)」

 

 混乱しながら倒れている士郎を距離を取ったギルガメッシュが息を切らせながら睨む。

 

 士郎はまだ気付いていないが、単純に薬の治癒力が切れて、負担が再生より上回っただけだった。

 そして彼が未だに意識があるのはそれ程彼が高ぶっていた上に『アヴァロン』が体の痛みなどを()()()()()()()に押し止めていただけ。

 

「グッ……………」

 

 それでも立ち上がろうと士郎はして、自分の体に鞭を撃ち、更に悲鳴を上げる体を無理やり動かした。

 

「貴様も()()()だったとはな、満足して死ね────」

 

 ゴオォォォォォォ!

 

 ギルガメッシュがトドメを刺そうとした瞬間、嵐に似た風が吹きまわり────

 

 

 

 

 

 

 ────()()を取り込もうとした。

 

「ぐあああああああ?!」

 

「フハハハハハ! なんともまあ、傑作よな! 『聖杯』が我より貴様を取り込もうとするとはな! 人間の悪性そのものに取り込まれて死ね!」

 

「ギ………ルガ……メッシュゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 士郎は踏ん張り、何とか吸い込まれるのを抗おうとするが肝に体はほとんど動かなくなり、あと数分もすれば『アヴァロン』で回復して逃げ切れたであろう『穴』に引きずられ、逃げていくギルガメッシュの名を叫びながら取り込まれた。

 

 

 

 

 

 ギルガメッシュは顔をしかめながら円蔵山の中の森をヨロヨロと歩き、血がボタボタと地面に落ちて行った。

 

 別に彼は『痛み』から顔をしかめていなかった。

 

「何たる醜態! この我が! あんな………あんな奴を見抜けぬとは!」

 

 それは今まで味わった事の無い屈辱に対しての自己嫌悪に近かった。

 

「だが………まあいい。 後は()()を回収して事の成り行きを────ッ?!」

 

 ギルガメッシュは目の前のモノ歩みを止める。

 

「貴様………よもや?!」

 

 その顔は驚愕だった。

 

 そして目の前には────

 

 グゥ~~~~~~~~~~~。

 

 お腹の音を盛大に鳴らせながら()()()()()三月がいた。

 ただしその少女の顔に表情や感情は全く無く、その光の無い眼はただ『虚無』を映し、かつてのイリヤが本能的に『恐怖』を感じさせていた眼だった。*5

 

 「お  な  か  す  い  た」

 

「貴様、『天の鎖』までも────?!」

 

 バリッ!

 

 

 バキッ!

 

 

 ボリッ!

 

 

 ……………ゴクンッ。

 

 

 「ゴ  チ  ソ  ウ  サ  マ  デ  シ  タ」

 

 肉と骨が潰れる音の後に三月はフラフラ~っとおぼつかない足つきでその場から消え、ギルガメッシュがいた場所には()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【告。 『()()()()()()()』を()()シマシタ】

 

*1
第17話より

*2
第12話前半より

*3
第12話後半より

*4
第32話前半より

*5
第10話より




雁夜(バカンス体):なっげーな、オイ?!

作者:納得のいく、切りの良いところが無かったので………なので次話が少し短くなってしまうかもしれません…………いえ、これより短いでしょう

三月(バカンス体):まあ、頑張ったから良いんじゃない?

作者:さて、久しぶりにこれ言えますね。コホン。 楽しんで頂けたらお気に入りや評価、感想等あると嬉しいです! 宜しくお願いしめっしゅ!

雁夜(バカンス体):最後噛んだな

三月(バカンス体):噛んだね

作者:いあああああああ!!! 恥ずかしいいいいいいい!!! 『Subnautica』プレイして没頭してくるぅぅぅぅぅ!
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