環いろはと水波レナ、似た者同士の二人には誰にも言えない秘密があった――

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秘密の花園

「おじゃましまーす!」

「いらっしゃいレナちゃん、弟くんも」

 

昼下がりののんびりとした陽気が漂うみかづき荘に、レナちゃんとその弟くんが遊びに来た。

今日はみんな出払っていて、家にいるのは私とういの二人だけ。

 

 

「……ってことなのよ、ほんとかえでって神経質なんだから!」

「さすがにそれはレナちゃんが悪いんじゃ…」

「はぁっ?なんでそうなるのよ!」

「姉ちゃん……今度謝っとけよ」

「レナさん……」

「なっ……!?」

 

私の部屋でお菓子を食べながらのお喋り。

何気ない会話一つで四面楚歌になってしまうレナちゃんに苦笑する。

いつも強気なレナちゃんも、ういと弟くんには弱い。

 

「さてと…弟くん、あっちの部屋行こっ!」

「わかった」

 

会話が一段落したところで、ういが弟くんを連れて隣の部屋に向かった。

 

「あの二人ほんと仲良いわよね」

「そうだね」

 

ういがレナちゃんと仲良くなってから、レナちゃんはよく一人でみかづき荘に遊びに来るようになった。

最初はういと話してるだけだったけど、弟くんを連れてくるようになってからはういと弟くんが二人で遊ぶことが多くなり、その間手持ち無沙汰なレナちゃんは、仕方なく同じ中学で比較的話しやすい私と話すのが定番の流れに。

最初はたどたどしかった私とレナちゃんも、今では一番の大親友……だと思う。

ほんと、みかづき荘に来る前はこんなふうになるなんて考えられなかったなぁ…

 

「……」

「……」

 

会話はすぐに途切れ、沈黙が流れる。

でも私たちはこの沈黙が嫌いじゃない。

 

私とレナちゃんはよく似ている。

今でこそマシになったけど、昔は自分に自信が持てなくて、他人ともうまく関われなくて、そんな自分を好きになれなくて…

初めてレナちゃんに会った時に、なにか運命的なものを感じたのを覚えている。

彼女はまるで、もう一人の私みたいだった。

だからこうなることも必然だったのかもしれない。

 

私はレナちゃんをじっと見つめ、彼女の前で両手を広げてこう囁いた。

 

「おいで、レナちゃん」

 

レナちゃんは一瞬目を泳がせたあと、私の声に導かれるままに近付いてくる。

 

いつからか始まった、お互いの心の隙間を埋めるための行為。口下手な私たちができる唯一の会話。

沈黙を合図にして、私たちの「じゃれ合い」が始まった――。

 

 

 

 

ベッドの上に座り、ぎゅっと抱き合う私たち。

レナちゃんの豊満な胸が私の胸と一緒に潰れ、その柔らかな感触が伝わってくる。

肩口にうずめられた彼女の髪をそっと撫でると、彼女の全身の力が抜けていき、その体重が私に委ねられる。

 

「ふふっ、レナちゃんの髪いいにおい…」

「……うるさい」

 

二人の間に心地よい時間が流れる。

ここは私とレナちゃん、二人だけの空間。

クラスの子もいじめっ子も誰も立ち入ることができない秘密の花園。

その事実を噛み締めるように瞳を閉じ、彼女の髪を撫でていた手をゆっくりと滑らせ、彼女の胸に当てる。

彼女も同じように私の胸に触れると、お互いに少しずつ指を押し当て、互いの乳房を捏ね回す。

 

「んっ…」

 

思わず私の口から声が漏れる。

声、聞こえちゃったかな…

恥じらいながら彼女の顔を見ると、彼女の顔は耳の先まで真っ赤に染まり、目を閉じ、唇をぎゅっと結んで快感に耐えていた。

よかった、私だけじゃなかったんだ…

私の安堵と悦びを感じ取ったのか、レナちゃんは目を開け、顔を上げた。

お互いの視線がぶつかる。

 

「いろは…」

 

ねだるように潤んだその瞳に吸い寄せられ、気が付くと私たちは、どちらからともなく深く唇を重ね合っていた。

 

「ん、んぅ…れろっ……はぁ…」

 

唇を貪り、舌を絡め、唾液が混ざり合う。

重なり合った二人の声にならない声が、互いの脳内に反響する。

 

唇を離すと、レナちゃんは私の首筋から鎖骨、乳房の先までをべろりと舌で舐め進め、私の乳首を口に含んだ。

思わぬ攻めにぞくぞくと身体を揺らす私。

夢中で私のおっぱいを吸うレナちゃんの髪を、私は愛おしむように撫で続ける。

 

 

「レナちゃん、大好きだよ…」

 

 

それから私たちは時間が過ぎるのも気にせず、お互いを舐め合い、よがり合い、じゃれ合った。

もはや二人を邪魔するものは、誰もいない――。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

―――――――――

 

 

 

行為が終わり、ベッドの中で身を寄せ合い、先ほどまでの快感に浸る私たち。

私が恥ずかしそうに笑顔を向けると、レナちゃんもまた恥ずかしそうに笑い、そして愛おしむように私の髪を撫でてくれた。

外の世界でのしがらみや体裁を全て取り払ったスキンシップ。

この部屋にいる時だけ、私たちはお互いに素直になれる。

 

その時…ギシッ、という音が隣の部屋から聞こえ、二人の世界から引き戻される。

そういえばういと弟くんが隣の部屋で遊んでるんだっけ。

 

「あの二人最近仲良いけど、もしかして付き合ってるのかな?」

「さぁ? ま、相手がういちゃんならレナも文句ないけど」

 

私の髪を撫でながら彼女が答える。

私もあの二人はお似合いだと思う。

しっかり者で頼りがいのある弟くんと、人の心をほぐす柔らかな雰囲気を持つうい。

いつか二人が結婚なんてことになったら、すごく楽しいだろうなぁ…

 

「もしあの二人が結婚したら、私とレナちゃんも姉妹ってことになるのかな?」

「んーどうなんだろ?レナたちが嫁ぐわけじゃないし…」

 

考え込むレナちゃんを見て、私はちょっとしたイタズラを思い付く。

 

「もし姉妹になれたら私がお姉ちゃんだね」

「なんでよ?」

「だってレナちゃんこんなに甘えんぼさんなんだもん」

「なっ…!」

 

かぁっ…と赤くなり、しばらく黙り込むレナちゃん。怒らせちゃったかな…

困り笑顔を浮かべる私に、彼女は意外な言葉を呟く。

 

「……いろはお姉ちゃん」

「え…?」

「……アンタがお姉ちゃんなんでしょ…?こういう呼び方……好きそうだなって…」

「……」

「それで、どうなのよ……いろはお姉ちゃん」

 

その瞬間、身体の奥から熱いなにかが湧き出るような感覚に襲われた。

かえでちゃんにも、ももこちゃんにも見せないであろう彼女の素直な一面、彼女はそれを私だけに見せてくれる。

それがたまらなく嬉しくて、愛おしくて…

 

「ちょっ、いろは…もうそろそろ時間でしょ…?」

「もうちょっとだけだから…お願いレナちゃん…ん…」

 

先ほどとはうって変わって、今度は私がレナちゃんに甘える形になる。

 

「んっ…もう…どっちがお姉ちゃんなんだか…」

 

文句を言いながらも、レナちゃんは素直に私を受け入れてくれる。

 

二人の時間は、まだ終わりそうにない。

 

 

 

 

「じゃあレナたち帰るから、やちよさんたちによろしくね」

「また来てね、二人とも」

 

玄関から私とういが笑顔で二人を見送る。

 

「さて、そろそろみんな帰ってくる時間かな。…うい?」

 

ういはぽーっとした顔で弟くんの背中を見送り続けていた。よく見ると後ろ髪が跳ねている。

 

「え、あっ、そうだねお姉ちゃんっ!」

「もしかして弟くんと離れるの寂しい?」

「わ、わたしたち、そんなんじゃないから!」

 

わかりやすいな…

思わず困り笑顔を浮かべる私。

 

ういと弟くん。

一見すると弟くんがういに振り回されてるように見えるけど、たぶん好きの度合いはういのほうが大きいんだろうな。

姉妹の私にはなんとなくわかる。

だって私も同じだから…

 

物思いに耽っていると、スマホにLINEのメッセージが届いた。相手はレナちゃんだ。

忘れ物かなにかかな?そう思いLINEを開いてみると…

 

『やっぱアンタがお姉ちゃんとか絶対ないから!』

 

文章の後には怒りスタンプが二つ。

 

負けず嫌いだなぁ…。また困り笑顔になる私。

二人きりの時の素直なレナちゃんも好きだけど、やっぱりいつもの強気なレナちゃんも好きだな…

 

レナちゃんは本当にかわいい。

怒ったり、悪態を付いたり、いじけたり、素直になったり…

ころころと変わる彼女の表情を見ているだけで、私の心は満たされる。

もっと一緒にいたい、そう想えば想うほど、別れの時はいつも切ない。

 

そうだ、今日のお菓子は買った物だったけど、今度は手作りのお菓子を作って持って行ってあげようかな。

私とレナちゃんとういと弟くん、みんなで食べたらきっと美味しいよね。

レナちゃん、喜んでくれるかな…?

 

ウキウキと次の予定を考えながら、私は静かに玄関の扉を閉めた。


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