"Stay, Heaven's Blade" Fate said. “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。” 作:haru970
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アーチャー運営、遠坂凛、イリヤ 視点
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一方、士郎達は駆け足で教会へと向かっていたが────
「────ん?」
アーチャーが不意に立ち止まって眉間にシワを寄せる。
「どうしたの、アーチャーさん?」
「…………妙だ…………イリヤ、君は確かに言峰綺礼が『
「え? う、うん。 確か、『
「では私の聞き間違いでは無いという事か…………」
「どうしたのアーチャー? 貴方のその顔は何かに気付きながら声に出し辛い時の表情をしているやつよ?」
「ぬ、そこまで分かり易かったかね?」
「私は貴方のパートナーだったのよ? それぐらい分かるわ」
「そうか…………いや、何時もの癖でね」
「一人で悩むところは兄さんと一緒だね」
「う」
「それで、アーチャー? 何を考えていたの?」
「教会の方向から来るサーヴァントの気配が
「「「
士郎と三月はただ聞き返した。
「……………まさか?!」
「それはマズイわね…」
「ああ、その『まさか』かも知れない」
その反面、凛とイリヤは難しい顔をして、アーチャーが肯定する。
「どういう事だ、アーチャー?」
「この先に『聖杯』が無いかも知れないという事」
「「?!」」
「でも、確かに驚く事じゃないわ。 『聖杯』がサーヴァントなら、本体が律義に教会で陣取る必要はないっていう事ね」
「ああ、時間は奴の場合は味方だからな。 逆に移動し、撃破を回避し回れば後は徐々に我々の敗北という事だ。 だがこの先からサーヴァントの…………いや、サーヴァントとも呼べない
「成程ね。 貴方の言いたい事が分かったと思うわ」
「「???」」
「…………つまり本体が教会にいない場合を想定して、別行動を取る班とこのまま協会に向かう班に分かれる判断ね」
「そうだ、そして今のメンバー結成ではそれは些か難し────」
「────そうでもないわよアーチャー?」
「「え?」」
「………………」
アーチャーの言葉を凛が遮り、ポカンとする士郎と三月に黙り込むイリヤ。
「全然あなたらしくないわ、アーチャー。 この場合の編成は単純明白よ。 教会へは私達魔術師チームと、本体の検索は単独行動の方が早いアーチャーに自然と別れるわ」
アーチャーは歯がゆい表情を浮かべる。
「…………凛………オレは────」
「────教会の気配が薄いのなら、魔力の塊である『聖杯』である筈がないもの。もしサーヴァントだったとして、こっちには『人間ビックリ箱』が付いているもの。 最悪自爆で何とかなるレベルの筈よ?」
「あの、それじゃあ私が自爆する前提なのですが?」
「「星が見えたスター」」
「うぅぅわぁぁぁぁぁぁ?! 俺はそういう意味で『アレ』を言ったんじゃね~よ~?!」
三月のダウトに士郎の言葉を借りてツッコむ凛とイリヤ、そして嘆く士郎。
アーチャーは呆気に取られたが、これが彼らなりの後押しと気付いた。
と言うか三月は純粋にダウトしただけであろうが、もしそうでなくても彼女も同意していただろう。
「…………わかった。 何か分かり次第、念話で報告を三月君にする」
「ええ、そして私達が教会にいる奴を片付けたらすぐにそっちに合流するわ」
「…………凛、三月君にイリヤ…………それと…………………………………」
アーチャーが言いにくそうに士郎を名前で呼ぶのを躊躇った。
「今更も何もないだろアーチャー?」
「いやその…………
アーチャーが最後の方の言葉を言い吐き、その場から消えた。
「……………今、アイツは俺に頼み事をしたのか?」
「やっぱりシロウはシロウね」
「え?」
「そうね、衛宮君みたいにぜ~んぶ一人で抱え込もうとするんだから」
「え?え?え?」
「まあ…兄さんだから」
「三月まで?! 何でさ?!」
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
士郎達が教会へと近づき、凛とイリヤが急に士郎と三月を破壊された壁の影に隠れ、物陰に潜む。
世界はまだ夜の闇の真っ最中で街灯等はない。
だが魔術師としての技術が特化している天才の二人にとってはそんなモノはどうにでもなり、彼女達は見た。
半分破壊された教会の屋根に立っていた人影を。
「誰か屋根の上にいるわ」
「待って、確か────」
三月はリュックから暗視スコープを取り出して、物陰からひっそりと辺りを見回す。
本来ならWA2000に取り付ける代物だが、ライフルは組み立てないといけなく、元より教会までくる間のカーチェイスで全弾を撃っていたので車に置いてきた。
「………………いた。
「「「ッ」」」
『神父さん』。 恐らくは言峰綺礼だろうと士郎達は思った。
何故、名呼びではないかと言うと、三月は彼に直接会った事もなかった為である。
なので彼女はカソックをしている人物を『神父』と呼んでいた。
だがここで三月に疑問が浮かび上がる。
「(何、
暗視スコープから覗く『神父』の横顔は
彼はただ、夜風に靡かれるまま半分崩壊した教会の屋根に直立していた。
「ちょっと、一発撃つわ」
「三月?」
「ええ、一番キツイ奴を一斉に皆でお見舞いするわ」
「ミーちゃんの合図で。 シロウは周りを頼んだわ」
三月は暗視スコープを下ろすが視線はそのまま動かさず、慣れた手動でリュックからスラッグ弾を取り出して散弾銃に新しく装填し、凛は片手を構え、イリヤは髪の毛を数本抜き取る。
「(まさか最初に撃つ人が
彼女たちが狙うのは胴体、人間の最も表面が大きく、内臓も複数ある場所。
三月が構えて、引き金を引く瞬間に凛とイリヤは同時に魔術を放ち、三人の攻撃が
「チ、やっぱりそう簡単にやられてくれないか」
「あれが、『
「と言うよりは防壁みたいなものね」
黒い壁が崩れていき、その向こう側の男が屋根から地面へと飛び降りて視線を向ける。
「今ので終わりか、
凛の体がビクリと反応する。
「なぜ自分は名指し?」と。
「それに攻撃が三つあった事から…………アインツベルンの申し子と…………衛宮士郎と言った所か?」
至極どうでも良さそうに彼らの名を呼ぶ綺礼。
「三月、貴方は機を見て奇襲をかけて。 私達三人が出るわ。 あと、衛宮君に銃を渡して」
「わ、わかった」
何故三人を名指ししたのかはわからない。 だがこれを機転に帰れるかもしれないと思った凛は即座に三月を切り札として扱うと彼女の思惑が士郎とイリヤにも伝わり、三人は姿を現す。
言峰綺礼の前に。
「クククク、
「綺礼! 話はイリヤから聞いたわ! 一体どういう事?! 何故監督役である筈の貴方が聖杯戦争に参加…………いえ、
「『何故』か…………ククク、
「「なッ?!」」
凛とイリヤが彼の答えにびっくりする。
彼の『聖杯』という『願望機』にまるで何も期待や密着などもしていない態度だった。
そしてそれは士郎にとって、彼を酷く動揺させた。
それは、以前の自分に似ていたからだ。
士郎はもともと、聖杯戦争自体に興味が無かった。ただ何の関係もない、罪のない人々が理不尽に命を刈られるのが嫌で参加していた。
故に『聖杯』に託す
「お前に、聞きたい事がある」
「衛宮君?/シロウ?」
思わず士郎はそう言っていた、綺礼に。
「ほう? 君が私に質問とはな? 良いだろう」
「何でお前はそんなにも穏やかにいられるんだ?!」、と叫びそうなのを士郎はグッと堪えた。
どうせ
それに士郎自身、先程の殺気に満ちた攻撃等に対して全く自ら反応していない綺礼にも気付いていた。
綺礼は少なくとも凛とイリヤの二人の殺気を
「いやはや、衛宮切嗣とは逆の立場になったな。 ちなみに勘違いをしているかも知れないので敢えて教えるが、
「(なら、ある程度はコントロールできるって訳ね………と言うか納得がいくのだわ。 ここまで来る間に全然『蟲』や『泥』に会っていないんですもの。 敢えて通らせている感じはそれか)」
凛がそう思う時、イリヤも同じ事を考えていた。
「(ならさっきのは『過信』していたという事かしら? ………いいえ、この男に限ってそれは無いわね)」
イリヤは心の何処かで
さながら『聖者』のように。
凛はと言うと気丈に振舞ってはいたが、内心混乱していてそれが怒りとして外に出ていた。
目の前にいるのが本当に
特に彼女は彼が嫌いで、あまり関わりたくが無い為に、
士郎は逆に
それはアーチャーとの対峙した時以上の苛つきだった。
「コトミネキレイ、貴方はなぜ私を生かしたの? それに、『聖杯』の疑似降誕はどうやって知ったの?」
この二つのグループの間の沈黙を次ぎに破ったのはイリヤだった。
そしてそれは彼女自身が持っていた疑問の問い。
綺礼は彼女を「用済み」と臓硯が言っていた。 ならば生かす理由が見当たらない。
そんな事をすれば「面倒」になるのは分かっていた筈。
イリヤが暴れるにしろ、逃げるにしろ。
それに『聖杯』の疑似降誕という裏技をどこで知ったのか純粋に魔術師として分かりたかった事もあった。
「まず、君を生かした理由に対しては簡単だ。
「ッ」
綺礼の答える態度はまるでイリヤの生死に「興味が無い」とでも言いたかったようだった。
そしてそれが元代行者である彼の本心に聞こえた。
『代行者』と言えば『神罰の代行者』の意味合いでもあり、通常は『聖堂教会の殺し屋』と裏の世間で知れ渡っていた。 そして彼らにとって敵や怪しき者は「とりあえず殺す」対象でしかない。
そんな奴がわざわざイリヤを殺さずに彼女の魔術回路を介して魔力を『聖杯』の疑似降誕をするといった、
「そもそも、
「「なッ?!」」
凛とイリヤが驚愕の声を出し、士郎はどこかでプツンと何かが切れた音が聞こえたようだった。
「何を言っているんだお前は?! 『殺すつもりが無い』だと?! ふざけるな! 今現在、あの『
「フム」
顎に手を当てて、悩み始める綺礼。
あるいはそうして見せているポーズだけかもしれなかったが、士郎達には見分けがつかなかった。
「少し食い違いがあるか。 そもそも『
「………………成程ね。 今まで理解したくなかったけど…………
「流石だ、凛。 そこまで突き止めるとは、
イリヤを見ながら綺礼は言い切り、イリヤは腰に隠し持っている銃を取り出して撃ちまくる衝動を御する。
イリヤ自身、『聖杯』に異常があったのは分かっていたが今までは
以前観た
誰も涙を流さず、
誰も不幸を嘆かない、
誰も殺さず殺さない優しい世界を追い求めたキリツグが『聖杯』の異常に気付いた気持ちをイリヤは分かったような気がして、足から力が抜けそうだった。
それを士郎が支える。
「お前は……………お前はそんなモノを持って、何を企んでいる?」
「何も」
士郎の問いに綺礼が即答して、言葉を続ける。
「強いて言うのなら、私は
「クソエセ神父のくせに馬鹿な事を言わないで!」
「遠坂…………」
「『主』の為にですって?! そんな下らないもので貴方は動いたというの?!」
「クククク……………ハーハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
綺礼が無邪気な子供のように笑い始めた事に、士郎達の背中がゾワリとした。
「…………全く持って、
そこで綺礼は凛から士郎へと視線を変える。
「しかし私は『神』と
「ふざけるなよ、お前! 俺とお前は違う!」
それはアーチャーが綺礼に言い放った事と酷似していた。*1
「熱くならないで衛宮君」
そこに凛の、必死に冷静さを保つ言葉言われるが彼女自身もあまり余裕はなかった。
「違わないさ、衛宮士郎。 私とお前の違いは詰まるところ本質の違い、たったそれだけだ。 共に壊れた行動、思想、そして願い。 ただ、求めたものだけが決定的に違う。人の為に自分を捨てようとした『聖人』よ。 私にはお前が衛宮切嗣の再来と見て、心が歓喜に満たされた。 私は自分の為に、人を捨てる事しか出来なかったのだから」
士郎は何かを言い返そうとした。 が、言葉が出なかった。
何故なら正しく綺礼の言った事には士郎本人も心の何処かで気付き始めていた。
凛は綺礼の言葉で何かあと一つ足りないパズルにピースがはまったかのように、士郎の言動が分かったような気がした。
イリヤは士郎がそんな事になっているとは露も思わず、考えが纏まらなかった。
その間、綺礼はただ言葉を続ける。
「私の妻は、私の為に死んだ。 私が人を愛せると証明しようと……………その時私は涙を流した。 その涙の意味が、どのような意味のものだったかは分からなかったが………私は信仰を続ければ……何かに尽くせば…………他の何かで何時か報われると思っていた」
それは士郎の以前、『正義の味方』への道を探していた頃とそっくりで、士郎は何か言いたくても、喉と口がカラカラに乾ききっていた。
「そして私は『主』に会った。 これが真に愉快な事で、私は
士郎は内心叫ぶ。
「それ以上は聞きたくない」と。
凛は拒絶する。
「こんな奴が自分を『弟子』ではなく『駒』」と言った意味に。
イリヤは激怒した。
「こんな奴がシロウと同じなものですか!」と。
「『
士郎は思う。
「もし自分が少し違っていたら、目の前の奴と同じになっていたかも知れなかった」と。
『
「私に目的などというモノがあるとすれば、それだ。『主』が囁くままに事を遂行する。そこに私の感情が介入する事は無く、また私にはそれで良い」
綺礼の指の間に刃なしの柄が数本ずつ握られた。
「喜べ少年! 君の『正義』が討つべき『悪』が今、目の前にいる! 喜べ、時臣の娘よ! 父親の仇が眼前に今ここにいる! そしてアインツベルンの申し子よ、喜べ! 先祖の不始末を自らの手で終止符を打てる事に! フハ、フハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
「…………え」
そうぼやいたのは誰だろうか。
士郎だろうか。
以前、聖杯戦争の詳しい事を聞きに協会に来て、去り際の彼に「『正義の味方』には『倒すべき悪』が必要なのだから」と綺礼が声をかけた時を思いだしたからか。
凛だろうか。
父の遠坂時臣が目の前の、自分の『保護者』が、10年間も世話を見られた奴が父親を殺した張本人と言われたからか。
イリヤだろうか。
自分自身が関係の無い、第三次聖杯戦争でズルをしようとした生まれた家の後始末をされている事からか。
「凛。 君は未だに私が渡したアゾット剣を持っているそうだね? どうだい、
プッツン。
「クソ鬼畜エセ腐れ外道神父がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「言峰、綺礼ッッッッッッッ!!!」
凛と士郎から発された声は獣の如く荒く、怒りから来るもので普段の彼女達を知っている者が聞いていれば、誰もが信じなかったような叫びだった。
これに反応するかのように笑う綺礼の手にある黒鍵達から刃が伸び、綺礼は脳内であることを考えていた。
「(さて、
歴戦と言っていい元代行者の言峰綺礼。 その真骨頂は魔術に長けている事でも、現代兵器のからくりなど知っている訳でもない。
吸血鬼や使徒といった人外相手に、殴り合って殲滅に追い込む事さえ出来る格闘技術を使った接近戦だ。
そんな彼が並大抵の反射神経をしていない訳が無い事を悟った三月は少し遠い所から『投影』した弓に
洞窟の天井の水滴が少しずつ落ちて、析出した物質が床面に蓄積して石筍を作るかのように。
地割れが起きる前に土が極僅かに空洞になり、地盤が緩くなるように。
マイケル:何こいつ
ラケール:こう…………色々と狂っている
雁夜(バカンス体):綺礼だから
三月(バカンス体):そうそう、綺礼だから
チエ:綺礼だからな
綺礼(バカンス体):これは事後処理が大変そうだな
マイケル/ラケール:そこかよ?!
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