鬼滅の刃 鬼斬り武者   作:戦国のえいりあん

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第二話 鬼武者との邂逅

鬼との戦いで窮地に立たされていた鬼殺隊の隊士の生き残り、伊角静音を救った左馬介と阿児は彼女の手当てを済ませた後、安静にできる場所がないか密林を歩いていた。しばらく密林を歩いていると偶然にも捨てられた小さな建物を発見し、彼女をそこに寝かせる。

 

 

「左腕と肋骨が何本か折れてるけど、とりあえず命は大丈夫だよ」

 

「そうか、俺たちにできるのは簡単な処置だけだ。この子が目を覚ますまで側にいよう」

 

「そうだね、さすがにあのまま放っておくのは可哀想だし…それにあたい達はこの時代のことは全く分からないからこの子に聞きながら行動した方がいいんじゃないかな?」

 

 

完全に傷を治す為には医者に見せるのが一番だが、別の時代から来た左馬介たちはこの時代の知識や常識が分からない。ならばこの時代の人間である彼女に聞いたほうが手っ取り早いと考えた二人はそのまま静音が目覚めるのを待つことになった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

・二日後 長野県 密林の一軒家

 

 

「……う…うう…」

 

 

静音をここに運び込んで二日後、ようやく目を覚ました静音はゆっくりと身体を起こそうとする。

 

 

「こ、ここは…?…ッ!?痛っ!!」

 

 

起き上がろとするが自分の左腕と胸から激痛が走る。静音の折れた左腕は簡単な固定具と布で固められており、頭部と胸にも布が巻かれていた。動かせる右腕を使って何とか起き上がった静音はうっすらとした目で周りを見渡す。

 

 

「あれ…?私、生きてる?それに応急処置も…いったい誰が…?」

 

「あ!やっと起きた!まったく、全然起きないから心配したんだよ」

 

「えっ!?ええっ!!?だ、誰っ…!?」

 

 

突然、自分の眼前にひらひらと飛んで現れた阿児に静音は驚きを隠せなかった。それと同時に民家の入り口から姿は現したのは左馬介だった。手には近くの河から汲んできた綺麗な飲み水の入った桶を持っている。

 

 

「左馬介、この子やっと起きたよ」

 

「目を覚ましたか、気分はどうだ?」

 

「え、えっと…この治療はあなたが…?」

 

「ああ、だが大した治療はしていない。すぐに医者に診てもらったほうがいい」

 

「あ、ありがとう…ございます」

 

 

立て続けに起こる不可解な出来事と状況に静音の頭は混乱して瞳がぐるぐると回っていた。何で鬼と戦っていて死にかけていた自分が助かったのか、目の前にいるこの得体の知れない二人はいったい何者なのか、様々な疑問が脳内で交差している。

 

(どういうことなの…!?この人、どう見ても侍だよね!?それに翼が生えてるこの小さい女の子は何なの!?す、すごく可愛いし…!!)

 

「まあ、混乱するのも無理はないよね。信じられないかもしれないけど、あたい達の話を聞いてくれないかな」

 

「は、はぁ…」

 

 

左馬介と阿児は自分たちの身の上とこの時代に来た経緯をすべて話した。一方、話を聞かされた静音だったが当初は常識外れな左馬介たちの話をなかなか信じようとしなかったが、人間ではない阿児の存在や左馬介の姿、そしてあれほど強かった鬼を容易く倒すほどの強者の言葉を信じないわけにはいかなかった。

 

 

「四百年前の戦国時代からっ!?それに幻魔…?にわかには信じがたい話ですね」

 

「やっぱりそうだよなあ…そう簡単には信じて貰えないか」

 

「…いえ、信じましょう。何より見知らぬ私をあの危険な鬼から救って下さった恩人の言葉です。ですが、その…」

 

 

しかし、静音が少し警戒しながら左馬介を見る。

初めて会った時からなんとなく気付いていたが、こうして間近で見ると静音はその正体を確信した。

 

 

「左馬介殿…あなたは鬼…ですね?」

 

「ああ、…何故分かった?」

 

(やっぱり…この匂い、あの並外れた強さ…間違いない!)

 

 

一瞬、左馬介に敵意を向けるがすぐにハッとなり呼吸と思考を整える。冷静に考えれば彼が本当に自分を喰らう鬼であるのなら血だらけになっていた時点ですでに喰われていたはずだ。しかもこの左馬介という男からは確かに鬼の気配を感じるが、よほど集中しなければ鬼であるということは一目では分からない。どちらかと言えば自分たち人間に限りなく近いのだ。

 

 

「私達、鬼殺隊は鬼と戦う訓練を積んでいます。鬼かどうかは匂いで分かります」

 

「へぇ~匂いで分かるなんて犬みたいだね。どんな訓練してたの?」

 

「い、犬じゃありません!!」

 

「でも、確かに左馬介は鬼の力を持ってるけど、人を食べたりはしないよ。聞いた話ではこの世界の鬼は人間を喰う化物らしいけど」

 

「……」

 

 

鬼を激しく憎む静音は内心複雑な感情だったが、阿児の言うとおり彼が人を襲うなど想像ができなかった。何より自分を助けてくれた恩人を疑うなど失礼極まりない。もしかしたらこれから先、彼の存在がきっと鬼殺隊にとって重要なものになるかもしれないと考えた静音は左馬介と阿児のことを信じてみようと思っていた。

 

 

「分かりました。少し信じがたいですが、お二人のお話を信用しましょう。それと左馬介殿、阿児ちゃん、お二人にいくつかお聞きしたいことがあるのですが」

 

「ああ、俺たちに答えられることであれば何でも言ってくれ」

 

「ちょっと!阿児ちゃんはやめてよ!あたいはあんたよりずっ~と年上さ!」

 

「ご、ごめん…じゃあ阿児でいいかな?」

 

「それでいいよ。で、あんたは?」

 

「紹介が遅れて申し訳ありません。私は鬼殺隊所属、階級"癸"、伊角静音です」

 

「鬼殺隊…?名前から聞くに鬼を狩る組織なのか?」

 

 

今度は静音が淡々と鬼殺隊について二人に語り始める。入隊前に聞かされる鬼殺隊の基本的な情報のほかに何故自分たちがこの密林にやって来たのかをすべて話した。さらにこの時代の鬼についても自分が知る情報も共に残さず話す。

 

 

「へぇ、あんた達は鬼を滅ぼす為に戦ってるんだね」

 

「うん、他にも鬼はまだたくさんいるし…それも強い力を持った強力な鬼ばかり。私みたいな未熟者がいくらいても全然足りないの」

 

「そりゃあそうさ、鬼と人間じゃ力や身体能力に大きな差があるし、まとも戦っても勝てる相手じゃないよ。何でそんな無謀な戦いを続けるの?」

 

「……許せないから」

 

「え?」

 

 

すると静音の表情が一瞬で険しくなる。

 

 

「あいつら鬼は、私の両親を殺した。それだけじゃない!私を剣士に育ててくれた"育手"の師匠も鬼に殺された。大切なものを全部、あいつらは奪っていった…!」

 

「……」

 

「これ以上、私のような存在を増やしたくないの…!誰かが鬼を滅ぼさない限り、私みたいな人たちが増え続ける。だがら私は鬼殺隊に入ったの。鬼を皆殺しにするために!」

 

 

他人よりも優れた才や並外れた体力や身体能力があるわけでもない静音が鬼殺隊に入った理由は両親の仇討ちとこれ以上自分のような被害者を出さない為だったのだ。聞けば彼女が持っている青色の日輪刀は殺された師の形見であり、いつも巻いている緑色の鉢金は静音の母親が拵えた鉢巻を静音が鉢金に改造した物なのだ。

 

 

「…すみません。取り乱してしまって。でも私はいつでも死ぬ覚悟は出来ています。恐れはありません」

 

「そうだったんだ…ごめんね、あたいちょっときつい言い方しちゃったかも」

 

「ううん、気にしないで。無謀な戦いをしているのは事実だし本当に勝てるのかどうかも分からないから…」

 

 

すると今度は静音が左馬介に質問をしてきた。最初に見た時からずっと気になっている疑問を投げ掛けた。

 

 

「あの左馬介殿、あなたはあの鬼は倒したと言っていましたよね?」

 

「ああ」

 

「…どうやって殺したんですか?鬼は頸を斬らなければ殺せませんし、頸もこの日輪刀を用いなければ斬れません」

 

「鬼の弱点は阿児から聞いた、鬼の首も俺の刀で斬った」

 

「そんなっ!?あ、あり得ません!ちょっと左馬介殿の刀を見せてください!!」

 

 

どうしても気になった静音は懇願して左馬介の愛刀を見せてほしいとお願いする。必死にお願いされた左馬介は仕方なく腰に差してある愛刀の"明智拵"を静音に渡す。

刀を受け取った静音はゆっくりと刀を鞘から抜き取り、じっくりと観察する。

 

 

(すごく古い刀だ、刀身も傷だらけ…でも、しっかり手入れされてる。切れ味も凄そうだし扱い易い。いい刀だけど…)

 

 

業物ではあるがこれではただの切れ味のよい名刀というだけで静音の持つ日輪刀のように特別な効果があるようには見えなかった。

 

 

「ほ、本当にこれで鬼を斬ったのですか?私の世界の鬼はこの日輪刀でなければ大して致命傷を与えられないはずなのですが」

 

「あたいも左馬介があの鬼を斬るのを見てたよ。ひょっとして左馬介はあいつらと同じ鬼の力を持ってるから攻撃が効いたんじゃないかな?」

 

「な、なるほど…」

 

「左馬介、あれを静音に見せてあげてよ」

 

「ああ」

 

 

そういうと左馬介は側に置いてあった何かを取り、静音の前それを置く。それは静音にも見覚えがある物で、それは左馬介が斬った鬼の角だった。あの巨体だけあって角はかなりの大きさだ。

 

 

「これは…鬼の角?」

 

「殺したって言っても信じないかもしれないから一本だけあいつの残骸から拝借しといたんだよ。これなら文句ないだろ?」

 

「確かに…あの鬼の角だ。う、う~ん…」

 

 

それでもやはり納得できないのか静音は難しい表情をしている。だがこれはあの鬼を倒した確実な証拠だ。やっと納得した静音は改めて左馬介たちに向き直る。

 

 

「どうやら本当みたいですね。分かりました。この角は本部に持ち帰って、鬼の研究に役立てます」

 

「ああ」

 

「それより、あんた早く医者に診てもらったほうがいいんじゃない?左腕と肋骨が何本か折れてるんだから」

 

「うう…そんなに?どうりで胸の辺りが痛いわけだ…」

 

 

今になって痛みがぶり返してきたのか静音は苦悶の表情で胸を押さえている。左馬介たちが行ったのはあくまでも応急処置であり、本来であれば適切な治療の後に絶対安静していなければならない状態だ。

 

 

「よければ近くの町か村まで送ろう、お前がいる鬼殺隊の拠点でも構わない」

 

「えっ!?ま、待ってください!お二人に一緒に来られたら困ります!」

 

「何?」

 

「ちょっと、何でそんなに嫌がるの?」

 

「お気持ちは嬉しいですけど鬼である左馬介殿を鬼殺隊の本部に連れて行ったら大変なことになります!」

 

(そ、それに"鬼が目の前にいたのに何もしなかった"なんてことがバレたら私が殺されるよ…!!)

 

 

大慌てで同行を断る静音。一方の左馬介は善意のつもりだったのだが彼女にとって都合が悪いのなら無理強いはできなかった。となれば自分にできるのは彼女を見送ることぐらいだ。

 

 

「分かった、俺たちもお前に迷惑をかける気はない」

 

「も、申し訳ありません…せっかくの善意を」

 

「ああ、気にするな」

 

 

早く傷の治療と鬼殺隊本部への報告をしなければならないと思った静音は自分の日輪刀と残りの荷物を持って立ち上がる。

 

 

「改めて言わせてください。この度は本当にありがとうございます。このご恩は一生、忘れません!……痛っ!!?」

 

 

左馬介と阿児に深くお辞儀をするがその直後に静音の身体に激痛が走った。よほど痛いのか少し涙目になりながら膝を付き必死に激痛に耐えている。

 

 

「ちょっとちょっと!ほんとに大丈夫なの?途中で倒れても知らないよ」

 

「ご、ごめん…すっごく痛いけど大丈夫。訓練で死ぬほど鍛えてるから平気だよ…多分」

 

「ならこれを飲んでいけ」

 

 

すると左馬介が懐から黒い筒を出す。その筒の蓋を開けて小さな団子のような物を取り出すと静音に手渡した。

 

 

「…何です?これ」

 

「俺の時代の丸薬だ。治癒力を大きく高め体力と気力を回復する効果がある」

 

「へ、へぇ~戦国時代の薬ですか…」

 

(戦国時代に作られた薬なんて効果あるの…?)

 

 

しかも何か変な匂いするし…と静音は内心愚痴を言ってなかなか口に運ぼうとしなかった。そんな静音を見ていた阿児は思わず口を開く。

 

 

「まったく…"良薬は口に苦し"って言葉を知らないの?そんなに嫌なら返しなよ!左馬介がせっかく貴重な丸薬をあんたに分けてあげたのに」

 

「え…?」

 

 

阿児にそう言われた静音はまたも自分の行動を悔いる。そんな貴重な薬を自分のために譲ってくれたのになんと失礼なことをしてまったのか、と反省する。静音は二人に改めて謝罪すると意を決して丸薬を口に放り込む。

 

 

「……」

 

「まあ、その薬よく効くけど、もの凄く苦いんだよね」

 

「…ああ」

 

(~~ッ!!!?苦っあぁぁ!!?)

 

 

薬を渡した左馬介当人も頷くほどにこの丸薬は苦いのだ。あまりの苦さに吐き出しそうになるが必死に我慢して飲み込む。そんな姿を見ていた阿児は大笑いした後、水の入った盃を静音に持って行った。

 

 

「あっははは!!いい反応するね。ほら水だよ」

 

「…ゲホッ…!ゲホッ…!し、死ぬかと思った…」

 

 

やっぱりこんな薬飲むんじゃなかった…と後悔する静音だったがすぐにその考えを撤回することになった。

 

 

(あれ?痛くない…痛みが引いてる)

 

 

あれほどの激痛が引いたばかりか体力も気力も全快とまではいかないが動くには十分なほどに回復している。どうやら左馬介の言っていたことは本当だったようだ。これほどの薬は医学が発展したこの時代でもなかなか無い。

 

 

「どうだ?少しは楽になったか」

 

「はい!すごいです!この薬…どうやって作ったんですかっ!?」

 

「聞いた話ではいくつもの薬草を練り合わせて作られたそうだ。少し苦いが効果は高いぞ」

 

 

この丸薬といい、鬼を容易く斬る彼の強さといいやはりただ者ではないと感じた静音はこの先も彼の力が鬼を倒す鍵になるのでは?と思っていた。本部に相談しようとも考えたがそれでは先ほどの自分の罪が明るみに出てしまうためそれはできない。ならばと静音は左馬介にあることを伝える。

 

 

「あの!左馬介殿、もしよろしければこの後、東京都に来て頂けませんか?もっとあなたとお話したいことがあるんです」

 

「東京都?何処だそこは?」

 

「え?あ、そっか戦国時代に東京は無いよね…えっと、関東の江戸に来て下さい。現在はこの辺りを中心に鬼の被害が多発しています」

 

「どうやって連絡取るつもりなの?」

 

「東京に着いたらこの宿場に来て下さい。私の親戚が経営しているのでそこにいる人の誰でもいいので"左馬介が来た"と伝えください」

 

 

そう言うと静音は町の地図が記されたメモにすらすらとペンを走らせた後、それを左馬介に渡す。メモには順路とその宿場の場所が記されていた。

 

 

「ここに来て下さい。お待ちしております」

 

「分かった。宿場でまた会おう」

 

「ありがとうございます。その時に幻魔という化物についても詳しく聞かせてください。助けて頂いたお礼に私も微力ながら協力します」

 

「ああ、助かる」

 

「あ!それと町を歩く時は鎧と刀は隠してくださいね」

 

「え?なんで?」

 

「だって廃刀令が施行されてるこの時代にそんな格好で歩いてたら一発で捕まりますよ!」

 

 

この時、左馬介は静音から初めてこの時代のことを聞かされた。この大正時代ではすでに乱世は終息して戦は無くなり、日本は統一国家として歴史が続いていることを知ったのだ。

 

 

「……」

 

「大丈夫ですか?くれぐれも気をつけてくださいね。では、またお会いしましょう左馬介殿!」

 

 

その感謝の言葉を最後に静音は密林の中へ消えていった。残された左馬介と阿児はしばらく黙り込んでいた。

 

 

「そうなんだ…戦国はちゃんと終わったんだね。侍も幻魔も戦も…全部、無くなったんだ」

 

「そうだな」

 

「やったね!左馬介、あたい達の頑張りは無駄じゃなかったんだ!」

 

 

四百年先の日ノ本がどうなっているのか?この時代も戦国時代のように戦乱が続いていたら?もし幻魔がこの時代の日ノ本を牛耳っていたら?と想像していたのだ。しかし日ノ本の戦乱は終わり時代の流れと共に新たな道を歩もうとしていると考えると二人は嬉しくなってくる。戦国時代の誰もが望んだ太平の世が長き時を経てついに実現したのだと。

 

 

「左馬介、じゃあ行こっか東京に!」

 

「ああ」

 

 

左馬介と阿児が次に目指すのは東京…二人は一軒家を後にして目的地に向かって歩き始めた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

・数分後 長野県 密林

 

 

左馬介と別れた静音は傷が痛まない速度で走りながら密林の外を目指していた。もらった丸薬のおかげで思ったよりも早く密林を抜けられそうだと静音は改めて左馬介に感謝する。自分が生きてるいることを実感しながら少し嬉しそうに走る速度を上げる。

そんな時、静音の視界にある光景が映った。

 

 

「……みんな」

 

 

そこにはぐちゃぐちゃに倒れた大木の跡にあちこちに飛び散った血痕の後、静音はすぐに分かった。あの鬼と戦った場所だった。しかし他の隊員の死体が見当たらない所を見ると遺体はすでに鬼殺隊の戦後処理部隊"隠"に処理されたようだ。

 

 

「ごめんね、誰も…助けられなかった」

 

 

思えば共にこの密林に一緒に入った十二人いた鬼殺隊員の中で生き残ったのは自分ただ一人…

静音自身もあの時左馬介が駆けつけていなければこの場で死んでいた。志半ばで命を落とした彼らの為にも必ず鬼を残らず滅ぼすと改めて心に誓った静音は再び走り出す。

 

そんな時、静音の前方から何かがこちらにものすごい速度で接近してくる。

 

 

(…えっ!!?あれって、まさか…!!?)

 

 

木の上を軽々と跳躍し、まるで昔の忍者ような速さでこちらへ向かって来ていたのは人影だった。その人影はこちらの存在に気付いたのか突如、こちらへ向きを変えるとその直後に静音の目の前に着地する。

 

 

「あら?」

 

「こ、ここ、胡蝶様っ!!?」

 

 

静音の前に突如、現れた女性。彼女の名は胡蝶しのぶ。鬼殺隊最高隊士である"柱"の一人、蟲柱の名で知られている剣士だ。

静音が着用してる隊服の上に蝶の羽を模した羽織に蝶の髪飾りで髪を後ろにまとめている。毛先が薄紫色の黒髪で顔立ちは誰もが認めるほどの美少女だ。普段から常に笑顔だが光のないその瞳がどこか恐ろしい。そんなしのぶは静音を見ながら不思議そうに首を傾げていた。

 

 

「おかしいですね、この密林に向かった隊士は全員殺されたと聞きましたが何かの間違いでしょうか?」

 

「こ、胡蝶様が来られたということは…つまり」

 

「ええ、柱の救援が必要だと判断されましたので私が出撃したという訳なんですが…」

 

 

つまり鬼殺隊本部からは静音を含めすでに全員死亡したと思われており部隊の全滅を機に柱の一人であるしのぶの出撃が決定し、彼女が増援としてやって来たというわけだ。

 

 

「理由はともあれ無事で何よりです。見たところかなりの重傷みたいですけど大丈夫ですか?」

 

「は、はい。なんとか…」

 

「あなたの名前を聞いても?」

 

「はい…階級"癸"、伊角静音です」

 

「伊角さんですね、早速ですけどあなたにいくつか聞きたいことがあります」

 

 

しのぶは笑顔で静音に質問しようとするが、そんな彼女を見ていた静音は若干恐怖を感じていた。思い当たることが多すぎていったいどんな質問をされるのか、という恐れもあったが何よりしのぶの笑顔が怖い。

 

 

(…怖い。やっぱり柱の人たちってすごく怖い…)

 

「まず一つ目の質問ですけど、鬼はどうしたんです?ひょっとして逃げられたのですか?」

 

「えっと、鬼は…倒しました」

 

「へえ、そうなんですか。だったらどうしてすぐに報告しなかったんです?」

 

「…なんとか倒しましたけど見ての通り重傷で鬼を殺した直後にすぐ気を失ってしまいました。この密林に住む親切な方が倒れていた私を見つけて助けてくれたのですが目を覚ました頃には二日が経っていて」

 

「では、その治療はその方が?」

 

「は、はい…」

 

 

これが証拠です、と静音はあの鬼の角を見せる。角の大きさからは察するにかなり大きい鬼であることはしのぶにもすぐに分かった。しかし、しのぶは疑問に思っていた。この大きさの鬼を癸の程度の隊員が倒せるとは思えなかった。何か隠しているのではと疑ったしのぶは追及しようとするがその口が止まる。

 

 

「…っ…胡蝶様、申し訳ありません…私が未熟なばかりに他の隊員はみんな…ごめんなさい…ごめん…なさい」

 

 

静音がぽろぽろと涙をこぼして泣いていた。話すたびに戦いの記憶が蘇り誰も守れなかった自分の弱さと不甲斐なさに思わず涙がこぼれてしまったのだ。少なくとも彼女の涙は決して嘘や演技などではない。きっと他の隊員たちと必死に戦い仲間を犠牲にした末の勝利だったのだろうとしのぶは思った。

そんな悲しむ静音をしのぶは優しく抱きしめる。

 

 

「泣かないでください、あなただけでも無事でよかったです。さあ、戻りましょう傷の手当てをしないと」

 

「…すみ…ません…ありがとう…ごさいます…」

 

 

こうしてしのぶに介抱されながら静音は密林を後にしたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

・伊角静音(いすみしずね)

 

 

階級:癸

 

誕生日: 4月26

 

年齢: 16歳

 

身長: 150cm

 

体重: 52㎏

 

趣味: 将棋、鍛練

 

好きなもの: 可愛い動物、珍しい物

 

イメージCV:高橋李依さん

 

 

【挿絵表示】

 

 

鬼殺隊の一般隊士。几帳面で礼儀正しい性格だが気の許せる友人には気さくでフランクな一面を見せる。幼少期に両親と自分を剣士として育ててくれた育手の師匠を鬼に殺された過去から仇討ちと自分のような境遇の被害者を無くすために鬼殺隊に入隊した。鬼を激しく憎んでおり戦闘時はたとえ相手との力量に圧倒的な差があっても全く怯まず猛々しく勇猛に立ち向かう。型は水の呼吸だが修行の途中で師を失ったため力量は基礎しか固まっておらず技は壱ノ形と弐ノ形までしか修得していない。最終選別も運とその不屈の闘志でなんとか通過した。持っている日輪刀も師から形見として受け取った物で自分で選んだ鉱物で鍛えられた物ではない。

戦国時代からの稀人、左馬介と阿児に出会ったことがきっかけで人生が大きく変化することになった。

 

 

○登場アイテム

 

 

・丸薬

 

鬼武者の世界に登場する道具。いくつもの薬草を練り、それを丸めた飲み薬。瞬間的に治癒力が大幅に上昇し服用者の体力、気力を回復する効力がある。ちなみに左馬介と阿児いわく"もの凄く苦い"とのこと。

 

※鬼武者1、2、3、武頼伝に登場。いずれも体力ゲージを大きく回復するアイテム。




初の原作登場キャラはしのぶさんにしました!
ここから少しずつ原作の物語に繋げていきます!
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