"Stay, Heaven's Blade" Fate said.  “「その天の刃、待たれよ」と『運命』は言った。”   作:haru970

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第5話 雨の中のワカメと雨も滴る良い女……………の子

 ___________

 

 三月 視点

 ___________

 

 

 

 それから数時間後………

 

 三月は間桐邸から無事生還(?)し、士郎と帰り道を歩いていた。

 

「どうだ? あの桜って子と友達になれたか?」

 

「………色々と『重い』よ。(この数時間、完全に目が死んでいる人の抜け殻みたいな子なんて私、相(・)手(・)を(・)し(・)た(・)事(・)が(・)無(・)い(・)のですが)」

 

『政治家は無理難題を仰る』とはよく言ったものだ。

 

「(はい、『アニオタ』は『待機』ね)」

 

「ハァ、そうか………」

 

 ため息混じりにそう言う士郎。

 

「え? 何その失望感混じりの『ハァ、そうか』は?」

 

「いや、その……慎二がさ、期待していたみたいで」

 

「期待?」

 

「うん」

 

『機体』って…………あのフルアーマーガン〇ム並の装甲は純度百パーセントのガ〇ダリウム合金やぞ? ちっとやそっとの攻撃(攻め)では────

 

「(────はい、『アニオタ』はしばらく『封印』ね!)」

 

 士郎曰く、慎二は桜を心配しての行動だったらしい。

 家でも学校でも暗く、変わらない表情のまま、いつも俯いている桜を何とか元気づけてあげようとしていたようで、悩んでいたのを士郎が聞き、『昔の三月』を連想したらしく、『今の三月』を見てきた彼の推薦で三月と会わせる案が出た。

 

 慎二は「へー、あの『月の女神』がねー」と言いながらも、三月の『学校での人となり』を知っている彼はこれを名案と受けて即行動に移ったとか。

 

「(成程。私を矢面に立たせたのが、まさかのお兄ちゃんだったなんて………………)」

 

 ちなみに『月の女神』なんて二つ名が三月に付いた理由は見た目(白い肌)と近寄りがたい雰囲気(普段の静かな態度と落ち着いている様)に反していざ話してみるとかなり接しやすく、博識で色んな事の質問に対して答えが返ってくるが積極的に自分から人と関わらないからとか、まるで宇宙に浮いている月に着陸(ムーンランディング)したような感じだとか。

 

「(まあ…桜の事は分かったし、慎二が心配しているのは分かった。)そっか……じゃあ、あそこ(間桐邸)より、今度からはウチ(衛宮邸)に招待して良い?」

 

「ああ、慎二も喜ぶだろうしな」

 

「(何でお兄ちゃんは私を見ながらニヤニヤしているんだろう? というかこれって桜の為なのに、なんで慎二の名前が? ………………ああ、私達が桜の為に色々している事が嬉しいって事か)」

 

 三月は取り敢えずその日の食材は激辛麻婆豆腐のみに限定して士郎を許す事にした。

 

 合掌。

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 あれから一年ちょっとの時が過ぎ、衛宮邸に慎二と桜がよく来るようになった。

 口では『仕方なく来てやった』など言うが、こっそり三月と大河と桜のやり取りを覗いているのは三人とも気付いていた。

 そしてようやく一年が過ぎる頃に桜が初めて笑った。

 『笑う』と言うよりは口の端っこがすこ~し吊り上がった程度だが。

 その時の皆の大口を開けた間抜け面は三月は忘れられようがなかった。

 

「桜がッ! 笑ったー!!!」

 

 そして一番に歓声を上げながらガッツポーズをしていたのが慎二だという事も忘れられない。

 

 「(フハハハハハ! 如何に純度百パーセントのガンダリ〇ム合金といえども、至近距離からそう何度も二連装攻撃(三月+大河)は防げまい!)」

 

 そこから桜は更に変化していった。

 何事にも無関心だった彼女が三月か大河、または士郎の後をつくようになった。

 

 このトコトコ歩いて付いて来るのはどこか生まれたてのヒヨコを見ているようで、三月の胸はポカポカした。

 

 あと、一方通行だった会話も桜はある程度出来るようになった。 

 なったというか…………

 衛宮家の三人自体が話題になるのだが…………

 

「(ま、まあ『友好関係』で『話題』は必要だからね! うん!)と言う訳でお兄ちゃん、ポテト頼んだー」

 

「何が『と言う訳で』は知らないが頼まれたー。 ホワイトソースは良い匂いするなー」

 

「ねー。 チーズ多めにしようー」

 

 三月と士郎がエプロンをしながらグラタンの用意をしているのを外野は見守る。

 

「ああ、いつ見ても良い……僕は今、歓喜に満たされているッ!」

 

「そうねー、あの二人の料理すっっっっっっっごい美味しんだから!」

 

「……………はい、あたたかいです」

 

「僕も美味しいと思うがそれじゃない……………じゃなくて!」

 

 

「(通常運転の大河とワカメは放っておくとして────)」

 

 最初はこの光景を見た桜はどこか理解出来なかったような感じで眉間にシワを寄せていたが、今ではすっかり楽しく(?)頭を傾げて他の二人と待てるようになった。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 そしてジメジメする雨の日、あ(・)の(・)慎二が傘を差しもせず、びしょ濡れになりながら衛宮家に突然来ていた。

 

 三月は最初、『乾燥したワカメを濡らしていた』と思っていたが、彼の形相が余りにもよく『知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)』悲しみで、震える声で困惑している三月と士郎達に喋り始めた。

 

「分からない、僕は…………どうしたら…どうしたら良いのか分からないッッ!」

 

 彼は泣いていた。 声と体を震わせながら。 ビックリしながらも士郎達は優しく声をかける。

 

「お、おい慎二…何かあったのか?」

 

「…………………ああ。 あったさ。 僕は、知らなかった。 知らなかったんだ! 今までずっと………ずっとずっとずっと、アイツは────!」

 

 慎二がギリッと歯を噛みしめて、床を拳で殴る。

 

「────アイツは! 僕を! 哀れんでいたんだ! 嘲笑っていたんだ! 何も知らない僕を!」

 

「えっと…………『アイツ』って誰?」

 

「ッ」

 

 慎二は一瞬何かを怒りのまま叫ぼうとして、言葉を飲み込んで三月を睨んだ。

 

 そんな彼の顔が、どこか痛々しくて、三月は自信の胸がチクチクした感覚を感じていた。

 

「ねえ、私達にはなsh────」

 

 バキッ!

 

 一瞬何が起きたのか分からなかった。

 

 三月は慎二の方へと近づき、心配した声をかけると視界は次のとたん、玄関の天井を見ていた。

 

「…………………?」

 

 そして頬にじわじわと痛みを感じ始め、ジワリと三月の口の中で鉄(・)の(・)味(・)を(・)し(・)た(・)も(・)の(・)が(・)広(・)が(・)る(・)。

 

【告。 頭部への損傷、軽微。 プロトコール(手順)に従い、修理を行いますか?】

 

「…………(ああ、これが『殴られた』痛みか)」

 

「…………は………はは……………ハハハハハハハハ!」

 

 未だに微動だにしない三月に慎二の笑う(泣く)声が聞こえる。

 

「慎二ぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 バキッ!

 

「グフゥ!」

 

 士郎の怒り(哀しみ)の籠った声が鈍い音と共に響き、慎二が息を素早く吐き出す。三月は起き上がって雨の中で慎二の胸倉を掴み、もう一度拳を振るおうとする士郎が見えた。

 

 ────ダ(・)メ(・)。

 

「────ッ! 待って!」

 

 ────こ(・)こ(・)で(・)止(・)め(・)な(・)い(・)と(・)ダ(・)メ(・)。

 

 二人が三月の声に反応してこっちを見ると同時に、彼女は立ち、そのまま出ようとして雨の中で倒れる。

 

「ッ! 三月!」

 

 士郎は慎二を離してすぐに三月の元に来て、体を支える。

 そして慎二は────

 

 

 

 

 

 

 

 ────泣いていた(笑っていた)。

 

「ハ、ハハハハハ! ザマァないぜ! 僕を、僕を嘲笑うからこうなるんだ!」

 

「慎二! いい加減に────」

 

 三月は手で士郎を制して、慎二の目を見た。

 

「………私は、貴方を嘲笑った事など一度もありません」

 

「ッ! う、嘘だ! 僕は知っているんだからな! お前は、僕の苦しむ姿を…………空回りする姿を内心笑っていたのを! 何が『月の女神』だ! お前は『悪魔』だ!」

 

 慎二の言った言葉に三月の胸がズキリと頬以上に痛むのを感じながらも言葉を続けた。

 

「そんなことは一度たりともありません! 私は………貴方の────

 

 

 

 

 

 

 

 ────まっすぐな、一途な生き方を誇りに思っています! 決して! 決してあなたを嘲笑うなどと考えた事はありません!」

 

 三月のかつてない叫びを聞いた慎二と士郎両方は目を見開き、慎二の笑い顔が更に引きつる。

 

「あ、ああああ……僕は………ぼ、く、は────」

 

「慎二?」

 

 慎二が笑いながら(泣きながら)、泥だらけのまま衛宮邸から走りだす。

 

「(これで、良かったのかな? ちゃんと伝わったかな?)」

 

 若干の不安を残し、三月は気を失った。

 

 ___________

 

 士郎 視点

 ___________

 

 

「(三月(妹)が殴られた。

 誰に?

 慎二(親友)に。)」

 

 気が付けば士郎は怒りに身を任せて、慎二を殴った後だった。

 

「ハ、ハハハハハ! ザマァないぜ! 僕を、僕を嘲笑うからこうなるんだ!」

 

 だが慎二は笑った。

 

「(笑(・)い(・)や(・)が(・)っ(・)た(・))」

 

 士郎が慎二の胸蔵を掴みながらもう一度殴る前に三月が俺を止める。

 

「………私は、貴方を嘲笑った事など一度もありません」

 

「(三月?)」

 

「ッ! う、嘘だ! 僕は知っているんだからな! お前は、僕の苦しむ姿を…………空回りする姿を内心笑っていたのを! 何が『月の女神』だ! お前は『悪魔』だ!」

 

「(『悪魔』だと?

 三月が?

 ふざけるな!)」

 

 

 そう士郎が叫ぶ寸前に三月(妹)の次の言葉でグッと堪える。

 

「そんなことは一度たりともありません! 私は………貴方のまっすぐな、一途な生き方を誇りに思っています! 決して! 決してあなたを嘲笑うなど考えた事もありません!」

 

 これに士郎はハッと気付く。

 慎二の顔が、未だに雨(・)以(・)外(・)の(・)理(・)由(・)で(・)濡(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)事に。

 そして驚いた、三月が自(・)分(・)以(・)上(・)に(・)信(・)二(・)を(・)視(・)て(・)い(・)た(・)事(・)に(・)。

 

「あ、ああああ……僕は………ぼ、く、は────」

 

 慎二が衛宮邸から飛び出して、三月が気を失った。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

『こちら藤村組。 只今電話に出られませんので発信音の────』

 

 ────がちゃり。

 

「…………ハァ」

 

 士郎は電話を切り、横になった三月(妹)を見る。

 泥だらけで苦しそうに息をする彼女を。

 寒い季節の中雨に当たった所為か、息遣いが荒く、汗を拭きだしながら苦しんでいた。

 

 三月の身体は昔から弱く、突然体調不良になる事も小学生の頃は良くあったが、中学に上がって最近までは収まってきていたというのはただ単に三月が無理をしなかっただけらしい。

 

 そして士郎も寒気を感じ始めていたので、三月を知人の女性に任せ、風呂に入らせた後に自身も入る予定だったが……今になって知っている女性の人達と連絡が付かなかった。

 

「………クソ!」

 

 歯がゆさで士郎は壁を殴り、拳に再度痛みが走る。

 

「(………そういえば慎二を殴ってしまったな。俺を恨んでいるだろうか?)……………」

 

 苦しんでいる三月を再度見て過去を思い出す。

 

 士郎から見た『昔の三月』はどこかオドオドしていた為、一緒に手を繋いで出掛けたり、一緒に(背中を合わせて)布団で寝たり……………一緒に風呂にも入っていた事もあるが、それも全て中学に入る前だ。

 

 『お兄ちゃん』呼びは未だに続いているが、まるで別(・)人(・)と思えるほどに中学に入ってから三月は本当に見違えるように変(・)わ(・)っ(・)た(・)。

 

 衛宮邸で士郎と二人の時だけの場合は甘えてくるが。

 

「(…………………よし、現実逃避はこれぐらいにしよう。 ここには泥だらけで汚れて、体が濡れて冷え切った三月がいる。 そして今そばには俺しかいない。 覚悟を決めるんだ! 衛宮士郎!)」

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「フゥー」

 

 士郎は湯船に浸かいながら溜息を出した。

 ちなみに三月の体は(目隠しをしながら)布とお湯で拭き、彼のジャージに着替えさせてから新しい布団と毛布で寝かせた。

 

 三月のパジャマ…と思ったが、仮にも女性の部屋の中に入ってまでタンスを開ける勇気は無かったそうだ。

 

 体を拭く、その時チラリと目隠しがズレ────

 

「雑念退散雑念退散雑念退散雑念退散雑念退散ッッッッ!!!」

 

 士郎は顔にお湯をバシャバシャと乱暴に洗って、他の事に気を逸らす事にした。

 

 でも着替えさせた時の感触、やわら────

 

「────うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 湯船から出て、冷た~い水を頭からかぶり、頭(顔)を冷やす。

 三月の下着?

 

 士郎は脱がせなかったので、起きた三月は若干不満そうになったのは後の事となる。

 

 

 

 そして結局この日から慎二も桜も衛宮邸に遊びに来る事は無くなり、彼らと知り合う前の状態に逆戻りしてしまった。

 

 いや、寧ろ慎二が来なくなった分更に悪化したと言うべきか。

 

 ___________

 

 三月 視点

 ___________

 

 

 バシィン!

 

「あいた!!」

 

 三月は鋭い音と共に手が痛み、顔をしかめる。

 

「うーん、やっぱり三月ちゃんは筋力が弱いかな? 力はあるけど、あまり長持ちしないし…やっぱりもう少し体を作る所から始めようか。 それまではゴム弓を引くのは控えめにした方が良いかも」

 

「でも、美綴には話ているでしょ? 私はずっと『こ(・)う(・)だ(・)』って」

 

「もう! 今更知らない中じゃないんだから『綾子』って呼びなよ、『月の天使』さん?」

 

「う゛。 ま、まだ成長中だからね、『主将』! これでも二段弁当箱一(・)人(・)で(・)毎日食べているんだから!」

 

「はいはい、そういう事にしておくね…………それにしても、アンタが羨ましいよ、あれだけ食べても太らないなんて…」

 

『美綴綾子』。 穂群原学園の生徒。

 

 そして三月の『兄(・)さ(・)ん(・)』が所属している弓道部の主将だ。

 

 あの『雨の日』から気を失った三月が起きた後、『お兄ちゃん』と呼ぶより『兄(・)さ(・)ん(・)』と呼んでくれと士郎が彼女に頼んだ。

 と言っても、外などでは『士郎』と呼ぶようになってしまったが(視線が痛かったらしい)。

 

 特に嫌がる理由もないので三月は了承し、そして高校に上がってからは士郎と一緒に弓道部に入り、あ(・)の(・)慎二に再開した時、二人はすごく驚き、彼ら二人を見るのが辛かったのか、最初の頃に再開した慎二は部活動をサボっていたり、仮病で姿を見せなかったなりなどしていたが『美綴綾子』がある日、校門からコソコソと出ようとした慎二を(物理的に)無理矢理弓道場まで引きずって来て、(物理的に)無理矢理挨拶をさせた。

 

 今では昔のように…………とまでは行かないが、それなりに士郎とは話せる仲には戻った様かに見えた。

 

 あと、『月の天使』の二つ名に関しては彼女の体格が関係してくる。

 

 何故か中学に上がった辺りから身体がほぼ成長しなくなったのだ。

 周りの人達の身長や他(・)の(・)部(・)分(・)等がグングン伸びる中、三月はそのままなので、体格が『女神』から『天使』に下がったらしい。

 

 気にしていた三月はありとあらゆる行動で何とか改善しようとしたが…………未だにあまり変化は何処にも表れていなかった。

 

「ハァ…(牛乳飲んだり、鉄棒にぶら下がったり、兄さんの陸上部の真似までしたのに……………いや基礎体力は上がったよ? でも体は成長してくれなかったよ。食欲はそれに伴い増える一方だし……魔(・)術(・)で他人の前で自己強化を頻繁にする訳にはいかないし……)」

 

 三月にとってはトホホのホである。

 

 そこで士郎が弓道部を進めて、何で加入したかの理由をある日三月が言うと────

 

「────ええええ? 成長した三月なんて『三月』じゃないよー?! 今のままでいてよー!」

 

「そうよー! 何で私達が弓道部にいると思てんの?!」

 

「むしろお持ち帰りしたい。 ハァハァハァ」

 

 ────などと他の部員から言われ、御覧の通り弓道部員(・)よりは弓道部マ(・)ス(・)コ(・)ッ(・)ト(・)になっていた(最後の二人は美綴に怒られて反省は一応したらしい)。

 

 三月的にはまあ、内心複雑ではあったが悪い気はしなかった。

 

「何だ何だぁ? まーだゴム弓を卒業出来ていないのかよ、三月ぃ?」

 

 何時ものニタニタとした笑顔で慎二が三月たちに言い寄る。

 

「や、弓持てば一応引けるけど、長時間するのは危なっかしいって綾子が言ってさ」

 

「は! 兄が『お人よし』なら、妹は『言いなり』か?」

 

 そして何かと多い慎二からの『文句』と取り巻きの女の子達がクスクスと笑う。

 

 これも多分、慎二なりの気遣いなんだなーと思う三月。

 

「(ただ、彼の取り巻きガールズの反応と態度がその印象をずらしてしまうから、他人からは『嫌な奴』になってしまうけど。)お気遣いありがとう、慎二君(・)」

 

「あ……う………………チッ!」

 

 三月がいつもの通りに笑顔(営業スマイル)でそう答えると慎二がタジタジしながら舌打ちをして道場の別の方へと歩き、美綴がジト目で見る。

 

「アンタ、分かっていてやってんの? それ?」

 

「????? 何を?」

 

「……………ハァー、流石『月の天使』様ねー。 これで衛宮のように弓も(・)百発百中だったら『月のアルテミス』に改名できるのになー」

 

「なんでさ?」

 

 だが『この時も』長くは続かなかった。

 

 この後の週間後、士郎がバイト先で肩に火傷を負い、慎二が「火傷の痕のある奴が礼射をするのは見苦しいのでは?」と指摘した事を士郎は真に受け取ったのか、彼は弓道部を辞退する事となる。

 

 元々体作りの為に三月も弓道部に入っていたので、彼女も辞めると宣言した時は皆からの反応に胸が変な感じだったのが三月にとっては印象的だった。

 

 だが流石に宣言をした同じ日に他の部活からの誘いが来るとは思わなかったので、次の日から一応『弓道部の助っ人』みたいなポジションと、『時間があったら来る』と、美綴に条件を付けた。

 

「(まあ、片手を使えない兄さんの面倒を見るからその様な時間は当分無いと思うけど)」

 

 そう思い、『あの時』のように雨が降る日────

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────『間桐桜』が衛宮邸に一(・)人(・)で(・)訪問して来た。

 

 

 以前の死んだ目と感情の無い状態で。

 

 傘も差さない彼女を見ると、何時かの慎二の事を二人は思い出しすぐに彼女を中へと招き、取り敢えず体が冷えないようにお風呂に入れて、彼女は三月の……………ではなく、士郎のジャージに着替えさせた。

 

「(悔しくないわよ。 悔しくないんだから! 桜に私の服のサイズが合わないなんて~!)」

 

 そして士郎の調子を見に来た藤村先生に士郎のジャージを着た姿の桜を見て、士郎に迫って盛大に怒った。

 

「(いや、何が『三月ちゃんと言うモノがありながら!』なのかが分からないよ、藤姉。)」

 

 その日は何とか怒るタイガー(大河)をなだめてから桜を見送った。

 

 だが桜は来る日も来る日も、平日も休日も、晴天も雨の中でも関係なく訪問しに来た。

 

「(う~ん…………『私』から見た彼女は何か『自分から訪問』をしているんじゃなくて、『訪問させられている』感じがするから、慎二の気遣い………なのかな?)」

 

 このままでは埒が明かないと悟ったのか、三月と士郎は桜を招き入れ、その日から家の家事などを手伝わせた。

 

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

 

 更に一年が過ぎ、三月と士郎の二人は晴れて穂群原学園の高校二年生になり、桜は一年生の、彼らの後輩となった。

 

 そして彼女(桜)はその一年の間に徐々にかつて以上に感情を見せ始め、『人の抜け殻』から『人』へとすくすく成長していき、今では立派に毎日衛宮邸の家事を手伝ってくれて、そのおかげで士郎は以前よりもっとバイトを増やし、土蔵で『修行』する時間などが出来た。

 

 勿論、魔術を知らない桜に隠れながらだが、あまり進歩は捗っていなく、三月も直接助けたいが、以前切嗣に言われたのだ。「君は(三月)は有能すぎる」らしく、「他の人に悪影響を及ばせかねないから極力他の人には秘密にして、助言をするのは口頭で」、と。

 

 ただあまりにも進歩が無く、士郎は「自分には才能ないかもな」と苦笑いをしていたが、三月に言わせてみれば、士郎の魔術は『強化』ではなく別の『何』かと感じた。

 彼女自身、正式に魔術を一から習ったわけでは無いのでこれを単なる『違和感』として認識を処理していた。

 

 後、三月は何気に薬や包帯の使い方が更に上達した。 弓道部の頃から他人の怪我などの治療や、桜が何時の日か家で家事をしている時に怪我をしているのを見て手当をするようになった。

 

 桜は「先輩(士郎)に何も言わないで」と言って来るが、明らかに殴られたりされた跡に三月は酷く動揺し、モヤモヤとした気分で桜の意思を尊重していた。

 毎度必ず「どうしたの?」や「誰なの?」と三月は訊くが桜は何も言ってくれないので、ただ静かに怪我を見た都度に手当を施す。

 

 話が少し逸れたが、桜は今では衛宮家の家事全般を自分から担おうとしているので、三月にも時間が出来た。

 ただ、何故か彼女が士郎の様子を見に行くと桜もついてくるので士郎の邪魔にしかならない。

 なので見に行けない代わりに普段は新聞や本を読んだりなどをしている(『知ろう』と思わず単純に読んでいるだけ)。

 

 そして剣道の素振りなどし始めたら何処で聞きつけたのか未だに突っかかって来る大河に試合を申し込まれるので三月は控えている。

 

「あ~ん! 士郎も私と試合するの嫌だって言うし、私はどうすればいいの~?!」

 

 と嘆く大河だった。

 

 ちなみに今三月は『理論書』と呼ばれている物などを読み始めて、家だけでなく、教室で休憩時間の合間(二段弁当を一人で食べた後)に続きを読み続けている最中に話しかけられた。

 

「そう言えば三月って『ミス・パーフェクト』と会った事ある?」

 

「………………………????」

 

「え、三月は知らないの?!」

 

「やーね、三月には多分眼中にないのよ。 チャームポイントも方向性が違うし」

 

「う~ん?(そんなんじゃなくて、ただ興味が湧かないだけなのだけど…)」

 

「私達の学校はいいなー、文武両道の美人と小さくて可愛い子がいて……この二人が────おっとヨダレが……」

 

 いつも三月の周りに来る女子生徒たちが『ミス・パーフェクト』と呼ばれる人と彼女を比べ始める。

 曰く彼女と似ている部分があるのだとかないとか。

 

「(……てか最後の奴、『小さくて』の一言は余計だ! せめて『小柄な』と言え!)」

 

 そして士郎は未だに『人助け』を積極的にしていて、時には朝早くから登校して夜遅くまで帰って来ない。

 過ぎる日々に度が上がって行くような気がするのは三月だけでなく、大河が彼女と心配する桜の分まで説教はしてくれるが効果は無かった。

 

 ただ三月の胸がこの頃余計にザワザワし、ニュースで見る殺人事件やガス漏れに行(・)方(・)不(・)明(・)者(・)事件等を見て『違(・)和(・)感(・)』が更にそれを引き立てた。

 

「(…………物騒だ。 これからは兄(・)さ(・)ん(・)と(・)一(・)緒(・)に(・)い(・)な(・)く(・)て(・)は(・)な(・)ら(・)な(・)い(・))」

 

 そう思った次の日、三月と士郎は久しぶりに弓道部にいた。




時空的に前半は士郎も慎二も三月も中学生で、桜はギリ小学生の感じです。

『士郎と慎二は同じ中学だったのかな?』と思う方もいますでしょうが………まあ、そこは独自解釈+小学生辺りから噂になり始めた三月という要因があったという事からコンタクトを慎二が取ったという感じです。

あと士郎の胃は無事に激辛麻婆豆腐を乗り越えました(『アレ』レベル程ではないので)。

そしていよいよ次話から原作スタートです!

ちゃんと書けれるか心配です(汗。

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書く燃料とやる気が湧いてきますので!
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