はーい、血を吐きながら続ける悲しいマラソン、はーじまーるよー。
インフェルノ攻略ログとして撮っているこの動画、いつかアップロードされる日は来るのでしょうか?
まぁいいや現在ネウロイの巣追撃の為、雪降るアルプス山脈をトラックで駆け抜けています。
「È stato davvero buono(本当に、良かったのか)」
隣に座る隊長さんちゃおちゃお。
私だけ休んでる訳にはいかないですからね、使い魔エイミーはちょっと…アレなので分離して僚機さんの膝の上で寝てますが。
「Anche tu stai davvero bene(本当にいいのか、お前も)」
「Va bene!Va bene!(いーのいーの)Perché è la nave su cui sto(乗りかかった船なんだしさ)」
ケラケラと笑う「リバウの魔王」西沢さん!なんと彼女までこのネウロイの巣との決戦に参戦してくれるみたいです!
なんと心強いのでしょうか、前回の戦闘でもその活躍がなければ───
───ゲッホゲヴォ、やべまた発作が。
激しく咳き込み震える私を僚機さんが抱きしめます、あーもうリリーさんから貰った薬ないんですよねぇ。
結構マズいです、意識が無くなる時間があからさまに増えてるんですもん。
「sensei...!!」
ああそんな心配そうな顔しないで。
ほら鼻水出てますよ、マフラーしないと風邪ひきますよ。
──いいですか?もし私が戦えなくなったら、あなたが代わりにこのロマーニャを救いなさい。
え?『そんなの無理』?
無理じゃねぇやるんだよ。と言うのは冗談ですが。
その手を握ります、わぁあったかい。
たぶん未来予知ループでこの戦いをクリアできたとしてもロクな結果にはならないでしょう。
だって使い魔が瀕死、私も片腕ないしこのザマ、ストライカーだって零じゃないし。
しかしストライクウィッチーズはたしか『継承』が一つのテーマだったはずです。
もしこの戦いで私が戦えなくなったりして不本意なエンディングを迎えてしまったとしても、せめて希望は天才の彼女に託しておきましょう。
…後味が、悪いですものね。
──フランカお姉ちゃんに戦闘を教えてもらいなさい。何か困ったことがあればリリー中佐に頼りなさい、悪い人ですが根は多分きっと良い人です。
その後も私はずっと寄りかかりながら、彼女に託すモノを話し続けました。
僚機さんは泣いて嗚咽を漏らしながら、うんうんと何度も必死に頷いてくれました。
え?なんで周りの隊長さんたちまで泣いてるんですか?
なに?『絶対死なせない』?『私達が守る』?
──もちろんです、私も皆さんは死なせません。
あああまたハグ来ると思ってましたぁぁぁ!
かかってこいやああ返り討ちにしてくまs…グワーッ!!(即死)
ああでもあったかい...死の冷たさとは真逆の、フランカお姉ちゃんのような温もり…。
皆さんで生きて帰ってまたロマーニャ料理パーティしましょうね、次はお姉ちゃんやリリー中佐も交ぜて。
──▽▽──
吹雪の向こう側にうっすら見える不気味な傘型の大きな影。
仔豹のエイミーはついに目を覚ましませんでした。彼女はもう安全なトラックの座席で待ってて貰いましょう。
彼女のおかげでトリノは解放できましたし、もう十分頑張ってくれました。
でも使い魔なしで飛ぶのは久々ですねぇ、まぁ何とかなるでしょ。
『Questa è l'ultima.(これが最後だ)』
隊長さんからの無線です、配置に付き終わったのでしょうか。
『Ciò che è stato affidato a un compagno morto(散っていった仲間たちに託されたもの)
Dobbiamo ereditarlo e procedere(私達はそれを継承し進まなくてはならない)』
私の手を握る僚機さんの手が震えてます。だいじょうぶだいじょうぶ。
『──Grazie a tutti(皆、本当にありがとう)
Sono orgoglioso di poter combattere con le coraggiose streghe(勇敢な魔女達と共に戦えた事を誇りに思う)』
私もです。
何か嬉しくなってきたので僚機さんの頭を撫でましょう。かわいいですね。
「…ねぇ、人に教えるのって楽しいの?」
西沢さん?そういえば彼女はたしか本国からの教官の誘いを蹴ってましたよね。
「あんた達見てるとなんだか師弟って面白そうね!私も弟子でも探してみようかな〜」
おーいいですねぇ。
502の菅野さんとかどうですか、きっと気が合いますよ。
「へーえ、じゃあこの戦いが終わったら会いに行って見ようかな?…ん」
───遠くで炸裂する爆発音と閃光
どうやら陸戦ウィッチさんたちのアンブッシュ(不意打ち)は決まったようですね。
さて行きましょう二人とも、ロマーニャを救いに。
──▽▽──
わたしの眼の前を悠然と飛ぶ、小さくて儚いけど、大きくて大きな背中。
出会ってまだ一ヶ月程度の彼女はもう、わたしにとっての姉も同然だった。
吹雪の中を降り注ぐ破滅的な紅い閃光の嵐、それを傘になるかのように易易と振り払うセンセイ。
私もそれに倣って張り巡らされたシールドを切り刻み、そこに間髪入れず扶桑の魔女さんや陸戦のウィッチの方々が攻撃を打ち込む。
それらを続ける私達全員を、センセイはたった一人でビームの雨から守ってくれていた。
しかし、この巣の主のシールド、装甲ともに明らかに桁違いに硬い、一枚斬るのにも大変な体力と魔法力を消耗してしまう。
悪辣な気候もあり未熟なわたしはもう既に息を乱してしまっていた。
こうなれば構えを変え、魔法力の出力を上げて───
『よいですか、10回の斬撃を防がれたからと言って、1回の斬撃に頼ってはいけません。
しかし、かつてセンセイに授けられたインストラクションが頭をよぎる。
なんて無茶苦茶なぁ…と、その時は思ったけども今ならその意味が理解できる。
目先の不利有利に釣られて自らの戦術をブレさすな、貫き通せ!
「IYAAAAAA!!」
センセイが教えてくれた近接戦闘術、彼女は何度も褒めてくれるけども。
わたしはまだその足元すら見えていない。
だから、だからまだ、もっと色んなコトを教えてもらいたいから───!!
──▽▽──
──▽▽──
その一心で数十分…いや、数時間を死と隣合わせの戦場を戦い続けたわたしは。
──▽▽──
凄まじい死闘の果てに魔法力を使い切り、空高くから墜ちるセンセイの姿を────。
──▽▽──
「…ごめんね、あなたを死なせる訳にはいかないのよ。
朧気な意識に聞こえる西沢さんの声。
ああ、そうか…わたしは、魔法力が切れて…。
でも、へいきですよ。どうせまた、繰り返すから。
しかし、彼女が何かの小瓶を開き、私の口にそれを流し込み。
「…あなたの、
その声を最後に、私の意識は───。
──▽▽──
…何処ですかここ、なんで私フートンでスヤァしてるんでしょう。
おやここは…懐かしい、忘れもしませんよ。
このゲームを始めた時の開始地点──あの輸送船の一室じゃないですか。
なっつかしー、ほら和風な内装や窓から見える星空。
そして
「──どうも、はじめまして、エイミーさん。」
幼くて舌足らずですけど、凛とした声。
扶桑の寝間着にふんわりとした黒髪のその姿はそう、まさに。
「──
──▽▽──
…言いたいことは色々ありますが、アイサツはされれば、返さなければなりません。
「どうも、はじめまして、竹田美喜さん。アマンダ・M・プラマーです。」
「…にゃあ」
あ、仔猫エイミーが起きましたね。元気そうですよかった。
竹田美喜ちゃんの顔を嬉しそうにぺろぺろ舐め始め、それを微笑ましく撫で返されています。
「…ずっとみてました、あなたを。」
静かに語り始めます。
「フランチェスカおねぇちゃんも、りりーさんも。…501のひとも」
あっ、仔猫エイミーがこっちにきました。
「──ありがとう、わたしのかわりに生きてくれて」
垂れ下がる私のリベリオン下士官服の左袖を見られます。
「──ごめんね、わたしのかわりに、そんなにくるしんで」
私を優しく抱きしめてくれる小さな身体。
なんだか新鮮ですね、いつも大きな人ばかりに抱きしめられてましたから。
「もうすぐ、わたしはおきてしまいます。」
...はて、起きる?
ああ、もしかしてそういうことですか。
「リリーさんの催眠が、解けると?」
「…うん」
あーさっき西沢さんに飲まされた薬、アレはもしかして。
しかしふむ、そうなればどうなってしまうのでしょうか。
エイミーとしての私は…ああ、そうか。
『催眠がある間はログアウトできない』とはそういうことなのでしょうか?
──逆にいえば、催眠が解ければログアウトしてしまうと。
「でもだいじょうぶ、
「え。」
静かに、彼女は夜空を見上げました。
「わたしも、フランチェスカおねえちゃんや、りりーさん…501のひとたちも、りょうきさんも。だいすきだから。」
舌足らずな声が紡ぐ、悲しげな言葉。
「おかあさまや、おとうさま…じゅうしゃのみんな、おじいさまと、おなじくらいに。」
それは寂しく、儚くて。
「でも、わたしがエイミーじゃなくなったら…きっとみんな、かなしんじゃうから。」
そう震えて告げる瞳には涙が浮かんでいて。
…どうせなら本来の意思である彼女も幸せにしてあげたいです。
それがたとえこの世界から逃げ出す絶好の機会をふいにしたとしても。
「それに、わたしは…なにもできないから。なにも、まもれないから。」
「そんなことありませんよ。」
「え?」
だって、私はあなたなのですもの。
飛べますとも。
何がしたいですか。
何をしますか。あなたは。
「わたしは…」
────次の瞬間、窓の夜空が紅く輝きました。
そして私達二人と一匹の世界は赤い炎に包まれて。
その周りには命だったものが、あの夜私を、私達を守ってくれた大人の人達だったものが散らばっています。
「…ネウロイ…!!」
「…うん」
命を奪うもの、穢すもの、破壊と殺戮を繰り返す醜い破壊の権化。
「むらもと....みん、な...」
かつて命をかけて私をストライカーまで導いてくれた従者のおじ様。
わたしを命がけで守ってくれた従者のみなさん。
ああそうか、竹田美喜にとって、彼らは生まれた時から守ってくれていた家族も同然だったのですね…。
「わたしは…」
その幼い少女が紡ぎだす次の言葉をただ待ちました。
「──ウィッチになりたい…ううん、みんなのかたきを、とりたい。...」
「ネウロイたちを、たおしたい...!このてで!ころしたいっっ!!エイミー!!」
「私も…同じだよ、美喜。」
ただそれぞれの大切な人々との記憶と同じように共に在ること。
それこそが、きっと────。
──▽▽──
センセイは、無事だろうか。
吹きすさぶ吹雪にもう既に感覚を失い、もはや飛んでいることですら精一杯だった。
ビームの雨を避けたせいで墜落しかけたワタシを隊長が抱きとめる。
しかしもう、彼女だって限界が近い。
陸戦ウィッチで生きているのは──彼女だけ。しかもその片方のストライカーは動いていない。
「Non morire!(死ぬな!)Non dovresti mai morire!(お前だけはっ!!)」
しかし──ネウロイの雷雨のようなビームは止まない。
ワタシを抱きかかえる隊長のシールドが、大きくヒビが入り、綻び、崩れ、割れて。
そして───
次の瞬間、突如吹き荒んだ"
そのネウロイの傘の一部を粉微塵に切り裂き、爆発四散させた。
──▽▽──
「…どうも。
そのウィッチは、言葉も介さぬ黒い怪異に対し静かに言葉を告げた。
かつて戦国の時代に生きた偉大な竹田の先祖は、殺し合いの前にも礼を欠かさなかったと彼女の祖父は言っていた。
扶桑陸軍の巫女服、その藤色の袴は華族にしか穿くことを許されぬ高位なモノだ。
扶桑が誇る最大ストライカーメーカー宮菱の最新鋭試作機「烈風」が、その彼女の足に纏われ魔導エンジンを高らかに鳴らしている。
そのボディと彼女が装着する義手には製作者の名が、
「
吹きすさぶ雪の向こう、微かに望む月光に襟巻きが揺らめく。
2対の苦無刀を構え、その魔法少女は眼の前の絶望の権化を見下す。
「
あの頃を思いだす。
初めて零で飛んだあの絶望の夜空を。
あの頃とは余りにも多くのものが違う。
場所も。時も。状況も。
戦う理由も。環境も。周りの人々も。
属する国も。名前さえも。
だが、ただ一つだけ絶対に不変のコトがあった。
「────
『
確固たる意思をその翠と黒の双眸に宿した殺戮の魔女は、アルプスの夜空に烈風を吹き鳴らした。
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