鬼滅の刃 鬼斬り武者   作:戦国のえいりあん

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最近、イラストの方ばっかりで全然執筆してませんでした…
久しぶりに鬼武者3をプレイしてたら書く気が湧いたので頑張って描きました!


第七章 刀鍛冶の里編
第二十ニ話 緊急柱合会議


 

那田蜘蛛山から奇跡の生還を果たした胡蝶カナエと煉獄杏寿郎は明智左馬介と仲間たちによって鬼殺隊へと帰還した。戦死したはずだった二人の生還は鬼殺隊を大いに喜び、鬼殺隊本部は歓喜に満ち溢れていた。

 

ーーーーーーーーーー

 

・鬼殺隊本部

 

 

那田蜘蛛山から帰還した炭治郎たちは本部にまだ姿を現すことができない左馬介と途中で別れた後、杏寿郎たちと共に本部へと辿り着いていた。すでに鎹鴉を通じて杏寿郎とカナエの生存は全ての柱に伝わっており、本部内へ入ると残っていた全ての柱の剣士たちが信じられないような表情をしてその帰還を待っていた。

 

「…おいおい、夢でも見てんのかよ…本当に生き返ったのか!煉獄ッ!!」

 

「信じられん…煉獄、生きていたのか…!」

 

「嘘…ほ、ホントに煉獄さん…なの?幽霊じゃないよね…?」

 

「驚いたなあ…煉獄さん、生き返ったんだ」

 

「ああ!俺も未だに信じられん!だが、こうして生きている!皆、心配をかけたな!」

 

「煉獄さん…!!煉獄さぁぁん!!ホントによかったよぉぉぉ!!」

 

炭治郎と伊之助に支えられながら杏寿郎はいつもように快活な声で答える。そんな杏寿郎に蜜璃は大泣きしながら抱きつきその生還に歓喜していた。その隣には同じようにしのぶとカナヲに支えられているカナエの姿もあった。

 

「みんな、ただいまあ」

 

「カナエ…!お前も生き返ったのか!」

 

「宇髄さん、何だか久しぶりですね、お元気でしたか?」

 

「…相変わらずだなあ、お前」

 

「…カナエ…」

 

「ただいま不死川くん、心配かけてごめんね」

 

未だに信じられないのか実弥は普段では想像できないような唖然とした表情で固まっていた。そんな様子を隣で見ていた天元がニヤニヤと笑いながら肘で軽く実弥を小突いた。

 

「おいおい、泣いてんのかあ?不死川」

 

「ああァ…!?俺は泣いてねェ!ぶち殺すぞォ!」

 

「ふふ、変わらないなあ…不死川くんは」

 

「煉獄とカナエの帰還…実に喜ばしいことだ。二人ともよく戻った」

 

その光景を見ていた行冥も大量の涙を流しながら二人の帰還を喜んでいた。その後、再会の喜びも束の間に過ぎ杏寿郎とカナエは治療のために蝶屋敷へと運ばれることになった。二人から聞きたい事情は山ほどあるのだがまずは傷の治療が最優先ということで数日間の治療の後、改めて柱の剣士全員による柱合会議が開かれることが決定したのだった。

 

ーーーーーーーーーーー

 

・蝶屋敷

 

 

炭治郎たちの肩を借りながら二人は蝶屋敷へと戻ってきていた。戦死した胡蝶カナエが生き返ったという報告はすでに蝶屋敷にも届いており、その帰りを待ち切れなかったのか門前には蝶屋敷の三人娘とアオイが信じられないような表情で待っていた。

 

「…あ…ああ…カナエ様だ…!」

 

「ゆ、幽霊じゃないよね…!ホントにカナエ様だよね?」

 

「カナエ様が…帰ってきたんだ…!」

 

「カナエ…様…」

 

「きよ、なほ、すみ、アオイ…ただいま」

 

「「「カナエ様ぁぁ〜!!!」」」

 

「よかった…本当に帰って来たんですね…!夢じゃ…ないんですね…!う…ウォォォン!!」

 

目の前にいるカナエが幻ではないと確信すると四人は大泣きしながら抱きつき再会を喜んだ。その光景を側で見ていたしのぶとカナヲも釣られるように涙を零していた。その後、アオイたちに連れられて病室に運ばれたカナエと杏寿郎は治療を受け数日間、療養することになったのだ。

 

その日の夕方、同じく杏寿郎の生還の一報を聞いて大急ぎで駆けつけたのは杏寿郎の弟である煉獄千寿郎とその父、煉獄槇寿郎だった。杏寿郎のいる病室に慌てて入り込んだ二人は驚きのあまり声も出なかった。

 

「…あ、兄…上…?」

 

「千寿郎、心配をかけたな。戻ってきたぞ」

 

「兄上…!兄上ぇ!!」

 

涙を堪えきれずに千寿郎は大粒の涙を流しながら兄との再会を喜んだ。すると千寿郎の背後にいた槇寿郎がゆっくりと杏寿郎に歩み寄ってくる。

 

「…父上、煉獄杏寿郎、ただいま戻りました」

 

「……」

 

「…父上?」

 

数多の苦悩と最愛の妻を失ったことにより自信を失い、落ちぶれ二人の息子に対しても冷たい態度を取っていた実父の槇寿郎と杏寿郎の関係は気まずいものになっていた。しかし、槇寿郎は杏寿郎の肩に優しく手を触れる。見ればその表情は千寿郎と同じく大粒の涙を流していた。

 

「…杏寿郎、よく戻って来た。今まで…お前には苦労をかけたな」

 

「父上…」

 

「もう二度とお前に謝れないと思うと…何度、自身の過ちを後悔したか分からない…だが、こうして再び言葉をかわすことができて本当に嬉しい…!杏寿郎…すまなかった…!」

 

涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら申し訳なさそうに何度も謝る父親に対して杏寿郎は満遍の笑顔で言葉を返す。

 

「…父上、顔を上げてください。私もかつての父上に戻って頂けて嬉しいです!これからも私と千寿郎を見守ってくれませんか?」

 

「杏寿郎…すまん…感謝するぞ」

 

「父上…兄上…よかった…本当によかった…!」

 

見ると杏寿郎もまた涙を流していた。父親が変わっていく姿を間近で見ていた杏寿郎はもう昔と同じ関係には戻れないと思っていた。しかし目の前の槇寿郎はかつての家族想いな熱く優しい人物に戻っていた。こうして煉獄親子のわだかまりは消え和解することができたのだった。

 

ーーーーーーーーー

 

・一週間後 蝶屋敷

 

 

二人が鬼殺隊に帰還してから一週間後のこと。蝶屋敷にて医療に専念していた杏寿郎とカナエはすである程度は動けるようになっていた。そんなある日のこと、変わらず蝶屋敷の一室にて日々を過ごしていた左馬介と阿児の元にしのぶが訪れていた。

 

「失礼します、左馬介さん」

 

「しのぶか、どうしたんだ?」

 

「やっほー、それで杏寿郎とカナエの様子はどう?」

 

「大丈夫、二人とも身体の傷は快方に向かっているわ。あと一週間ほどで完全に回復すると思う」

 

するとしのぶが真剣な表情で話題を切り出した。

 

「…左馬介さん、長い時間お待たせしてしまいましたけど、ようやく状況を整えることができました」

 

「何のことだ?」

 

「明日、鬼殺隊本部で"緊急柱合会議"が開かれることになりました。…その場で左馬介さんのことを他の柱やお館様に紹介します」

 

長い間、鬼の力を持つことからしのぶや天元を始めとした一部の隊士と柱の剣士としか接触していなかった左馬介の存在を明日、行われる会議で公にするそうなのだ。しかし、阿児は不安そうな表情でしのぶに答えを返す。

 

「…ホントに大丈夫なの?会議の場に行ったらいきなり襲われるなんてことにならないよね?」

 

「……」

 

「安心して、他の柱とは話をつけてる。柱の半数以上が左馬介さんを支持してるし、そうならないように細心の注意を払うから」

 

しのぶの話によれば左馬介の共闘に賛同しているのは、宇髄天元、冨岡義勇、胡蝶カナエ、煉獄杏寿郎、伊黒小芭内、甘露寺蜜璃…そして目の前の胡蝶しのぶの七人だ。

 

「え?あの小芭内ってイヤな奴も左馬介の協力に納得したの?」

 

「ええ、煉獄さんと姉さんを助けたことを話したら完全にではないけど左馬介さんのことを認めてくれたわ。蜜璃さんも『煉獄さんを助けてくれた人ならきっと素敵な人だよ!』と納得してくれたの」

 

「ふ〜ん…」

 

ここまで状況を整えてくれたしのぶのためにも、そしてこの世界から幻魔を根絶するためにも鬼殺隊と正式に協力関係を結ぼうと考えた左馬介は快くその申し出を聞き入れた。

 

「分かった、お前たちの長に会わせてくれ」

 

「ありがとうございます。では、明日は私が鬼殺隊本部へとご案内しますね」

 

左馬介から良い返事を受け取ったしのぶ一礼すると部屋を後にしようとするが、そんなしのぶを阿児が引き止めた。

 

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」

 

「どうしたの?阿児さん」

 

「アンタ…雰囲気変わった?ちょっと前までニコニコしながら喋ってたのに、なんか不機嫌そうな表情してるじゃん」

 

「…そ、それは…その…」

 

「なんというか…それが本来の性格って奴?」

 

すると、しのぶは二人に以前と現在の雰囲気や喋り方が違う理由を話し始めた。実は以前にしのぶが不自然なほどに笑顔で会話していたのは亡き姉であったカナエが関係しており、彼女の夢であった"鬼と仲良くする夢"と姉が好きだと言ってくれた自分の"笑顔"を忘れないためだったのだ。しかし、その笑顔の裏では最愛の姉を殺した鬼への憎悪が渦巻いており、疲れて果て普段の日常や任務に支障が出るほど無理矢理に笑顔を作ってを過ごしていたのだ。

 

「…でも、姉さんは戻って来てくれた。もう気持ちを偽る必要もない、私は…私の意思で昔のように家族や大切な継子たちを殺した憎い鬼を皆殺しにするだけ」

 

姉であるカナエが生還したことで亡き姉の夢だったその意思を受け継ぐ必要がなくなったため、しのぶも本来の性格に戻ったというわけだ。

 

「いい顔になったな、今のお前はどこか晴れやかな表情をしている」

 

「ふふ、左馬介さんや阿児さんのおかげです。あなた達がいてくれなければ姉さんと再会することはできなかった…どれだけ感謝しても足りません。私にできることあったら何なりと言ってくださいね」

 

そういうとしのぶは満遍の笑みを浮かべた。その笑顔は無理矢理作ったものではなく姉であるカナエも愛した偽りのない無邪気な笑顔だ。その後、しのぶは左馬介の部屋を去っていったが、それから数分後に今度はアオイが大慌てで部屋へと入って来た。

 

「さ、左馬介さんッ!!」

 

「アオイか?どうしたんだ?」

 

「わぁ!?び、びっくりしたあ…ちょっといきなりどうしたのよ!」

 

「し、静音が…静音が目を覚ましたんです!」

 

「ほ、ホントッ!?」

 

「そうか…目を覚ましたか」  

 

そう、吉原にて上弦の陸である妓夫太郎との死闘で猛毒を受け意識不明の重体だった静音がつい先ほど目を覚ましたそうなのだ。アオイに連れられ左馬介は急いで病室に行くと大泣きする三人娘に囲まれてベットの上で横になっていた静音の姿があった。

 

「あ…さ、左馬介殿…」

 

「静音、無事で何よりだ。気分はどうだ?」

 

「あ、あはは…身体が鉛のように重いです…また機能回復訓練のやり直しですね…」

 

「もう!心配したじゃない!でも、思ったより元気そうだね」

 

「よかった…!!本当に…目を覚まして…う…ウオオオオン!!」

 

「ち、ちょっと…泣きすぎだよアオイ、阿児もごめんね心配かけちゃって」

 

こうして数ヶ月の時を経て伊角静音もまた意識を取り戻し、死の淵からの生還を果たしたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

・翌日 鬼殺隊本部

 

 

その翌日、鬼殺隊本部である産屋敷邸に柱の剣士たちが集結していた。しのぶは左馬介を案内するために不在だが、その他の柱の剣士はすでに屋敷の大広間に待機しており、その中には杏寿郎とカナエの姿もあった。

 

「緊急の柱合会議とはどういうことだァ?」

 

「うむ…胡蝶に宇髄を含めた複数の柱たちからの提案により急遽お館様の屋敷にて柱合会議を行うことになった」

 

「ねぇ、詳しくは知らないけど…今日は何の会議なの?」

 

「ああ、お前らとお館様に会ってもらいてぇ人物がいるんだ」

 

「それって…もしかして煉獄さんとカナエさんを助けてくれた人だよね?しのぶちゃんから聞いたんだけど、とっても強くて信頼できる人だって言ってたわ!」

 

「…ああ、俺も完全には信用していないが。少なくとも俺たちの敵ではない」

 

「とにかく!皆にも会ってもらえば分かる!もうすぐ来るはずだ!」

 

「ええ、今しのぶが案内してくれてるはずだけど…」

 

未だにその人物と面識がない実弥、無一郎、行冥はいったいどんな人物なのか首を傾げていた。そんな時、屋敷の奥から耀哉の妻である産屋敷あまねが姿を現した。その姿を見た柱たちが一斉に姿勢を正し跪く。

 

「柱の皆様、本日はお集まり頂きありがとうございます。此度は胡蝶様と宇髄様の強い推薦によりとある方と当主の耀哉と話し合いの場を設けさせて頂きました」

 

「承知…あまね様、お館様のご容態は?」

 

「…この数日間、病状が激しく悪化しております。最悪の場合、今後皆様の前に出ることが不可能となる可能性があります」

 

「そ、そんな…!」

 

「……」

 

その一言に柱たち全員が驚愕していた。一族の呪いにより産屋敷一族は代々短命であり現当主の耀哉もまた生まれながらに病に侵されており、現在はその病状が悪化しすでに自身で立ち上がることもできないほどになっていたのだ。

 

「あまね様、失礼ながらその者はいったいどういう人物なのですか?」

 

「…当初、胡蝶様と宇髄様からその御仁のお話を聞いた時は耳を疑い、当主とお会いさせることに賛同しかねましたが…先の那田蜘蛛山における幻魔との戦いにおいて戦死したはずの煉獄様とカナエ様のお命をその御仁が救って頂いた話を聞き、今回の会議に踏み切ったのです」

 

「あまね様がそこまで仰るということは…よほど訳ありの人物なのですな」

 

「悲鳴嶼様、不死川様、時透様、甘露寺様は特に驚かれると思います。どうか決して取り乱さないよう…」

 

するとあまねの元に一羽の鎹鴉が飛んできた。その鴉はしのぶの鎹鴉であり、その人物がたった今この産屋敷邸に到着したという報せだった。

 

「つい先ほど、お客人が到着されたようです。今、胡蝶様が大広間へと案内しております」

 

「「「……」」」

 

柱たちが固唾を呑んでその人物の到着を待つ。襖の先から足音が響きだんだんと近づいて来る。次の瞬間、襖が開かれるとしのぶと左馬介が大広間へと姿を現した。その姿を見た行冥、実弥、無一郎、蜜璃の四人は思わず目を疑った。

 

「え!?…この人が?」

 

「…え、ええッ!!?ま、待ってよ!この人って…!」

 

「オイ…どういうことだァ?何でこの屋敷に鬼がいやがるんだァァ!!」

 

「……信じられぬ」

 

一同の前に現れた左馬介の姿に四人は驚愕していたが、それ以外の面識のある柱の剣士たちは左馬介を信頼しており快く彼を迎え入れる。

 

「お待ちしておりました、明智左馬介秀満様」

 

「ああ、お前たちの長である産屋敷耀哉殿と話がしたい」

 

(うわあ…気まずい雰囲気だなぁ〜ホントに話し合いなんてできるの?)

 

「…とまぁ、こういうワケだ。俺も初めて明智と会ったときは同じ反応だったんだが…」

 

「左馬介さんは鬼殺隊の隊士、そして私たちを幾度となく救ってくれました。彼は我ら鬼殺隊の味方です」

 

「ああ!明智殿のおかげで俺とカナエさんはこうしてここに居る!彼は他の鬼とは明確に違う!彼は信じるに値する人だ!」

 

「はい、明智さんは幻魔によって操られていた私を救ってくれました。確かに明智さんは鬼の力を持ちますが、私たちの知る鬼とは全く異なる存在だと思います。」

 

「……俺も、那田蜘蛛山で明智に命を救われました。彼は…信用できます…」

 

(すごいわ…!どんな人なのか気になってたけど、まさか鬼のお侍さんだったなんて驚きだわ!それにとってもかっこいいし…素敵だわ!!)

 

「鬼の侍…驚いたなあ、鬼の気配はまったく感じなかったのに…」

 

しのぶや義勇を始め、左馬介に命を救われた天元や杏寿郎たちも全力で左馬介のことを支持していた。しかし、激しく鬼を憎む実弥はまったく納得しておらず、左馬介と耀哉を引き合わせるのに断固反対だった。

 

「ふざけんじゃねェェ!鬼とお館様を会わせられるかよォ!!俺は断固反対だぜェ!!」

 

「……不死川、気持ちは分かる。だが、この男が煉獄とカナエさんを救ったのは事実だ」

 

「伊黒ォ…テメェ、どういうつもりだァ?」

 

「…俺も奴はいけ好かんが…味方としては信頼してもいい…そう思っている」

 

「不死川くん、あなたの鬼を激しく憎む気持ちは知ってるわ…でも、明智さんを信じてあげて。彼のおかげで私はこうして生き返ることができたの、お願い…」

 

「……」

 

どうしても納得ができず今にも左馬介に殴り掛かろうとするのを抑えていたが、カナエのその一声で落ち着きを取り戻したのか不機嫌そうに腰を降ろした。

 

「クソがァ!!…オイ、少しでも妙な動きをしてみろ。ぶち殺すぞォ…!」

 

「……」

 

(何なのコイツ…!あの小芭内って奴より感じ悪いなあ…ぜ〜ったい友達いないでしょ!)

 

「私も信じ難いが…柱の半数以上が彼をこれほどまでに信頼している…偽りではないのかもしれん」

 

その時、あまねの後ろの襖から声が聞こえてくる。咳をしながら客人である左馬介を招き入れようとしたのは病床の身であった耀哉だった。

 

「ゴホッ…!ゴホッ…!…すまない、左馬介さん。よく来てくれましたね」

 

「お前が産屋敷耀哉殿だな」

 

「ええ、寝たままお話しするご無礼をお許しください。数日前から病状が悪化して己の力で立つこともままならないのです」

 

「気にしないでくれ」

 

「皆、大丈夫。左馬介さんは信頼していい人だ。だから、今日は彼に来てもらったんだよ」

 

耀哉のその一声で他の柱たちも納得し、姿勢を正して正座する。先ほどまでかなり揉めていたこの場をたった一声で制した耀哉の人望と求心力に左馬介は驚いていた。

 

(あの柱の剣士たちを一瞬で黙らせるとは、産屋敷耀哉…並外れた強い人望と求心力だ。鬼殺隊の長というのも納得がいく)

 

「強い呪いが身体を蝕んでる…ひょっとして、生まれつきなの?」

 

「…ああ、千年も前から私の一族に代々受け継がれる呪いさ。そのせいで産屋敷一族は短命なんだよ」

 

千年という年月に左馬介と阿児は驚きを隠せなかった。左馬介が生まれるよりも以前から鬼殺隊は存在しており、その過程でどれだけの犠牲と血が流れたのかを思うとその血塗られた鬼殺隊という組織の重みが嫌と言うほど感じられた。

 

「今日、ここに来てもらったのは他でもない。左馬介さん…あなたの力を私たち鬼殺隊に貸しては貰えないだろうか?」

 

「……」

 

「ただの勘だけど…あなたと共に戦うことが鬼殺隊にとって最良の選択だと私は思う」

 

「俺は鬼の力を持つ者だ。鬼を根絶するために戦うお前たちとは相容れないはずだろう」

 

「でも、あなたは私たちの知る鬼とは全く違う。しのぶや天元、そして静音を救ってくれたあなたを私は信じているんだ。それに那田蜘蛛山に現れた幻魔という化け物…奴らに対抗するためにはあなたの力が必要だ」

 

寝たままの状態でありながらその言葉の一つ一つに強い意志が宿っており、彼が心の底から左馬介と協力したいという気持ちが感じて取れた。もちろん、左馬介もこの申し出を断る理由はない。鬼殺隊と協力関係になることは互いにとって大きな理になるのだから。

 

「分かった、お前たち鬼殺隊に協力しよう」

 

「…ありがとう、あなたの協力があればとても心強い」

 

「俺がこの時代にいる幻魔をすべて討ち滅ぼすまでよろしく頼む。そして、この時代の鬼の一族の討伐にも協力は惜しまない」

 

「はぁ〜…やっと、正式に協力関係を結ぶことができたんだね。ここまで長かったなぁ」

 

「…皆、聞いた通りだ。これから左馬介さんは私たち鬼殺隊の味方だ、仲良くするようにね」

 

「「「ははっ!」」」

 

「……御意」

 

こうして鬼殺隊と正式に協力関係を結んだ左馬介は味方として認められ、堂々と隊士たちの前に姿を現すことができるようになったのだ。その後、疲れて眠ってしまった耀哉を奥へと運び終えた後、柱の剣士たちと左馬介は大広間で会議を開いていた。議題は今後の鬼による行動と那田蜘蛛山を本拠地にする幻魔の動向についてだ。

 

「今のところ動きはありませんが今後、上弦の陸を討たれた鬼が何かしらの行動を起こす可能性が高いです」

 

「だが…あの吉原の事件から鬼による被害は出ていない」

 

「…それよりも、今は幻魔の動向が気になる」

 

「結局、あの化け物たちは何がしたかったのかなあ?奴らの狙いが煉獄さんとカナエさんの遺骨だったことには驚いたけど…」

 

「…同士討ちさせるにしちゃあ随分と回りくどいやり方だ。そこまで苦労して俺たちと煉獄を戦わせる必要があったのか?」

 

「問題はそこなの、あのバルドスタンほど頭の切れる幻魔が無駄な手段を使うとは思えない…きっと何かしらの意図があって行ったとは思うんだけどなあ」

 

「今は手がかりが少なすぎる、奴らの目的を知るためには新たな情報が必要だ」

 

現時点の段階ではなぜバルドスタンが杏寿郎とカナエを生き返らせてまで鬼殺隊や左馬介と戦わせた理由は解明できなかった。真相を知るには幻魔の新たな情報が必要のため、各柱の担当地区の巡回と警戒強化と那田蜘蛛山への偵察だ。鬼と幻魔、どちらが先に仕掛けてくるのか読めないが今できるのはそれだけだろう。

 

「まあ、とにかく明智が味方になってくれて心強いぜ。改めて、これからよろしくな!」

 

「うむ!あなたの強さは那田蜘蛛山での戦いで拝見させてもらった!明智殿のご助力があれば百人力だ!」

 

「……よろしく頼む、明智」

 

「左馬介さん、これで私たちは志を共にする仲間です」

 

「……お館様のお言葉だ、未だに疑念は晴れぬが…あなたが味方であることは認めよう」

 

「…チッ!言っとくが俺はまだテメェのことを認めた訳じゃねェからなァ…!」

 

実弥のように左馬介をまだ信用できない者もいたが、味方が増えたことは左馬介にとっても悪くない話だ。柱たちに向かって笑みを浮かべながら左馬介と阿児は答えを返す。

 

「ああ、よろしく頼む。改めて紹介するが俺は明智左馬介秀満だ。この時代にやって来た化け物…幻魔を残らず討つために戦国の時代から来た。共に鬼と幻魔を討とう」

 

「え~と…あたいは阿児、鬼の一族を支える鴉天狗の一族さ。いろんな力を持ってるし、幻魔や鬼の知識について詳しいつもりだからあんたたちの力になるよ」

 

こうして鬼武者・明智左馬介と鬼殺隊は正式に同盟を結び共に鬼と幻魔を倒すために共闘することになったのだった。その後、会議を終えた柱たちは次々と屋敷を後にしていたがその時、左馬介と共にいた阿児が真剣な表情でカナエと杏寿郎を睨むように見ていた。

 

「……」

 

「阿児?どうかしたのか」

 

「…やっぱり、妙だなあ」

 

「…?どういうことだ」

 

すると、何かを不審に思った阿児はまだ近くいたしのぶの元へと飛んでいくと肩に着地しながらひっそりと声をかけた。

 

「ねえ、しのぶ。ちょっと頼みがあるんだけど…」

 

「阿児さん?どうかしたの」

 

「この後、杏寿郎とカナエの二人を蝶屋敷に集めてくれない?…大事な話があるの。もちろん、アンタと左馬介も」

 

「大事な話…?いったい何なの」

 

「理由は後で話すから、今はあたいを信じてよ」

 

阿児のただならぬ雰囲気にしのぶも危機的な予感を感じたのか、しのぶは蝶屋敷で二人を呼んで待っていると伝えると足早に去っていた。

 

「阿児、いったい何があったんだ?」

 

「うん、あたいの勘が確かなら…あの二人の身体、何か変なんだよね」

 

「あの二人?杏寿郎とカナエのことか」

 

「だから、それを確かめたいの!とにかく左馬介も来て!」

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

・数時間後 蝶屋敷 しのぶの診察室

 

 

柱合会議から数時間後、阿児が内密に話がしたいということでしのぶの診察室に杏寿郎とカナエ、そしてしのぶと左馬介の五人が部屋で待機していた。これほどに秘密裏に話そうするには何か理由があると考えたしのぶは不安そうに阿児に尋ねた。

 

「阿児さん、それで話って何なの?」

 

「…いい?みんな、落ち着いて聞いてほしいんだけど」

 

「ああ、どんなことでも話してくれ!遠慮はいらない!」

 

「ひょっとして、私と煉獄さんに関する話なの?」

 

「……」

 

すると阿児の口から信じられない言葉が飛び出した。

 

「あたいの勘なんだけど…カナエと杏寿郎の身体の中から微かにだけど"幻魔の気配"を感じるの」

 

「何ッ!?」

 

「か、カナエ姉さんと煉獄さんの身体から…!?」

 

「うん、だから…ちょっと二人の身体をよく見させてほしんだけど、いい?」

 

その言葉に一同は耳を疑ったが阿児がそういうのであれば間違いないと思い、カナエと杏寿郎は遠慮せず身体を調べてほしいと承諾したのだ。それから阿児は二人の回りじっくりと観察しながら数十分飛び回った後、真剣な表情で話し始めた。

 

「…やっぱり、間違いないね」

 

「阿児、どうなんだ?」

 

「何か分かったの?」 

 

「二人の身体の中に…『幻魔蟲』が寄生させられてる」

 

阿児の話によれば杏寿郎とカナエの体内に幻魔の寄生虫である幻魔蟲が寄生させられていたのだ。阿児が怪しんでいた二人の身体の中の気配の正体に一同は言葉を失っていた。

 

「……」

 

「……」

 

「幻魔蟲…?何なのッ!?それは…!」

 

「幻魔界に生息している人間に寄生する蟲のことだよ。コイツ等は人間の身体に寄生してその栄養を吸い取って成長するの」

 

阿児の話によれば幻魔蟲は人間に寄生させればその人物を操ることも殺すこともできる凶悪な物でありこれで人間を無理矢理、幻魔に従わせることも可能なのだ。

 

「多分、この幻魔蟲は成長すると宿主の体内を死ぬまで食い荒らす凶暴な奴だね。…放置すればいずれ宿主は死に至る」

 

「そんな…!外科的な方法で除去する方法は無いの!?」

 

「それは難しいと思う、寄生させられてるのは恐らく心臓部…切除できない臓器に幻魔蟲を寄生させてるみたい」

 

「まさか…バルドスタンは杏寿郎とカナエが裏切ることも想定して二人の体内に幻魔蟲を寄生させていたのか!?」

 

「そういうことだね、まったくどこまでも嫌な奴だよ」

 

そうバルドスタンは杏寿郎とカナエが裏切られることも想定しており反逆されても始末できるよう身体に細工を施していたのだ。このままでは体内を食い荒らされ遠からず二人は命を落とすことになるだろう。

 

「奴め…!汚い真似を!」

 

「くッ…!どこまでも卑劣な化け物め…!」

 

「ねぇ、阿児さん。その幻魔蟲は今、どんな状態なの?」

 

「幸い、まだ孵化もしてない繭の状態だから今のところは問題ないけど…その幻魔蟲が成虫になったらもう手遅れだよ」

 

「成虫になるまでどれくらい時間がある?」

 

「多分、ふた月からふた月半ってところかな」

 

「「……」」

 

残された時間は残り二ヶ月ほど…それまで幻魔蟲を取り除けなければ二人の命は無い。絶望的な状況に一同は言葉を失っていた、ようやく再会できた姉と仲間に命の危機が迫っていることにしのぶは動揺を隠せなかった。

 

(…そんな、せっかく姉さんが戻って来てくれたのに…!ようやく会えたのに…!絶対に嫌だ…!)

 

さすがの左馬介もこれにはどうすることもできずに口を閉じたままだ。そんな沈黙を打ち消したのは阿児だった。次の瞬間、彼女から耳を疑う発言が飛び出したのだ。

 

「かなり早い段階で発見できたからまだ対抗策はあるよ。…まあ、あたいの力でなんとかできなくもないけど」

 

「えっ…!?」

 

「何ッ!?」

 

「本当なの!?阿児さん!」

 

なんと阿児によれば彼女の力で幻魔蟲を取り除く方法があるというのだ。藁にも縋る思いでしのぶたちは阿児にその方法とは何か聞くが阿児は申し訳なさそうに答えた。

 

「幻魔蟲がまだ繭の状態ならあたいの力を使ってなんとか除去できるんだ。その後は左馬介の鬼の篭手で蟲の魂と穢れを吸収できれば完全に取り除ける」

 

「本当ッ!?それなら早速…」

 

「え〜と、ここからが問題なんだけど…」

 

「問題?何かあるのか?」

 

「…残念だけど、前の那田蜘蛛山での戦いで霊力を使い果たしちゃったのよ。カナエを元に戻すために使ったあの術でね」

 

「…あ」

 

「そ、その…ごめんなさい…」

 

「いいの、気にしないで。だから幻魔蟲を取り除くためにはあたいの霊力を満たす必要があるの」

 

「阿児さん、その霊力はどうやったら満たされるんだ?」

 

「普通はじっと回復するのを待つんだけど…それじゃ時間がかかり過ぎるし、その頃には二人の幻魔蟲は成虫になっちゃうよ」

 

「…そうか」

 

話によれば霊力が完全満たされるまで待っていては約半年ほどの時間が必要であり、そんな悠長に待っている余裕は左馬介たちにはないのだ。そこで阿児が提案したのはもう一つの方法だ。

 

「木霊(こだま)が一つでもあればすぐに回復できるんだけどなあ」

 

「木霊?」

 

「うん、あたいの時代にある霊力の結晶みたいな物なの」

 

「木霊…そうか、阿児の力を解放するために使ったあれのことか」

 

「そう!それのことだよ!」

 

かつて左馬介は戦国時代で幻魔たちと戦っていた時、阿児の持つ特殊な羽織を強化するためにいくつか拾ったことのある不思議な石のことなのだが問題はここからだった。

 

「問題はその木霊がこの時代にもあるかどうかだね、あたいの世界ではよく見かけたんだけどなあ…」

 

「ねえ、それはどんなところにある物なの?」

 

「深い森…人が近寄らなさそうな山や谷なんかによくあるよ。古い樹木や霊力の強い場所なら可能性が高いかな」

 

「深い森や谷か…」

 

あくまでも左馬介のいた時代でしか見かけていないため、この大正時代でも同じ物があるかは分からない。しかし、二人を助けるためにはその手段に賭けるしかなかった。

 

「そうだ!刀鍛冶の里の周辺はどうかしら?里の周辺は深い森林で広がってるし一つぐらい見つかるんじゃない」

 

「刀鍛冶の里?」

 

「うむ!我々が使っている日輪刀はその里で造られている!鬼殺隊にとって重要な拠点であるため柱である俺たちでも正確な場所は知らされていない!」

 

「ふ〜ん…ということはかなり深い森か渓谷にあるってことだよね?そこなら木霊があるかもしれないね」

 

「事情を話せば行ってもいいんじゃないかしら?それに、私と煉獄さんの日輪刀がどうなってるのかも気になるし…」

 

しのぶから提案されたのは鬼殺隊の日輪刀を造る刀鍛冶の里の周辺に向かうことだった。そこから阿児の霊力を取り戻すために必要な木霊があるかもしれない…そう考えた一同の次なる目的地は刀鍛冶の里へと決まったのだった。

 

「そうと決まれば急ぎましょう、私はお館様から許可を頂いてくるわ。姉さんと煉獄さんの命を助けるためだと言えばきっと納得してくれるはず」

 

「刀鍛冶の里…何年ぶりだろなあ。鉄穴森さん元気にしてるかしら。ふふ、お土産持っていかなくちゃ!」

 

「ちょっと!姉さん!遊びに行くんじゃないのよ!姉さんの命に関わる問題なんだからもっと危機感を持って!」

 

「大丈夫よ、きっとなんとかなるわ!だって、左馬介さんや阿児さんもいるんだし」

 

「どういう理屈なのよ!まだ助かると決まったわけじゃないのに!」

 

「…なんというか、しのぶのお姉さんって独特な性格してるよね」

 

「俺はカナエさんとは面識がなかったから話したことはなかったが、ああ見えて齢十五で花柱となった人だ、腕はかなり立つ!」

 

「ああ、太刀筋はしのぶとよく似ていたが一撃の重さと速さはカナエが優れていた。あれほど剣士でも上弦の鬼に敗れたのか」

 

「さてと、それじゃ出発の日時が決まったら早速、行きましょう!私の新しい日輪刀のことも気になるし、午後からアオイたちと町にお買い物に行く約束してるの!しのぶも一緒に行かない?」

 

「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょう!!ちょっと姉さん!!」

 

「……とてもそうには見えないけどなぁ」

 

こうしてカナエと杏寿郎に寄生された幻魔蟲を取り除くために左馬介たちは刀鍛冶の里へと向かうことになったのだった。




次回から刀鍛冶の里編に突入します!
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