【ストパンVR】初見で最高難易度だけど超余裕   作:Kkmn

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魔女の休日
猫のさんぽ


ブリタニアのドーバー海峡基地にある501部隊の朝は早い。

なんせ朝4時半程から坂本少佐、それとその弟子であるルッキーニの素振りが始まるのだから。

 

「はーっはっはっは!!はーっはっはっは!!」

「うじゅじゅじゅー!!うにゃー!うりゃりゃー!」

 

奇声を叫びながら扶桑刀を海原に振りかざす少女二人。

そこから少し離れたハンガーの梁に眠る幼いウィッチがいた。

 

「Zzz…Zzz…」

 

アマンダ・M・プラマーである。

大好きな姉であるルッキーニは一足先に目覚め、彼女はいつもその毛布の残り香に顔を埋め眠っていた。

 

「う…にゃぁ?」

 

寝ぼけたように眠気眼を擦る彼女から漏れた声は、仔猫のような鳴き声。

 

「うにゃ…みぅ…」

 

ぴょこん、という気の抜ける音ともに顕現する使い魔の尻尾と耳。

四つん這いのままぐいっとしなやかに幼い身体を伸ばす仕草。

 

そう、今の彼女は()()()()()()()()()()()ではなく、その使()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「うみゃぅみゃ」

 

耐えられない程の辛いコトが襲った時、本来の意識が朧気な時。

彼女はあろうことか使い魔に主従を逆転され、その身体の主導権を使い魔に奪われるコトがしばしばあった。

 

「…うにゃ?」

 

大好きなお姉ちゃんを求め、ハンガーから抜け出し辺りをさ迷い歩く。

すると海岸の方で師と共に扶桑刀を振る姿を見つけ、落胆の声を漏らした。

 

「にぃ…みぅみぅ」

 

アレをしている時は邪魔はしてはいけない。

仔猫は大好きなお姉ちゃんの温もりを諦め、自らの縄張りの見回りに赴くことにした。

 

 

 

 

―――カチャ。

 

「…ああもう、また来ましたの?折角の坂本少佐を眺めてのモーニングティーですのに」

「にゃぁぅ」

 

早朝から敬愛する上司の姿を肴に紅茶を嗜んでいたペリーヌ・クロステルマンは、今朝も自部屋に訪れた珍客に溜息を吐いた。

 

「なーぉ」

「はいはい、少しお待ちなさい。まったく使い魔に呑まれるなどウィッチ失格ですわよ。」

 

ぶつくさと小言と文句を呟きながらも、嫌な顔一つせず彼女の為にハーブティーを淹れ始める。

むしろその四つん這いの猫耳の少女に微笑ましい顔すら見せて。

 

「ほら、ふーふーしてさしあげますから、ゆっくり飲みなさい」

「んみぃ……ぺろぺろ」

 

そのままの猫の姿勢でも飲みやすいよう、積まれたタオルの上にカップを載せる。

熱いのが苦手な猫舌でも味わいやすいよう、しっかりと冷ますことも忘れずに。

 

「…んぅ」

「こーら、ワタクシの服が濡れてしまうでしょう?ほんとにもう…」

 

ぴちゃぴちゃと舌を這わせ紅茶を飲む仔猫の口元をそっと拭う。

それに抗議するかのように彼女は手や袖に幼い顔をこすり付けた。

 

「にむ、にゃー」

「まったく。ワタクシは構いませんが、まだ寝ている皆さんを起こしちゃだめですわよ?」

 

美味しい紅茶を飲んで満足した仔猫は礼を言うように小さく鳴くと。

満足したかのように、その不思議と安心する()()()()()()()()()()の部屋を後にした。

 

 

 

 

―――キィ

 

「…んぅ?なに…からだが、おもい…?」

 

リリー・グラマンより父の情報が分かるまで、と501に預けられた扶桑の少女。

宮藤芳佳は身体の上に感じる奇妙な感覚に目を覚ました。

 

―――ふみ、ふみ。

 

「え…ふぁぁぁっ!?」

「にぁ、んなぁー」

 

視界いっぱいに広がる、黒いベルト越しに浮き出た縞々柄のズボン。

ソレが501最年少のウィッチのモノだと、お腹がふみふみされる感覚で彼女は理解した。

 

「んにゃ?……ぺろぺろ」

「ひゃわぁっ。く、くすぐったいよぅ、エイミーちゃんっ」

 

目覚めた彼女に気付き、ふみふみからその顔を舐めることにシフトする仔猫。

冷たく、心なしかざらざらとする小っちゃな舌のくすぐったさに彼女は笑みを浮かべた。

 

「ふふふ、今日も起こしにきてくれたの?ありがとう」

「んみぃ、ごろごろごろ…♪」

 

美しい翠のインナーカラーが入ったその髪を優しく撫でると、仔猫はごろごろと喉を鳴らしじゃれついた。

甘え切ったその声に微笑む宮藤芳佳はもっと彼女を愛でようと―――。

 

「―――んにゃ、みー。」

「あっちょっとエイミーちゃ……エイミーちゃんッッッッ!!??」

 

 

―――ふみ、ふみ、むにゅんっ///

 

 

気まぐれな仔猫が次に興味を持ったのは、彼女の隣で眠るもう一人の少女の大きな双丘だった。

まるで餅やうどんをこねるかのような仕草の幼い手を、豊満な乳房がやんわりと押し返す。

 

「ん…みゃぁ」

「あ、ふぅ…ぅぅん…///」

「あ、あわわ…///あわわわわwawawa」

 

その光景を、先日仲良くなり相室になったそのブリタニアのウィッチの胸の様子を。

宮藤芳佳はそれはもう凄まじい剣幕でまじまじと眺め続けていた。

 

「ぅに、んーなぁ」

 

猫のこの仕草は、仔猫が母猫の母乳を刺激してミルクをねだる時の名残。

つまり柔らかくふかふかなモノに惹かれるのは生物としての本能だ。

 

そうだよ、だから私のこれだっておかしくない!!

 

そう発想の飛躍で自らを納得させ、彼女は仔猫にこねられるその乳房に手を伸ばし――――。

 

 

「芳佳…ちゃん…?」

 

 

寝返りをうったリネット・ビショップと真正面から目があった。

 

「はぅぅぅぅっ!!?ち、違うの、ちがうのリーネちゃん!これは、そのぉ…」

「さっきからずっと寝たふりしてたんだよ…?まさか芳佳ちゃんが、寝ている人の胸を弄ぶような人だったなんて…」

 

「ご、誤解だよぉっ!今までリーネちゃんをふみふみしてたのはエイミーちゃ…いないぃぃぃっ!!?」

「…あの、近づかないでください、宮藤さん…」

「いやあああ!!ごめんね!ちがうのぉぉぉ!!許してぇぇぇぇぇぇっっ!!」

 

 

 

 

 

存分に柔らかい胸をふみふみし、うどん職人として満足した仔猫は再び見回りに戻っていた。

 

「……ぁ、えいみー、ちゃん?」

「にゃ」

 

不意にその四つん這いの背中にかけられるか細い透き通る声。

夜間哨戒から帰還したばかりで眠気と疲労が溜まり切ったサーニャ・V・リトヴャクだ。

 

「あ、そっか、ねこの、エイミーちゃん…ふぁぁ…」

「…ふみゃぁっ?」

 

その彼女が大きなあくびと同時に倒れ込んで来たのだから流石の仔猫も少し驚いた。

さらにその上彼女の幼く小さな身体を抱き枕にし始めたのだからもう。

 

「…んみぃ」

 

―――カリカリ。

 

だが流石にこんな廊下で寝かすわけにはいかない。

目の前の部屋の扉をカリカリと爪でひっかき、中の住人を起こす。

 

「ンモー、なんなんダこんな朝っぱらカラ…ってサーニャー!!?」

「にゃーにゃ」

「おーエイミー…ってかお前また使い魔モードカヨ、まぁ教えてくれてアリガトナ。」

「みぃー」

 

エイラがサーニャをお姫様だっこでベッドまで運ぶのを、行儀よくお座りして見届ける。

 

「ほら、遊んでヤルヨ。お前コレ好きだもんナ。猫じゃらし。」

「んにゃっ!!にゃふっにぅ!!」

 

―――てしっ、てしっ♪

 

目の前で左右にふりふりと跳ね回るふわふわを、彼女は必死になって叩いた。

そして夢中になってはしゃぐその遊びに、横から割り込んでくる影が一人。

 

「ハハハ、ほーれホーラ...ンナッ!?」

「....ぅにゃ」

 

――ぴょこり。

 

寝ぼけて使い魔の猫耳を顕現させたサーニャである。

愛しの彼女があられもなく下着姿で自身の目の前に飛びかかってきたものだから、それはもう酷い狼狽え方で。

 

「あわわわ!!ダメだサーニャ、そ、そんナナナ!!!」

「に…」

「なーぉ?ふみぅ」

 

初対面の猫がそうするように、くんくんと顔どうしが密着するほど近づきニオイを確かめ合う猫二匹。

それを何とかしてやめさせようとエイラは大慌てで猫じゃらしをパタパタと振りかざした。

 

「ほら、サーニャ!!こっち、こっちなんダナ!……アワー!!!」

「…みゃぁっ♪」

 

自身より格上だと判断した黒猫がそのツガイに飛びつくのを見送りながら、子猫はそそくさと部屋を後にした。

 

 

 

 

―――カチャリ

 

次に訪れたのは、それはもう凄惨で悲惨で、悍ましい部屋だった。

大量に積まれたナニカ、ナニカ、ナニカ。

足の踏み場さえないゴミだらけのその部屋も、ネコにとっては遊び場の多い楽しいお部屋で。

 

「…くんくん」

 

芽が生え、変色したじゃがいもを確認した後、その中で横たわる部屋の主の顔に近づく。

 

「うんにゃぁ」

「…ん~……?ふぁ……いらっしゃい………」

 

そのゴミ部屋の主、エーリカ・ハルトマンは突然目の前に現れた猫耳の抱き枕をこれ幸いと抱きしめた。

フルーツのような爽やかな香りのその黒髪に顔を埋めると、気持ちよく眠りの世界にいざなってくれるのだ。

 

「ぅみぅ、ぺろぺろ。」

 

しかし子猫もやられっぱなしではない、その口元についた寝る前に食べたお菓子の食べかすを舌で舐め取って抵抗するが。

すぐに満足してうとうと眠気に誘われ、しばらくの間ハルトマンと共にベッドで眠りはじめた。

 

―――ぴょんっ、ぴょんっ。

 

しかしこれだけモノがあれば、そこに虫の1匹や2匹当然現れるワケで。

その跳ねるサマはウトウトとしていた彼女を大喜びで興味を惹かせるに十分だった。

 

「ふーっっ!!にゃぁぁっ……ふみ?」

 

―――がらがら、どすんっ!!

 

そして更に、そんな所を駆け回ればゴミ山が崩れるのもまた当然なワケで。

早朝からそんな騒音を聞かされた隣人が怒鳴り込んでくるのもまた必然だった。

 

「こんな朝早くから何を騒いで――――!!ん、エイミー…ああ、またか。」

「にーぅ」

「ほら、こんな所で遊ぶと危ないぞ、私の部屋に来い。」

 

そしてそのままひょい、と幼い猫耳少女の身体を抱えあげると、そのまま部屋の外へと連れ出されてしまうのだった。

 

 

 

 

「こら、じっとしてろ。綺麗にしないと病気になるぞ」

「にぁ…」

 

四つん這いで歩いてきた彼女の手足を優しい手付きで拭き上げるバルクホルン。

それが嫌なのか少しぐずるような仕草を見せるが、結局なされるがままの子猫。

 

「まったく、ミーナやルッキーニにされても嫌がらないのに何故私は嫌がられるのだ?」

「ふみぃ」

 

次に髪の毛のブラッシングまで始められたとなれば、さしものエイミーも諦めて身体を完全に投げ出した。

猫耳の裏をくしくしと解かれると、少しだけ心地よさげな声が漏れる。

 

「んごろ…へみゃぁ」

「こらぁ!ズボンを擦りつけてくるな!女の子がはしたないだろう!」

 

自分のお気に入りのものに自分のニオイをこすり付ける仕草。

それをたしなめられた子猫は逃げるように扉へと逃げようとした。

 

「はいおしまい、よく良い子にできたな偉いぞ。…そうだ、危ないから鈴をつけていけ。」

「にゃー」

 

ちりんちりんと首元でリボンと共に揺れる鈴を鳴らしながら、子猫は再び見回りに戻るのだった。

 

 

 

そして再びハンガーへと戻ってきた彼女は大好きな姉の相棒ファロット G55にすりすりと頬を擦りつけていた。

 

「んみぃ…♪」

 

しばらくそうした後に満足したのか、次は自らの相棒である黒い零の傍へと歩み寄りうずくまる。

 

「……」

 

不思議な感覚。

姉やリリー中佐とも違う、何処か懐かしい安心感を零から感じ再び子猫は瞳を閉じようとした。

 

「んっ、おー、エイミー早起きだn…ああ、まだ寝てんのか。」

「…んにゃっ!」

 

そしてそこに現れた人物に気付くと、彼女は大喜びでその胸の中に飛び込んだ。

それを微笑ましくわしゃわしゃと撫でながら、朝のストライカー弄りに来ていたシャーリーはその隣の零をまじまじと見つめる。

 

「…相変わらず良いストライカーだな。アタシらのとはモノが違うよ。あの大将が直々に整備してんだもんなぁ」

「うみゃっ」

 

まるで自慢するかのようにふんす、と胸をはる仔猫。

 

「しかし何だ、扶桑の技術研究のための零戦のデッドコピーだったか?

 にしてはホント良く出来てるよなぁ、ホンモノより零戦らしい気がするよ」

 

それが創業者直々のハンドメイドである事を知らぬまま、彼女はその精巧さに舌を巻く。

 

「……なぁエイミー!!これちょっとだけ!!一回バラしてみていいか!!!?」

「―――ふしゃぁぁぁぁッッッッ!!!」

 

猫撫で声から一変し全身の毛を逆立てて威嚇の声を上げた仔猫の剣幕に、さしものシャーリーも慌ててその言葉を撤回するのだった。

 

 

 

 

―――キィッ

 

そして最後の部屋、縄張りの見回りを終えた仔猫が最後に訪れる場所。

 

「…にゃむ」

 

そのベッドの毛布の上で未だ眠っている部屋の主の上に飛び乗り、布団に潜り込む。

大好きなフランカお姉ちゃんとはまた違う、包み込まれているような優し気な香りと暖かさ。

 

「……あら、おはよう。エイミーさん…♪」

「みゃーぉ」

 

寝床へと潜り込んできた可愛らしい侵入者を抱きしめ、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは目覚めた。

目覚めれば疎ましい書類仕事や管理業務が待つ彼女。

そんな彼女が最近気持ちよく朝を迎えれるようになったのは、ひとえにこの子猫の存在があったからだろう。

 

「いつもありがとう、助かるわ。」

「んにゃ。」

 

ベッドの上に腰掛け、膝の上にその子猫を載せる。

心地よさそうに全身を擦り付けてくる甘えたがりな仕草がたまらなく愛おしい。

猫耳をくしゅくしゅと撫で揉んでやると、ごろごろと喉を鳴らし始める。

 

「じっとしていてね、ちょっとくすぐったいけども。」

 

これも日課だ。

目覚めてまず最初にやることは、エイミーのメイクを施し髪を整えてやること。

何時どこで写真を撮られても良いようにというリリーの頼みのもと、彼女はこうして毎朝エイミーの世話をしていた。

 

「…んみ。」

「んふふ、じっと出来てえらいわ。眠たかったらそのまま寝ちゃってもいいのよ?」

 

心地よい温もりと安心するニオイに包まれているが故、仔猫の意識は急速に眠気に包まれていく。

 

 

「―――ありがとうね、501に来てくれて。」

 

 

「んにゃ?」

 

少しだけ声音が変わった部屋の主の声に首を傾げる。

 

「あなたが来て、ルッキーニさんが来て、皆変わってくれたのよ。トゥルーデだって、シャーリーさんだって…フラウだって。」

「……」

「もちろん他の皆もよ、それに宮藤さんも来てくれてから唯一気がかりだったリーネさんも何処か笑う事が多くなって…」

 

猫耳の少女を優しく撫でる、温かい手。

 

「それに―――あら?寝ちゃったかしら…ふふ。」

「…すぅ…にゅぅ…」

 

自らの膝の上で静かに寝息を立て始めた幼いウィッチをベッドで丸まらせ、ミーナはその頬を愛おしく撫でた。

 

 

 

 

「ちゅーさ、エイミーきてな―――あっ」

「しーっ…」

 

そしてもう一人の幼い来客が訪れ、彼女も部屋へと招き入れた。

幼いにも関わらず、坂本やバルクホルンに師事し訓練熱心なウィッチ、フランチェスカ・ルッキーニ。

 

ロマーニャではかつて問題児とまで言われていたらしい。

しかしミーナからはそんな姿など想像できないほど、彼女はエイミーの前ではしっかりした姉として振舞っていた。

 

「あなたも疲れているでしょう、休んでいきなさい。」

「うじゅ…いーの?」

 

「いいのよ、ルッキーニさんはいつも頑張っているんですもの、それにエイミーさんも一人じゃ寂しいでしょ?」

「…うんっ!!ありがと、ちゅーさっ!!」

 

 

だが彼女は未だ11歳の若年すぎるウィッチだという事を、決してミーナは忘れていなかった。

エイミーだけでなく彼女に対しても同様に愛を持って接し、優しく労わった。

 

 

「…すぅ…おねぇ、ちゃん……」

「んふふー、なになにー?…おねえちゃんはここにいるよー?…んにゃ…」

 

 

そうしてスグに二人仲良くベッドの上で抱き合い、寝息を立て始めた二人の魔女。

 

彼女達の存在に心の底から感謝をしながら、ミーナは明るい気持ちで朝の執務へと部屋を後にした。




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