最近、忙しいのとストーリーを考えていた影響で投稿が遅れました…
今回は前々から登場を考えていた"あの幻魔"が登場しますよ!
第十七話 偽柱事件 前編
吉原にて上弦の陸・墜姫、妓夫太郎を打ち破った左馬介と炭治郎たちは束の間の休息を取っていた。しかし、そんな彼らに幻魔による魔の手が密かに迫りつつあった…
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・蝶屋敷
吉原での戦いから一ヶ月後、炭治郎たちは蝶屋敷にて傷の回復に専念していた。その中でも妓夫太郎の猛毒を長時間受けていた静音は特に重傷であり、禰豆子の血で解毒してなんとか一命は取り止めたが意識不明の状態が続いていた。
「静音の様子はどうだ?」
「…残念ながら変化無しだよ」
病室で静かに眠る静音を左馬介と阿児、そしてアオイたちが心配そうに見守っていた。中でもアオイの錯乱ぶりは相当なものであり、瀕死の静音が蝶屋敷に慌てて運び込まれた時は大泣きして大騒ぎになったのだ。自身の代わりに戦場に行ったせいでこんな酷い目に合わせてしまったと強く悔やんでいた。
「……」
「静音ならきっと大丈夫だ、元気を出せ」
「…わ、私のせいで静音がこんな酷い目に…私の…私のせいで…!」
「そんなこと言っちゃ駄目だよ!静音だって自分の意思で代わりに行ったんだからアオイは何も悪くないって」
「…はい」
「しのぶ様もしっかり休めば必ず回復するって言ってましたし、きっと大丈夫ですよ!」
その後、静音の病室を後にした左馬介と阿児は蝶屋敷の廊下を歩いていた。その時、背後から聞き覚えのある声が左馬介を引き止めた。
「よう!ここにいたのか、明智」
「天元か、傷はもういいのか?」
「ああ、もう何とも無いぜ!片目は失くなっちまったがな」
言うとおり天元の左目には鉢金と同じく派手な装飾が付いた黒い眼帯を身につけていた。しかし、未だに五体満足であり活動にそれほど支障がなかったため引き続き音柱として任務に励んでいる。
「それより明智、今時間はあるか?」
「別に構わないが、何だ?」
「少しアンタと話がしてぇ、他の柱も交えてな」
「他の柱?確か…おっさんの他にあと七人いたっけ?」
「ああ、今回は一部の奴だけだ。色々と聞きたいこともあるしな」
「分かった、案内してくれ」
こうして天元に連れられ左馬介は蝶屋敷の一室に案内された。聞けば今回の密談に参加した柱の剣士は天元も含め四人だと伝えられた。一室に入ると先に集まっていた他の三人が左馬介に向いた。
「待たせたな、連れてきたぜ」
「お待ちしてました、左馬介さん」
「……」
「…チッ…」
一室に集まっていたのは蟲柱、胡蝶しのぶと水柱、冨岡義勇に蛇柱、伊黒小芭内だった。特に小芭内は未だに左馬介を信用しておらず殺気立っており嫌悪する義勇が隣にいることでかなり機嫌が悪そうだった。
「さて、それじゃ早速、始めるか」
「それより宇髄さん?最初に私に何か言うことがあるんじゃないんです?」
「…悪かったって言ってるだろ?この間、散々謝ったじゃねぇか…いい加減機嫌直せよ」
「…こっちは大切な家族を戦場に連れていかれそうになったんですよ?そう簡単に許せると思ってるんですか?」
「こっちも嫁を助けるために必死だったんだよ!」
しのぶはただならぬ雰囲気で青筋を浮かべながら天元を睨め付けている。理由は言うまでもなく一ヶ月前にアオイたちを無理矢理、任務に連れていこうとして揉めた事だ。それを聞いたしのぶの怒りは凄まじく、あわや天元と斬り合いになりそうなほどの騒動になったのだ。
「……おい、俺は醜い喧嘩を見に来たんじゃない、さっさと説明しろ。…でないとコイツを斬るぞ」
「…落ち着け」
「…黙れ、俺に指図するな冨岡」
「はぁ〜…ねぇ、あんた達ホントに話す気あるの?そうじゃないなら左馬介もあたいも出ていくよ?」
「……」
明らかに密談をするような空気ではなかったが阿児の一声で落ち着いた一同は椅子に腰を下ろした。そんな中、最初に口を開いたのは天元だった。
「さて、まずは礼を言わせてくれ、吉原では本当に助かった。アンタのおかげで鬼も幻魔も退治することができた」
「ああ、全員は助けられなかったが…」
「アンタがいなかったら町の被害はあの程度じゃ済まなかった、本当に感謝する」
天元は深々と左馬介に頭を下げる。鬼と幻魔の襲撃により吉原の町は甚大な被害を受けたが幸いにも左馬介が迅速にシャルカの大群と巣を排除したおかげで壊滅は免れたのだ。
「それじゃ早速、話題を変えるが…あの幻魔って化物は何なんだ?前にあの化物共を残らず倒すためにアンタは戦国時代から来たって言ってたな?」
「そこは私が説明しましょう。宇髄さんと伊黒さんは幻魔の情報について聞くのは初めてでしたね?左馬介さんも交えて解説しますからよく聞いてください」
「……まあ、聞くだけ聞いてやろう」
「はぁ〜…何回するんだろ、この説明」
その後、しのぶは左馬介と阿児の言葉も交えながらこれまでの幻魔の情報に加え、左馬介に出会った経緯などを天元と小芭内に詳細に説明したが、言うまでもなく二人は信じられないような表情をしている。
「…以上が私の知る幻魔の情報です」
「正直、信じられねぇが…この目で見ちまったからなぁ」
「……」
「あの蜂の高等幻魔は過去に左馬介が一度倒してる筈だけど、あいつはまた蘇った…バルドスタンはギルデンスタンと同じく死んだ幻魔を蘇らせる術を持ってるみたいだね」
「あの蜂女、手強い相手だったぜ。あの上弦の鬼を相手に互角以上に戦ってやがったからな」
「…以前、那田蜘蛛山で胡蝶と戦ったあの幻魔の剣士も相当の手練だった…高等幻魔は上弦の鬼と同等の強さを持つと考えていい」
「それに奴が何故あの町に潜んでいたのかも気になる、何か企みがあるのかもしれん」
しかし、現時点では幻魔の目的は不明のままだ。あれから那田蜘蛛山周辺を監視の隊士が見張っているが、特に変わった動きはないそうだ。目的も次の行動も予測できない以上、今は様子を見るしかないということで話はまとまった。
「今は様子を見るしかねぇな。しかし、この状況で新手の敵とは厄介なことなっちまったな」
「それでも上弦の鬼を倒したのはお手柄ですよ?この百年動かなかった状況が変わった…これは何かの前兆だと思います」
「…ああ」
上弦の鬼の一角を破られた鬼舞辻率いる鬼たちも黙ってはいないはずだ。今後、恐らく何かしらの行動を起こしてくることは明白だが幻魔と同様に次の行動が予測できないのは痛いところだ。
「…話は終わりか?俺はもう行くぞ」
「おい伊黒、分かってるとは思うが明智のことはまだ他の柱に漏らすなよ?特に不死川あたりににバレたら手が付けられねえ」
「…俺は信じない。鬼は大嫌いだ、さっきの話もコイツのことも信用できん」
「…伊黒さん、鬼を信用できないあなたのお気持ちも分かりますけど、ここは私たちを信じてくれませんか?左馬介さんは信ずるに値する人です」
「ああ、明智は信頼できる奴だぜ?俺の嫁や吉原の民衆もみんなコイツに助けられたんだ。少なくとも明智は俺たちの敵じゃねぇよ」
「……」
実際に幻魔による凄惨な町の被害を目にした小芭内は先ほどの話が偽りなどではないことは分かっている。しかし、鬼を激しく憎む彼はどうしても左馬介を信じられなかったのだ。
「…まあいい、ひとまずは黙っておいてやる。だが…少しでも妙な真似をすれば俺がお前を殺す」
「……」
殺気の宿った鋭い目で左馬介を睨みつけた後、部屋から去っていた。
「なんなのよアイツ!嫌なヤツだなぁ」
「すみません、伊黒さんは柱の中でも特に鬼への憎しみが強い人ですから。でも、ああ見えて口も固くて信頼できる人ですよ」
「まあ、鬼を見つけたら問答無用で斬り捨てるアイツがアンタを見逃したところを見るに今の状況はアイツも理解してるはずだ。ひとまずは問題ないだろ」
今回の会合はひとまずこれで解散となり、左馬介たちは幻魔と鬼による攻撃に備えるべく行動を開始したのだった。
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・同時刻 蝶屋敷 中庭
左馬介が柱たちと会合していた時、蝶屋敷の中庭では炭治郎たちかまぼこ隊が鍛錬に励んでいた。静音と異なり怪我が少なかった三人は早期に退院したのだが、最近は鬼の出現がまったく無く暇を持て余していた三人は来たるべき時に備えて自らを鍛えていたのだ。
「そういえば最近、鬼が出ないな」
「ハンッ!俺様に怖気づいてんだろ!何せ上弦の鬼を斬ったんだからな!この嘴平伊之助様がなッ!アハハハ!!」
(コイツ…調子に乗ってるな。確かに鬼の頸は伊之助が斬ったけど…俺たちの援護があったからだろ!)
そんな中庭で鍛錬に励む三人を縁側の物影からじっと覗く者がいた。
「…?あれは…しのぶさんか?」
「ホントだ!しのぶさ~ん!俺たち訓練すごく頑張ってますよ!だから褒めてくれませんかぁ?俺、しのぶさんに褒められるともっと頑張れる気がするんですよぉ」
「しのぶ!お前も訓練か?よーし、なら俺と勝負だ!」
炭治郎たちをじっと眺めていたのはなんとしのぶだった。だが、しのぶは三人の問いかけに答えずに無言で振り返りその場から去っていたのだ。
「……」
「あれ?しのぶさん?」
「オイ!しのぶ!なんか用があったんじゃねぇのかよ!」
(…ん?さっきのはしのぶさん…だよな?)
その直後、蝶屋敷の三人娘の内の一人である寺内きよが廊下を歩いていた時、前からやって来るしのぶと出会っていた。
「あ!しのぶ様、お疲れ様です。今日は柱の方とお話があるって聞いてましたけど終わったんですか?」
「……」
「そうだ!さっき美味しい和菓子を買ってきたんです。後で食べませんか?」
笑顔で問いかけるきよになんとしのぶは邪魔だと言わんばかりに強引に突き飛ばしたのだ。
「きゃっ!!?」
「……」
「え…?しのぶ…様?」
突き倒されて涙目で震えるきよを見下すように睨んだ後、しのぶは何事もなかったかのように歩き出した。
その後、正面玄関まで歩いて来たしのぶは蝶屋敷を後にしようとするが、その時背後から何者かに呼び止められた。
「あれ?しのぶ様、お話は終わったのですか?」
「…師範…あの、後でお願いしたいこと…あります…」
「……」
呼び止めたのはアオイとカナヲだった。すると、しのぶは一瞬だけ振り返り二人を睨みつけるように見た直後、そのまま蝶屋敷から去っていってしまった。
「しのぶ様…?」
「……?」
何がなんだか分からない二人は首を傾げたが、きっと急用で急いでいるのだと思って引き止めなかった。その直後、蝶屋敷を後にしたしのぶは不気味な笑みを浮かべると突如走り出し何処かへと走り去っていた。
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○同時刻 蝶屋敷
密談を終えた左馬介としのぶ、天元、義勇が一室から外に出るといつのように慌ただしく隠の隊員や蝶屋敷の女の子たちが忙しそうに動き回っている。
「さて、問題は明智のことを他の柱とお館様にどう認めさせるかだな」
「そうですね、伊黒さんはまだ左馬介さんのことを信用していないみたいですし、私と宇髄さん、冨岡さんだけではまだ説得力に欠けます」
「他の四人の柱も説得しなきゃいけないのかぁ…」
「少しずつ説得していくしかないだろう」
「甘露寺や時透の二人はなんとかなりそうだが、不死川や悲鳴嶼さんの説得は骨が折れそうだぜ」
「俺も鬼退治に協力は惜しまない、何かあれば声をかけてくれ」
「すみません、もう少し時間はかかりますけど必ず左馬介さんのことをお館様や他の柱の人たちにも認めさせます。引き続きお力添えをお願いしますね」
「頼りにしてるぜ?明智」
その時、一同の前から寺内きよが歩いてくる。きよはしのぶを見るや涙目になりながら頭を下げた。
「きよ?どうしたんですか?」
「し、しのぶ様…す、すみません…!私、何かしのぶ様のお気に障ることをしてしまいましたか…?」
「落ち着いて、一体どうしたのですか?」
まったく状況か分からないしのぶはきよに詳しい事情を聞くが、それを聞いた一同は同時に首を傾げた。
「それで、しのぶ様がとても怒ってるのかと思って…」
「…ちょっと待ってください。その時、私はまだ左馬介さんたちと会議をしていましたよ?」
「……え?」
「ああ、さっきまで胡蝶は俺たちと一緒に部屋にいたぜ?」
するときよの後ろからアオイとカナヲもやって来た。二人はしのぶの姿を見ると驚いた表情を見せる。
「え!?しのぶ様…?」
「…師範…あれ…?」
「アオイ、カナヲどうしたんですか?そんなに驚いて」
「えっと、さっきしのぶ様が屋敷から出ていくのを見たので…」
「……」
何かかおかしい…しのぶは三人の話を詳しく聞くがやはり辻褄が合わない。しのぶは先ほどまでずっと左馬介たちと一室におり、外に一歩も出ていない。話を聞くうちに左馬介や天元たちも真剣な表情に変わっていた。
「ち、ちょっと待ってください…!じ、じゃあ…」
きよが顔を青くしながら震える声で…
「…さっき見たしのぶ様は、
これは緊急事態だ、としのぶたちは顔を青くしていた。なんと胡蝶しのぶの"偽物"が鬼殺隊に紛れ込んでいることが発覚したのだ。どんな手段を使って特定されたのかは不明だが敵はすでに蝶屋敷の場所を把握しており、すでにこちらの奥深くにまで入り込んでいた。
問題はこの敵がどの勢力からの差し金であるかなのだが…
「間違いない、幻魔の仕業だ」
「…確かなのか?明智」
「ああ、相手と瓜二つの姿に変装しこちらを欺く幻魔と戦ったことがある。恐らく正体は奴だ」
「相手と瓜二つに…?厄介な相手ですね」
左馬介はかつて戦国時代で"スチラード"と呼ばれる造魔と戦ったことを思い出していた。その時は左馬介と同じ姿へと変装し長い間行動を共にした相棒である隠密のかえでの目をも欺いた幻魔であり、その偽装能力を見破るのは困難だ。
「だが、幻魔が何故この屋敷に…?」
「もしかして、左馬介が狙いなのかな?」
「本当に明智が狙いなら、とっくに仕掛けてきてるはずだろ?または俺たちが一緒にいたから不利だと思ったのか…何にせよ見過ごせねぇ事態だぜ」
「そうですね…すぐにお館様や他の隊士と柱たちにも知らせましょう」
「…分かった」
しのぶはアオイたちに蝶屋敷から決して出ず、連絡があるまで自身の姿を見かけたら注意するように伝えた後、大急ぎで屋敷を出ていった。しのぶと同じく屋敷を後にしようとする天元たちに左馬介が声をかけた。
「天元、義勇。俺も手を貸そう、奴らの好きにはさせん」
「できるならアンタの力を借りたいところなんだが…今は駄目だ」
「…ああ」
できるなら幻魔に精通した左馬介の力を借りたいところだが、まだ一部の柱と隊士としか接触していない左馬介を本部に同行させるのはまだ危険だと二人は考えていたのだ。
「…分かった、なら蝶屋敷の警護は俺に任せろ。何かあればすぐに駆けつける」
「ああ、ここは任せたぜ。まあ、今回は他の柱の剣士もいるしアンタの出番はねぇかもしれねぇがな」
こうして蝶屋敷の警護を左馬介に任せて天元と義勇はしのぶの後を追って鬼殺隊本部へと駆け出した。
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・数時間後 鬼殺隊本部
しのぶからの鎹烏によって今回の"偽胡蝶しのぶ"の情報は直ちにすべての柱に伝えられた。その後、柱全員による緊急会議が開かれることになり鬼殺隊本部の一室に柱の剣士たちが集合することになったのだがすでに異常事態が起こっていた。
「…か、甘露寺…すまん…俺は何か君の気に障るような真似をしたのか?…もし、そうなら謝らせてくれ、この通りだ」
「え、ええっ!?伊黒さん、突然どうしたの!?」
「オイ…富岡ァ…!!テメェ、いったいどういうつもりだァ…?柱が隊律違反とはどういう了見だァ!!」
「……?何のことだ?」
「ねぇ、宇髄さん。さっき本部の書庫で何やってたの?僕には関係ないけど自分で散らかしておいてそのままにしておくのはどうかと思うけど?」
「はぁ?何のことだよ、俺はさっきまで富岡と胡蝶と一緒にいたんだ。本部の書庫なんか行ってねぇぞ?」
柱たちが揃えて口を開くが双方とも言っていることが食い違っている。
「「「………」」」
「…一度、皆で話し合う必要があるな」
黙り込んだ一同で言葉を発したのは岩柱・悲鳴嶼行冥だった。岩の呼吸の使い手であり長年、岩柱として鬼殺隊を支え続け当主である産屋敷耀哉からの信頼も厚い鬼殺隊最強の剣士だ。今回は他にも風柱・不死川実弥、恋柱・甘露寺蜜璃、霞柱・時透無一郎と残りの柱の剣士が全員集結していた。
その後、それぞれの言い分を説明していくがやはり内容に矛盾点が見られたのだ。
「…人気の甘味処の桜餅が手に入ったので甘露寺に贈ったのだが、渡した直後に投げ捨てられた挙げ句まるで軽蔑するような顔で睨まれてしまったのだ…すまない、君の気分を害してしまって…」
「ええっ!?私が伊黒さんからの贈り物を捨てるはずがないわ!それに…その時私は担当地区の見回りをしてたの」
「か、甘露寺…!よかった…そうなのか」
「富岡ァ…!テメェ、隊士を殴ったよなァ?怪しい行動をしてたテメェを制止しようとした隊士に手を出したのを俺は見てたぜェ…!」
「…身に覚えがない。俺はその時、胡蝶たちと一緒にいた」
「はい、確かに富岡さんは私たちと一緒にいましたよ」
「ああ、間違いねぇよ」
「…なら、書庫で見かけた宇髄さんは誰だったの?あれは確かに宇髄さんだったんだけど」
どの柱も偽りを言っているとは思えない。これまでの話を整理する内に行冥はある考えに辿り着いていた。
「どうやら…その敵は我ら柱の剣士と瓜二つの姿に変装できるようだな」
「はい、推測が正しければ幻魔の仕業だと思います」
「うむ…日中に動けるところを見るに間違いないだろう」
「問題はその幻魔ってのが何で鬼殺隊に忍び込んでるのかだなァ」
幻魔が何のために鬼殺隊に潜んでいるのかは未だに検討もつかない。しかし、鬼でも見つけられない蝶屋敷や鬼殺隊本部を特定する彼らの諜報能力は侮れないものがある。
「まさか…お館様が狙いなのかな?」
「…あり得ない話ではない」
「何にせよ、お館様の屋敷の警備を強化するべきだと思うぜェ、悲鳴嶼さんよォ」
「…今回は私も同感だ。ならば、お館様の屋敷は私が守ろう」
現在、病が悪化し一歩も動けない産屋敷耀哉は屋敷で寝たきりになっている。屋敷の警護は行冥が担当することになり、残りの柱で偽物を探し出すことになった。その対策として柱同士で接触して怪しいと感じたら合言葉を言う決まりになったのだ。
「合言葉は"悪鬼滅殺"だ…少しでも違和感を感じたら声をかけろォ」
「…分かった」
「承知した、さぁて偽物野郎を捕まえるかねぇ!」
「皆さん、くれぐれも注意してくださいね」
「みんなの偽物…ちゃんと見分けられるか心配だよぉ…」
こうして緊急柱合会議はお開きとなり、柱の剣士たちはそれぞれ偽物を探すために行動を開始したのだった。そして、会議から数日後…事態は急展開を迎えることになる。
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・数日後
柱合会議から数日後、鬼殺隊内で問題が発生していた。なんと各地に複数ある鬼殺隊の詰所にいた隊士が残らず惨殺されるという事件が発生したのだ。生き残った隊士からの報告によれは襲撃したのは柱の剣士だったという。
直ちに柱たちが召集されたが、やはり時間と行動の辻褄が合わず合言葉も全員答えることができていた。
「…となると、やっぱり偽物の仕業だな」
「くそがァ…!コソコソと苛つく野郎だぜェ!」
「被害に合った詰所は三ヶ所…距離もそう離れていません。同一犯の可能性が高いですね」
「全員の話を総合すると、その時間帯にその詰所付近を移動してた柱はいねぇ。まず間違いねぇだろ」
「でも、なんで急に本部とは関係ない詰所を狙ったのかしら…」
「…恐らく、我ら柱を分散させるつもりだろう」
偽物の狙いは恐らく産屋敷耀哉のはずであり、厳重に守りが固められている屋敷の警護を少しでも分散させるのが狙いなのではないかと行冥は睨んでいた。
「でも、どうするの?放っておくとまた隊士が殺されるかもしれないよ」
「でもでも!お館様の警護を疎かにはできないわ!」
「…それに、迂闊に柱を分散させては偽物に侵入の機会を与えてしまいます」
そう、敵は柱と瓜二つの姿に変装できる相手だ。むやみに柱を分散させては敵の偽装でこちらの懐に入られる危険が高まってしまう。難しい状況に一同は頭を悩ませるが行冥か何かを思いついたのか一計を案じた。
「…このままでは隊士が殺されるだけだ、やはりこちらの隙を敵に見せる必要がある。被害の合った詰所付近にそれぞれ柱を向かわせよう、不死川、富岡、時透の三人に任せる」
「いいのかァ?俺たち三人の誰かに化けて屋敷に向かうかもしれねぇぞ?」
「…今日から数日、私以外にお館様の屋敷に入ることを禁ずる。もし、屋敷に入る柱がいればその者は偽物だ」
「なるほど、それならすぐに見破ることができますね」
「他の者は屋敷の警戒を怠るな、必ず敵は動きを見せる…」
こうして実弥、義勇、無一郎の三人が被害を受けた詰所付近の調査に向かい、残りの柱は引き続き耀哉のいる屋敷付近を警護することになった。
三人がそれぞれの詰所へ向かって数時間後、屋敷へ続く道の一つである森に囲まれた一本道をしのぶが歩いていた時、前から義勇が歩いてくるのが見えたのだ。
「富岡さん、どうでしたか?何か分かりました?」
「……」
義勇は無言で首を横に振る。特に変わったことは無かったのか調査先から戻って来たのだろう。義勇はしのぶの横を通り過ぎ一本道を進もうとするが、しのぶが独り言のように話し始めた。
「ああ、そうです。言い忘れてましたけど…」
笑顔で義勇へ振り返り一言…
「……富岡さんは
「………!」
義勇は右利きであるはずなのになんと日輪刀が右脇に差してあったのだ。義勇とは短くない付き合いであるしのぶはそれを見逃さなかった。すると、義勇の前に日輪刀を構えた天元が上から現れた。
「諦めろ、テメェの擬態はすでに俺様が看破した!!テメェからは
音を察知することに長ける天元は目の前にいる義勇からは心臓の鼓動音が聞こえないことにいち早く気づいていたのだ。二人の前にいるこの富岡義勇は偽物だと確信した二人は戦闘態勢に入る。
「……」
「…よくも私の家族に危害を加えてくれましたね、楽に死ねると思うな!」
「変装なんざ地味な手段を使いやがって!テメェの息の根はこの宇髄天元様が止めてやるぜ!」
もう隠す必要はないと悟ったのか、偽義勇はゆっくりと刀を抜き取る。先ほどまで義勇と同じ形の日輪刀だったその刀は血のように刀身の赤い不気味な刀へと変わっていた。
「……!」
(コイツが明智さんの言っていた幻魔ですね…!)
姿は相変わらず義勇と瓜二つだが片目が明らかに人間の目ではなくなっており、二人に向かって残忍な笑みを浮かべていた。この偽義勇の正体こそ左馬介が話していた"スチラード"という幻魔だったのだ。
同じく戦闘態勢に入ったスチラードはある構えを見せる。それを見た天元としのぶは驚きを隠せなかった。その構えは二人にとってよく見慣れたものだったからだ。
(水の呼吸…肆ノ型・打ち潮…)
「何!?」
なんとスチラードが呼吸の剣技を繰り出してきたのだ。技の速さ、精度、切れは義勇が放つものとほぼ同じだ。しのぶの首を狙ってスチラードが肆ノ型で襲いかかる。
ガギィィィ!!
「くッ!!」
(富岡さんの技…!まさか、コイツは外見だけじゃなく技までも模倣できるの!?)
こうして突如、現れた造魔スチラードと柱の剣士との戦闘が始まった。
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・スチラード改
年齢:不明
一人称:無し(喋れない)
好きなもの:獲物を殺すこと、殺し合いと痛み
鬼武者の登場人物。本作のオリジナルキャラクター。バルドスタンによって造られた最新型の造魔であり、ギルデンスタンが造ったオリジナルにバルドがさらなる改良を加えたもの。最大の特徴は一度見た相手の"姿"と"技"を完全にコピーすることができ任意で自由自在に自身の姿を変化できる極めて高い偽装能力を持つ。技も完璧に模倣できるが威力はオリジナルの半分程度しかないという欠点がある。ある目的で鬼殺隊へ潜入しその能力で柱の剣士と隊士たちを翻弄した。だが、『喋れない』という致命的な欠点を持っており、本人も獲物を殺すことと戦いだけにしか興味がない残虐かつ冷酷な性格のため潜入任務にはまったく向いていない。
しかし、生みの親であるバルドスタンにだけは従順でありバルドも"孝行息子"と大いに可愛がっている。親の影響か戦闘における頭脳に優れ、的確な判断力と分析能力でコピー技を使いこなす。
○武器
・血塗れの銘刀
スチラード改の愛刀。斬り殺した獲物の血によって刀身が赤く染まっている。血まみれにも拘らず凄まじい切れ味を持つ銘刀。
○技
・呼吸の剣技
コピーした鬼殺隊の呼吸の剣技各種を使用する。しかし、宇髄天元の大刀二刀、甘露寺蜜璃のウルミ刀などといった特殊な形状の武器による技はコピー不可。
次の話も現在、執筆中です!ネタバレですが…次回は久々にゴーガンダンテスが出ます!