"Stay, Heaven's Blade" Fate said. “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。” 作:haru970
誤字などがあれば申し訳ありません!
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セイバー運営、遠坂凛、間桐慎二 視点
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「ぐおぉぉぉぉぉぉぉ! 吸い込まれてたまるかぁぁぁぁぁぁぁ!」
士郎は文字道理、地べたに這いつくばるようにして『聖杯の穴』に抗う。
「ここまで来て、これは無いだろうがぁぁぁぁ!」
「衛宮君、そのまま動かないで!」
「ッ?!」
突然凛の声が聞こえると士郎はそのままジリジリ動いていたのをピタリと止めると
「(これは、蟻?)」
正確には地面自体が動いているのではなく、地面から湧き出た様々の種類の蟻達が一斉に士郎の体を支え上げて、動く歩道のように一つの
「今よ、セイバー!」
「『
真名解放無しでの宝具が弱まった『穴』に直撃する。
『■■■■■!』
以前より聞いた地鳴りのような響きが弱弱しくなって行き、渦巻きじみた吸引力も次第に弱まっていく。
辺りが段々と静まり返り、士郎にセイバーと慎二を背負った凛が彼へと駆け寄った。
「シロウ!」
「あいででででで! セ、セイバー…出来ればもうちょっと寝かしてくれ。 体中、筋肉痛みたいに痛いんだ」
「衛宮君、そんな事よりその………髪の毛と皮膚の色────」
凛が注目したように、士郎の髪の毛は部分的に白く変わり、肌も所々昔火傷を負ったかのように肌黒くなっていた。
それは、アーチャーの様な────
「────それより辺りを警戒してくれ遠坂。 ギルガメッシュを逃がした」
「……………ハッ! 何て体たらくだよ、衛宮?」
「慎二………なのか?」
セイバーに体を起こさせられた士郎は慎二を見て驚く。
彼の青色だった髪の毛が一面真っ白になっていた。
「間桐君、貴方も人の事を言えないわ。 いくら
「…………そうだな、遠坂の言う通りだ」
凛の言葉に珍しく慎二は弱弱しく同意し、これによって凛はさらにイライラする。
別にこれは慎二が本当にそう思っている訳ではなく、人生初の魔術行使で身も精神もヘトヘトだったからである。
『魔路昏睡』。 これはかつてキャスターが慎二に言っていた病名で、別にその場の嘘ではなかった。 *1
そして幸か不幸か、『聖杯の器』にされかけた慎二の眠っていた魔術回路は『器』とする為に強引に起こされた。
ただこれは前に士郎が久しぶりに『投影』した時みたいに体が満足に動かない状態で、しかも回路は起きたばかりなのに士郎の身が危険と見れば即座に魔術を発動して、地面にいる蟻達を操り、彼を助けようとした。
「まったく、何でこうも自分を第一に考えない奴らが私の周りにわんさか居るのよ、全くも~~~~~~!!!」
「「すまない、遠坂」」
「ハモるな!」
「リン、彼達を頼めますか? 私は三月を────」
「────
三月の声が聞こえ、士郎達が振り返ると駆け寄ってくるボロボロの三月が見えた。
「「三月!」」
「よかった、無事だったのね。でもよくあの金ピカから逃げたわね?」
「まあ刺された後は何か興味なくなったみたいだから」
「ちょ?! 大丈夫なのか?!」
「へ? うん────」
三月がボロボロのパーカーと上着をめくって露わになった右の脇腹を指す。
「ほらね? 跡も何も残って────ってどうしたの男子達?」
士郎と慎二は顔を真っ赤にしながら逸らしていた。
「三月…………今更だけどアンタはマイペースだけじゃなくて筋金入りの天然ね」
「へ? ……………あ、そっか! 今はキャミソールしてないんだっけ。 いや~、まさか風呂上りに拉致されるとは思わなかったからさ~」
「「「…………………………」」」
あっけらかんとする三月に黙り込むグループ。
「コホン………け、けど体は本当に大丈夫なのか? 服が────」
「ん~、何か刺された後、次に気が付いたら地面に寝ころんでいたのよね~。 なんかポイ捨てされたような感じ?」
「…………もしかするとギルガメッシュは『同盟者』の方達に戻ったかもしれませんね」
「だとすると、早く衛宮邸に戻るわよ。
「「な?!」」
「え? イーちゃんが?! って、どういう事?」
「動きながら説明するわ、セイバーは衛宮君を────」
「あ、私が背負うわ。 もし何かあったらセイバーが対応出来るように」
「…………………良いわ、でも
「うん」
凛は渋々と士郎を三月に背負う方針を────
「お、おい! 何勝手に話を────わわわ!」
士郎は自分より小柄な三月に背負われるのに抵抗を感じ、立とうとするが倒れ始める。
「兄さん!/シロウ!」
そして慌てて彼を支える三月とセイバーの姿に慎二は恨めしそうな独り言を零す。
「衛宮ッッッッ!」
「気持ちは分からないでもないけど、私としては別のあなたをここに置いて行っても良いのよ?」
「ヒ」
ニッコリと、静かに起こる凛に対して慎二は小さな声(?)を出す。
そうして士郎達は一日ぶりの衛宮邸へと向かいながら、士郎達は情報を共有する。
「ありがとうね兄さん、私たちの為に」
「ハ! こんなお人好しにそんな言葉、勿体な────!」
「────ほら、慎二君も照れ隠しの何時もの態度も出ているし」
「んな?!」
「ああ、俺もこれは知っている。 あとすまないな慎二。 お前、本当は
「ちゃぐ!」
「??????」
ニマニマとしながら慎二をからかう士郎に言葉を噛む慎二、そして?マークをただ出す三月に呆れる凛を見たセイバーは微笑んでいた。
だが────
「皆、気を付けて」
「遠坂さん?」
「……」
衛宮邸にまもなく着く距離の道中でセイバーが黙って私服から甲冑姿に戻る。
「魔力の残滓…………セイバー、先行してくれるかしら?」
「リン、結界の様子は?」
「機能していないわね、それに………いえ、先ずは見ましょう」
そして士郎達は緊張しながら衛宮邸に────
「な、何だこれ?」
────そこは戦場か何かのように荒らされて、塀が何故まだ立っていたのかが不思議なほどの様子だった。
「イリヤ! セラ!」
「桜! ライダー! 返事をしてくれ!」
「ちょっと二人とも!」
士郎を背負っていた三月が凛の静止の声を無視して中へと突入する。
至る所には大きな穴や何が引っ掻いた後や動かぬ糸状の鳥が死骸みたいに転がっていた。
「皆!」
三月が足を使って居間に入ると────
「セ……………ラ?」
────左の脇腹をほとんど抉れ、体が壁に寄り掛かりながら血だまりの中で静かに目を閉じたセラがいた。
「死んで………いるのか?」
「兄さん、立てる?」
「な、何とk────いで」
三月が士郎を下ろし、立とうとした士郎は尻餅をつく。
「少しの間我慢していて、彼女を診る」
後から来たセイバー達が中の惨状を見ている間、三月はセラの傷口などを診ていく。
「………(凄い抉り方、まるで無理矢理身体の部分を千切った────)────あちゃばがはえはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
そこでセラの左目が見開き、三月は言語にならない叫びをあげる。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
餓死状態のセラの処置を凛と三月が行っている間、セイバーは少しでも回復出来るように彼女らと士郎達の警戒をする。
結界がない衛宮邸は以前より遥かに敵からの襲撃に弱くなった今、本心ではセイバーと凛は別の拠点に移動したかったのだがセラの怪我があまりに酷く、すぐにでも治癒しなければ何時死んでもおかしくない状態だった。
そして何とかセラの怪我を治療し終わった頃には士郎と慎二も自分で立って歩けるほど回復していて、彼女が衛宮邸で何が起きたのか説明し始めるが、極端に言うと────
────桜とライダーが不意打ちをかけてイリヤを連れ去った。
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イリヤ 視点
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時は丁度士郎とギルガメッシュの戦いが終わろうとする時、イリヤは痛みに意識が気付いた。
「ぅ……」
痛い。ただひたすらに痛い。
どこがとかではなく、全身余すところなく、ただ『痛い』。
それをイリヤが自覚したのは自分が目を覚ましたという事実よりも前だった。
「な、に…が────」
────起きたの?
そう言おうとして、体の苦痛より酷い頭痛に遮断される。
身を起こそうと身動ぐ。 が、それすらも様々な痛みの前に断念せざるを得ない。
とにかく、『自分』という構成物質全てが痛めつけるべく動いているようにイリヤは感じた。
別に痛みに慣れている訳ではない。寧ろただ体も心も小さく丸めて、小さな頃のように目を閉じて精神の中に閉じこもってしまえばいい。そうすれば、自分は苦痛を忘れられなくとも、苦痛はその内に自分を忘れて去って行く。 一度か二度ふと、「消えていった苦痛はどこに行くのだろう?」と考えた事もある。
けどあの日、自分がアインツベルンの最高傑作と知った日からはそんな
それは、来るべき聖杯────
「(────そうだわ、今は聖杯戦争中。 こんな風にマゴマゴしている場合じゃ…………ない)」
『聖杯戦争』という、文字通り自分の命を使い切る大イベントの真っ最中に少しずつ、思考力が戻って来たのは頭痛が引いてきたからでもある。
生憎と全身の痛みはしっかり残っていてとても動かす気になれなかったが。
「(そうだわ。確かミーちゃんの部屋があまりに殺風景だからセラが苗を買って来て、士郎達が帰って来た時の為に晩御飯をご馳走の用意している間に、セラが────)」
────イリヤは思い返していた。 自分は士郎の部屋を漁って……………ではなく、チェック……………………ではなく、取り敢えず彼の部屋をジロジロと見ていた。
その時に居間の方から大きく、派手な音と共にイリヤはほぼ反射的に自分の周りに数匹の『シュトルヒリッター』を展開しながら居間の方へ走り、そこにいたのは満身創痍のセラと、何処かぎごちない動きをする
そこでイリヤの記憶は途切れ、、最後に見た紫色の髪の毛で恐らくはライダーに背後を取られ気絶させられたのだろうと推測し、イリヤは目を何とか開ける。
彼女の視界に映る光景は、一言で言えば「殺風景」。 廃墟のような薄汚さはなく、人が頻繁に利用するような生活感もあまりなかった。 ただあまり
「(ここは………
イリヤは肘を叩き付けるようにして、寝返る事に成功させる。
そして広がる視界に体が冷たくなっていくような、まさに「肝を冷やした」状態だった。
それは別にカソックを着た男の所為でもなかった、何せ男は寝返りをしたイリヤに身じろぎ一つしていなかったので気付いたとも思えなかった。
イリヤが「肝を冷やした」のはその男の手に持っていた
それを見た瞬間、イリヤの胸が痛くなり、心臓が抉られた記憶が蘇りそうになったが、聞こえて来た声によってそれは遮られた。
『おおおぉぉぉぉ! 正に“聖杯”! 200有余年、ようやっとここに!』
それはイリヤが聞いた事の無い声だった。
そしてカソックを着ている男から発されたものでもなかった。
イリヤの体の痛みはかなり引いていたので体を動かし、台の上になんとか座った。
『綺麗だのぅ…………儂にそれを使わせてくれ! それは儂の────!!!』
「────触れたければ触れれば良い、
『ぬ、ぐぅ……相変わらず生意気な口を……』
『間桐のご老体』。 そう聞いたイリヤはこの声も持ち主が以前に資料を見た『間桐臓硯』だと繋がった。
それは少し注意すれば彼の言葉の他に小さな何かがうごめくような音。 そして床には無数の蟲が群れを成していた。
それが魔術に関するものだとしても、あまりにも「悪趣味」などというレベルを超越していてもっと深い澱の、
「…………それが『聖杯』なのね」
イリヤの声にカソックを着た男が初めて彼女が起き上がったのを認識する。
「これはこれは、目を覚ましたかアインツベルンの申し子よ」
暗く感情の見えない瞳がイリヤを見る。
「あなたが言峰綺礼かしら?」
「如何にも」
「…………………まさか聖堂協会の管理者がグルだったとはね、盲点だったわ」
「別に何もおかしくはない。 人間は見たいものだけを見て、他は見て見ぬ振りをする。 さて、君が目覚めるのは少々予定外だが…………はて、どうしたものか」
どうでも良い事を、どうでもよさげに悩んでいるような調子で、カソックの男────言峰綺礼は顎に手を当てた。
その仕草すらも、どうでも良さそうな感じで。
「やめておきなさい。 今の『聖杯』に異常があるわ。 それは使うべきではないものよ」
『それはもうお前さんの気にする事では無いのじゃよ、お嬢さん』
『キキキキッ!』
小さな鳴き声を発した蟲達にイリヤの体がぞわりと震え、蟲の群れがイリヤの乗っている台の周りを囲む。
『この小僧は用済みのお主を逃がすつもりであったようだが……しかし儂としてはまだ少々都合が悪くての、丁度
────儂の
『ギギギギッ!』
けたたましいほどの蟲達の鳴き声が辺りに響くと同時にイリヤは魔術を行使────
────
「え、あれ、どうして────?」
「────魔力を間桐の娘同様に吸い取れらたからね、当分の間魔術は行使が出来ない」
綺礼の言葉にイリヤはハッとしたように気付く。
協会の部屋の端にゲッソリとして気を失い、生気がなく、髪の毛を真っ白にした桜の姿に。
「ヒッ?!」
「ギギギギギギギギギギッ!!!!」
イリヤの恐怖に反応するかのようにまた蟲達が鳴く。全ての虫が一斉に、実に嬉しそうに鳴きだした。
「あ…………あ…………あああ────」
イリヤは思わず悲鳴が漏れそうになるのを止めていた。 醜悪な蟲達がぞわぞわと迫ってくる中で逃げようと体に力を入れるが、上手く動かなかった。
魔力の枯渇に、
「なあに、案ずる事は無い。 残りの世話は、『聖杯』も含めて、全て儂が請け負ってやるからのぅ。 ただ少しばかり……そうさな、2、3時間ほどじゃろうか? 女として生まれてきた事を後悔し続ける、その程度よ。 ああ、皮も衛宮の者共にも奇襲を仕掛けるのに絶好の素材よのぅ。 うむ、
止まらぬ老人の声と彼の笑い声。
歯がガチガチと鳴るイリヤ。
命乞いをしなかったのは、上手く声を出せなかったから。
緊張と恐怖がどんな言葉の発声もさせなかったというだけ。
出来たのであれば、きっと大きな絶叫を上げて泣きじゃくっていたであろう。
『ぬっ? こ奴もか、小癪な!』
蟲達の進軍が突然止まり、イリヤは一瞬誰かが助けに来たのかと思い周りを見る。
がそのような事は無く、ただポケットの中から魔力の流れを感じた。
「(これは………ミーちゃんの────)」
それは人生初の『家族』からの物体的プレゼント。
もちろんそれ以前にコッソリと士郎に会い、タイ焼きなど奢って貰ったが残る「モノ」を受け取ったのは三月が初めてだったのだ。
その様なモノをイリヤは肌身離さずずっと持っていた。
そしてそれが臓硯を一時的にだが止めていた。
だがそれも束の間、魔術礼装は魔力がなければ発動しない。
トランプカードの箱状にそんなに魔力が続く訳がない。
そもそもそれは持ち主が自身の魔力を流すのを前提に作られていた試作品、もう間もなく魔力が切れるのをイリヤは感じ、自分の体を抱きしめて目を閉じた。
「(バーサーカー────)」
イリヤは久しぶりに内心、助けを求めた。
最後にしたのは、あの雪の日にドイツのアインツベルン城の最終試験として身一つで山の中に放り出され、バーサーカーが自らの意思で助けにくれた時。
だがその頼みの綱の彼はもういない。
「(誰か────!)」
『よぉし、その鬱陶しい結界も弱まって来たのう。 クカカカ!』
「誰か、助けて! ミーちゃん! お兄ちゃん!」
イリヤは涙を流し、声を出しながらただひたすら祈った。
「誰か助けて」と。
家族の縁でどうにか自分の祈りが三月や士郎に通じる事を。
祈っている自分がそれらは届かないのも、聞かれないのも内心では理解しながらもただ祈った。
もし、こんな事を聞こえて、颯爽と登場するならば────
────それは正しく『
「
協会の屋根が壊れるとほぼ同時に無数の武器がイリヤの周りに落ち、蟲達を吹き飛ばす。
「────汚物は正しく消毒すべきモノだとな!」
目を開けて、上からくる声の方をイリヤが見る。
そこには月と星空をバックに、ボロボロになりながらも笑う
作者:シンカイコワイシンカイコワイシンカイコワイシンカイコワイシンカイコワイ
マイケル:ちょ、どうしたんだよ?!
三月(バカンス体):今日、なんかデッカイ怪物に潜水艦ごと食われたって
ラケール:ふぁ?! そりゃ怖いわ!
チエ:そうか? 中から食いちぎれば良いのではないか?
マイケル/ラケール:………………………………………………「脳筋」?
チエ:三月、「脳筋」とは何だ? ……………ん? どこかに行ったのか?
マイケル/ラケール:(逃げやがった!)
三月(バカンス体):楽しんで頂けたらお気に入りや評価、感想等あると嬉しいです! 宜しくお願いします!