鬼滅の刃 鬼斬り武者   作:戦国のえいりあん

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お待たせしてすみません…

最近、仕事で多忙なのに加えて絵の方に力を入れていたせいで全く進んでいませんでした。

久しぶりのゴーガンダンテス登場ですよ!




第十八話 偽柱事件 後編

 

密かに鬼殺隊へ忍び込んでいた高等幻魔スチラードと遭遇した柱の剣士たち。自在に姿を変える未知なる強敵と鬼殺隊の誇る柱の剣士たちとの戦いの火蓋が切って落とされた。

 

ーーーーーーーーーー

 

・鬼殺隊本部  付近の一本道

 

冨岡義勇へと偽装していたスチラードの正体を見破ったしのぶと天元だったが、相手の思わぬ特性に苦戦を強いられていた。

 

(水ノ呼吸…陸ノ型…ネジレ渦)

 

「うおっと!?」

 

義勇の姿を模したスチラードは水の呼吸の剣技を模倣して二人に襲いかかってくる。陸ノ型による斬撃をなんとか回避した天元は目にも止まらぬ速さでスチラードの懐へ入り頸を狙った一撃を放つ。

 

ガギィィン!!

 

「……」

 

「チィ!」

 

しかし、スチラードは天元の一撃を片手で難なく受け止める。その直後、スチラードの背後に回り込んだしのぶが素早い突きを繰り出そうと急接近する。その時、天元の攻撃を受けて止めていたスチラードの姿が瞬時に変化し先程までとは違う姿に変わっていた。

 

(何ッ!?姿が変わりやがった…!)

 

(…!?なるほど、これで蝶屋敷に潜入していたのですね!)

 

なんとスチラードは冨岡義勇の姿から『胡蝶しのぶ』の姿へと変わっていたのだ。相変わらず片目は不気味な異形の目をしているがそれ以外はしのぶと瓜二つの姿をしていた。天元の攻撃を受け止めていたスチラードは力づくでそれを押し返すとすぐさま振り向きしのぶの攻撃を迎え撃つ。

 

(蟲ノ呼吸・蜂牙ノ舞…真靡キ)

 

(…!!驚きましたね、まさかここまで私の技を再現するとは)

 

スチラードが繰り出したのはしのぶ独自の型である蟲の呼吸の技である目にも止まらぬ突き技だ。しかし、自身の型であればその威力も出し方も知っている。何よりしのぶの蟲の呼吸の型は自身の日輪刀の毒を注入することに重きを置いた技であるためやはり他の柱に比べれば威力は劣ってしまう。

 

(自分の型に遅れは取らないわ!)

 

「蟲の呼吸・蜂牙の舞…真靡き!」

 

しのぶもまた同じ型でスチラードの攻撃を迎え撃つ。ほぼ同時のタイミングで跳躍しお互いの刀の切っ先が額に迫る。

 

(……!)

 

(いくら同じ技でも速さでは私のほうが上ですよ!)

 

だが技の速さにおいてはしのぶに軍配が上がり、しのぶの刃が先にスチラードを捉えようとしていた。しのぶの日輪刀には強力な猛毒が仕込まれており掠っただけでも死に至る危険極まりない物だが次の瞬間、スチラードが思いもよらぬ行動に出たのだ。

 

(……)

 

速さではしのぶに劣ると瞬時に判断したスチラードは技の軌道をしのぶの日輪刀へと切り替えたのだ。なんとスチラードは同じ突き技で刀の切っ先を受け止め相討ちにするつもりなのだ。刀の切っ先を狙って技を繰り出すなど熟練の剣士でも困難な芸当なのだがスチラードは難なくこれをやってのけたのだ。しのぶの刃の切っ先とスチラードの刃の切っ先がぶつかり合うと動きが一瞬だけ止まった。

 

(なんて奴なの…!)

 

(……!!)

 

お互いの刃がぶつかった瞬間、なんとしのぶは後ろに吹き飛ばされてしまった。速さでは勝っていたが力ではスチラードが勝っており、毒を注入することに特化したしのぶの型は他の柱が繰り出す呼吸の技に比べると威力が劣るはずなのだが、しのぶよりも腕力に優れるスチラードが繰り出すことで本来の倍以上の威力が発揮されるというわけだ。

 

「くっ!?」

 

後ろに軽く仰け反ったしのぶに対してスチラードは好機と言わんばかりに追撃を繰り出そうと急接近する。受け身を取ったことにより僅かにできた隙を見逃さずスチラードはしのぶの喉元に向かって目にも止まらぬ突き技を繰り出した。

 

ガキィィン!!

 

「……!」

 

「そうわさせないわ!」

 

スチラードの突きがしのぶに当たる直前、側面から繰り出された謎の斬撃がスチラードの刀に命中し突きの軌道を間一髪で逸らしたのだ。斬撃の方を向くとそこにはウルミ剣のような長い刀身の日輪刀を持った恋柱・甘露寺蜜璃がいた。

 

「しのぶちゃん!早く距離を取って!」

 

「ええ!ありがとうございます!」

 

さらにその背後から蛇柱・伊黒小芭内も姿を現し天元、しのぶ、小芭内、蜜璃の四人でスチラードを囲むように布陣した。

 

「…甘露寺に変装するなどふざけた真似をしてくれたな、楽には死なせん」

 

「わぁ、しのぶちゃんにそっくり!みんなが分からなかったのも納得しちゃうわ」

 

「遅ぇぞテメェら!」

 

(蜜璃さんに伊黒さんも来た…この布陣なら優位は間違いありませんね)

 

柱の剣士、四人に囲まれ絶体絶命の状況であるはずだが、スチラードは全く動じていないどころか笑みすら浮かべており迎え撃たんとしのぶと同じ蟲の呼吸の構えを取る。

 

「でも、同じ姿でも仲間を傷つけるのは許さないわ!」

 

先に攻撃を仕掛けたのは蜜璃であり、まるで生きているかのような日輪刀の刃がスチラードに襲いかかる。しかし、その攻撃は難なく弾き返されるがそれに呼応するように今度は小芭内がスチラードに攻撃を仕掛けた。

 

「蛇の呼吸…壱ノ型 委蛇斬り」

 

間合いを詰めながら予測困難な横薙ぎの円形軌道の一太刀を頸に向かって繰り出すが、スチラードはその太刀筋を正確に見抜いていた。

 

「……!」

 

最低限の動きでその一太刀を回避しつつスチラードは小芭内に反撃を繰り出そうとする。その直後、スチラードの姿がしのぶから『時透無一郎』の姿へと変わっていたのだ。

 

(…霞ノ呼吸…参ノ型…霞散ノ飛沫)

 

(何ッ!?時透の姿に変わっただと!?)

 

無一郎の霞の呼吸の技であり、まるで霧を払うかのような円を描く回転斬りを繰り出したのだ。何とか皮一枚で回避には成功したが技の衝撃によって小芭内は吹き飛ばされてしまった。

 

「…クッ!!」

 

しかし、休む暇を与えないとばかりに今度は左右からしのぶと天元が呼吸の技を繰り出しながらスチラードに接近する。

 

「音の呼吸・伍ノ型 鳴弦奏々!!」

 

「蟲の呼吸・蝶ノ舞 戯れ!」

 

(……)

 

天元の二刀による爆風と斬撃の連撃に加え、上空から凄まじい速さのしのぶの突き技が同時に襲いかかる。上空と左右…どちらにも逃げ道は無い。二人の柱の剣士による洗練された技が迫るがスチラードは恐ろしいほどに冷静だ。

 

するとスチラードの姿が無一郎から義勇へと変化した。

 

(水ノ呼吸…拾壱ノ型…"凪")

 

(冨岡さんの拾壱ノ型…!?)

 

(しまったッ!冨岡の技か!?まずい!!)

 

しかし、気づいた時にはすでに遅く間合いに入った天元としのぶはいつの間にか全身に無数の斬撃の食らってしまった。この水の呼吸・拾壱ノ型は冨岡義勇が独自に編み出した技であり、間合いに入った相手を居合斬りの要領一瞬で無数の斬撃を入れて切り捨てる技だ。この世で義勇のみしか使用できない奥義のはずだがスチラードのコピー能力はそれすらも模倣してしまったのだ。

 

「ガハッ!?」

 

「きゃあ!!?」

 

カウンター技を食らった二人はあまりのダメージに思わずその場に片膝をついてしまう。

 

(…クソッ!迂闊だったぜ…まさか冨岡にしか使えねぇ技すらも使いこなすとはな!)

 

(…幸いにも威力は低いようですが、中々の深手ですね)

 

しかし、完全に技を模倣できる代償として威力はオリジナルに比べて半減してしまうという欠点があり本来であれば致命傷になるはずの拾壱ノ型を受けても行動不能にはならなかった。

 

その後、体制を立て直した蜜璃と小芭内がすかさず抜群の呼吸でスチラードに連撃を繰り出しているが、その攻撃をスチラードは片手で軽々といなしあしらっていた。

 

(この化け物、すっごく手強い…!伊黒さんと二人がかりなのに…!)

 

(…忌々しいことに動きは冨岡と瓜二つ…下手に手を出せば拾壱ノ型で反撃される…想像以上に厄介な相手だ)

 

柱の剣士二人相手に互角以上の戦闘繰り広げていたスチラードだったが、なんとその背後から謎の人影が姿を現しスチラードに斬りかかったのだ。

 

ガキィィン!!

 

(……?)

 

「ようやく見つけたぜェ…偽物はテメェだなァ?ぶち殺してやる」

 

「…!不死川か!」

 

現れたのはスチラードに隙を見せるために別行動を取っていた不死川実弥だった。向かった先の詰所に異常がないと判断した実弥は大急ぎで来た道を引き返してきたのだ。だが実弥の不意打ちもスチラードは後ろを向いたまま片手で防御していた。

 

「好都合だぜェ!偽物とは言え気に入らねェ冨岡を斬れるんだからよォ!!」

 

「…不死川、手を貸せ」

 

「不死川さんも来てくれたわ!これで百人力だね」

 

すると静止して呼吸で傷をある程度塞いだしのぶと天元も回復すると五人でスチラードを包囲する。状況は先程よりもより不利になるがそれでもスチラードは余裕を崩さない。

 

「数的には有利ですが、この化物は状況に応じて呼吸の型を使ってきます。注意してください…!」

 

「テメェら一人相手になに梃子摺ってんだァ?」

 

「コイツは強ぇぞ…ひょっとすると上弦の鬼にも匹敵するかもしれねぇ」

 

「…次は逃がさん、俺が殺る」 

 

「大丈夫!この五人ならきっと勝てるわ!」

 

「……ㇰㇰ…」

 

スチラードはどこからでもかかってこいと言わんばかりに不気味な笑みを浮かべながら指を立てて挑発する。それと同時に動き出したのは実弥だった。

 

「いい度胸だァ…!ぶち殺すッ!!」

 

閃光のような速さでスチラードの懐へ接近し頸に斬りかかる。スチラードはそれを受け止めるがそれと同時に左右側面から小芭内と天元が襲いかかる。実弥を押し返し回避しようとするがその豪腕によって受けて止めている刀がビクともしない。やむ得ず回避行動を取ろうとするが、回避できそうな方面からしのぶと蜜璃が迫る。

 

「逃しませんよ…」

 

「どう?これなら避けられないわ!」

 

(……)

 

全て回避するのは無理と判断したスチラードは被弾を覚悟して最も回避しやすい地点を狙って回避行動を取る。だが予想通り全ての攻撃を回避することはできず肩を天元、背中を蜜璃の刃によって斬り裂かれた。

 

「まだ終わらねぇぞ!風の呼吸…壱ノ型 塵旋風・削ぎ!」

 

凄まじい勢いで竜巻の如く螺旋状に地面を抉りながら突進して斬り刻む型であり、回避して隙ができたスチラードに休む暇なく襲いかかる。するとスチラードの姿が義勇から無一郎へと切り替わる。

 

(霞ノ呼吸…弐ノ型…八重霞!!)

 

対するスチラードは霞の呼吸で迎え撃つ。体幹を大きく捻り、瞬時に幾重もの斬撃を繰り出す型だ。互いの技がぶつかり合うが威力はほぼ互角で相討ちになってしまった。だが、その直後に小芭内、しのぶ、天元の三人が同時に型を発動しながら三方向から迫っていた。

 

「蟲の呼吸…蜻蛉ノ舞…複眼六角!!」

 

「音の呼吸…参ノ型…鳴響震撃!!」

 

「蛇の呼吸…肆ノ型…頸蛇双生!」

 

(……!)

 

すぐさま拾壱ノ型を発動しようとするが身体の変化が間に合わないと判断したスチラードは回避を選択した。しかし、しのぶの凄まじい速さの突きと小芭内の左右から繰り出される変幻自在の斬撃は回避しきれず左胸を突かれ、腹部を左右から切り裂かれてしまう。

 

「へへっ!隙ができたぜ!くらいな!」

 

技を回避された天元だったが直後に身体を切り返していつの間にかスチラードの懐に入っていたのだ。天元はスチラードを蹴り上げると同時に自慢の火薬玉を複数正確に投げつけた。

 

一定の高さまで打ち上げられた瞬間、天元の投げた火薬玉がスチラードに全て命中し大きな轟音と爆風を巻き起こしながら爆発した。

 

「これでとどめよ!恋の呼吸…参ノ型…恋猫しぐれ!」

 

「風の呼吸…弐ノ型…爪々・科戸風!」

 

爆風に包まれながら落下してくるスチラードに向かってとどめと言わんばかり蜜璃と実弥が無数の斬撃を放つ。しかし、落下しながらスチラードは無一郎から『吾妻善逸』の姿を変えた。

 

(善逸君の姿に…!)

 

(雷ノ呼吸…壱ノ型…霹靂一閃・八連!)

 

なんとスチラードは落下しながら体制を立て直しつつそのまま呼吸の技である霹靂一閃を繰り出したのだ。斬撃を掻い潜りつつ蜜璃と実弥に雷の如く居合斬りで襲いかかる。

 

「きゃあ!?」

 

「くそがァ…!!」

 

スチラードの霹靂一閃によって蜜璃は脇腹、実弥は胸部を薄く斬られてしまった。そして、二人を通り過ぎると今度はそのまま天元と小芭内に斬りかかる。

 

「ぐっ…!」

 

ガキィィン!!

 

「おっと!ヘヘッ、悪くねぇ腕じゃねぇか善逸!」

 

小芭内は左脚を斬られたが天元は双刀でスチラードの攻撃を受け止めていた。同時にスチラードと天元が激しく技を打ち合い始め、目で追うのも困難なほどの剣劇が繰り広げられる。

 

「……!?」

 

「敵は宇髄さんだけではありませんよ?」

 

天元と打ち合っている最中にしのぶが突き技を繰り出しながら横槍を入れてきた。片腕をかすりながらも紙一重で回避するが天元に致命的な隙を晒してしまったのだ。

 

「もらったぜ!おらァァ!!」

 

「……グ…!」

 

スチラードは腹部を天元の一撃によって深く切り裂かれてしまった。素早く距離を取り斬られた部位を確認すると横一文字に斬られた刀傷からどす黒い血液のような物が流れ出ている。さらにしのぶの日輪刀による猛毒が効き始めたのか口からも黒い血液を吐血した。

 

(猛毒も効いてる…勝機ありですね)

 

「諦めろ、テメェにもう勝機はねぇ」

 

「みんな、あともうひと押しだよ!」

 

「……ㇰㇰ…!!」

 

しかし、スチラードの闘志は全く衰えていなかった。それどころか満面の笑みを浮かべながら狂ったように笑っていたのだ。その表情はまるで遊んでいる子供のように楽しそうだった。

 

(…気色悪ぃ奴だな。この状況で何で笑っていられる?)

 

(なんなの…!この化け物…なにがそんなに可笑しいの!?)

 

「つくづくムカつく野郎だぜェ…!そんなに死にてぇなら殺してやるよォ!!」

 

するとスチラードの姿が善逸から『竈門炭治郎』へと変え、見たこともない独特な構えを取った。

 

(炭治郎の姿に変わった…!)

 

「…竈門炭治郎の姿か」

 

「ちょうどいい…テメェをぶっ殺してやりたかったんだよなァ!!」

 

因縁のある炭治郎の姿に変わったスチラードに向かって実弥は斬りかかる。それに対してスチラードは見たこともないような技で実弥を迎え撃った。

 

(ヒノカミ神楽…円舞一閃…)

 

雷の呼吸に似た踏み込みで先ほどは比べ物にならない速度で目にも止まらぬ斬撃を繰り出したのだ。

 

(何だァ!?さっきまでと動きが全く違う…!)

 

予想以上の速さに先に相手のほうが速いと判断した実弥は咄嗟に回避行動を取るが、それでもスチラードの技は完全に回避できず右肩を切り裂かれてしまったのだ。

 

「ぐァ…!?」

 

「し、不死川さん!大変…!」

 

致命傷は避けられたが斬られた傷が燃えるような暑さを持っていたのだ。

 

(何だあの型は…?見たこともない技だな。炭治郎の奴、こんな技を習得してやがったのか?)

 

「…図に乗るなよ!」

 

「伊黒さん!援護するわ!」

 

今度はスチラードに向かって小芭内と蜜璃が攻撃を仕掛けた。左右から挟み込むように同時に呼吸ピッタリの連携技を繰り出した。

 

「蛇の呼吸…弐ノ型…狭頭の毒牙!」

 

「恋の呼吸…壱ノ型…初恋のわななき!」

 

大きな踏み込みから始まる目にも止まらぬしなる刃による蜜璃の斬撃と蛇を思わせる闘気をまとい敵の死角を縫うような小芭内の斬撃が同時にスチラードに襲いかかる。

 

(ヒノカミ神楽…灼骨炎陽…)

 

それに対しスチラードは太陽を描くかのようにぐるりと舞うような斬撃を繰り出したのだ。水平方向に渦巻く焔のような闘気が、前方中距離まで広範囲を薙ぎ払う、まさに攻防一体の技だ。灼骨炎陽によって技を弾かれながら斬撃を喰らった二人は吹き飛ばされてしまった。

 

「ガッ…!?」

 

「きゃあ!!?」

 

「蜜璃さん!伊黒さん!」

 

スチラードが技を出し切った直後、その上空から天元が呼吸の技を仕掛けようとしていた。

 

「そこだ!音の呼吸…壱ノ型・轟!!」

 

大地に大穴を空けるほどの振り下ろしであり、スチラードの隙を完璧に突いていたが…

 

(ヒノカミ神楽…幻日虹)

 

完全に命中したと思ったがそれはスチラードの残像であり振り落とすと同時に轟音が巻き起こり、その場所には大穴が空いていたがスチラードの姿はなかった。

 

「何ッ!?消えただと!!」

 

 

(ヒノカミ神楽…火車…)

 

すると今度はスチラードが上空から天元に向かって斬りかかる。その技は水の呼吸”の“水車”に近似した断裂斬撃だが陽炎を纏ったその威力はそれとは比べ物ならなかった。

 

こちらも天元の隙を確実に突いており、何とか回避行動を取った天元に大きなダメージを与えたのだ。

 

「ぐぁ…!!?」

 

「宇髄さん!」

 

柱の剣士五人を相手に満身創痍の状態で互角以上の勝負を繰り広げるスチラードにしのぶは驚愕していたが、その時スチラードに異変が起こった。

 

「…!!?…グッ…」

 

なんと急に吐血し苦しみ始めたのだ。そうヒノカミ神楽は強力な技だが消耗が激しく使用者の炭治郎でも連発することはできない切り札でもあるのだ。しかし、スチラードはそれを知らなかったがために他のコピー技と同じように連発してしまった結果、身体の限界を超えてしまったのだ。さらに毒の影響もあり先程までの動きはすでに出来なくなっていた。

 

(苦しみ出した…!毒の影響のようですが、これはまたとない好機です!)

 

「これで終わりです!蟲の呼吸・蜂牙の舞…真靡き!」

 

しのぶの技が目にも止まらぬ速さでスチラードの心臓を貫いた。それと同時に左右から天元と小芭内が呼吸の技で攻撃を仕掛ける。

 

「音の呼吸・伍ノ型…鳴弦奏々!!」

 

「蛇の呼吸…壱ノ型…委蛇斬り!」

 

畳み掛けるかのようにスチラードに呼吸の技の連撃を叩きこむ。もはや動けず回避することもできないスチラードは全ての技を為す術もなく食らってしまう。

 

「……ガ…ァ…」

 

「終わりだァ!!死にやがれェェ!!」

 

満身創痍のスチラードの頸を狙って実弥が斬撃を放つ。だがそんな状況でもスチラードまるで痛みすらも楽しんでいるかのように笑っていた。

 

実弥の刃がスチラードの頸を断ち切ろうしていた瞬間、スチラードは一言だけ心の内で呟いていた。

 

(……オヤジ…ドノ…スマヌ…)

 

ザンッ!!

 

実弥の一閃によってスチラードの頸は胴体から切り離された。頭部を失った胴体は力が抜けたかのように崩れ落ちた。すると全身がまるで液体のように溶けて変化した後、そこにはボロボロの丸太ような形をした頭の無い木像が残っていた。

 

「やっと、くたばったか」

 

「手強い相手でしたね…」

 

「…結局、何だったんだ?コイツは」

 

「最後まで気に入らねぇ屑野郎だったなァ」

 

「…ちょっと怖かった、戦いながらあんな楽しそうに笑ってる奴なんて初めて見たよ」

 

すると今度はその木像が塵のように崩れ落ちると中から無数の魂のような物体と何かの書物が出てきたのだ。

 

「あ!あの本は…」

 

「なるほどな、俺に変装してコイツを書庫から盗み出してたんだな」

 

スチラードは撃破したが、結局この幻魔の目的が何だったのかは最後まで分からなかったのだ。とにかくこれで産屋敷耀哉の暗殺は阻止できたと安堵した一同だったが、それと同時にどこからか何者かの高笑いが聞こえてきた。

 

「ハッハッハッ!!見事だ!まさか、スチラードを倒すとはな」

 

「…?誰だ」

 

「何だァ?」

 

一同が声がする方向を向くと崖の上に何者かが立っていた。するとその者は高らかに跳躍しちょうど五人のいる真ん中に着時すると名乗りを上げながら珍妙なポーズを披露する。

 

「お待たせしました!幻魔界最高の剣士…ゴーガンダンテス、ここに見・参ッ!!」

 

 

「「「「………」」」」

 

「うーん…決まりましたね、拙者の名乗りの素晴らしさのあまり声もでないようですね」

 

「はぁ~…」

 

現れたのは高等幻魔ゴーガンダンテスだった。微妙に言い回しが変わりダサい仕草と妙なポーズがこれでもかと盛り込まれていた。その姿を見たしのぶはなんとも嫌そうな表情でため息をついており他の柱の剣士たちも思わぬ乱入者に反応は様々だった。

 

「……プッ!!(わ、笑っちゃ駄目よ!駄目駄目!)」

 

「…何だコイツ、本物のアホか?気持ち悪い奴だな」

 

「……オイ、このバカは何だ?」

 

「テメェ…ふざけてんのかァ?」

 

するとダンテスは空中を浮遊していたスチラードの魂を残らず自身のベルト部分に吸収すると、落ちていた書物を拾い上げ懐にしまった。

 

「悪いが、これは拙者が貰い受けます」

 

「あなた…!それをどうするつもりですか!」

 

「おや?誰かと思えばしのぶではありませんか!いやはや、貴方とは本当に縁がありますね」

 

「…気安く人の名前を呼ばないでくれますか?殺しますよ」

 

「やはり怒った顔もまた美しい、ですが…女性はやはり笑顔が一番です。いつか笑顔の貴方を見てみたいものだ」

 

「……本ッ当に口の減らない人ですねッ…!!(ブチッ)」

 

「ね、ねぇ…しのぶちゃん、この人知り合…」

 

「知らないわッ!!こんな奴!!」

 

「ひッ!?ご、ごめんなさい!!」

 

こんな奴の顔も見たくないと言わんばかりにしのぶはダンテスを睨みつける。思わぬ幻魔の援軍に一同は再び戦闘態勢に入りダンテスもまた愛刀を意気揚々と構えた。

 

「さてさて!!では、一勝負と行きましょうか!すでに我らの目的は達成しましたが…これほど強そうな剣士達が揃っている所を見れば拙者も剣士として血が騒ぐというもの」

 

「目的は達成された…?テメェ!まさかお館様を…!!」

 

「お館様?…ああ、あの死にかけのお前達の頭領か。残念ながら奴など眼中にはありませんよ。あれでは放っておいてもいずれ死ぬ」

 

(…幻魔の目的はお館様じゃない?じゃあ、さっきの偽物は一体何のために!)

 

「…貴様、一体何が目的だ?」

 

「もはや言葉は不要、あとは互いの刃にて語り合いましょう!鬼狩りの誇る柱の剣士…どれほどの腕前か拙者に見せてみろ!」

 

「いい度胸じゃねぇかァ!!望み通りぶち殺すッ!!」

 

「ではでは、行きますよ。拙者の名前はゴーガンダンテス!!幻魔界最高の剣士!!」

 

「…もう聞き飽きましたよ!その台詞は!!」

 

ダンテスの頸を狙って実弥が凄まじい踏み込みと同時に間合いに入る。しかし、その一撃をダンテスは片手で軽々と受け止める。そこから激しい打ち合いが始まるが攻撃は全てダンテスによっていなされていた。

 

「ほう、なかなかの太刀筋だ。風を斬り裂くかのような鋭い剣技に絶えぬ連撃…悪くない」

 

「ナメやがって…!」

 

しかし、どれほど激しく連撃を仕掛けてもダンテスには一太刀も当たらず全ての斬撃が容易くあしらわれてしまうのだ。

 

(クソッ…!!コイツ、さっきまで隙だらけの構えをしてやがったが、斬り合ってみるとまったく隙がねぇ…!)

 

先ほどまでのふざけた態度とは裏腹に自身の攻撃をいとも簡単に捌くダンテスの実力に実弥は驚いていた。だが正攻法で斬り合うだけが実弥の戦闘スタイルではない。今度は斬撃に加えて変則的な動きで蹴りなどの体術を織り交ぜた戦法に変更しダンテスに襲いかかる。

 

「おっと、なんとも脚癖の悪い…まるで獣ような戦い方ですね」

 

「風の呼吸…壱ノ型…塵旋風・削ぎ!!」

 

蹴り技で距離を取った直後に風の呼吸の壱ノ型で地面を抉りながらダンテスに向かって急接近する。

 

「だが、脚技ならば拙者も自信がありますよ!」

 

ダンテスは実弥の壱ノ型を正面から迎え撃つ。なんと片手で実弥の壱ノ型を受け止め勢いを完全に殺してしまったのだ。すかさず目にも止まらぬ速さで鳩尾に強烈な蹴りを食らわせる。

 

「ぐぉッ!!?」

 

(速ぇ…!!なんだコイツの蹴りは…!!)

 

蹴られたことに気づいた直後、顎に強烈な痛みを感じた。ダンテスは蹴りで怯ませたと同時に実弥の顎を狙ってサマーソルトキックを繰り出したのだ。あまりの速さと威力に蹴りを食らった実弥は放物線を描くように吹き飛ばされた。

 

「不死川さん!」

 

今度はしのぶがダンテスに向かって攻撃を仕掛ける。凄まじい速さの連続突きを何度も繰り出すが巧みな剣技で捌かれてしまう。

 

「ふむ…以前よりも技の切れと速さが増している。あれから修行を積んだようですね」

 

「うるさい!黙って戦いなさい!」

 

(このッ…!何で当たらないの!!)

 

渾身の技を放つもダンテスには全て涼しい顔で容易くあしらわれてしまう。

 

「蟲の呼吸…蝶ノ舞…」

 

「速さは合格点ですが、その程度の力では拙者に傷一つ付けられませんよ?」

 

なんとしのぶが呼吸の技を繰り出そうとした瞬間、ダンテスはいつの間にかしのぶとの間合いを一瞬にして詰めるとしのぶの手首に手刀を入れ日輪刀を叩き落としたのだ。

 

「くっ…!?」

 

(は、速いッ…技が出せなかった…!)

 

「拙者を倒す気ならば毒などつまらない物に頼らず、己を腕を磨くことに重きをおくのだな」

 

しかしダンテスは無防備になったしのぶに何故か剣を向けなかった。すると背後から天元と小芭内が襲いかかる。左からは天元、右からからは小芭内がそれぞれ呼吸の技を繰り出しながら襲いかかる。

 

「音の呼吸…伍ノ型・鳴弦奏々!!」

 

「蛇の呼吸…肆ノ型・頸蛇双生!」

 

「おっと!」

 

ダンテスは小芭内の技は防御したが天元の技は完全には防ぎ切れなかった。しかし、天元の攻撃はダンテスの前にある結界のような物によって無力化されてしまったのだ。

 

ガギィィィン!!

 

「何ッ!?」

 

(馬鹿な…!宇髄の技は確かに命中したはずだぞ?)

 

「やれやれ、背後から二人がかりとは、騎士道精神という言葉を知らないのですか?」

 

「気をつけてください!コイツの周りには障壁が張られています。並の攻撃ではビクともしません!」

 

「何だと!?」

 

「…障壁か」

 

そうダンテスの周りには彼が編み出した"絶対防御"の防御術が施行されており柱の剣士の攻撃をも無力化してしまうほど堅固なのだ。

 

「そろそろ、こちらからも行きましょうか!」

 

すると今度はダンテスが攻勢を仕掛け、天元に襲いかかる。飛び上がりながら剣を赤く染めながら驚くほどの速さで強力な一撃を叩き込む。天元は何とか防御するもその一撃の重さに思わず身体がよろめいてしまう。

 

「ぐぉ…!」

 

(この野郎…!なんて重い一撃だ…!こんなモン何発も受けられねぇぞ)

 

「まだ終わりませんよ?それッ!」

 

よろめいた天元にすかさずダンテスの舞のような連撃の嵐を浴びせる。何とか防いではいるがあまりにも変則的すぎるダンテスの剣技に徐々に押されていた。

 

(なんなんだ?コイツの型は…!変則的すぎて動きが読めねぇ!まるでその場で思いついたような技を使ってくる上に戦いの音の旋律も無茶苦茶で全く分からねぇ…!)

 

「宇髄さん!援護するわ!」  

 

天元を援護しようと蜜璃が側面からダンテスにむかって刃を伸ばす。しかし、その刃は後ろを向いたままダンテスに防御されてしまった。

 

「ほお…刃が伸びる刀とは驚きました。未来の日ノ本にはこのような武器を扱う剣士もいるのですね」

 

(嘘ッ!?後ろを向いたまま防がれるなんて!)

 

すると天元に蹴り技を入れて距離を離したダンテスは標的を蜜璃に変更し剣を構えて驚くべき速さで距離を詰めていく。

 

(速いッ…!でも、負けないわ!)

 

「恋の呼吸…陸ノ型・猫足恋風!!」

 

自身の周囲で螺旋状に突風の如き速さの斬撃を繰り出す型であり奇襲や防御にも対応できる万能な技だが、やはりダンテスの防御術によって全てが無力化されてしまった。

 

(そんな…!一撃も当たらないなんて…)

 

「なんと美しい技だ、まるで芸術品でも見ているかのような気分です。ですが…」

 

「きゃっ!?しまっ…!?」

 

ダンテスは回避行動を取らずに技を出し切り着地した瞬間を狙い一瞬で蜜璃との距離を零にした。するとダンテスは蜜璃の日輪刀の柄を狙って剣を斬り上げその手から日輪刀を吹き飛ばしたのだ。

 

「か、甘露寺ッ!!」

 

(た、大変ッ!!このままじゃ斬られちゃう…!どうしたら…どうしたら…!!)

 

それを見た小芭内が大慌てで蜜璃を助けようと動くがその距離からではどうやっても間に合わない。獲物を吹き飛ばされ無防備になった蜜璃は打つ手が無く回避も不可能と思ったのか咄嗟に目を瞑る。

 

…しかし、何故か来るはずの痛みが襲ってこなかった。

 

「……あ、あれ?」

 

目の前を見るとなんとダンテスが剣を下ろし優しそうに微笑んでいたのだ。

 

「ご安心を!生憎、拙者は女性を斬る剣は持ち合わせておりません、女性は斬るのではなく守る存在…それが自然の摂理と言うものですからね」

 

「……は、はい(ドキドキ)」

 

「ですが、貴女の舞うような美しい剣技は実に見事でした。いずれまた磨き上げられた剣技を見てみたいものです。楽しみにしていますよ?」

 

ダンテスは蜜璃を指差し見つめながらウインクする。それを見た蜜璃は何故か胸がときめいていた。

 

(…ど、どうしよう…!?このヒト、人間じゃないのにドキドキしちゃう!なんだか分からないけど、とっても素敵だわ!!)

 

すると何故か凄まじい殺気を宿した小芭内がダンテスに斬りかかるがダンテス蜜璃と会話しながら後ろも向かずにその攻撃を防いでいた。

 

「…貴様、甘露寺にくだらぬ狂言を吐いたな…!殺すッ…!」

 

「やれやれ、会話の最中に襲いかかるとは無粋な輩だ。そんなに殺気立っていては女性に嫌われますよ?」

 

「……黙れ、もういい。さっさと死ね!!」

 

激高した小芭内は憎しみと怒りを込めた激しい連撃をダンテスに繰り出す。あり得ない軌道から隙をつくように攻撃を仕掛けるがその異様な剣筋さえもダンテスは見切っていた。

 

「大した腕ですね、まさかそのように斬撃を巧みに操るとはな」

 

(…クッ!刃が当たらぬ…!)

 

「技の技工と研鑽は実に見事…しかし、残念だ」

 

次の瞬間、ダンテスは小芭内の一撃を受け止めたと同時に巧みに剣を操り反撃の一撃を返す。なんとか受け止めたものの豪腕である天元すらも仰け反らせるダンテスの一撃は防御したはずの小芭内を大きくよろめかせた。

 

「…ぐぅッ!?」

 

「そんな女性のような腕力では拙者の守りは破れませんよ?」

 

よろめいた小芭内にダンテスはさらに追撃し持っていた日輪刀を弾き落とし無防備になった瞬間、強烈な正拳突きを鳩尾に食らわせたのだ。

 

「ガハッ!!?」

 

「い、伊黒さん!!」

 

五対一という不利な状況でありながらダンテスは小細工もせず己の実力で堂々としのぶたち柱の剣士を圧倒していた。先ほど見せたふざけた態度が信じられないほどの目の前の幻魔の強さに五人は言葉を失っていた。

 

なんとか起き上がった五人はダンテスを包囲するが、全く打開策が浮かばなかった。

 

(やっぱり、この幻魔は強い…!)

 

(私たち五人が手も足も出ないなんて…!)

 

(間違いねぇ…コイツは正真正銘の化物だ)

 

(…奴の並外れた剣技に加え、我らの攻撃を無力化する障壁…)

 

(クソがァ…!ムカつく野郎だが最高の剣士ってのは本当らしいな)

 

「やれやれ…五人がかりでこの程度とは、拍子抜けですね。まあ、仕方ない。スチラードとの戦いで疲弊して本調子ではなかったということにしておきましょうか」

 

するとダンテスは高く飛び上がり登場した崖の上に着地すると剣を収めた。

 

「待ちなさい!お前達の目的は何なの!」

 

「…そうですね、では一つ教えましょう。我らの欲しい物はすでに手に入れた、とだけ言っておきましょうか」

 

「…欲しい物?その書物のことか」

 

「これはあくまで戦利品ですよ。まあ、すぐに分かるさ」

 

「それってどういう…」

 

「さらばだ!!また会おう鬼狩りの剣士たちよ!ハッハッハッ!」

 

そう言い残しダンテスは森の中へと消えていった。しかし、五人はダンテスの言い残した言葉の意味が分からず困惑していた。

 

「結局、アイツらの目的は分からねぇままだな」

 

「…欲しい物はすでに手に入れた…奴はそう言っていた。鬼殺隊にある奴らが欲しがる物とはいったい何だ?」

 

「お館様じゃなかったみたいだし、あの本でもなかったら…何が欲しかったのかな?」

 

(分かりません…奴はいったい何を奪っていったのでしょうか?)

 

「とにかく、一度柱全員で話す必要があるなァ。あの野郎の障壁をなんとかしねぇ限り勝算は低い」

 

「実はな…そのことでお前らに相談があるんだが…」

 

天元が話そうとした時、何者かの声が遠くから聞こえてきた。そちらを向くと慌てた表情をした隠の隊員が走って来ていた。

 

「皆様!こちらにいられたのですね!」

 

「どうしたの?そんなに慌てて」

 

「い、一大事です!とにかく柱の皆様も来てください!」

 

何やら只ならぬ様子の隠の隊員にしのぶたちは嫌な予感を感じ取っていた。五人は大急ぎで隊員の後を追い、現場へと急行するがそこで彼らは予想にもしなかった光景を目にすることになる。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

・那多蜘蛛山 地下洞窟

 

鬼殺隊とスチラードが戦い敗死して数時間後、現在の幻魔の本拠地である那多蜘蛛山の地下洞窟にダンテスが帰還していた。洞窟の最奥にある一室に入るとそこには幻魔残党軍の実質的な総指揮バルドスタンの姿があった。

 

「戻ったか、ダンテス。首尾は?」

 

「順調だ、すべてお前の予想通りに進んでいる」

 

「そうか…ならば"例の物"は手に入れたのだな?」

 

「ああ、スチラードが柱の剣士を引き付けていたおかげだ」

 

ダンテスが指をパチンと鳴らすとその背後に二体の幻魔が姿を現した。そこにいたのは闇蜘蛛という中等幻魔で下等幻魔である三つ目にさらなる改良を加え肉体と戦闘能力を増加させた上位互換とも言える幻魔だ。

 

二体の闇蜘蛛の手には古い壺があり、それをバルドスタンの前に跪いて差し出した。一つの壺を手に取り蓋を開けるとそこには何者かの人骨の一部が入っていた。

 

 

 

「鬼殺隊の柱の剣士…"炎柱・煉獄杏寿郎"と"花柱・胡蝶カナエ"の遺骨だ」

 

 

「ふむ、上出来だ。状態も悪くない…クク…」

 

「やれやれ…墓荒らしの手伝いなど乗り気ではなかったがな」

 

「…ぬかせ、これは我らの目的の為に必要なことだ。ゴルドーに素材を取りに行かせている。戻り次第、作業に取り掛かるとしよう」

 

バルドスタンは二つの骨壷を持ち何かの準備を始めたが、ふとダンテスに尋ねた。

 

「…ところでスチラードはどうした?」

 

「残念だが、鬼狩りに殺された。しかし、奴が遺した物は大きい」

 

「……そうか」

 

スチラードの死を聞いたバルドスタンはどこか悲しそうな表情をしていた。そう言うとダンテスはベルトから吸収したスチラードの魂と懐から奪い取った書物をバルドスタンに手渡した。

 

「その魂の記憶と本を調べれば鬼殺隊の"呼吸と型"について何か分かるかもしれないな」

 

「…ああ、息子の死を無駄にはせん」

 

「ハッハッハッ!やはり、お前は変わり者だ」

 

「…何が言いたい」

 

「ギルデンスタンなどは己の生み出した幻魔が死のうと気にもかけなかったが、死んだ幻魔のことを気にする奴は幻魔界広しといえどお前だけだ」

 

「当たり前だ、奴は有能で忠実な孝行息子だった。惜しい子を失ったものよ…だが死んだのであれば仕方がない、奴に代わる有能な息子を造らねばな」

 

「そういえば、奴はお前にだけは従順だったな。敵を殺すことしか頭にないあの猪をよくあそこまで手懐けたものだ」

 

(何故、コイツがギルデンスタンや信長に疎まれていたのかが分かったような気がするな。だが…拙者はお前のような変わり者は嫌いではないぞ?)

 

「…クク…さあ、鬼狩り共よ絶望の時間の始まりだ!」

 

バルドスタンの不気味な笑い声が洞窟内に響き渡っていた。

 

 




次のストーリーを書くのがめちゃくちゃ楽しみです!
…というかこの展開が書きたくて今まで頑張って書いてきたので気合い入れて書きますよ!
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