「あはははははは!!!どうしたぁ!?ロマーニャの精鋭
「ティナ…ああもう酒癖の悪さも世界1…」
「はぁー!?負けてないわよッ!ほらルチアナ!さっさと次のビンを持ってきなさいッッ!!」
「いいぞーっフェル隊長ーっ!!負けるな負けるなー!!!ロマーニャの星ーっ!!」
「ちょっと、明日には本国に帰るんですよ!?大丈夫なんですかもー!!」
マルタが解放された正にその日。
防衛部隊と各地から増援に訪れたウィッチ達はその晩、会食―――と言う名の祝勝会に戯れていた。
「た、大将、私の服にワインかかっちゃったんですけど…」
「おっとすまない。すぐ拭くから動くなよ…んっ」
「きゃー!!?ばかばかばかこんな人目のあるとこでどこ舐めてるんですか~!!///」
――――パシャパシャ
「あ~いいわね~♪噂には聞いていたけどアツアツのカップルね、素敵だわ~♡あ、真美、予備のフィルムを…」
「ぎゃー!!撮られてます!!私達撮られてますってぇぇぇ!!」
「何を恥ずかしがる必要がある、燃えてきただろ?もっと私達を見せつけてやろう。ジェーン」
「た、たいしょぉ……////」
「…はいどうぞ、隊長。しかし、鳥のウィッチの人って皆さんこんな変な方ばかりなのでしょうか…」
それを傍で聞いていたコウモリを使い魔に持つウィッチはなんて風評被害だとため息を吐く。
「撃墜数10超えたんだってぇ?エース祝いの乾杯といきましょ♪――――ほら」
「はっ。本当、今更ですわね―――ありがとう、乾杯。」
ぐい、と透明なグラスに注がれた酒を一気に流し込む。
テキーラ・オールドファッションにビール少々と唐辛子を入れたお気に入りのカクテル。
昔は良く目の前の彼女、フェデリカ・N・ドッリオと一緒にこうして飲みまくったモノだ。
「ふぅ…強くなったわねぇ~。昔はすぐに潰れて『リカおねえちゃぁぁん…///』なんてベロンベロンになってたのに♪」
「や、やめてください…///この程度で潰れてては酒の席で取引や商談など出来ないですから」
あぁ、やはりこの意地の悪い子供みたいな笑みを見ると、どこか安心してしまう。
「…じゃあブリタニア空軍が裏で手を…?」
「ああ、恐らくは目障りな私への嫌がらせが目的だろうがな。―――ん、中佐が呼んでる。」
そこに扶桑海軍の白い士官服が二つ並んで談笑しているのを見つけ、手招きする。
「やぁ中佐、すまないな忙しいだろうにこんな席を設けてくれて…礼を言う。」
「グラマン中佐、初めまして、先日より第504統合戦闘航空団に配属されました竹井醇子大尉です。ドッリオ隊長からお話は伺っております。」
こんな酒の席だと言うのに礼儀を怠らないあたりはさすが扶桑の軍人、いや『リバウの貴婦人』といったところか。
「構いませんよそんな固い挨拶など。それにどうせ明日には皆さん帰られるのですから、そのままお別れなど寂しいでしょう。」
「…で、ホントのとこはぁ?」
「コレです、皆さんが帰る前にどうしても渡しておきたかったので。」
胸元から取り出したのは複数のマイクロフィルム、映写機で移せばその詳細が読み取れるはずだ。
「…これは?」
「ここマルタで出現した異常なタイプのネウロイ達のデータ、そしてそれとの戦闘記録です。もちろん上級部隊に報告しますがアナタ達の所まで降りるのは半年後くらいになりそうなので。」
「えぇ!?い、良いのですか、そんなモノを…。」
「…待ちなさい竹井。リリー、コレいくら?」
「……はぁ、タダで良いですよ、助けに来てくれたお礼ですから。」
「ホントッ!?ほら竹井早くしまいなさい!はいおそいー!もー返してくれって言っても遅いからね!!」
「わ、私を何だと思ってるのですか…。」
その旧友の余りにも余りな態度に少し手が出そうになったのをぐっと堪えた。
「わははは!久しぶりだな赤ズボンのボスと
「うわ世界1がきたわよリリー。」
「フェル達には荷が重かったですね…任せましたリカおねえちゃん。」
「はははははは!!!そうだ私は世界1だー!!そう言えばあのチビっ子達はどうしたんだ、あんなウルトラエース達をドコに隠してたんだ!?ハルトマンを思い出したぞ、チビでぺったんこだしな!!ははははははは!!!」
折角仕事の話が終わりさぁもう一杯と思った所に割り込んできたのは世界1のエースウィッチ、マルセイユ。
飲んだくれで有名だし、一緒の戦場で戦ったこともあるのでその酒癖の悪さは既に知っていたが…面倒くさい。
「あの子達は疲れ果てて休んでますよ、間違いなく今回のMVPは彼女達でしょうしね」
「ルッキーニちゃんが48体、エイミーちゃんが13体だっけ?…凄いわよねぇ、一回の出撃の撃墜数なら世界最多かも。あ~勿体無いことしちゃったかもなぁ~」
「なぁにぃ?聞き捨てならんなぁっ!!世界1は私だ!!私がナンバーワンだ!!!」
「はいはいなんばーわんですねーすごいですねー」
「…ケイ呼んできてよ。この世界1を引き取ってもらいましょ。」
「あはははははははは!!ナンバーワン!!ナンバーワン!!」
しばらくしてクッソ面倒くさい世界1位がライーサ少尉に引きずられていくのを見送り、ようやく落ち着いて話せる雰囲気になった。
「…すごい借りができちゃったわね。リリー。」
「ん。別に構いませんよ、あなたとの約束の為ではありませんし。それにこうして来てくれたでしょう。」
「ふふっ、すっごい大変だったのよ~?必死に人員を搔き集めてさぁ、無理やり部隊の体を作ってね。」
「他には?ペデスタルで一緒だったアンジーやパティには声をかけてないのですか?」
「もちろん呼んだわよ。まぁ今回のには間に合わなかったけどね。」
カラン、とグラスの氷が静かに鳴る。
「私の忠告、守ってくれたのね。」
「…守ってませんよ、彼女達の実力が予想以上だっただけで、作戦自体は死にに行けと命じたようなモノです。」
「そうかしら。でもあなたを支えて連れて帰るあの子達の顔、とっても笑顔だったわよぉ?」
「………。」
少しだけ、胸の奥で何かがズキリと痛む。
「本当は黙っておくつもりだったんだけど、忠告と…マルタを守ってくれたお礼に教えてあげる、耳を貸して。」
リカが私の耳にそっと唇を近づけ――――。
「………宮菱の人間が、ロマーニャであの子を探してるわ。」
「――――――っ。そう、ですか。」
もしかして、と思っていたがやはりそうか。
気化爆弾がブリタニアに知られたコトと言い、やはり私の仕事は何処か詰めが甘い。
「ならあの子達をロマーニャに置いておく訳にはいきませんね…私もしばらく離れなければ。」
「でもアテはあるの?私の所で預かってもいいけど、出撃なんて目立つことはさせられないわよ。」
「うーん…」
顎に手を当て欧州の知り合いを適当に考えてみるが…。
「それなら!!私達ストームウィッチーズに預けてみないかしら?」
「…いつから聞いていらっしゃったのですか?」
と、そんな思考の海に沈んでいたところをJG31の隊長、加東圭子の顔がズィッと割り込んでくる。
「あのルッキーニちゃん?達だっけ、その子達を預けるところを探してるんでしょ?私達アフリカはいつでも人員不足だからね、とっても助かるわ~♪」
「ふむ、アフリカですか…。」
「そう!しかも昼間の戦いのあの子達の動き、あのマルセイユが手を止めて見惚れていたのよ!?あのマルセイユが!!あんな顔初めて見たわ!それもライーサが悔しそうな顔するくらいにね♪」
「でしょうね、私の自慢の部下ですもの。」
「悪いようにはしないわよ。二人とも世界一のウルトラエースの元でしっかり教育してあげる!あの子達は将来カールスラント4強にも匹敵するほどのウィッチになるに違いないわ!きっと二人のためにもなるし!」
「………。」
なるほど、それは正直魅力的で惹かれるモノがある。
本来そもそもあのエイミーに関しては操れるエースを作る目的で催眠した所もあったのだし、そういう意味では一番理に適っているかもしれない。
「まーちーなーさーいー!!あの子達はねぇ!私達がいーちばん最初に目をかけてたのよ!!問題児扱いされてたのを見出したのも私だし!他所から口出しされる覚えはないわぁ!!」
「そーだそーだぁ!!ルッキーニちゃんとエイミーちゃんはボク達のものだぁー!!」
「あぁ…もう…完全に二人ともできちゃってるぅ…」
「こーらフェールぅ。アンタ達ちょっと酔いすぎよ~」
で、そこに赤ズボン隊のフェルナンディア中尉達まで割り込んできたものだからもう。
…まぁ何を言われようが、私の中ではすでに答えは決まっているのだが。
「はっはっは、随分と賑やかだなリリー中佐。」
そこに現れた扶桑のウィッチ、坂本少佐。どうやら酒は飲んでいないようだが丁度いい。
「…坂本。ちょうどよかった、頼みがあります。」
「んん?どうした、今更私に出来る事なんてもうあるまい。」
「いいえ、アナタにしか頼めないコトです。」
息を軽く吸い、その凛とした透き通った目をまっすぐに見据える。
「――――エイミー軍曹とルッキーニ少尉、彼女たちを501で面倒を見てやってくれませんか。」
「えっ」「はっ!?」
アフリカの隊長とフェル中尉が一斉にこっちを向いたが知ったことではない。
「…ふむ、どうしてまた。あのマルセイユがいるアフリカ部隊を蹴ってまで選ぶ理由があるのか?」
「信頼できる相手が――――アナタがいる。それでは足りませんか。」
「お前と出会って数日の私が、それだけの信頼に足ると?」
「寂しいことを言いますね、私たちはもう裸の付き合いをした仲ではなかったのですか?」
「ふっ、はっはっはっはっはっは!!!これは一本取られたな!!はっはっはっは!!!」
「ふふっ……はははははははは!!はー…。」
いつぶりかに声をあげて笑う。中々に気持ちのいいモノだった。
「…いいだろう承った。未来のウルトラエース達の教育、任せてもらおう!」
「ありがとう、坂本。このお礼はいつか必ず。」
「はっはっは!!礼を言うならコチラの方だ!あんな優秀なエースを二人も迎えさせてくれるのだからな!!」
相変わらず気持ちのいいウィッチだ。
この彼女の元ならきっと彼女達もまっすぐ育っていってくれるだろう。
まかり間違っても私とリカのようなことにはならないはずだ。
「はぁぁっ!!?おい、聞いていたぞ!!あのチビっ子二人は私の所で飛ばせる!!ハルトマンそっくりに育てあげてやるんだ!!!」
「はっはっは!残念だったなマルセイユ大尉!だが安心しろ、彼女達はハルトマン本人がいる部隊でしっかりエースに育て上げてやる!!」
「クソッ!!ふざけるな!!リバウのサムライッ、酒を持て!こうなればあの二人を賭けて飲み比べだ!!」
「ほう?いいのか?私は
「あっ美緒ちゃんダメだよ!!?アナタは絶対お酒飲んじゃだめぇっ!!取返しがつかなくなるからぁぁぁ!!」
そこに現れたマルセイユと坂本少佐の飲み比べが始まろうとしていた所に更に竹井大尉まで割り込んできて、結局そのまましっちゃかめっちゃかになってしまって――――――。
「……すぅ、ぅにゃ。エイミー…」
「おねえ、ちゃん……むにゃ…」
「………」
宴会の場を抜け出し、彼女が訪れたのは静まり返ったミーティングルーム。
人もいない隊舎では、あらゆる部屋が彼女達の遊び場兼寝床として使われていた。
「……お疲れ様、二人とも。」
その二人が寝息を立てるソファーの前に跪づき、二つの幼い頬を撫でる。
「…ふふっ、仲がいいわねぇ♪」
「ええ、二人まとめて手に入れたのは正解でした。」
背後からかけられるリカの声。
その声にはどこか穏やかで昔を懐かしむような声音が混じっていた。
「思い出すわね、これくらい小っちゃいアナタが私の小隊に入ってきた時の事。」
「ええ、あの頃はまさか貴方の階級を追い抜かすなど思っていませんでしたが。」
二人の幼い魔女を眺めながら、静かに微笑む二人の魔女。
「……あなたは、これからどうするの。」
「今回のコトで色々な情報が手に入りました。しばらくはコレで遊びますよ。…ブリタニアに
「…そう。」
その返事に籠っていたのは、何処か寂しく、悲しい色。
そう、もはやあの頃リカを姉と慕って後ろを付いて行っていた自分はもういないのだ。
いくら幼いこの子達を見て、あの頃をうらやんでしまっても。
「――――504には、副隊長の席があるの。探してるけど良いウィッチが見つからないのよね。」
不意に、背後からかけられた声。
「当分見つかりそうに無いわ~…はぁ、困ったわねぇ。どこかにいないかしら、
「……リカ」
「いつでも来なさい。会社が潰れようが、軍から追い出されようが歓迎してあげる。私の隣はアナタじゃないと面白くないわ、リリー♪」
「………」
その声に返事を返さないまま部屋を足早に去った彼女の頬。
そこに一筋の涙が溢れていたのを見て、フェデリカは昔と変わらない優しい姉の微笑みを浮かべた。
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