鬼滅の刃 鬼斬り武者   作:戦国のえいりあん

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新作、書けました!
ホントは一話でまとめるつもりだったんですが、もうちょっと長くなりそうなので前後編で分けることにしました!

ここのシーンがずっと書きたかったんですッ!!


第二十話 絶望、そして光明 前編

 

・那田蜘蛛山 最奥部

 

バルドスタンの手によって蘇った煉獄杏寿郎と胡蝶カナエの二人と戦うことになった鬼殺隊と左馬介は苦戦を余儀なくされていた。幻魔による強力な洗脳の術は現時点では解除する方法がなく二人を止めるにはその息の根を止めるしかない。かつて共に戦った仲間である煉獄杏寿郎と対決することになったかまぼこ隊は戸惑いを押し殺し全力で向かっていく。

 

「水の呼吸…肆ノ型・打ち潮!!」

 

加速しながら杏寿郎の頸を狙い炭治郎は肆ノ型を繰り出す。目の前にいる煉獄杏寿郎に小手先の攻撃は一切通用しない…間近でその強さを知る炭治郎は迷いを捨て全力で渾身の一撃を繰り出した。しかし、その一撃は容易く防がれてしまう。

 

(くッ…!止められた!)

 

「まだ終わらねぇぞ!!獣の呼吸…弐ノ牙・喰い裂き!!」

 

「雷の呼吸…壱ノ型…霹靂一閃!!」

 

炭治郎の動きに合わせて伊之助と善逸が左右から杏寿郎に襲いかかる。だが、対する杏寿郎は炭治郎の日輪刀を力づくで押しのけると速さで二人の攻撃を流れるような動きで回避する。一定の距離を取った直後、杏寿郎は勢いよく踏み込んだと同時に炭治郎たちに凄まじい速度で急接近する。

 

「炎の呼吸…壱ノ型」

 

(は、速いッ…!!)

 

あまりの速さとその気迫に三人は圧倒されるが、これまで数々の死線を潜り抜けてきた賜物か身体は怯んでいない。杏寿郎の狙いは炭治郎であり一瞬にして間合いに入られてしまい、気づいた時にはすでにその刃が炭治郎の頸に迫っていた。

 

「不知火!!」

 

(う、動け!動けッ!!)

 

間一髪でその一撃を防ぐことはできたがその勢いは止められず、防御したにも関わらず炭治郎は後ろに大きく吹き飛ばされてしまった。

 

「ぐあぁぁぁ!!?」

 

「た、炭治郎ッ!!」

 

「クソッ!!食らいやがれギョロギョロ目ん玉ァ!!」

 

すかさず伊之助が杏寿郎に対して攻撃を仕掛ける。火花が飛び交う激しい剣劇が繰り広げられるが伊之助は瞬く間に劣勢に追い込まれていた。伊之助を援護しようと善逸が杏寿郎の背後から斬りかかるがそれすらも容易く防御されてしまう。その後、二人がかりで抜群の呼吸で連携攻撃を仕掛けるが杏寿郎にはまったく歯が立たなかった。

 

(畜生ッ…!やっぱりコイツ化け物だぜ!!)

 

(二人がかりでも駄目なのかッ…!俺たちなんかが本当に煉獄さんに敵うのかよ!!)

 

「炎の呼吸…肆ノ型・盛炎のうねり!!」

 

伊之助と善逸が技を仕掛けようとした一瞬の隙を突き、杏寿郎は炎の呼吸の肆ノ型を繰り出した。まるで渦を描くような軌道で刃を振るい炎の如き斬撃を相手を切り裂く技で状況によっては防御にも用いれる攻防一体の技なのだ。

 

「グオッ!!」

 

「ガハッ…!?」

 

肆ノ型の斬撃を食らった伊之助と善逸は同時に吹き飛ばされてしまう。二人ともギリギリで急所は外したが深手を負ってしまった。体勢の崩れた伊之助に対して杏寿郎は容赦なく追撃を繰り出そうと幻魔刀を振り上げる。伊之助はなんとか回避しようとするがどうやっても間に合わない。

 

(やべぇ…!!殺される…畜生ッ…!!)

 

「伊之助ェェ!!」

 

 

ガキィィィン!!

 

 

杏寿郎の刃が伊之助の頭に当たろうとした瞬間、体勢を立て直した炭治郎が割って入り伊之助を危機から救っていた。吹き飛ばされた際、打ち所が悪かったのか炭治郎は額から出血していた。

 

「権八郎!!」

 

「大丈夫か!伊之助!」

 

「オウ!助かったぜ!さすがは俺様の子分だ!」

 

起き上がった伊之助と善逸が動きの止まった杏寿郎に技を仕掛けるがその一撃は後ろに大きく跳躍され回避されてしまう。一度距離を取り、お互いに睨み合うが戦況は炭治郎たちが圧倒的に不利な状況だ。

 

(…強い、やっぱり煉獄さんの強さは桁違いだ…!)

 

実際に刃を交えてみて目の前に立つ煉獄杏寿郎という剣士の強さを改めて再認識した三人は戦慄していた。たとえ三人がかりで戦っても杏寿郎には敵わない…最悪の状況が脳裏によぎった炭治郎は必死に打開策を考える。

 

(このままじゃ全滅だ…ど、どうしたら…)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

その頃、胡蝶カナエと戦っていた義勇としのぶ、カナヲも同じく劣勢に立たされていた。しのぶとカナヲは自身の姉であるカナエを斬ることに戸惑いと迷いを隠せず戦意を失ってしまっていた。同じく動揺していた義勇だが前にいるカナエは手加減して戦う余裕がないほどの強敵であることも分かっており、殺す気で戦わなければこちらが殺されてしまう。

 

「花の呼吸…伍ノ型・徒の芍薬!!」

 

「水の呼吸…陸ノ型・ねじれ渦!!」

 

洗練された互いの呼吸の技が拮抗するがやはり義勇が押されていた。その後、一瞬で距離を詰めたカナエが義勇に凄まじい速さで斬りかかると再び激しい打ち合いが繰り広げられる。

 

「くッ…カナエ、やめろ!!」

 

「……」

 

(どうすればいい…!やはり、カナエを斬るしか方法はないのか…!)

 

相手が鬼にされていればまだ踏ん切りがつくのだが、生前と同じ姿のかつての仲間を斬ることにはさすがの義勇でも戸惑いを隠せなかった。一方のカナエは義勇の言葉には一切耳を貸さずに黙々と息の根を止めようと急所を的確に狙って襲いかかってくる。

 

(冨岡さんを…助けないと…!でも…私にカナエ姉さんを斬れるの…?)

 

「…カナエ…姉さん…!お願い…もう…やめて…」

 

義勇を救援しなければならないと頭では理解しているが、どうしても足が前に出ず手も震えたままだ。

 

「花の呼吸…弐ノ型・御影梅!!」

 

「…!しまった…!」

 

連撃の一瞬の隙を突くようにカナエは花の呼吸の弐丿型を繰り出した。幾重にも刀を振り、自身の周囲に無数の斬撃を放つ技であり、桃色の斬撃が義勇に遅いかかる。

 

「…ぐッ…!!?」

 

咄嗟に回避行動を取るも右肩と左脚、腹部に斬撃をくらってしまったのだ。攻撃の手を緩めることなくカナエは義勇にさらなる追撃を繰り出す。特に脚への斬撃が深く先ほどまでの動きは最早できなくなってしまった。

 

「冨…岡さん…」

 

「胡蝶ッ!しっかりしろ!!俺たちの責務を忘れるなッ!!たとえ姉が相手でも躊躇うな!!」

 

しかし、義勇の心は折れていない。しのぶを叱咤激励すると向かってくるカナエを迎え撃つ。脚の怪我の影響で先ほどのは異なり防御と受け流しに特化した戦法に切り替え激しく打ち合う。

 

(…今は耐えるしかない、勝機が来るまで…!)

 

ーーーーーーーーーーー

 

「バルドスタンッ!貴様だけは必ず倒す!」

 

「ぬう!左馬介か…!」

 

杏寿郎の相手を炭治郎たちに任せた左馬介は敵の総大将であるバルドスタンを討つべく凄まじい速度で接近する。バルドスタンを護るように隣にいたゴルドーが立ちはだかるが猛進する左馬介の前に思わぬ乱入者が現れた。

 

「おっと、お前の相手は拙者だ!」

 

「くッ…!どけッ!」

 

左馬介を止めたのはゴーガンダンテスだった。バルドスタンの卑劣な作戦に難色を示し全くやる気がなかった彼だが、どんな形であれ好敵手と認める左馬介と戦えるならばと渋々ながら戦闘に参戦したのだ。

 

「このような形での再戦は大いに不本意ではありますが…仕方ありません。勝負だ!左馬介!!」

 

「貴様と戦っている暇はない!」

 

「左馬介…!急いで!炭治郎たちも義勇も危険だよ!」

 

左馬介は武器を雷斬刀へと切り替え、全集中の常中を発動する。雷斬刀と幻魔刀・鬼殺しの刀身がぶつかると同時に凄まじい衝撃が発生する。その後、凄まじい速度で激しい剣撃が繰り広げられる。

 

全集中の常中によって左馬介の攻撃速度は通常の数倍に上がっており洗練された巧みな連撃による猛攻にさすがのダンテスも押されているが、やはり彼の絶対防御の術によって左馬介の技が届かないのだ。

 

(くッ…やはり結界のせいで刃が通らないか!)

 

「むぅ…!見事ッ!さすがは拙者の好敵手だ!」

 

だが、ダンテスも負けていない。力を込め、自身の剣が赤く染めると逆にダンテスが攻勢へと転じた。

 

「ハァァァァ!!」

 

ガキィィン!!

 

「ぐッ…!!?」

 

「隙あり!それッ!!」

 

飛び上がりながら凄まじい威力と速度による振り下ろし攻撃によって左馬介は防御を物ともせず打ち破る。体勢の崩れた左馬介に向かって目にも止まらぬ速さで回転斬りを繰り出したのだ。

咄嗟に回避行動を取るも胸部に斬撃をくらってしまい、左馬介の紅具足に一文字の斬撃の跡が刻まれた。

 

だが左馬介は怯むことなく反撃の一撃を返す。攻撃を受けた直後、左馬介は武器を雷斬刀から疾風刀へと切り替え、崩れた体勢から持ち直しつつ身体を流れるように回転させつつ変則的な技を繰り出した。

 

「でいやァ!!」

 

「おっと…!」

 

しかし、疾風刀による素早い二連撃の斬り上げ攻撃はダンテスに避けられてしまうが左馬介の攻撃はまだ止まらない。そのままの体勢で今度は片手で疾風刀を車輪のように激しく回転させながら薙ぎ払う。

 

「おおッ…!?」

 

結界による斬撃は防がれたが衝撃までは耐えられずダンテスの体勢が大きく崩れた。すると今度は武器を疾風刀から天双刃へと切り替え、隙を突きながら目にも止まらぬ速さの突き技を放つ。

繰り出したのは戦術殻・天の奥義でありその閃光の如き速さの突きは技の始動技だ。

 

その突きはダンテスに見事命中し、天双刃による天の如き光る斬撃がダンテスを幾重にも斬り刻む。最後にとどめの強力な一撃をくらわせるとダンテスはよろめくように後退る。しかし、あれほどの猛攻を受けてもダンテスにはほとんどダメージが通っていなかったのだ。

 

「…ふふ、さすがだな。鉄壁の守りを誇る拙者を相手にここまで戦うとは」

 

「そんな…あれだけ技を受けてもほぼ無傷だなんて…!」

 

(手強い…ガルガントにも劣らぬ強敵だな。あの結界をどうにかしなければ勝機はない、どうすればいい…!)

 

そんな左馬介とダンテスの一騎打ちをじっと見ていたバルドスタンは神妙な表情をしていた。

 

(あの幻魔界最強の剣士であるダンテスとあそこまで渡り合うとは…やはり、奴の強さは底が知れぬ…!口惜しいが奴が居ては我が作戦の大きな障害となるな)

 

するとバルドスタンは何故か視線を左馬介たちから杏寿郎へ変える。その姿はまるで何かを待っているのかのように見えた。

 

(……ふむ、そろそろか。さて、どこまで持ち堪えるか見物させてもらうぞ…クク)

 

「バルド様?如何されましたか?」

 

少し観察するだけでバルドスタンの思考がおおよそ把握できるゴルドーでもこの時、彼が何を考えているのかまったく予想できなかった。

 

ーーーーーーーーーー

 

その頃、杏寿郎と戦闘していた炭治郎たちかまぼこ隊は窮地に追い込まれていた。三人ともすでに全身に無数の刀傷の跡が刻まれ息も絶え絶えの状態だ。しかし、それでも不屈の意地で踏み止まりなんとか杏寿郎を足止めしている。それに対して杏寿郎は息一つ切らしておらずほとんど攻撃を受けていなかった。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「…やっぱり無理だ、俺たちじゃ煉獄さんには敵わねぇよ…」

 

「弱気な事言ってんじゃねぇよ!!この程度…全然、余裕だぜ…!!」

 

だが状況はますます悪化している。胡蝶カナエと対峙している義勇も苦戦し、頼みの左馬介もダンテスの足止めを受けバルドスタンの元に辿り着けていない。ここで自分たちが負けてしまえば間違いなく全滅してしまうだろう。

 

「……」

 

「負けるわけには…いかない…!!善逸!伊之助!もう一度だ!」

 

「オウ!しっかり俺様に合わせろよ!」

 

「…何度だってやってやる…!いくぞ!!」

 

三方向からかまぼこ隊がぴったりの呼吸で包囲しながら杏寿郎に向かって呼吸の技を放つ。残り少ない体力と気力を振り絞り渾身の一撃を叩き込む。

 

「ヒノカミ神楽…円舞一閃ッ!!」

 

「雷の呼吸…霹靂一閃・神速ッ!!」

 

「獣の呼吸…陸ノ牙・乱杭咬みッ!!」

 

迫りくるかまぼこ隊による三方向からの攻撃に対して杏寿郎は今まで見せた構えとはやや異なる特殊な構えを取って迎え撃つ。

 

「炎の呼吸…陸ノ型・猛炎旋刃!」

 

炎を刃にまとわせ回転斬りしを繰り出しながらその場で少し跳躍し、その後着地する直前に強力な威力の回転斬りによる全方位の巨大な炎の斬撃を飛ばす技であり、三人の攻撃は初撃の回転斬りで弾き飛ばされ、とどめの回転斬りによる斬撃を三人はまともにくらってしまったのだ。

 

「ガハッ…!!?」

 

「グ…ォ…」

 

「…ガ…ァ…」

 

この一撃で伊之助と善逸は致命傷を受け、倒れたまま動かなくなってしまった。しかし、ギリギリ急所を外していた炭治郎だけは震えながらもなんとか立ち上がり弱々しく日輪刀を構える。最早、ほとんど動けない状態だが炭治郎の目は死んでいない。

 

「ハァ…ハァ…まだ…だ…!」

 

「……」

 

とどめを刺そうと杏寿郎は力強い踏み込みと共に加速し一気に炭治郎との距離を詰める。猛烈な勢いで迫りくる杏寿郎に向かって炭治郎は咆哮し最後の全身全霊の一撃を繰り出そうとする。

 

「ガアァァァァァァ!!」

 

(煉獄さん…!いきますッ!!心を燃やせッ!!)

 

その時、炭治郎の額の左側にある痣がまるで炎のように変化した。動かなかったはずの脚が動き、迫る杏寿郎の斬撃とほぼ同時に技を繰り出した。

 

「ヒノカミ神楽…日暈の龍・頭舞いッ!!」

 

水の呼吸の参丿型に酷似した動きで杏寿郎に向かって流れるような動きで炎を宿した渾身の一撃を繰り出す。互いの斬撃がぶつかると同時に二人の凄まじい衝撃が巻き起こる。勢いと威力なら炭治郎は負けていない、凄まじい威力になんと杏寿郎の斬撃を通り越してその斬撃は見事杏寿郎に命中した。

 

…しかし、杏寿郎はその一撃を皮一枚で回避していた。右肩から左脇まで一文字の刀傷が刻まれていたが致命傷には至らなかったのだ。さらに杏寿郎と全力で打ち合った結果、炭治郎の日輪刀はその凄まじい威力に耐えきれなかったのか刀身に激しいヒビが入ったと同時に粉々に砕け散ってしまった。

 

「…ぁ…」

 

糸が切れたかのように身体の限界を迎えた炭治郎はその場に倒れてしまう。それを見た杏寿郎はゆっくりと炭治郎に近づいてくる。

 

「……」

 

(やっぱり…煉獄さんは強いなぁ…全然、届かない…禰豆子…ごめんな…兄ちゃんはここまでみたい…だ…)

 

「炭治郎ッ!くそッ!」

 

「た、大変ッ!どうしたら…!!」

 

「…!?炭治郎ッ!!」

 

とどめの刺そうと杏寿郎は幻魔刀を振り上げる。左馬介と義勇も炭治郎を救援しようとするが強敵と戦う二人にそんな余裕は全く無い。だが次の瞬間、側に置いてあった炭治郎の木箱が開き中から妹の禰豆子が飛び出して来たのだ。炭治郎の前に庇うように立ち両手で受け止めようと防御の構えを取る。

 

「ヴゥゥー!!」

 

「…ね…禰豆…子…!…駄目だ…!…逃げろッ…!!」

 

幻魔刀が禰豆子に命中する直前、禰豆子は一瞬だけ目を瞑るが何故か痛みが襲ってこない。恐る恐る目を開くと杏寿郎の幻魔刀は命中する寸前で止まっていた。

 

「ムー?」 

 

よく見ると二人の前に立つ杏寿郎が微笑んでいた。瞳には光が宿り、かつて見た燃えるように熱い眼差しをしていた。

 

 

「……強くなったな、竈門少年。いい一撃だったぞ」

 

「…れ…煉獄…さん…?」

 

なんと先ほどまで操り人形のように何も喋らなかった杏寿郎が声を出したのだ。何が起きたのか理解が追いつかない炭治郎は目を丸くしている。

 

「し…正気に戻ったんですかッ!?」

 

「すまない、意識はあったが逆らうことができなかった…だが、君の一撃のおかげで洗脳から解放され目を覚ますことができた。ありがとう、竈門少年」

 

「れ…煉獄さん!!」

 

(ぬぅ…!やはり短時間で正気に戻ったか。元々、あの煉獄杏寿郎という人間には暗示や洗脳の術は効果が薄かった…人間の分際であれほど強い自我と精神を備えているとは一体何者だ…?)

 

実はバルドスタンによる幻魔の洗脳術は杏寿郎に対しては効果が薄く、完全には支配されていなかったのだ。炭治郎が杏寿郎に与えた一撃は彼の自我を取り戻すための引き金となり見事、杏寿郎は自力で洗脳術を打ち破ったのだ。

 

「よもや、再びこの世に戻ってくることになるとは思わなかった…だが、蘇ろうと俺の成すべきことは変わらない!人々を苦しめる化け物共!この煉獄の赫き炎刀がお前たちの野望を断ち切る!!」

 

「…や、やった…煉獄さんが…帰ってきたんだ…!!」

 

「ギョロギョロ目ん玉…!!正気に戻ったのかッ!!」

 

杏寿郎の生還に戦っていた一同が驚愕のあまり思わず手を止めた。

 

「…煉獄…!!」

 

「嘘ッ…!?幻魔の洗脳術を自力で破るなんて…!あんなに強い精神力と自我を持った人間を見たのは初めてだよ…!」

 

「なるほど、あれが本来の煉獄杏寿郎か」

 

「おやおや、まさかこのような事態になるとは…どうやらバルドスタンの目論見は外れたようですね」

 

完全に復活した杏寿郎は幻魔刀を構え、凄まじい速度でバルドスタンに向かって猛進する。その時、左馬介と戦っていたダンテスが一番に反応し杏寿郎の迎撃へと向かった。

 

「左馬介ッ!悪いが此度の勝負は預けておくぞ、敵に背を向けるは口惜しいがそうも言ってはいられない。いずれ決着を着けましょう、では!」

 

「何ッ!待て!」

 

好敵手に背を向けることは本意ではないが総大将であるバルドスタンを守ることが最優先と判断したダンテスは左馬介との一騎打ちから撤退し杏寿郎を食い止めるべく行動したのだ。

 

杏寿郎の前に立ちはだかるようにダンテスが立つと両者による激しい打ち合いが始まった。炭治郎と戦っていた時よりも技の速さと威力が増しており目で追うのも困難なほどの応酬が繰り広げられる。

 

「炎の呼吸…弐ノ型・昇り炎天!!」

 

「ハアァァァァ!!」

 

杏寿郎の弐ノ型に対してダンテスは力を込めた鬼殺しによる強力な振り下ろし攻撃で迎え撃つ。しかし、技の威力はほぼ互角であり互いの刃がぶつかった瞬間に強烈な衝撃が起きたと同時に鍔迫り合いに突入した。

 

「お前をひと目見た時から剣を交えてみたいと思っていましたよ!さあ!お前の技を見せてみろ!杏寿郎ッ!!」

 

「お前たちの思い通りにはさせんッ!いくぞ!!」

 

ーーーーーーーー

 

一方、左馬介は負傷した炭治郎の元へ向かっていた。倒れた炭治郎に駆け寄り傷を確認すると瀕死の状態ではあるがギリギリで生存していのだ。

 

「…明智…さん…」

 

「しっかりしろ、炭治郎。これを飲め」

 

左馬介は懐から丸薬を一つ取り出すと炭治郎に飲ませた。あまりの苦さに涙目で苦しそうな表情をするも丸薬の効果により傷がみるみると回復していた。

 

(…す、すごい!傷口がすごい勢いで塞がっていく。呼吸を使えば効果が上がるかもしれない!)

 

「大丈夫か?」

 

「はい!ありがとうございます!伊之助と善逸にも分けてあげて下さい!」

 

「ああ」

 

伊之助と善逸にも丸薬を飲ませると二人とも炭治郎と同様に再び動けるまで回復したのだ。完全とは言えないもののかまぼこ隊は戦闘に復帰した。

 

「ウオォォォォ!!!伊之助様復活じゃあァァ!!ありがとよ!サムライのオッサン!」

 

「すげぇ…!傷が治ってる!明智さん、ホントにありがとうございます!!今度ばかりはもう駄目かと思いましたよ…」

 

「気にするな」

 

「左馬介、丸薬は残り四個しかないよ?気をつけてね」

 

丸薬も無限にある訳ではない。左馬介の手持ちの丸薬は残り四つであり、今後はよく考えて使う必要があった。

 

改めて戦況を確認すると現在、最も苦戦しているのは胡蝶カナエと戦っている義勇としのぶたちだ。なんとか耐えているが義勇もかなり傷を負っておりこのままでは致命傷を受けかねない危険な状況だ。そんな中、阿児が難しい表情であることを考えていた。

 

(杏寿郎が正気に戻れたならカナエも同じように元に戻す方法があるかもしれない…でも、杏寿郎が異常であって本来であれば幻魔の洗脳術から自力では正気に戻るのはほぼ不可能。何か手はないかな…?)

 

「冨岡さんが危ない!でも、俺の刀は折れてる…どうすれば…!」

 

「オイ!半半羽織の野郎がやべぇぞ!!どうすんだ!!」

 

「炭治郎、これを使え」

 

そう言って炭治郎に渡したのは赤い刀身の小太刀だった。それは"反鬼の小太刀"という武器であり高僧の強い念が込められた魔を打ち破る力を持つのだ。さらにこの小太刀はかつて左馬介と苦楽を共にした相棒であるくノ一・かえでが使用していた武器だ。

 

(この小太刀…不思議だ。まるで魂が宿ってるみたいだ)

 

「ありがとうございます!後で必ずお返します!」

 

その時、じっと思案していた阿児が何かを閃いたのか慌てながら左馬介に話し始めた。

 

「…左馬介!!カナエを元に戻す方法が一つだけあるの!」

 

「本当か!?」

 

「ホントッ!?阿児ちゃん、なんとかしてくれよ〜!」

 

「…でも、可能性は限りなく低いと思う。左馬介の力が必要なんだけど…」

 

「任せろ、どうしたらいい?」

 

その直後、阿児の作戦を聞いた一同はそれぞれの敵に向かって突き進む。左馬介と阿児が向かったのは胡蝶カナエであり、炭治郎たちかまぼこ隊が向かったのは敵総大将であるバルドスタンだ。

 

ーーーーーーーー

 

その頃、カナエとの死闘によって義勇は防戦一方を余儀なくされていた。水の呼吸を用いて攻撃を受け流すように戦っていたがカナエの凄まじい速度の斬撃は回避しきれずじわじわとダメージが蓄積していたのだ。

 

(…ぐッ…!煉獄は正気に戻ったがカナエはどうすれば元に戻る?…何か、何か手は無いのか…!)

 

しのぶとカナヲも未だに迷いが断ち切れず動けないままだ。その時、カナエに向かって側面から猛烈な勢いで何かが飛んでくるがカナエは難なくそれを回避する。見るとそこには一本の矢が突き刺さっており飛んできた方向を向くとそこには和弓を構えた左馬介の姿があった。

 

「…!明智…!」

 

「義勇、大丈夫か?」

 

「大変!少しじっとしてて!」

 

左馬介は義勇の隣に駆け寄ると改めて明智拵を構える。すると阿児が義勇の周囲を高速で飛び回り始めた。阿児の羽根から白い小さな光が無数に降り注ぎ、その光が義勇の傷を少しずつ治癒していったのだ。

 

「…驚いたな、こんなことができるとは…」

 

「あくまで応急処置だよ。まあ、気休め程度だけどね」

 

「…そんなことはない、感謝する」

 

義勇の傷を治癒した後、阿児はしのぶとカナヲの下へと飛んでいく。そして阿児が考えた胡蝶カナエを元に戻すための方法を説明し始めた。

 

「しのぶ、カナヲ…よく聞いて。あたいの力を使ってお姉さんを元に戻せるかもしれない」

 

「ほ、本当ですかッ!」

 

「そのためには二人の力が必要なんだけど…あたいに協力してくれる?」

 

「…ど…どうしたらいいの…?」

 

「あたいの術でカナエの精神世界までの道を開くことができるんだ。道を開いたらそこで二人にはカナエの精神世界に入ってもらうの」

 

「姉さんの精神世界に…?」

 

「うん、今カナエの心は洗脳術によって支配されてる。だから心に呼びかけて解放してあげれば元に戻れるはずだよ。この役目はカナエとの繋がりが強いあんたたち二人にしかできない」

 

しかし、阿児の表情が真剣になり二人にとっては残酷なことを口にした。

 

「でも…成功する可能性は限りなく零に近いと思う。辛いかもしれないけど、これで元に戻らなかったらカナエのことは諦めるしかない。…それでもやる?」

 

可能性はほとんど零に近い無謀とも言える手段だが、微かな可能性でも姉を救う方法があるのであればしのぶとカナヲに迷いはなかった。二人は互いに頷くと迷うことなく答えを告げる。

 

「…分かりました。阿児さん、力を貸してください。必ず姉さんを救ってみせます!」

 

「…カナエ姉さん…必ず助けるから…!!」

 

「よーし!そうこなくっちゃ!!あんたたち姉妹の絆を見せてよ!」

 

こうして胡蝶カナエを洗脳から解放するために微かな希望を胸に一同は行動を開始したのだった。

 

 




次回はカナエの救出劇を書きます!
果たしてカナエを元に戻せるのか…
次回をお楽しみに!
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