"Stay, Heaven's Blade" Fate said. “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。” 作:haru970
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セイバー運営、イリヤ、衛宮士郎、アーチャー+ランサー運営 視点
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「きゃはははははは!♪」
くたびれたコートを羽織って笑う金髪の小柄少女№1。
「「ぎゃあああああああああああああああ?!?!?!」」
絶叫を上げ、シートベルトと車内の固定ハンドルを力いっぱいに握りしめる少年少女二人。
「おおおぉぉぉぉ~~~~~???」
気の抜けた感動(?)の声を出す金髪青年女性。
「アハハハハハハハハハハ! やっぱりこれ楽しいわ~!♬」
そして無邪気に笑う銀髪の小柄の少女№2。
「なぁアーチャー」
「何だねランサー?」
「中から凄い声が聞こえているのに、何でお前はそんな『スカッとした!』みたいな顔になってんだ?」
「え?」
暴れ馬の如く走る車の屋根の上のランサーが呆れた顔で、無意識に実に良い笑顔で笑っていたアーチャーに話しかけるとアーチャーの表情はキリッと引き締まる。
「お前、あの
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………いや、特に無いが?」
「へ、そうかよ?」
「そうだ」
士郎達はイリヤの絶妙なドライブテクを楽しんでいた(?)。
何度か士郎と凛は気を失いそうに(と言うか実際に気を失った時もある)なり、人生初の
遠坂邸から教会までの道のりは決して短くはなく、直接行くのはどうしても冬木大橋を通らなければならない。
が、遠坂邸からそうすると明らかに遠回りになってしまうのだが────
「ちょちょちょちょっとイリヤ?! このままじゃ未遠川の岸に着いちゃうわよ?!」
────車は直線を描くように最もダイレクトに教会へ続く道を通っていた。
「でもアーチャーが────」
「────このままでいいのだ、凛! イリヤ、岸まで着いたら一旦止めて待機! 三月君、魔力量はどうだ?!」
「バッチ良しよ~ん」
「アーチャー! どうするつもりなんだ?!」
士郎の言葉でアーチャーは車の中を見て、笑いながら答える。
「何、簡単な事だ。
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」」」
士郎、凛、そしてイリヤまでもが素っ頓狂な声を上げてランサーはカラカラと笑う。
「ほんっとお前らと居たら退屈しねえわ! で、どうやって渡るんだ?」
「そのまま川の上を走る。出来るか、三月君?」
「『最後まで希望を捨てちゃいかん。 諦めたら、そこで試合終了だよ』と、かの先生は言いました」
「ほう、それは誰だね?」
「スラムダ〇クの〇西先生」
「…………誰だそれは?」
「「「「アーチャーと同じく」」」」
「古い! 古いよ三月!」
三月の答えに?マークを浮かべるアーチャー、凛、イリヤとランサー。
そしてネタの事が分かり、ツッコミを入れる士郎。
「え? あ、そう?」
川岸まで車が着き、三月が車から出て川の中に両手を入れる。
「つめた?!」
「そりゃあ、冷てえだろうよ」
「ランサー、確か君は
「見せるって何を?」
「何って………
「…………………………………マジか」
「「マジだ/です!」」
ランサーの呆れ顔にアーチャーと(元気いっぱいな)三月が答える。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
士郎達が乗っている車が氷の橋(ランサー&三月特製の共同作品)を渡っている間、凛の難しい顔に士郎は気付いた。
「……大丈夫か、遠坂? 顔色が少し優れないぞ?」
「そう……ね……」
「リン、私も結構ショックよ」
「え?」
「ミーちゃんが
「いや、『人型ビックリ箱』に今更私は気をかけている訳じゃなくて────」
「────『人型ビックリ箱』ってもしかして私の事?」
「「「「当たり前だ/です/よ」」」」
「照れちゃうな~♪」
「「「「褒めてない」」」」
士郎、凛、セイバー、イリヤと三月のコントの間、アーチャーは不満の顔が消えないランサーを慰めようとした。
何せ彼が若干(と言うかかなりの)自慢の
ただし、ランサーの扱う『ルーン
つまり神代レベルの威力が出る魔術であり、現代の並大抵の魔術師が扱うにはハードルが高すぎる代物である。
これが頑張った遠坂凛や、アインツベルン最高傑作のイリヤであれば使える
それを三月はほぼ初見で行使したのにランサーのプライド………とまではいかないかもしれないが、彼にはその事が
それは車の中にいた他の者達も一緒だった。
ただ、三月を必要以上に刺激はしたくなかったので敢えて指摘しなかっただけだった。
「……………私が考えていた事は言峰の事よ。 アレでも一応兄弟子だったんだから」
「「「……………」」」
急に黙り込む車内にアーチャーの声が聞こえた。
「凛、奴の事はあまり気にするな………と言っても無駄かも知れぬが私の言い分を聞いてはくれないか?」
「アーチャー?」
「奴と会い、話してみて私なりに彼の事を解析したのだが………恐らくだが奴は『
「…………アーチャー、それは一体どういう事ですか?」
「何、簡単な事だセイバー。 『信仰』という『大義名分』の為に躊躇しない手合いほど厄介なモノは
かつて『守護者』としていろんな種類の人を見て、『掃除屋』として活躍したアーチャーの言葉には
正に「宗教」の為に何でもする人達を見て、それらの相手をした事のある経験者の助言だったからだ。
「つまり言峰綺礼は今までよりも更に
「では彼は以前、キリツグがマークしていた以上の『狂人』と定義しても良いと言う事ですね」
「…………そうだなセイバー。 そういう事になる。 勿論、すべては奴が生きているという前提だがな」
「…………」
未だに納得いかない凛の顔に、アーチャーがもう一度念を押すかのように言う。
「良いかね、凛? 奴は『狂人』だ。 もしそうと思えなくても
「…………そうね…………ありがとう、アーチャー。 貴方にはずっと聖杯戦争が始まってから助かっているわ」
「何、君のような魔術師に召喚された事が私にとって全ての始まりだからね。 これぐらいお安い御用だ」
「……………おう運転手の嬢ちゃん、このまま岸に乗り上げて教会まで突っ走れ。
「ランサー?」
セイバーが屋根からくるランサーの声に反応し、アーチャーが新都の方を見ると彼の表情が強ばった。
「そうだな。 ランサーの言う通りだ。
士郎、凛、イリヤと三月がサーヴァントたちは何を言っているんだろうと思いながら、新都の岸へと乗りあがり、車をそのまま走らせた。
運転手がイリヤのように『魔術師』に成り切れる者が幸いした。
何故なら他の者ならば思わず車を止めていたかも知れない。
新都の中は地獄へと変わっていた様子に。
一言でそれを表するのなら『阿鼻叫喚』。
正に災害の映画やニュースなどで出てくるパニックの暴動や様々な犯罪が見渡す限り行われていた。
周りは炎。
そして沢山の声が響いていた。
男性、女性、幼子、赤子や、犬、猫の動物たちが全て例外もなく音を上げていた。
「そんな?!」
「新都が…………」
「ッ」
カチリッ。
「あれは『聖杯の呪い』の影響よ。 このまま教会を目指すわよ、皆」
士郎と凛が「まるで映画の様……いや、それより酷い」と思っている中、三月の表情は固まり、『泥』を教会で見たイリヤは護身用に持たされた銃(グロック19)の安全装置を僅かに震える片手で解除した。
「ああ。 凛達は
「クソ! 胸糞悪くなるぜこりゃあ」
イリヤは車の速度を落としながら走らせ続け、止まって車や残骸、道に簡易なバリケードを立たせたような障害物を迂回する。
これは何かあった時に咄嗟の対応を取れる為と、『泥』と『蟲』の発生源である教会から新都内へと漂っていた空気が薄い場所をなるべく通る為だった。
新都はほとんどオフィス街で夜遅かったが、僅かに残った人たちやそこに住んでいる者達はさっきイリヤが言った『聖杯の呪い』の精神汚染にも似た空気に当てられ、理性が無くなりかけるかすぐさま狂気に陥り、暴行に出る。
周りから聞こえる悲鳴や叫び、言語にならない笑い声や鳴き声はまさに
「10年前と同じだ」
「そうだな」
「衛宮君? アーチャー?」
「「『冬木大火災』の再来だ」」
士郎とアーチャーが同時に言うと、凛は眼を見開き、外の状況を見て思う。
「(これが衛宮君や三月、アーチャー達が経験した地獄…………通りで………)」
それは気丈な凛でさえも身震いするほどの光景を、士郎達が間近に実際に経験したと思うと、彼らの幼少期にどれだけ酷い影響をしたのか想像できるような気がした。
「おいお前ら! 奴さん、来やがったぜ!」
ランサーが笑いながら『獣』の顔に変わった。
車の中の士郎達が前を見ると────
────『暗闇』の中を覗く様な感じだった。
いや、正確に言うと道の横に立っている街灯が前の道から次々と
これも正確ではなく、
イリヤがハイビームヘッドライトを点けるとその
それは50や100程の数では無く、更に無数の
「何だ、アレは?」
そう呟いたのは士郎か凛か三月かイリヤ、またはサーヴァントの誰かだろうか?
その闇はまるで全てを『黒』に染めるかのように必死に動き、中に爛々と赤く輝いていた瞳が有った。
今度はイリヤもまた吐き気に襲われるほどの効果があり、唸るような
『オ・ヲ・オオオォォォォォォォォォォ!!!』
それは何かの言葉か、鳴き声か、果たして意味のあるものだったのかさえ分からなかった。
ただ一つだけ分かるのは、これは
「何だこれは?! サーヴァントの気配がします!」
「なんとおぞましい! オレでさえもアレと似たモノに対峙した覚えはない!」
「け! 『影の国』を思い出させやがるぜ!」
セイバーは車から出て、アーチャー達の後部トランクの上に乗り、三月は持っていたキャリコを士郎に渡した。
「兄さん、これを」
「え? あ、ああ」
「安全装置は親指の所のレバーを跳ねれば解除するわ。 あとは引き金を引くだけ」
ガシャコ!
三月が散弾銃の弾丸が装填されているかの確認をするとアーチャーが既に『投影』していた弓に剣のような矢を構えると剣は鋭く変形した。
「行くぞ! I am the bone of my sword────」
ヒュン! ドゴォン!
アーチャーが放った『偽・螺旋剣』が閃光のように大群の蟲達の中へと消えて、大爆発を起こし、幾らか蟲達を拡散させた。
「かっ飛ばせ、イリヤ!」
ギャギャギャギャギャギャ!
アーチャーの叫ぶ声が引き金となり、イリヤは言われた通りにアクセルを踏み抜く勢いで、車のタイヤはアスファルトの道路に最初は上手く噛み合わず、けたたましい音を出す。
「オラオラオラァ!」
「せぇぇぇぇぇぇぇい!」
アーチャーが次の矢を構え、前方に撃つ間にランサーが車の周りを彼の槍が器用に回りながら襲ってくる前方の足の速い蟲達を、そしてセイバーが横などから来る蟲達を切り落とす。
その間、凛は乱れ撃つかのように『ガンド』を蟲の濃いところに強い一撃を撃って拡散させ、士郎はとにかく後ろから来る蟲達に対して銃を三月と共に乱射し、イリヤは蟲の死骸や
前方はアーチャーが『
だがこれはあくまで
確かに蟲達を同時に破滅していっているが、数が圧倒的に多い。
では薙ぎ払いに生き残った蟲達はどこに?
それは勿論────
「数が多すぎる! 三月、次の弾倉!」
「次の銃を使って兄さん! 弾倉を取り替えるより銃を持ち替えるほうが早い!」
────車の後を追い、後方から集結して迫っていた。
撃っても撃ってもキリが無いとは正にこれの事かも知れない。
三月は後ろの席のクッションを無理やり引きちぎってトランクへと直接通じるトンネルを作り、中から
「三月?!」
「左耳を塞いで遠坂さん!」
ボシュウゥゥゥゥ!
三月が
「それのどこが
あまりの非現実的な出来事の連続でツッコむ所がおかしくなった凛を三月は無視して、確かに彼女は見た。
「ロケットが?!」
それはロケットの弾頭の爆発が増殖する蟲達に呑み込まれていったのを。
「そんな馬鹿な?!」
「なら────!」
三月は焼夷手榴弾を二つ士郎に渡し、自分も二つ手に取る。
互いに一瞬見て、ハリウッド映画のように同時にピンを口で抜き、同時にそれらを投げる。
本来の手榴弾等ならピンを抜くのに約10ポンド(およそ4.5㎏)の力を使わなければピンは抜けられないように安全の為に設定してあるが、切嗣は使用者を三月と想定して、ワザと緩くしていた。
ボボボボォン!
「■■■■■!」
今度は焼夷手榴弾がハッキリと爆発し、先程のロケットよりも効果が見え、聞こえもした。
だが蟲達の数は減るどころか、寧ろ増えていたような気がした。
ただそれほどの距離を教会まで詰めていた実感が士郎達にはあったかも知れない。
彼らの中に冷静な人がいれば。
「駄目ですリン! 捌ききれません!」
セイバーが焦りを見せ始め────
「このままじゃ捕まる!」
士郎は周りに迫り来る蟲達を見て────
「『アンサズ!』」
いつもは「めんどくせーな~」とルーン魔術を使わないランサーでさえ小言を言わずに槍とルーンを使っていて────
「チィ! 数が多すぎる!」
アーチャーは舌打ちをしながら自分の想定より蟲の密集度が高い事に愚痴を吐き────
「(せめて他の皆を────!)」
三月は必死にこの状況打破を考えた。
その時────
「セイバーに命じる! 『真名開放を無視し、全力の宝具を使用せよ』!」
────凛が躊躇なくセイバーに令呪を使用した。
令呪が弾け、膨大な魔力の感覚がそこにいた皆が感じ、言葉が聞こえた瞬間士郎と三月と凛、そしてイリヤでさえも両手で耳を塞いだ。
その瞬間、目を焼き尽くすような、圧倒的光と轟音と共に直線上の全てを塵にした。
それは今から通るアスファルトがめくり上がった瞬間に光で消し飛び、道が平らのままになっていったほど。
『約束された勝利の剣』によって、道が示されたかのように前方の蟲達は見当たらず、まるで光の道が作り出されたように光の余波で道が輝けていたかのように見えた。
この『奇跡』によって車は
だが────
「効いていないですって?! いえ、回復が早すぎるのだわ!」
────瞬く間に
「ええ、確かに直撃しました」
炎々とした、セイバーの肯定の言葉。
彼女の剣を握る手から軋むような音が鳴り、彼女の
「ただ、それでさえも消しきれない量が勝っているだけです」
『敗走』。
その言葉が一瞬士郎達の脳内を過ぎっt────
「セイバー! 宝具を撃ち続けて!」
「「「「リン?!/凛?!/遠坂?!」」」」
驚きに全員が彼女の名を呼ぶ。
「ここまで来てリタイヤなんて私が許さないわ! なら、ありったけの火力をバンバン撃ってゴリ押しよ!」
凛自身、震えながらも笑いを浮かべながらそう強く言い切った。
普通ならここで三月がおちゃらけた事を言い、場を和ますのだが彼女もあまり余裕がなかったように凛には見えた。
そしてそれは的中していた。
先程から【 】の声がかつてない程とてもうるさく、鬱陶しかったので三月は
「ッ! 分かりました! 『エクス────』!」
セイバーも凛に釣られ笑い、宝具を撃つ用意に入った。
「フ.やはり君は最高の魔術師だよ、
アーチャーもニヒルな笑いを浮かべ、士郎と三月を見た。
「どうした二人とも?
「ッ! やってやる! やってやるさ!」
「ええ! 遠坂さんの言う通りね!」
士郎と三月がアーチャーの弓を『
「なら私も“アンゼンウンテン”なんて気にしないわ!」
「「「「「(あれのどこが安全運転なんだ?!)」」」」」
最後のイリヤの一言に皆の心が一つになった(ツッコミと心的な意味の二重に)。
少々短いですが取り敢えず投稿してみました。