【ストパンVR】初見で最高難易度だけど超余裕   作:Kkmn

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姉妹

「....もう良いです、早く、こんなゴミは投げ捨ててください」

「はっはっは!!!何を言うかお前一人くらい軽いモノだ!ちゃんと飯は食ってるのか?」

「いいから…!もう、足手まといになってまで生き恥を晒すなど…!!」

「何を言う。こうして私に銃を持ってきてくれただろう、足手まといなどではない!!」

 

腹部からあふれ出す血が私をおぶる坂本の扶桑の白い士官服を汚していく。

あぁくそ、久しぶりの戦場の空だと思ったらこれだ。

こんな無様な姿を晒し、他人の足を引っ張ることしかできないのだ。

 

「アナタだけでも逃げなさい、坂本。この後マルタを奪回するには、あなたの力が…げほっ」

「喋るな!それにまだ奪われてはいないぞ、もうすぐプラマー軍曹が本懐を成し遂げてくれる筈だ!」

 

 

あの子は、エイミーはどうなっただろうか。

万に一つの可能性を賭けた彼女からの通信は数時間前から途絶している。

やはり未来予知の魔女であろうと無謀が過ぎたか、数も種類も分からぬ敵の巣窟に送り込むなど。

しかし仕方がなかったのだ。マルタが堕ちればアフリカ、そして欧州は間違いなく陥落する。そうなれば次の戦場は我が祖国リベリオンだ。

恐らく糞ブリテン野郎どもは魔導兵器のウォーロックさえあれば何処が堕ちようとも知った事ではないと考えているのだろうか。

まったく、それが欠陥兵器だと知らされているこっちの身にもなってほしい。

 

「ルッキーニ少尉もまだ彼女を信じて戦っている!!諦めるn――――なっ!!?」

 

 

私を背負う坂本が急に体勢を崩す。見るとストライカーが…なんだこれは!?先端から黒く染まっていき、魔法翼の回転とエンジンが止まっている!?

しかもそれだけではない、その遥か下には――――。

 

「なんだ、あのネウロイは…!!?」

 

マルタ島の大地を割き、そこから現れたヒル型――――いや、それはもはや"大蛇"と表現しても憚られない程の巨大さの規格外のネウロイ。

それが頭をもたげ、こちらにおぞましく蠢く赤い口を向けていたのだ。

 

「ぐっ…なっ。私の、ストライカーもっ…!?」

 

見れば自身のストライカーさえ黒く染まり、その翼をもがれていた。

咄嗟に坂本の身体を支えようとするもそれすらも出来ず、ただ高度を失い墜ちていく二人。

 

 

「―――シールドを展開して不時着する!!私にしがみつけッッ!!」

「ダメです!下で待ち受けられています!!」

 

 

あぁクソ、なんてことだ、忌々しい巨大なネウロイがビームを撃とうとしてるのがはっきり見えてしまった。

ドッリオに、リカに謝っておくべきだった。あの面白いウィッチの行く末を見届けたかったのに。

リカは悲しんでくれるだろうか、それとも薄汚いウィッチが消えて喜ぶだろうか。

 

「…ごめんね、リカ。約束、守れなかったよ。」

 

友達の頼みなど聞いてしまったのが間違いだったのだろうか。

ああでも、こんな死に方なら悪くない。恨みを買った誰かに背後から撃たれるよりは。

 

「諦めるな!!この程度の窮地などウィッチなら乗り越えて見せろ!!」

 

いいや、無理だ。もう助かる訳がない。

もとよりこんなの最初から不可能だったのだ。

 

 

「ウィッチにッ、不可能はないッッッ!!!」

 

 

そして、そのネウロイの紅い亀裂から破壊の閃光が放たれて―――。

 

 

―――――パリンッッ。

 

 

紅い閃光が何処から投げられた短刀に切り裂かれ、そのまま赤いコアを刺し穿った。

 

 

「――――リリー、さま。ごぶじですか。」

 

 

とっくに死んだと諦めていた幼い舌足らずな声が耳朶に響いた。

 

 

 

 

「…では、洞窟で確認された反応のネウロイは。」

「はい、たおしました。」

「そうか…!!よくやった!!だがこの空の模様。これはまるで―――。ッッ!?」

 

「巣」という単語を続ける前に、地上へ降下していた彼女達の上空を大型のネウロイが通過する。

 

「だいじょうぶ。もうしんでます。」

「――――あ。」

 

次の瞬間、その言葉の通りにその巨体はサラサラと白い粒子になり解けていく。

そしてその光の吹雪の中をかき分け現れたのは。

 

「……おねえちゃん。」

「!!!ルッキーニ少尉、無事だったか!!」

 

「…………。」

 

まったくの無表情を張り付けたまま、彼女は静かに()の元へと駆け寄る。

そしてその傷だらけの顔をじっと見つめ――――

 

「よく、がんばったね。」

「…うん。」

 

その同じく傷だらけの頬に一筋の涙を流し、その幼い姉妹は熱く、堅く抱き合った。

短く、簡潔な言葉だけでも、その二人の間には他に何も要らなかった。

 

 

「…二人とも、まだ飛べるな?早急にマルタから退避しろ。恐らくここに新たな「巣」が生まれる。」

 

その言葉に抱き合っていた二人は視線を坂本少佐に向ける。

 

「もはやこれは我々の当初の想定を遥かに超えている。プラマー軍曹が破壊した巨大なコア反応の代わりになるかのように、残存ネウロイが一か所に集結―――1つの超大型ネウロイ、「巣」になろうとしている。」

 

見上げた紅い魔眼に釣られ同じく空を見上げる。

空を覆うのは渦巻く黒い雲、紅い閃光と雷。

 

 

「…げほっ、アナタ達はこれを何としてもリカに…ロマーニャに伝えなさい。そして生き延びなさい。」

 

 

そう告げて血反吐を吐くリリーの横に、エミリーは姉の手を引いて膝をついた。

 

「リリーさま、すこしいたいですが、ガマンしてください。」

「…なに、を?……がぁぁっ!!?ぎゃ、ァァ…ッッ!!!?」

 

――――ジュ、ァァァァアア…

 

リリーの血まみれの腹部の怪我に添えられた小さな手が、淡く輝き激しく熱せられる。

そしてその魔法―――()()()()()《光熱》により焼かれた患部は塞がれ、溢れさせていた血を止めた。

 

「ッッがぁぁっ…それ、は少尉のっ…熱ぃぃッッ!!!」

「りりーさま、しずかに。」

「は、はは…本当に、面白い子たち…ギィィぁぁぁ……!!」

 

 

傷が一通り塞がったコトを確認すると幼い姉妹は立ち上がり空を見上げた。

その視線の先にあるのは、黒く赤く轟く、マルタを覆う破壊の怪異。

 

「…行く、のか。ならコイツを持っていけ。」

 

坂本からルッキーニへと手渡されたのは、自身の魂とも言える扶桑刀。

数秒の間、まじまじと鞘から抜いた刃を見つめていた彼女はふと小さな笑みを浮かべた。

 

「エイミーのとちょっとだけ、おそろいかなぁ?」

 

自身の妹が義手で逆手に握るクナイを覗き込み、そんな風にクスリとほほ笑んで見せた。

 

「エイミー。」

「…なぁに?」

 

そしてフランチェスカ・ルッキーニは、最愛の妹の頬に手を添えて。

 

 

 

()()()()、いこうね。イムディーナに。」

「……うんっ。」

 

 

 

二人の約束を翼に乗せ、二人のウィッチは大きく羽ばたいた。

 

 

 

 

 

 

その光景は、今まで見てきた戦場での戦いの中でも最も熾烈で激しかった。

ベルリンの撤退戦で見た名だたるエースの戦いよりも。

バルバロッサで見た勇猛なエース達の戦いよりも。

そしてマルタで見た、誇り高く洗練されたロマーニャの魔女達の戦いよりも。

 

「見ている事しか出来んとはな。」

「…あがりを迎えると、いつもこんな気持ちになってしまうのでしょうか。」

「かもな。」

 

渦巻いた雲の中央から現れた巨大な"龍"の姿をしたネウロイと幼いウィッチ二人の戦闘。

正直言うと意味が分からなかった、ビームが曲がり、ネウロイがシールドを展開などし始めたのだから。

しかしそれに相対するウィッチ二人もさらに異常だった。

降り注ぐビームの嵐を刃だけで弾き、シールドもどきを《光熱》を纏わせた扶桑刀で切り裂き、規格外のネウロイ相手に一歩も退かない。

挙句もはやそのマニューバは尋常ではない、曲芸飛行の域に達しているソレはネウロイも力任せの乱射でしか対応できていない。

 

「ほぅ!燃ゆる刃とはなんとも心をくすぐってくれるな、ルッキーニ少尉!!」

「……」

 

薄暗い空が、昼間に見える程の強烈で猛烈な赤い閃光の嵐。

その中を二人の流星が何度も搔い潜り、禍々しい龍の黒い肌に裂傷を刻み付けていく。

ネウロイの不気味な紅とは違う、温かく美しい《光熱》による炎の煌めきが二人のウィッチの軌跡を彩る。

 

 

 

「…私は、どうして、こんな所に…来てしまったのでしょうね。」

「ん?」

 

幼い二人のウィッチが、自らの謀略の手駒でしかない彼女達が、何故か酷く羨ましく輝いて見えた。

 

「…羨ましい。もし私が変わらなければ、私は今でもあの子の…リカの隣に居れたのに…。」

 

ウィッチとなって欧州に来て以来、姉同然に慕っていたロマーニャのウィッチを。

いつも一緒に出撃して、いつも一緒に居て、何をするにも二人だった彼女を。

いつからだっただろうか、見下し、都合の良い存在だと認識し始めたのは。

しょせん薄汚い欧州の連中と同じだと、蔑み始めたのは。

 

「…中佐。」

 

そんな遠い日の自分とリカの幻視を彼女達に重ね、目から堪え切れない激情が溢れ―――。

 

 

 

「……ッッ!!?待て、何だアレは!!?海の方から…馬鹿なッッッッ!!!」

 

その坂本の怒号に、意識を引き戻された。

 

「ば、バカなっ…どうなってるんだッ…!!」

「…坂本?」

「ッッ!!プラマー軍曹!ルッキーニ少尉!!くっ、繋がらないか!!」

 

一瞬前までの落ち着きが嘘のように消え去った彼女の向いている方向に目をやると――――。

 

「…は…?」

 

そこには―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

それも大型と中型が入り混じった、ウィッチ一個部隊でも到底対処できないような巨大な群れ。

 

「はっはっは…流石に万策尽きたな。」

「…方角的に、アフリカからはるばるやってきたのでしょうね。マルタまで。」

 

 

 

『―――――と、少佐。聞こえますか!!リリー中佐、聞こえますか!!』

 

もはやただ呆然とソレを見つめていた彼女の耳朶を、不意に兵士の声が打った。

 

『増援です!!増援ですっ!増援が来ました!!』

「…ええ、こちらでも確認できました。かなりの規模の群れですね。あなたも早く逃げなさい。」

 

ゆっくりとした、余裕たっぷりといった速度でじわじわと接近してくるネウロイ達。

今ならまだ、船か飛行機に乗れれば逃げられる可能性は僅かにはあるかもしれない。

 

『違います!!そうではありません、増援とは―――――!!』

 

次の瞬間、遠い空に浮かぶネウロイの群れの大半が弾け飛んだ。

 

 

 

 

 

『マルタのウィッチ!聞こえるか!!随分とハデな大物を釣り上げてるじゃないか!こちらストームウィッチーズのマルセイユだ!!そのデカブツは私に残して置いてもいいぞ!!』

『まさかネウロイを追ってココまで飛んでくるハメになるとはね…第31統合戦闘飛行隊の加藤大尉よ。これより私達も同作戦に参戦します。』

 

「マルセイユ…ストームウィッチーズ!?アフリカの部隊ですか!?」

 

唐突に通信機から鳴り響いたその名前に驚愕するのもつかの間。

すぐに今度は別の部隊からの通信が彼女達の耳に届いてきたのだ。

 

 

『ちょっとリリー!!無事なの!?返事して!!ってあれ?私達以外の増援なんて聞いてないわよ?』

『待って下さいドッリオ隊長!!…もう、あら?あれは何処の部隊…?こちら本日ロマーニャにて結成された第504統合戦闘航空団、アルダーウィッチーズ戦闘隊長、竹井大尉です。…え、嘘っ、美緒!?』

 

「なっ…醇子!?どうしてロマーニャにいるんだ!?」

「リカっ!!ええ、無事ですが…どうして…!!」

 

しかもその相手がリリー、そして坂本のお互いの旧友で合ったから驚きもひとしおだ。

「リバウの三羽烏」のうち一人、「リバウの貴婦人」こと竹井醇子の声に坂本の顔はみるみる明るさを取り戻した。

 

『よう中佐、しばらくぶり。戦場に出てるなんてどうしたんだい?明日は雨が降るな。』

『もー大将!!ホントですけど失礼ですってー!!』

「くっ…ふふ、相変わらず礼儀を知りませんね、二人とも…。」

 

更にかつての部下の声までも聞こえてきたとなっては、さしもの冷酷な彼女でも涙ぐむのを押えられなかった。

 

『504…?噂では聞いていましたが、ついに実現したのですね。将官達の夢物語だとばかり・・・』

『はぁ!?誰か知らないけど聞こえてるわよーっ!!』

『ははは!そう言ってやるなライーサ』

『ちょっとフェル隊長!?相手はアフリカの星有する部隊ですよ!?そんな言葉遣い…』

『えぇ?こっちだってロマーニャの精鋭赤ズボン隊有する504だしぃ?』

『あーもーはいはい!話は後!今はマルタ島のネウロイを協力して排除するのが先!いいわね!?』

『は、はいっ!戦闘隊長っ!』

 

一気に賑やかになった無線に、死を覚悟していたリリーは何処か胸が温かくなるのを感じた。

 

「…ふふ、面白い部隊ですね、リカ。」

『でしょお?あなたに自慢できる面子を集めたらこうなっちゃったのよ、面白いでしょ?』

「ええ、本当に……本当に……」

 

 

 

 

「エイミー!コア見えるーっ!?」

「うんっ!!くびもとのアレだよね!?」

 

そして数多のウィッチが飛び交い始めた戦場の中心では、ついに巣の核と言える龍型ネウロイと二人のウィッチ達の決着が付こうとしていた。

もはやネウロイもウィッチもそのどちらもが満身創痍であり、いつ力尽きてもおかしくない状態だった。

 

「手ッッ!!ぜったいにッッ、はなさないでーっっ!!」

「うんっ!!ぜったい、はなさないっっ!!」

 

二人の小さな手が固く強く結ばれ、お互いの姉妹の黒豹の使い魔が共鳴し合う。

一匹は未来の景色を誘い、もう一匹は光と熱を誘った。

二人の眼に移るのはそのコアまでのルートが、そして二人の握る刃には眩く輝く熱が宿る。

 

―――ピロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ

 

最後のあがきと言わんばかりに、狂気的な閃光の嵐が彼女たちに見舞われるが無駄だった。

その全ては妹の、エイミーの手のクナイにより弾かれ明後日の方向へ飛んでいき。

辛うじてカスる軌道のビームも全てルッキーニのシールドにより完全に塞がれた。

 

「――――うりゃああああああぁぁぁぁっ!!!」

「――――りゃあああぁぁぁぁあああっっっ!!!」

 

そしてついに、ついに。

数十時間にもわたった長きに渡る戦いの果て、彼女達の刃はその根源に突き立てられた。

紅く燃ゆる二つの刃、扶桑刀とクナイがそのネウロイのコアを切り裂き―――そして。

 

 

 

 

 

――――淀んだマルタの空は、どこまでも澄んだ青い色に塗り替えられた。




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