鬼滅の刃 鬼斬り武者   作:戦国のえいりあん

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新作、書けました!
この辺りの話は以前から考案していたのでスラスラ進みましたよ!今の気分はFateのシェイクスピアの如く、執筆が止まらないぞ状態です!!


第十九話 望まぬ再会

 

・鬼殺隊 裏山の墓地

 

隠の隊士に連れられて柱の剣士たちがやって来たのは産屋敷耀哉の屋敷の裏山にある鬼殺隊の戦没者たちが眠る墓地だった。しかし、その中のある二つの墓が何者かによって無惨に破壊され荒らされていたのだ。

 

「酷い…なんでこんな…」

 

「……」

 

同じく知らせを聞きつけたかまぼこ隊にカナヲやアオイたちも墓地へと駆けつけたが凄惨な光景に言葉を失っていた。その理由は荒らされた墓はしのぶの姉である胡蝶カナエの墓だったからだ。

 

「…そ、そんな…カナエ様のお墓が…!」

 

「……た、大変ですッ!!こ、骨壷がありません!!」

 

「……!」

 

「オイ!見ろよ!ギョロギョロ目ん玉の墓も壊されてやがる!」

 

「煉獄さんの墓まで…!」

 

なんと墓の中に収めてあったカナエの骨壷も跡形もなく消え去っていたのだ。さらにもう一つの荒らされた墓は炎柱である煉獄杏寿郎の墓であり、そちらも墓石が粉々に砕かれ骨壷も持ち去られていた。

 

「…許さないッ!!こんなことをする奴は…絶対に…!!」

 

「…誰だよ…何でこんなこと出来るんだよ…」

 

かまぼこ隊だけでなく柱の剣士たちやその場にいた全員が怒りで震えていた。特に最愛の姉の墓を荒らされた揚げ句、骨壷まで持ち去られた妹のしのぶは血が煮えたぎるほどの怒りを見せていた。

 

「……」

 

「…もしや奴らの狙いは煉獄と胡蝶の姉の骨壷か?」

 

「まさかそんな物を狙っていたとはな…クソッ!!ふざけやがって!!こんなに頭に血が登ったのは久々だぜ…!」

 

「…あの屑野郎共がァ…!!許さねェ許さねェェ!!!」

 

「…許さ…ない…血も涙もない下劣な化け物共め…!!私が一匹残らず皆殺しにしてやる!!」

 

鬼殺隊の墓地から遺骨が盗難された事件は瞬く間に鬼殺隊内に広がった。偽の柱の剣士が現れた事件当日に墓にまるで忍者のような格好した影が墓を掘り起こし骨壷を持ち去る姿を目撃したと隠の隊士の証言があったのだ。

 

これらの証言から犯人は間違いなく幻魔の仕業であると断定され直ちに根城である那田蜘蛛山に調査隊が送られた。特に最愛の姉の墓を荒らされた挙げ句、遺骨まで持ち去られたしのぶの怒りは凄まじく蝶屋敷はかなり重苦しい雰囲気になっていた。これには鬼殺隊当主・産屋敷耀哉も怒りを見せ、遺骨を奪回するべく直ちに那田蜘蛛山に隊士の派遣が決定された。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

・蝶屋敷

 

 

事件から数日後、怒りに燃える鬼殺隊は直ちに幻魔の巣食う那田蜘蛛山へ攻め込もうと対策を練っていた。しかし、幻魔の仕業と予想される想定外の妨害により鬼殺隊は対応に追われていた。

なんと日本の全国各地で幻魔と思われる化け物による事件が多発していたのだ。異形の化け物が日本に現る…その存在は瞬く間に新聞や噂を通じて全国に広まった。幻魔による各県の主要都市の襲撃に対して警察は総動員体制で応戦するもまったくもって歯が立たず、被害者だけが増えていった。これを重く見た鬼殺隊は各県に隊士を派遣することを決定し、柱の剣士も耀哉の護衛として残った一人残った悲鳴嶼行冥を除きほとんどの者が各県に鎮圧の為に出払っていた。

 

そんな中、柱の剣士であるしのぶと義勇の二人には特別任務が言い渡されていた。言うまでもなく任務は持ち去られた胡蝶カナエと煉獄杏寿郎の遺骨の奪回と幻魔の調査が目的だ。加えてかまぼこ隊に栗花落カナヲも任務に同行することに決まったのだ

 

 

鎹鴉からの指令を受け、蝶屋敷に待機していたのは冨岡義勇、蝴蝶しのぶと栗花落カナヲ、そして竈門炭次郎たちかまぼこ隊の面々だった。今回の指令の内容にしのぶだけでなくカナヲや炭次郎たちも怒りを隠せず、しのぶは姉の遺骨…炭次郎たちは敬愛する杏寿郎の遺骨を奪われたことに幻魔に対する怒りと憎しみが頂点に達していた。

 

「死者を辱しめるだけでは飽き足らず…遺骨まで盗むなんて…!」

 

「ふざけやがって…!いくぞ!権八郎!紋逸!あの化け物どもを残らずぶった斬ってやる!」

 

「落ち着けよ伊之助、みんなだって同じ気持ちだ。とりあえず、指示を待とう…」

 

善逸にもいつもの明るさや騒がしさはなく、落ち着いた声だがどこか殺気を感じさせる。表情も険しく眉間にしわを寄せていた。三人の側にはすでに出撃準備を整えたしのぶとカナヲの姿もあった。二人も同じく表情が険しく近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

 

「……」

 

「……」

 

何も喋らず黙って出撃の時を待っていた。本心ではすぐにでも那多蜘蛛山に向かい姉の遺骨を奪回しこんな鬼畜の所業をした化け物どもを皆殺しにする…そんな気持ちだった。そんな時、一同の前に姿を現した者がいた。

 

「しのぶ」

 

「…左馬介さん」

 

「話は聞いた、これ以上奴らに好き勝手させるわけにはいかない。俺も行こう」

 

「うん!墓荒らしなんて許さないんだから!幻魔どもをぶっ倒さなきゃ!」

 

「…ありがとうございます」

 

事情を聞いた左馬介も駆けつけ、任務に同行することになった。それから鎹鴉からの伝達があり、出撃許可が下ると出撃準備を終えた一同は今回の任務の中心人物であるしのぶの指示を今か今かと待っていた。

 

 

「…行きましょう。目的地は…那田蜘蛛山です!」

 

「「「応!!」」」

 

 

こうして一同は幻魔の巣くう那多蜘蛛山へ向かった。奪われたカナエと杏寿郎の遺骨を取り返すために。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

・数時間後 那田蜘蛛山 入り口付近

 

 

蝶屋敷から出発して数時間後、一同は那田蜘蛛山の入り口にたどり着いていた。あれから那田蜘蛛山は入山者が行方不明者なる事件が続出し、少し前に大規模な警官隊による調査が行われたのだが入山した警察官は誰一人帰還することはなかったそうだ。事態を重く見た警察は山を封鎖し一般人の入山を固く禁止したのだ。それ以来、この山に近づく者はいなくなり今では幻魔が巣食う魔の山と化していた。

 

鬼殺隊も幻魔の動向を危惧して調査を進めていたが有力な情報は掴めていない。それどころか深入りした隊士が何人か行方不明になったこともあるのだ。

 

「またここに来ることになるなんてな…」

 

「あれ?いつの間にこんな柵が出来たんだ?」

 

「……師範と左馬介さんと来た時は…無かったのに」

 

「あれから那田蜘蛛山では以前にも増して行方不明者が続出したことや警察の調査隊が誰一人戻らなかったこともあって正式に危険区域に指定されたと聞きました」

 

山全体を有刺鉄線付きの柵とバリケードで囲ってあり山に入山できないようになっていた。入口付近にある僅かに血の付着した立ち入り禁止の立て札が嫌でも警戒心を強くさせる。

 

「前に来た時よりも幻魔の気配が強くなってる…ねぇ、ホントに行くの?」

 

「……ああ、遺骨の奪回も目的に含まれているが、今回は幻魔の調査も兼ねている」

 

「罠かもしれないよ?アイツらが杏寿郎としのぶのお姉さんの遺骨を奪ったのはあたい達をこの山に誘き出す為だったのかも…」

 

「何ビビってんだチビ助!!化け物が怖ぇなら引っ込んでろよ!!」

 

「怖いとかじゃないのッ!!幻魔を侮っちゃ駄目だって言ってんのよ!特にあのバルドスタンはかなり頭の切れる幻魔みたいだし、きっと何か策があるはず…」

 

「阿児の言う通りだ、思ったよりも幻魔の気配が強い。これだけの戦力では心許ない、今となってはこの山は奴らの根城だ。以前にここで追い詰められたこともある…慎重に行動するべきだ」

 

左馬介と阿児は今の那田蜘蛛山から感じる凄まじい気配からこの戦力で山に入るのは危険だと判断したのだ。今まで多く幻魔を討ち倒してきた左馬介だからこその予感ということもあるが以前、那田蜘蛛山に足を踏み入れて窮地に追い込まれたことある経緯がある以上迂闊な行動は出来ない。しかし、ここまで来て何もせずに帰ることなどしのぶには出来なかった。

 

「……山に入ります。ここまで来て帰ることなど出来ません」

 

「俺も同感です!たとえどんな罠が待ち受けていようと必ず煉獄さんとカナエさんの遺骨を取り戻します!」

 

「おうよ!俺様が化け物共を残らずぶった斬ってやるぜ!上弦の鬼を斬ったこの嘴平伊之助様がなッ!」

 

「……カナエ姉さんの遺骨…取り返す…!」

 

しのぶやかまぼこ隊は今すぐにでも山に入るつもりのようだが、左馬介のほかに以外な人物が待ったをかけたのだ。

 

「……待て、やはり…危険だ」

 

「冨岡さん!?どうしてですか!!」

 

なんと左馬介に賛同したのは義勇だった。彼もまた他の者と同じく幻魔による墓荒らしに憤りを覚えていたがそれでも冷静さを欠いてはいない。この気配もそうだが何より幻魔に精通する左馬介と阿児がそう言うならきっと間違いないと思ったのだ。

 

「…奴らの本拠地となれば、あの幻魔の剣士もいるだろう。こちらには明智もいるがやはり戦力が足りん…」

 

「…分かったよ!きっと日ノ本各地の町を幻魔に襲わせてたのは鬼殺隊の戦力を分散させるためだったんだ。戦力を集中して那田蜘蛛山に攻め込まれないためにね」

 

「となると…奴らは何か時間を稼いでいるのか?」

 

しのぶや柱の剣士を分散させ一斉攻撃を防ぐ為なのか、それともこちらを怒らせて一部の柱の剣士を那田蜘蛛山に誘き出す作戦なのか…どちらにしても幻魔による作戦であることには間違いない。どうするべきか考えていると、痺れを切らした伊之助が大声を出しながら柵を飛び越えて無理矢理山へと入って行ってしまったのだ。

 

「ふざけんじゃねぇ!!ここまで来て引き返すなんざ納得できるかよ!俺は行くぜ!!猪突猛進ッ!!」

 

「あ!待てよ、伊之助!」

 

「俺も伊之助と同じです…!あいつらは絶対に許さない!!」

 

「ち、ちょっと!待ちなってあんた達!!」

 

阿児の静止も聞かず伊之助を先頭にかまぼこ隊は那田蜘蛛山へと入って行ってしまった。それを追ってカナヲも続けて柵を飛び越え山の奥へと消えていった。

 

「……どうする?」

 

「…炭治郎たちを死なせるわけにはいかない。こうなったら後を追うしかないな」

 

「はぁ~…あの筋肉馬鹿、何やってんのさ。どうなっても知らないよ」

 

「伊之助君たちを追いましょう。…ただし、前回の戦いのこともありますから慎重に進みますよ」

 

こうして危険を承知で左馬介たちは再び那田蜘蛛山へと足を踏み入れることになった。柵を無理矢理飛び越え山へと入り不気味なほどに静かな入り口を警戒しながら進んで行った。

 

ーーーーーーーーーー

 

・数時間後 那田蜘蛛山 最奥部

 

伊之助を追ってしのぶと左馬介たちは山の中の木々を飛びながら移動していた。山中は以前にも増して木々が生い茂っているがその大半は幻魔植物のものであり、あちこちに気色の悪い形をした謎の植物や辺りの木の枝に"ポチャック"という自然に害を与える樹液を作り出す木の実に似た物が大量にぶら下がっている。

 

「山の中も以前より酷くなっていますね…」

 

「うわぁ…あちこち幻魔植物だらけだよ。この様子じゃこの山にはもう普通の植物は育たないかもしれないね」

 

「……」

 

変わり果ててしまった那田蜘蛛山を見ながらしのぶたちは先行したかまぼこ隊の後を追い続ける。しかし、共に追跡していた左馬介はある違和感を覚えていた。

 

(…妙だな、ここは奴らの本拠地のはずだ。何故、襲撃してこない?)

 

そう山の中に入ってかなりの時間が経っているはずだがあれから一度も幻魔に襲われておらず、それらしい姿も見ていないのだ。相変わらずあちこちから強い幻魔の気配を感じるのだが襲ってくる兆しが感じられない。

 

「…左馬介、やっぱり何か変だよ。」

 

「…ああ、奴ら何か企んでいるはずだ」

 

そうしている内に一同は山の最奥にある見晴らしのよい広場のような場所へと辿り着いていた。そこには真っ先に飛び出した伊之助が日輪刀を構えており広場の中央を流れる浅瀬の川の先に立つ何者かを睨みつけている。遅れてその後から炭治郎と善逸、カナヲ、そして左馬介たちが到着する。

 

「…クク…やはり、来たか鬼狩り共よ」

 

そこには不敵な笑みを浮かべた高等幻魔バルドスタンが立っていた。その側には腹心のゴルドーの姿もあった。

 

「…俺はお前を絶対に許さないッ!!煉獄さんとカナエさんの遺骨を返せ!」

 

「化け物野郎が!コソコソとくだらねぇ事をしやがって!!俺様がテメェの頸を切り裂いてやるぜ!!」

 

「…よくも安らかに眠っている人たちを辱めたな、お前は俺が必ず倒す」

 

「…化け物ッ…!!カナエ姉さんの遺骨を…返せッ!!」

 

怒りに燃えるかまぼこ隊とカナヲはすぐにでもバルドスタンに斬りかかろうと身構えているが、それを静止するように義勇と左馬介が隣に歩み出た。

 

「……落ち着け、炭治郎」

 

「奴が現れたということは何か罠があるはずだ、怒りに身を任せるな」

 

しかし、彼らの静止を無視してバルドスタンに向かって驚異的な速さで襲いかかったのはしのぶだった。バルドスタンが視界に入った瞬間に理性では制御できないほどの憎しみと怒りで頭が支配され気がつけば身体が動いていたのだ。

 

ガギィィン!!

 

「…!!」

 

「またお前か、バルド様に斬りかかるとは無礼者め」

 

だが、しのぶの突き技はバルドスタンの隣に侍っていたゴルドーによって止められていた。それでもしのぶは攻撃の手を緩めず素早い突きの連続技を繰り出す。いくつかの突きがゴルドーの身体に命中するがその鍛え上げられた筋肉の鎧によって弾かれてしまい、日輪刀に仕込んである毒も全く効果がないようだ。

 

「…フー…フー…」

 

「言ったはずだ、お前の腕力と鈍刀では俺の筋肉は斬れん。さっさと失せろ雑魚め」

 

「…そこを退けッ!!お前達を残らず皆殺しにしてやる!!」

 

「くだらんな、怒りで我を忘れて相手と己の力量も測れなくなったか。お前の頭は餓鬼以下ようだな」

 

「しのぶ!落ち着け!一度、距離を取れ!」

 

左馬介の一声で少し正気に戻ったしのぶは仲間たちの場所まで跳躍して距離を取った。するとバルドスタンが不気味な笑みを浮かべならがら話し始めた。

 

「…クク…いいぞ、素晴らしい殺気と憎悪だ。よほど吾輩を殺したいとみえるな」

 

「答えろッ!!姉さんの遺骨をどうした!!」

 

「それにしても…こうも簡単に誘い出せるとは思わなかったぞ。やはり人間という下等生物は"情"と言うくだらん感情に流されて判断を誤るばかりの能無しだな」

 

「…黙れ、もうお前は喋るな」

 

「…クク、ここまで来た礼に面白い者を紹介してやろう」

 

バルドスタンが指をパチンと鳴らすと土中から棺のような金属の箱が飛び出した。すると箱の蓋がゆっくりと開き、中から二人の人物がゆっくりと中から姿を現した。

 

その二人の人物を目にしたしのぶと炭治郎たちは思わず言葉を失った。

 

 

「……嘘…だろ…」

 

「お、オイ…!どういうことだよ…!!」

 

「…れ、煉獄…さん?」

 

「…ね…姉さん…!!?」

 

「…!!?…カナエ…姉さん!!」

 

 

なんとそこにいたのは戦死したはずの炎柱・煉獄杏寿郎としのぶの実の姉である花柱・胡蝶カナエだった。その姿は生前と瓜二つであり鬼殺隊士服を身につけ手には幻魔によって鍛えられた幻魔刀を持っていた。しかし二人の顔には生気が感じられず、瞳に光は無くまるで操られた人形のようだった。

 

「なんで死んだはずの杏寿郎が…!」

 

「…そうか、信長と同じように蘇らせたのか」

 

「死んだ人間を蘇らせる…!?そんなことが可能なんですかッ!?」

 

左馬介の世界では桶狭間の戦いで今川義元を打ち破った織田信長は敵の凶矢に倒れ死亡したはずだったが、幻魔と契約を結んだ信長はギルデンスタンの手によって蘇り幻魔の手先となった過去があった。

 

「そんなの不可能です…!遺骨しかない状態でどうやってそんなことが…」

 

「クク…貴様ら人間如きの程度の知れた科学力と我々の幻魔科学を一緒にされては困る。吾輩の手を持ってすれば一部の人骨から骨と細胞を復元し人間を蘇らせることなど容易いことよ」

 

(……まあ、骨と細胞の復元がこの上なく面倒だった上にこやつらが来るまでの短期間で良質な臓器や素材を集めて蘇らせるのは想像以上の重労働だったがな…しかし、これも策のためなのだよ!(早口))

 

(この数日間でそれだけの難題を平然とやってみせるとは…バルド様…やはりあなた様こそ幻魔界最高の科学者でありますな!)

 

この数日間の苦労を内心語りながらバルドスタンは左馬介たちを指差して目の前に立つ杏寿郎とカナエに命を下す。

 

「杏寿郎!カナエ!そこのムシケラ共を殺せ!」

 

「……」

 

「……」

 

杏寿郎とカナエはバルドスタンの指示通り、手に持った幻魔刀を構えゆっくりと歩き出した。すると杏寿郎がいきなり加速し唖然としていた炭治郎に斬りかかった。

 

「くっ!!れ、煉獄さん、止めてください!!」

 

「オイッ!何やってんだよギョロギョロ目ん玉!三八郎は仲間だぞ!!」

 

「やめてくれよ…煉獄さん!アンタほどの人がこんな奴らなんかに操られちゃ駄目だ!」

 

しかし三人の声は杏寿郎の心には届いていない。防御している炭治郎の頸を掴み地面に引き倒す。とどめを刺そうと幻魔刀を炭治郎の頭めがけて振り下ろそうとする。尊敬する杏寿郎と戦わなければならないことが信じられないのか炭治郎は動揺したまま動けなかった。

 

「炭治郎、しっかりしろ!」

 

「…くっ!」

 

首を絞めていた杏寿郎に蹴りを入れて引き離したのは左馬介だった。その直後、左馬介と杏寿郎の激しい斬り合いが始まった。互いに洗練された剣術による勝負、杏寿郎の幻魔刀と左馬介の明智拵が火花を散らしてぶつかり合う。

 

「炎の呼吸…弐ノ型・昇り炎天!!」

 

「ぬうっ!」

 

「杏寿郎!やめてよ!」

 

下から上に向けて弧を描く様に猛炎の如き刃で斬り上げる技であり左馬介の懐に入りつつ襲いかかる。だが左馬介はそれを瞬時に見切り、紙一重でその一撃を回避する。その直後、左馬介の武器が両刃刀の疾風刀に切り替わり身体を素早く回転させながら反撃の一撃を返す。

 

ガギィィン!!

 

杏寿郎もまた左馬介の一撃を巧みな剣捌きで受け止める。そこから再び激しい打ち合いが始まった。先ほどのように互角の勝負に見えたが、今度は左馬介が杏寿郎を少し押していた。

 

「…くっ!?」

 

「そこだッ!」

 

杏寿郎の一撃を捌き一瞬の隙を突くように身体を激しくコマのように回転させながら疾風刀による連撃を叩き込む。疾風刀の長所は天双刃を上回る手数の多さと変幻自在な動きによる連続攻撃だ。非常に重く武器の持ち手部分も短いと言った扱いに難のある高度な武器だが左馬介はそれを自身の手足の如く操っていた。

 

疾風刀による連続攻撃を全て回避しきれず杏寿郎は脇腹にかすり傷を負わされてしまう。すると距離を取った杏寿郎は再び幻魔刀を構え直し新たな技を繰り出した。

 

「炎の呼吸…伍ノ型・炎虎!!」

 

烈火の猛虎を生み出すが如く刀を大きく振るい、咬みつく虎のような斬撃を繰り出す技であり、猛虎の如き斬撃が左馬介に迫る。対する左馬介も武器を大剣の炎龍剣に切り替え同じく構えを取る

 

「でいやァァァ!!」

 

杏寿郎の伍ノ型を左馬介は戦術殻・炎で迎え撃つ。龍の如き凄まじい炎が地走りながら猛虎の如き斬撃と激しくぶつかり合う。まさに"竜虎相搏つ"とも言える光景だったが、勝利したのは左馬介の戦術殻・炎だった。伍ノ型の斬撃を呑み込み豪火が背後にいた杏寿郎にも襲いかかるが、それを素早く回避すると互いに距離を取った。

 

「……」

 

(煉獄杏寿郎か…手強い相手だな。さすがは柱の剣士と言われるだけはある)

 

見れば左馬介の具足のあちこちに細かい斬撃の跡があり、目の前に立つ杏寿郎の強さを物語っていた。それと同じくしのぶは最愛の姉である胡蝶カナエと対峙することになってしまい動揺を隠せなかった。幻魔刀を手にしのぶに向かってゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「……」

 

「…姉さん!正気に戻って!私を忘れたのッ!?」

 

「…カナエ姉さん…やめて…!」

 

虚しくもしのぶやカナヲの言葉はその心に届かず、カナエはしのぶに向かって頸を狙いながら斬りかかる。その技の速さと切れは間違いなく自身の知る姉の技であり目の前にいる彼女が紛れもなく本物の胡蝶カナエであることを嫌でも認識させられた。

 

「…くっ!!」

 

(この速さ、技のクセ…間違いない、姉さんだ…!!)

 

何とか一撃を防御したがそれと同時に日輪刀を握る自身の手が震えていることに気づいた。自らの手で最愛の姉を殺さなければならないことを悟ったしのぶはかつてないほどに狼狽していた。

 

「花の呼吸…肆ノ型・紅花衣!」

 

「師範…!!」

 

しのぶの防御を押し切り、隙を突くようにカナエは花の呼吸の肆ノ型を繰り出した。流れるような滑らかな動きで円状の軌道を描きながら斬撃を繰り出す技だ。しのぶの頸に斬撃が直撃する瞬間、カナヲが間に割って入り間一髪防御に成功したがしのぶ諸共吹き飛ばされ転倒してしまう。

 

「…胡蝶!!」

 

「……ッ…!」

 

(…できない…姉さんを…姉さんを斬るなんて…)

 

鬼殺隊に入り柱の剣士となってから今までどんな敵が現れても決して迷うことがなかったしのぶが初めて迷っていた。目の前にいるのは正真正銘、自身の姉である胡蝶カナエなのだ。勝利するためには姉を殺すしかない。同じくカナヲもこれまでにないほどに動揺しており絶望によって歪んだ表情でただ眺めていることしかできなかった。

 

「胡蝶!しっかりしろ!」

 

「……」

 

「…クッ!カナエ!目を覚ませ…!」

 

ほぼ戦闘不能になったしのぶとカナヲを守るために義勇が割って入るが彼もまたかつての仲間を斬ることに戸惑いを感じているのか普段よりも動きに切れが無かった。必死に呼びかけるがその声はやはり届かない。

 

(…どうすればいい…!やはり…あの幻魔を斬るしかないか…!)

 

戦いながら義勇が考えた手段はやはり頭目であるバルドスタンを斬ることだ。そんな義勇の視線に気づいたのかバルドスタンはニヤリと笑いながら話し始めた。

 

「…クク…吾輩を斬ればその二人が正気に戻ると考えているようだが、杏寿郎とカナエには強力な幻魔の洗脳と暗示の術を施してある。吾輩を殺したところで元には戻らぬぞ?その二人は最早、我ら幻魔の忠実な操り人形に過ぎぬのだよ!」

 

「…なんだと…!?」

 

「フハハハ!さあ、仲間同士好きなだけ殺し合え!貴様らムシケラ共の絶望と苦痛こそ我が愉悦!!」

 

「バルドスタン…!貴様ァ!」

 

「左馬介ッ!気をつけて!」

 

「炎の呼吸…肆ノ型・盛炎のうねり!!」

 

「くッ…!!」

 

あまりにも非道な手段を用いるバルドスタンに左馬介は激しい怒りを露わにするが、眼前にいる杏寿郎の妨害によりバルドスタンに全く近づけない。そんな時、バルドスタンの背後からゴーガンダンテスが姿を現すと気が乗らなそうな態度で話し始めた。

 

「まったく、お前も嫌な策を考えつくものだ。蘇らせた鬼殺隊の仲間同士を戦わせて消耗させるとは」

 

「…クク…何とでも言え、どんな卑劣な手段用いようとも最後に勝てばよい。人間の持つ"情"というくだらん感情を攻め、判断を鈍らせ戦闘能力を削ぐ…素晴らしい策ではないか。…クク…見よ、奴らの絶望に満ちた顔を…実に愉快だ!フハハハ!!」

 

「やれやれ…なんとも興の冷める戦だ、左馬介との勝負を楽しみにしていたのだが」

 

左馬介との真剣勝負を望んでいたダンテスはどこか不満げな表情をしていた。一方、杏寿郎と戦っていた左馬介は戦いを優位に進めてはいたが鬼殺隊の仲間である杏寿郎を殺すわけにもいかず防戦を余儀なくされていた。

 

「くそッ…!阿児、何か手はないか?」

 

「む、無理だよ!幻魔の洗脳術はすっごく強力で人間の力じゃ破るのは難しいの!止めるには…言い難いけど、楽にしてあげるしか…」

 

阿児いわく幻魔の洗脳術は人間の精神力と意志だけでは解除するのはほぼ不可能であり阻止するには心臓を止めること…すなわち殺すしか止める手段がないのだ。

 

(炭治郎たちには悪いが…やはり、斬るしかないか…?)

 

何か手段はないかと模索していた左馬介の隣に炭治郎が歩み出た。

 

「炭治郎、大丈夫か?」

 

「…話は聞きました、俺が…煉獄さんを斬ります!!」

 

「クソッ!!それしか…手はねぇのかよ!!」

 

「斬るって…相手は煉獄さんだぞ…?柱だぞ…!?俺たちで何とかなるのかよ…!」

 

炭治郎に続いて伊之助、善逸も並び立つ。三人とも覚悟を決めた表情をしているがやはりその手は震えている。かつて無限列車で共に戦ったからこそ、その強さは三人が誰よりもよく知っていた。

 

しかし、それでも三人は退くわけにはいかなかった。目の前にいる煉獄杏寿郎に想いを託された者として決してみっともない姿を見せるわけにはいかないのだから。

 

「明智さん!煉獄さんは俺たちに任せてください。あなたは幻魔の頭目をお願いします!」

 

「…お前に斬れるのか?杏寿郎は大切な人なんだろう」

 

「だからこそです…!俺たちは煉獄さんに想いを託されたんです。鬼殺隊を支える柱になれって!煉獄さんに…みっともない姿を見せるわけにはいかないんです!!」

 

「おう!!ギョロギョロ目ん玉に最強になった嘴平伊之助様の強さを見せてやるぜ!」

 

「煉獄さんは俺にも想いを託してくれたんだ!俺みたいな弱い奴だってやれるって所を見せなきゃいけないんだ!」

 

「炭治郎…みんな…!」

 

「…分かった、バルドスタンは俺に任せろ」

 

「はいッ!!いくぞ!伊之助!善逸!」

 

(煉獄さん…!例えあなたが相手でも俺は引くことはできない!いきます!あなたを…越えてみせます!)

 

かまぼこ隊は煉獄杏寿郎、左馬介はバルドスタンに狙いを定め、それぞれ疾走していった。炎の呼吸を構えを取り迎え撃たんとする杏寿郎に炭治郎を先頭に再び戦いの火蓋が切られたのだった。

 

 




果たして煉獄さんとカナエはどうなるのか…
次回をお楽しみに!なるべく速く投稿できるように頑張ります!
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