「ですから…どうにかしてあなたに戻って来て頂きたいのです!アマンダ・ミシェル・プラマー軍曹!!」
「……うぅん」
はいどうも皆さんこんにちわ~。エイミーでっす(キラッ☆
ってやってる場合じゃねぇです、はい。
現在私が保護…って言うか半ば軟禁状態のロマーニャ基地にはるばるやってきてくれた、ヘルウェティアの偉い人達からの相談を受けてる所なうですよ。
狭い会議室、魔女2人と偉い人の数人きり…何も起こらないはずもなく…。
「あなたが解放したヘルウェティアは…未だネウロイが散発的に出現している状態です。今この瞬間にも、防衛部隊が交戦しているかも知れません」
「ええ…それはわたしも存じ上げてます」
だって私、この間までそこの部隊長(仮)してましたものー。
ドミニカさんが入れてくれたコーヒーを一口すすり、喉を湿らせます。
あ、同席はしてませんが、ドアの後ろで聞き耳を立ててくれていますよ。
「しかしご存じの通り、欧州に散らばった我がヘルウェティア軍の本国への帰還は遅々として進んでおらず…その防衛の大半を駐留している統合政府軍に頼っている次第です」
初老のスーツ姿の軍人さん…なんか勲章みたいなのつけてるし軍人さんだよね?が俯きながら語ります。
うんうん、わかってるんです。すごい大変なのは凄いわかってるんですよ…。
「ですがそれも、先のロマーニャ北部戦線でどの軍も激しく疲弊しているのです…!早急にヘルウェティアの守りを硬めなければならないこの窮地ですが、これ以上の増援はスグには望めない!!」
「今ヘルウェティアに出現している特殊タイプのネウロイ達も、日に日に数を増すばかりで…」
握りこぶしを作られて大汗を浮かべながらオジサマ達に熱弁されます。
うーん、皆さんも必死なのでしょう。分かるんですよ、仰ってることは。
でも私、今ロマーニャを離れる訳にはいきません。……正直、お姉ちゃんともう二度と離れたくないですし。
「わたし一人がもどった所で、何にもならないと思うんですけど…」
黙りこくってしまった私を、オジサンたちが狼狽えながら顔を見合わせてます。
でもダメなんですよねぇ、お姉ちゃんの故郷の危機な上、竹田美喜(本来の人格)関連でゴッタゴタしてる時にここを離れられませんよ。
うーん、と私も濃いコーヒーの水面に映る私とにらめっこしていた所────。
「……そんなことはないさ、皆お前に帰ってきてほしいと思ってるよ」
そんな中、静寂を破って投げかけられる女性の…というかウィッチの声。
それもロマーニャ語ですね。
「お前が必要なんだ。あのアルプスを飛んだ魔女が。」
私より下手をすれば10歳以上年上の彼女───元陸戦ウィッチ部隊の隊長、現ヘルウェティアのアルプス国境基地の司令さんです。
そう、あのアルプスの地獄で共に戦い、二人だけ死神に置いてけぼりにされた『隊長さん』こと、彼女です。
「みんな、ですか?」
「うん。ダキアやスオムス…カールスラントの、ヘルウェティアに駆け付けてくれたウィッチから有志を集って、お前が対特殊ネウロイ戦闘を教えた奴らがいただろう?」
「あぁ…!みなさん、お元気ですか?」
「それはもうな。"センセイ"を早く連れて帰って来い!!って見送る私の背中に文句をぶつけるくらいにはな」
「ふふふ、それは良かったです」
懐かしい…アルプスでの戦闘の後、司令官の真似事をしてる時に航空近接戦闘術を教えたウィッチさん達が数名いたんですよ~。
一カ月足らずにも関わらず皆さん凄い優秀でした!全員めっちゃ年上でしたけども。
…まぁ、僚機さんに匹敵する程の天才の方は流石にいませんでしたけどね…でも皆さん本当に優しい方でした。
「私が曲がりなりにもヘルウェティアを守り抜けているのは…お前が残してくれた彼女達のおかげだよ」
「いえいえ、隊長さんのおかげですよ。…勝手に消えたわたしの後始末は大変だったでしょう?」
「ははは!気にしてないさ!誰にだって色々事情はあるものな!」
笑い飛ばしてくれる隊長さん。
一時は心を病んでしまっていましたが、もうすっかり元のロマーニャ魔女の明るい気性に戻ってくれたようですね…良かった良かった。
心の奥底でうとうとしてる美喜も、ちょっとほっとしているのが伝わってきます。
「わかった…君にも深く難解な事情があるのは十分に承知している。今日の所は我々も諦めよう」
「本当に、申し訳ないです」
深々とお辞儀をします。遠路はるばる来てくれたのにマジごめんなさい…。
「あ、頭など下げないでくれ!」
「そうだ、統合政府軍属でもない、リベリオン軍配下の軍人である君を直接他国に引き抜こうなど…無茶な頼みをしているのはコチラの方なのだから」
手を制すように差し伸べられてオジサンたちが謝り返してくれます。
「しかし、これだけは覚えておいてくれ。…ヘルウェティアは君の味方だ。」
「復興途上の我々が出来る事は少ないだろうが、何か力になれる事があれば何でも言ってくれ」
差し伸べられた手を握り返し、義手じゃない方の手で握手を交わします。
すっごいありがたいですけど…それと同じことロマーニャの将軍さんにも昨日言われたんですよねぇ…。
何かその言葉の裏には「ぜひ我々についてくれ」って意味がありそうな気がして────あぁもうこんな疑心暗鬼ダメですよダメダメ。
────バタムッ!!
「こら!入るなって言って……あーもう!!!」
「エーーーーイーーーーミーーーーー!!!!みてみてぇー!ピッツァつくったのピッツァぁ!!!」
突如締め切られた応接室の扉が勢いよく開け放たれ、そこから飛び込んできたのは……ケチャップまみれになったフランカお姉ちゃん。と止めようとしたドミニカさん…。
しかもその手には焼きたてホカホカのピザのお皿が。お姉ちゃんパスタ以外に料理できたんだ!!?
「わぁっ…♡お姉ちゃんのぴざ…♪じゃなくて!ちょっとまってお姉ちゃん!」
「ほぅらぁ~!!見てみて!!すっごいでしょ!?美味しそうでしょっ!?……んにゃ?」
まるで偉い人達のことなど眼中にないかのように私をくるりと膝の上にのせていつもの姉妹モードに入ったお姉ちゃん。
それにつられて私も完全にお姉ちゃん大好きな妹モードに入りかけますが、何とか堪えます!!!
「そうか…その子がフランチェスカ・ルッキーニか。」
「んじゅぁー?お姉さん、だぁれ?わたしのコトしってるのぉ?」
「ふふっ、ああ。そいつから『大好きなお姉ちゃんの話』を何度も聞かされたからなぁ…♪」
「ああああああああ!!!///隊長さんやめて!!///お願いですからどうかそれはお姉ちゃんの前では/////」
真っ赤になってるであろう顔を両手で覆いながら懇願します!
いやマジで無意識のうちにホント色んな人にお姉ちゃんとの惚気話ばっかり喋ってたみたいで私…はわわ///
「姉妹の邪魔をしては悪いですし、私達はそろそろお暇しましょうか。」
「ああ、そうだな…。」
そ、そうです!私の理性がちょっとでも残っているうちに早くここから離れてください!!
あっ…お姉ちゃんのほっぺに、ケチャップついてる…舐めとりたい…♪はっダメです気を強く持たないと!!!!
「しかし、エーゲ海の女神達がこんな幼い少女達とは……」
「うむ…」
「こんな幼い少女達を、リベリオンは本気で────」
「────リベリオンが何か?」
仔猫のように微笑ましくじゃれ合う二人の幼い魔女の姿を前に、小声でつぶやき合うヘルウェティア高官達の言葉を、ドミニカが遮った。
少し眉をひそめ、怪訝な表情を浮かべている。
「えっ…あ、ああ、いや!少し良くない噂を最近耳にしたモノでね」
「ああ、他愛もない、ただの噂さ」
「…?」
ドミニカの眉間の皺が、更に深くなる。
そのリベリオン士官服の彼女の反応を見て、高官達は慌てたように目を配り合わせ額に汗を浮かべた。
「…もしかして、本国で反戦派の野党がエイミーに関して嗅ぎまわっているって話のことか?」
「いや!そのコトでは…ううむ」
高官が額の汗をぬぐう。
「アンタ達はさっき、エイミーの味方だと言っていただろ。」
「………」
そう告げると高官の男性は腕を組み低くうなると、辺りを憚るように見回した後に黙り込んでしまった。
「違う…反戦派だけじゃない。もっと大きなモノがエイミーを…消そうとしてる。」
その背後から、元陸戦ウィッチの隊長の声が言葉を続け、ぎょっと男たちはそれに振り向いた。
「…??は?もっと大きな…何が?」
「わからない、それこそ噂でしかないんだ。」
戦場を知る険しい魔女同士の冷たい目が、静かに交わりあう。
「…この子の直属の上司は、
「その噂は、どこから?」
「ヘルウェティアに駆けつけてくれた統合政府軍のブリタニアのとある佐官だ。……何やらリベリオンが何やら"キナ臭い"ことの準備をしている、と。」
「………」
ドミニカは天井を見上げ、心の中で溜息をついた。
こんなコトならばもっとあの性悪女中佐の元でもっと勉強をしておくべきだった、と。
──▽▽──
────ほくほく。
食後、湯上りの気持ちのいい体にバスタオルを片手だけで羽織りながら、エイミーはルッキーニの部屋のドアを開けた。
余り荷物はない、質素なベッドとドレッサーがある程度の部屋。各地を転々とするウィッチは、余り荷物を持たない。
自分だってそう、ヘルウェティアに残してきた烈風や巫女服が、今日やっとついでにと持ってきてくれたくらいなのだから。
「……ん」
部屋の主はいまだお風呂で着替えの最中だ。自分だけ先にやってきた。
ベッドのランプの付け、半裸の姿のまま縁に腰掛ける。
もうすっかり外は薄暗い。星が映える欧州の夜空は美しいが、どこか嫌な思い出が浮かびそうだった。
ふと、ベッドの端に目をやると、ルッキーニが脱ぎ散らかしたのであろうロマーニャの軍服と下着と、リボンがたたまれもせずに放り投げられていた。
「もう、お姉ちゃんったら」
その縞々模様の下着をそっと片手できれいに畳み、ワイシャツを手に取る。
まだ温もりがあった。
そして大好きな姉に一日中触れ続けていたその布は、大好きな姉のニオイをふわりと漂わせていた。
「……ふらんか、お姉ちゃん」
太陽のような優しく暖かな香り。
どこか切なげで儚い表情を浮かべた扶桑の少女は、その衣服にそのあどけない顔をそっと埋めた。
「なぁに、えいみー」
「…わっ…」
そして次の瞬間には、そうしていた自分が背後から抱きしめられて。
そのうなじのあたりに、風呂から上がり髪すら結っていないルッキーニが顔を埋めていた。
まるでエイミーが彼女の服に対しそうしていたように、愛しむように、ニオイを堪能するように。
首筋にかけられる暖かい吐息のこそばゆさと、ルッキーニの長い髪が柔肌をくすぐる感覚にエイミーは僅かに身をくねらせた。
「…つめたい」
けれども、ルッキーニが妹の身体を抱きしめて漏らした最初の感想はそれだった。
風呂あがりだというのに、湯気さえ上っている自身の身体とは対照的に、彼女の体温はひどく低かった。
「さむくにゃい?」
「ううん、お姉ちゃんといっしょなら。あったかいから」
「そっか」
その言葉に嘘はないのだろう。
事実、エイミーはもう猫耳と尻尾をぴょこりと生やし、それをルッキーニの太ももに擦り付けている。
彼女にはそれがどうしようもなく微笑ましく、また愛おしく感じられた。
「んっ……♪」
────ぴょこんっ♪
フランチェスカ・ルッキーニは未熟なウィッチでは決してない。感情の昂ぶりで、自らの使い魔を制御できなくなるような、そんなコトはありはしない。
彼女が今こうして妹とお揃いの猫耳と尻尾を生やしたのは、自らの意思によるものだ。
────すりすりっ♪しゅるんっ♪
二本の黒豹の尻尾が絡み合い、無邪気に幸せそうにじゃれつきあう。
ルッキーニは大事な妹の小さすぎる肩をそっと抱くと、自らに向い合せた。
「────ん」
その額に、一生消えないだろう傷が生々しく残る儚げなその顔に、そっと口づけを落とした。
身長差、そして恥じらいからか俯いたその表情は伺いしることは出来ない。
でもそのふわふわな黒髪の上で、ぴょこぴょこと跳ね喜ぶ猫耳がその歓びようを雄弁に語っていた。
「……くち、にも…」
「んにゃ?」
「え、あ……その…」
細いおとがいにルッキーニの指が添えられ、上を向けさせる。
「もう、ほんとかわいいんだから、エイミーは」
驚きに目を見開く暇もなく、その幼い妹は大好きな姉に唇を乱暴に奪われた。
それも唇を重ね合わせるだけではない、深く、深く、熱い口づけ。
そしてそのままルッキーニはその幼すぎる、小さすぎる身体を。
容易くベッドの上に押し倒し、その上に覆いかぶさる姿勢となり。
「…しよっか…♡」
「ぷはぁっ………はぁ……♪」
どこかとろんとした、ともすれば退廃的とさえ言える笑みを、二人してその幼い顔に浮かべ。
────エイミー、ずっと、私と一緒に・・・・。
その妹の身に迫る手に、何もできないやるせなさをぶつけるように。
ルッキーニはその思いの丈と深い情愛を、エイミーの身体に深く、熱く、刻み込んだ。