【ストパンVR】初見で最高難易度だけど超余裕   作:Kkmn

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天使の在りし日

「隊長、どうしたんですかそんなニヤニヤ新聞を眺めて」

 

執見室にて新聞を片手にコーヒーを飲んでいるところに、部下であるアレクサンドラ・I・ポクルイーシキンがそんな横やりを入れてくる。

 

「面白いぞ、サーシャも見ろ。」

 

机に投げ出してみせた新聞には先日マルタにて行われた戦闘。

そしてその中で偉業を成し遂げた幼いウィッチの写真が一面を飾っていた。

 

 

「『マルタを救った女神、フランチェスカ・ルッキーニ』『人類初のネウロイの巣撃破』『トドメを刺した扶桑の剣とは』『作戦を裏で支えたリベリオンのウィッチ』『リバウのサムライ』……最近は彼女達の話題で持ち切りですね。」

 

「ああ、あのリリーも上手くやったらしいな。あの整備バカのお気楽娘がよくあんなタマになったものだ。」

 

 

眼を閉じれば今でも思い出せる。

かつて共にバルバロッサ作戦でこの基地に駐屯していた頃のリリーを。

 

「でもお元気でそうで何よりですね、あの天使様」

「ふふ、知ってるか?アイツ今片っ端から各国の剣や刀を売りさばいてるんだぞ?」

「え?う、売り払う…?」

 

困惑した顔で首を傾げる彼女に頷く。

 

「ああ、何でも今世界中でこのルッキーニ少尉の真似をして剣を振り回すウィッチが増えているらしい。」

「ぶッッ!!?え、ウソですよね?」

 

「本当だ。何せ人類初のネウロイの巣を撃破した英雄だからな。真似したくなる気持ちも正直わかる。」

「やめてくださいね隊長!!?」

 

きっと今頃各部隊の予算担当はサーシャのように頭を抱えていることだろう。

恐らくは慣れない近接戦闘でストライカーを壊すウィッチが続出するに違いない。

 

 

「それにしても何だか想像できませんね、あのリリーさんの商魂逞しい姿なんて。」

「そうだな…あの頃の彼女はな。」

 

 

「…隊長は彼女に何があったのか。ご存じなのですか?」

 

 

 

ぐい、と残っていたコーヒーを全て呑み込む。

 

 

「あんなコトがあれば、ああなる気持ちも分かる気がするよ。」

 

 

 

 

 

格納庫の外に積もる大量の雪を眺めながら、不味い軍の支給品のタバコに火を点ける。

お姉ちゃんにバレたらまた怒られる。しかし寒い時で吸うタバコって不思議と楽しいんだよね。

 

「―――ふーっ」

 

ただでさえ白い煙が寒いから猶更白くなるのがちょっと面白い。

スパナを手で弄びながら口の中にその香りを酒で流し込む。

 

「あー…お酒ないじゃん、もらいにいかなきゃ。」

 

死ぬほど寒い格納庫から、悶える程度に寒い隊舎内の廊下へ移る。

お目当ての部屋のドアをノックもせずに開け放つ。

 

「んねぇー、おさけちょーだーい。おねーちゃん。」

「ぅぅん…そこ、タンスの下に転がってるのならおっけー…」

「あいあーい」

 

未だ布団でうずくまる部屋の主に手を振り、乱雑に転がってる酒瓶をくすねる。

 

 

「…あんた最後に身体洗ったのいつ?」

「えーと一緒にはいったじゃんこのあいだ。ほら三日前」

 

「んもー!!お姉ちゃんがいないとサウナも一人ではいれないのねこの妹はー!!!」

 

ばさり、と毛布を払いのけ一糸まとわぬ姿の褐色の素肌を晒したウィッチ。

 

「アンタも大尉になったんだからまともなカッコしなきゃ!サウナいくわよサウナ!!」

「あ"あ"~ゆうかいさ"れ"る"~……」

 

彼女に首根っこを掴まれた、整備油まみれのタンクトップとズボンだけのウィッチ。

その気だるげな表情と、豊かな金髪をボサボサに乱れさせた彼女は技術大尉の階級らしい。

 

リリー・グラマン技術大尉とフェデリカ・N・ドッリオ大尉。

 

バルバロッサ作戦へロマーニャそしてリベリオンから派遣された彼女達は、今日も兵士の目を憚らない姿で廊下を駆けだした。

 

 

 

 

「あぁ~いいわぁー♪お姉ちゃんの毎日の育乳の成果が出てるわね~」

「むー、これ以上大きくなったら整備の邪魔なんだけどぉ…」

 

「相変わらず仲が良いことだな、二人とも」

 

サウナにて真っ白な双丘に顔を埋めるフェデリカのあられもない姿。

それをニヤついた顔で横やりを入れるのはグンドュラ・ラル少佐だった。

 

「あらラルっちじゃん、もー予算会議終わったの?」

「ああ、辛うじて施設整備費をぶん取るコトが出来た。コレでしばらくは私達の首も繋がったよ」

 

「む…」

 

折角の姉との二人きりの時間、そこに割り込んできた何処か湿った雰囲気を感じリリーは顔を歪めた。

 

「リリーのおかげで奇跡的に部品や予備に余裕があるとは言え、こうも補給が滞ってるとな…」

「でも今度大規模な偵察作戦あるんでしょ、それ関係の特別予算を上と交渉できないの?」

 

 

 

「うがー!!アタシの前でゴチャゴチャした話だめーっっ!!!」

「―――うひゃあああ!?ダメよリリー!ここはベッドじゃないわ!!」

 

 

ついに彼女はガマンの限界を迎え、姉に飛び掛かる。

そう、もうとにかく補給だの予算だの交渉だの、そういった話は彼女は大っ嫌いだった。

 

 

「アタシ、おうちのジメジメした雰囲気がヤだから欧州に来たのっ!!

 だからやだー!!おかねのはなしやだやだー!!うわーん!!」

 

 

「フェデリカ、コイツは今年で確か。」

「じゅーごっ!!」

「5歳の間違いじゃないのか。」

 

姉のような存在であるフェデリカに抱きつき駄々をこねるその姿は正に幼児そのもので。

 

「余り固いコトは言いたくないがお前も整備隊長だろう。予算や補給の話くらい」

「やーだー!!そーゆーのはリカねえがやってくれるもん!!」

「そーそー!私がやってあげるからね~♪かわいいリリーのためだもん♪」

 

「…私の副官がサーシャで良かった。」

 

自身の副官、弱冠14歳にも関わらず予算や補給管理業務を任せられるオラーシャのウィッチ。

彼女のありがたさを目の前の幼児を見ながら痛感し、今度休暇でもやろうとラルは独りごちた。

 

 

 

 

1サウナ決めた清々しい後、気持ちよくし整備でもしようかとハンガーへ向かうと

 

「ちょ、ちょっとリリー整備隊長、なんて恰好をしてるんですかぁ!!」

「んぇー…おー新入りクンじゃん、どったのさそんな慌てて」

 

見ればその新入りの少年整備士は、顔を真っ赤に染めて顔を覆ってるではないか。

 

「隊長!!隊長は女性なんですし!ここは男性整備士しかいないのですから!!そんな、そんな恰好!!」

「しょーがないじゃーん、リカねえが服洗濯しちゃってコレしかなかったんだもん」

 

そうだ、このリカ姉が何枚も何故か持ってるバニー服がそんなにおかしいだろうか。

あーでもこれお尻の食い込みが…あ、直したら更に新入りクンが真っ赤になった。

 

「姐さん!言われた通りの作業申請書、纏めておきやした!」

「ん~…勝手に私のハンコおしといてー」

 

「ボス、今日のストライカー部品の日日点検終わりました、異常ありません」

「姐御、明日の輸送支援についての事前調整は…」

 

あぁ部下の整備士達はホント優秀で助かる。

アタシがただ修理整備以外なーんにも出来ないアホなのにしっかり介護してくれてるのだから。

 

ただ何も考えずこうやって工具箱で遊ばさせてくれるのは彼らのおかげだ。

 

 

 

「やぁやぁ随分煽情的な格好だねぇ、もしかしてボクを誘ってる?」

「…たすけてリカー!!アタシナンパされてるぅー!!」

「うわぁぁごめんって!ごめんごめん、お願いだからソレだけは勘弁してよ」

 

ストライカーの下に潜り込んだところにひょっこりと顔を出してきたのはカールスラントのウィッチ。

その整った顔立ちは偽伯爵ことヴァルトルート・クルピンスキー中尉だ。

 

「まったくキミのお姉ちゃんは怒らすと先生みたいにおっかないんだから…」

「んもぉー分かってるなら邪魔しないでよほら、部外者はしっしっ!!」

 

 

「…こほん、ところでここにラル隊長の部屋からくすねて来た高級ぶどうジュースがあるんだけど?」

 

「飲むわよやろーどもー!!アタシがゆるすー!!!!」

 

<うおーさすが俺達のリリー隊長だー!!

<そこにシビれる憧れるー!!

 

酒、と言う言葉を察知した瞬間、リリーは拳を高く突き上げ勝鬨を挙げた。

 

「ははは♪ボク、君のそういう所好きだなぁ」

「ほらさっさと開ける!!お酒は待ってはくれないのよォ!!」

 

そうして真昼間にも関わらず整備隊長公認のもと、格納庫では酒宴が開催されて。

 

 

 

 

「…なんだこの有様は。おいニパ、誰か生きてる奴いるか?」

「み、みんな死んでる…酷いよこんなの、一体だれがこんなこと…」

 

プスプスといつも通りストライカーから黒煙を巻き上げ帰還した菅野とニパを歓迎したのは、酔いつぶれた整備士達の死体の山だった。

 

 

「やぁおかえりニパ君ナオちゃん、今日も良い壊しっぷりだね。リリーちゃんも喜ぶよ。」

「てめぇぇぇの仕業かぁぁぁぁ!!!」

 

 

諸悪の根源が殴り飛ばされた扉から現れたもう一人の金髪のウィッチ。

 

「…はぁ、変な声がすると思ってきてみたらやっぱりこんなコトに…」

 

溜息を吐きながら足元の偽伯爵を踏んづけ、二人を一瞥する彼女。

アレクサンドラ・I・ポクルイーシキンはその惨状を見て頭を抱え込んだ。

 

 

「もう何から怒れば…とりあえず菅野さん、ニパさん…ストライカーは」

「壊れてる」「壊れてます」

 

「…明日、出撃があるのは?」

「知ってるよ」「知ってます」

 

「…予備の機体は」

「あるわけねーだろ」「壊しちゃってます」

 

 

その2名のブレイクウィッチーズの清々しい返答にサーシャは満面の笑みでうんうんと頷き。

 

 

「――――うがあああああああああ!!!!」

 

「やべぇキレた!逃げるぞニパ!!」

「あっちょっ待ってって!!あーコケたー!!」

 

 

ストライカーを脱ぎすて、逃げ出したニパに踏んづけられた何か柔らかいモノ。

リリー・グラマンは寝起きで涎を零しながらサーシャの噴火する様を面白そうに見つめていた。

 

「…ああ、またこわしたの…」

「リリーさんッッ!起きているなら正座しなさいッ!いや違うもう良いから皆起こして―――ああもう間に合わないじゃない明日の出撃どうすれば…!」

 

 

 

「―――アタシが起きてるから余裕よ。」

 

 

 

頭を抱え涙さえ浮かべるサーシャに静かに語りかける声。

その声には技術者としての絶対的な自信、そして確信に満ちていた。

 

 

「…なら私も手伝います、何としても明日までに二人のストライカーを」

「いらない。アタシの腕はアナタが一番よく知ってるでしょー?」

 

 

「…わかりました、ただお願いなのでせめて服を。」

「え、なんでぇ」

「貴方が風邪をひいたらどうするのですか!あなた一人で整備を回しているのに!!いいですね!!」

 

プンスコと怒りながら偽伯爵の首根っこを引きずり去っていくサーシャ。

うーん風邪か。確かに酒があるとは言えちょっと肌寒い。

どこかになんか服みたいなの…お?

 

「う、ううん…たいちょう…」

 

ちょうどいい、この酔っぱらって潰れた少年兵を湯たんぽにして作業しよう。

うんあったかい!!あたしてんさい!!

 

 

 

 

「おい。おいリリー、起きろ。」

「ううん…なぁにぃ…?」

 

少年兵を枕にして眠りについていたアタシを起こす声。

見上げるとそこにはここの司令、グンドュラ・ラル少佐が見下ろしていた。

 

「修理の進捗はどうだ?」

「とっくに。」

「…流石だ、お前が居てくれなかったらと思うと肝が冷える。」

 

しかしどうしたのだろうか。彼女が直接アタシの所にくるなど。

予算や会計のことは全部リカや部下がやるし、それ以外の用件など―――ああアレか。

 

「3人ほど診てやってほしい。お前でなくては無理だ」

「んー、おっけー…ちょっと久しぶりだね」

 

 

 

 

連れてこられたのは医務室、その中に並べられた無機質なベッドに寝ている数人の兵士。

皆一様に包帯を巻き、疲労困憊な様子が見て取れた。

 

「彼だ。」

「…あーなるほど、ちょっと待ってねー。」

 

―――フォォォン…ぴょこり

 

魔法力を解放し、使い魔を顕現させる。

頭上からコウモリの耳。背中からバサリと禍々しい翼がはためく。

 

 

「……《催眠》」

 

 

光彩を輝かせ、そのうつろな兵士の瞳をじっと覗き込む。

どうも完全に正気を失ってしまっているらしい、可哀そうに。

 

「…『何があったの?』辛いだろうけど話してくれない?」

 

 

そう、これが整備士としてのアタシではない、もうひとつのアタシの顔。

アタシの固有魔法である催眠を使い、戦いで精神を消耗してしまった彼らの心の傷を癒す。

機械と人間、まったく違う存在とはいえモノを治すという点においてやりがいはどちらも大きかった。

 

「そう…そうだったの…うん、それは辛かったね…。」

 

この目の前の兵士は、陸上ネウロイの巨体に踏みつぶされ動けなくなった仲間。

それを助けられなかったコトが強烈なトラウマになってしまったらしい。

 

 

「今でも毎日夢に見るんだ…助けてくれ!!助けてくれって…!!」

 

 

ボロボロと涙を流しながら悔やむ兵士の姿。

それが痛々しく、そっと抱きしめ背中を優しくさすった。

 

「もういいんだよ、貴方は十分苦しんだから…『その人のことは、忘れて』」

「ぁ…ぁ…」

 

もう一度光彩を輝かせ、彼に暗示をかける。

これが良かったのか、悪かったのかは分からない。

ただこうしなければきっと彼は永遠に死ぬまで苦しんでしまっただろうから。

 

「…」

 

静かに瞼を閉じ、眠りの世界へ旅立つ彼の顔は穏やかだった。

 

 

「…すまないな、整備士に頼むことではないのだが」

「んーん、いいの。」

 

「彼はもう大丈夫だろう、次は…」

 

その後もまた別の兵士を催眠カウンセリングを実施し、心の傷を塞いだ。

 

 

 

そして次に案内された相手の姿を見て、ちょっとだけアタシは驚いた。

 

「…この子の制服、カールスラントのウィッチ?」

「ああ」

「驚いたぁ、カールスラントってアンタとか偽伯爵みたいな変人ばっかだと思ってた。」

「ははは、お前にだけは言われたくないな」

 

その子のベッドに腰掛ける、完全に正気を失いその瞳は光が灯っていない。

 

「大丈夫?アタシのこと、見えてる?」

 

「…あなた、は…?」

 

あーそりゃちょっと驚くよね、医務官でもない変なヤツがいきなり来たら。

 

 

「あー…えっとぉ、アタシ、リベリオンのリリー・グラマンって言うの。」

 

「…リリー・グラマン?」

 

「そーそー、もしかして知って――――」

 

 

――――ごすんっ

 

 

不意に、頬に衝撃と激痛が走る。

それが目の前の呆然としていたウィッチの殴打によるモノだと気づいたのは、倒れてからで。

 

 

「―――お前のっ!!お前のせいでカールスラントはっ!!この性悪女(ヘルキャット)ッッ!!!」

 

 

どこまでもドス黒い憎しみに染まったその瞳は、アタシが生まれて初めて見るものだった。




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