今回はおまけを作ってます!
刀鍛治の里編突入です!
柱合会議の後、阿児によって杏寿郎とカナエの体内から幻魔の寄生虫である幻魔蟲が発見された。阿児の力でこの蟲を取り除くべく失った阿児の霊力を再び満たすために霊力の結晶である木霊を探して左馬介たちは鬼殺隊の刀鍛冶の里を目指すことになった。
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・しのぶの診察室
二人の身体から幻魔蟲が発見されてから数日後、しのぶの進言によって左馬介と阿児、そして杏寿郎とカナエの四人が刀鍛冶の里へ向かうことに決まった。すでに二人の身体の傷もほとんど回復し行動に支障もないことから数日後には蝶屋敷を発つことに決定したのだ。猶予があるとはいえ余談を許さない状況であることから一刻でも早く木霊を入手するために里に向かう準備は迅速に進められていた。
「姉さん、煉獄さん。刀鍛冶への里へ行く日時が決まったわ」
「早いな、本来であれば手続きにはもっと時間を要するはずなのだが…」
「事情を話したらお館様とあまね様も納得してくださったの。もちろん左馬介さんと阿児さんも同行をお願いしますね」
「分かった」
「それで、いつその里に行くの?」
「三日後に隠の隊士が四人を迎えに行く手はずになってるから、そこからは隊士に任せておけば大丈夫」
聞けば刀鍛冶の里には温泉が存在し傷ついた身体を癒すためにも使われており、療養のために里へ行く隊士も少なからずいるのだ。幻魔にも動きがなく鬼の襲撃も落ち着いていることから今回はカナエと杏寿郎の湯治による療養も兼ねた木霊探しが主な任務になるそうだ。
「へぇ~温泉があるんだ」
「ええ、里の温泉には様々な効能があって湯治にはうってつけなのよ」
「姉さんも煉獄さんも温泉で疲れを癒やして来なさいってお館様も言われていたわ、いい機会だし蝶屋敷のことは私に任せて二人は休んできて」
「でも…ホントにいいの?しのぶだって忙しいはずなのに」
「いいの!姉さんは気にしないで。それより、必ず体内の幻魔蟲を取り除いてきて。…また死んだりしたら絶対に許さないから」
カナエに対してしのぶは強い口調で話すがそれは姉のことを心の底から案じているからだ。死んだはずの彼女が再び生きて戻ってきたのは奇跡にも等しい。だからこそ今度は自分よりも先に絶対に死なないでほしいと強く願っていたからこそ出た言葉だった。
「…分かってる、もうしのぶやみんなを置いていったりしないわ。必ず幻魔蟲を取り除いて戻ってくるから待ってて」
「…うん、約束よ」
「よーし!それじゃ木霊を探しに行くわよ!」
「ああ」
「うむ!いざ、刀鍛冶の里へ!」
その日からさらに数日後、四人は刀鍛冶の里への向かった。しのぶの言った通り蝶屋敷へ隠の隊員が四人を迎えに来たのだ。里の場所は鬼からの襲撃を防ぐために複雑な方法で隠されており、隠の隊員が一定の距離まで進んだら交代…を何度も繰り返し道順を分かり難くしてあるのだ。ちなみに移動の際には耳栓と目隠しをされ移動は隊員に背負ってもらう方法であり徹底的だった。
そして、蝶屋敷から出発して夕日が暮れ始めた頃ようやく四人は刀鍛冶の里の入り口へと到着していた。
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・刀鍛冶の里 入り口
「皆さま方、里へ着きました。もう耳栓と目隠しと取ってもらっても大丈夫です」
「ふふ、ありがとうございます」
「刀鍛冶の里か…日輪刀を受け取るために来て以来だな!」
「ここが刀鍛冶の里か。…なるほど、ここなら鬼も見つけるのは困難だろうな」
「驚いたなぁ…これだけ複雑に隠されてたら鬼どころか幻魔にだって見つけられないよね。今ままで見つからなかったのも納得だよ」
四人の前にはしのぶから聞いたとおり森に囲まれた大きな建物が並び立つ温泉街のような町並みが広がっていた。鍛冶師たちは全員、火男のお面を被っており刀鍛冶の里のとおり辺りから鉄を打つ音が鳴り響いている。
「では、私はこれで」
「うむ!ありがとう!」
「まずは里の長である鉄珍さまの元に挨拶に行きましょう。左馬介さん、阿児さんご案内しますね」
「ああ、よろしく頼む」
カナエに案内されながら左馬介は里の長である鉄地河原鉄珍のいる建物へと案内されることになった。その時、杏寿郎も左馬介の後を追おうとしたが何か気配を感じたのかすぐさま背後を振り返る。
しかし、背後には人影も何もなく気配も消えていた。
(…何だ?一瞬だけ何かの気配を感じたが…?)
「ちょっとー!杏寿郎ー!!置いていくわよー!」
「あ、ああ!すまない!すぐに行く!」
阿児の言葉を聞いた杏寿郎は慌てて左馬介たちの後を追って里の中へ向かって行った。だが、杏寿郎が一瞬だけ感じた何かの気配は気のせいではなかった。すると杏寿郎が振り向いた視線の場所に人の形をした歪んだ影が立っていたのだ。なんとその存在は透明化によって背景と同化しており柱の剣士である杏寿郎の目をも欺いていたのだ。
透明化が解けるとその異形の化け物は姿を現した。藍色の肉体に鱗のような皮膚を持ち、手には蛇腹剣という伸縮自在の剣を持っていた。
「……」
この化け物は"ボルチマンド"と呼ばれる中等幻魔であり、身体を透明化させ相手に接近し奇襲によって獲物を狩る戦法を得意とする幻魔だ。するとボルチマンドはそのままゆっくりと地面の下に吸い込まれるように消えていった。
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・刀鍛冶の里 鉄珍の屋敷
カナエによって屋敷に案内された左馬介と阿児はこの里の長である鉄珍と面会していた。
「コンニチハ、ワシはこの里の長である鉄地河原鉄珍。よろぴく」
「お久しぶりですね、鉄珍様」
「鉄珍殿!お久しぶりです!」
「明智左馬介秀満だ、よろしく頼む」
「あんたのことは耀哉さんから聞いとるよ、なんでもカナエちゃんと杏寿郎くんの身体に寄生虫がいるとか。それを治す手がかりがこの里にあるかもって言っとった」
どうやら耀哉からの連絡によって二人の事情はすでに把握しており、二人を救う手助けになるならと快く今回の里へ迎え入れてくれたのだ。もちろん左馬介が人を襲わない鬼であることも知っていた。
「好きなだけ探していってくれていいよ、それに杏寿郎くんもカナエちゃんも身体が治ったばっかりやし温泉に浸かってゆっくり過ごしていきなさいや」
「ありがとうございます、鉄珍様」
「うん、カナエちゃんみたいな美人が寄生虫なんかで死ぬなんてもったいないわ。絶対に諦めたらいかんよ」
「ふふ、鉄珍様ったら」
すると鉄珍が興味深そうに左馬介を見ていた。その視線に気付いた左馬介が声をかける。
「どうした?…やはり俺のことを信用できないか」
「そうやない、…真っ直ぐなええ眼をしとるな、鬼やって言われてもそうは思えんくてな」
「……」
すると鉄珍の背後にいた一人の鍛冶師が興味深そうに左馬介に声をかけた。どうやら左馬介の持っている明智拵に興味津々のようだった。
「あ、あの!明智さん!よかったら刀を見せて頂けませんか!」
「刀をか?」
「はい!一目見たときから是非!」
「…こら、お客人に失礼やろうが」
「う…!?す、すみません…」
先ほどまでは陽気な雰囲気だったが、鉄珍は穏やかながらも凄まじい圧の声で弟子を黙らせた。彼は刀の話になると厳格で弟子に非常に厳しくなるのだ。そんな彼に左馬介は快く明智拵を腰から抜き前に差し出した。
「いいぞ、眺めるだけなら構わない」
「ほ、ホントですかッ!ありがとうございますッ!」
「やれやれ…明智さん、ウチのバカ弟子がすまんねぇ」
すると弟子は明智拵の刀身をゆっくりと抜き、じっくりと眺める。明智拵は戦国時代でも珍しい刀で特に柄全体を片手巻きで巻き上げた独特な形をしているのだ。刀身も名工によって良質な玉鋼で打ち上げれており、長年の幻魔との激戦で幾度となく使用しても刃こぼれ一つないほどだ。まさに文字通り左馬介の相棒に等しい刀だろう。
「す、すごい…!これほどの刀…今ままで見たことがありません…こんなに良質な玉鋼で造られた刀を見たのは初めてです!」
「そりゃあそうだよ、だって戦国時代の刀なんだし。あの時代はすごく良質な玉鋼が手に入ったから名刀が多かったんだよね」
「な、なんとっ!では、これは戦国時代の刀…!こんな素晴らしい物を見れて感激ですッ!」
今では手に入らない戦国時代の刀を見て弟子は涙が出るほど興奮していた。すると左馬介の明智拵を見た鉄珍がふと口を開いた。
「…ええ刀や、それにとーっても大事に手入れされとる。明智さんがその刀を振ればどんな鬼や化け物でも敵無しやろうな」
「…ふ、名工であるあんたにそう言ってもらえるとは光栄だ」
その後、明智拵を弟子から丁重に返され話を終えた左馬介たちは鍛冶師たちの案内でそれぞれ宿泊する施設に案内されることになった。それぞれ一人ずつ別々に部屋へ入室し左馬介と阿児は用意されていた座布団へ腰を降ろした。
「後は木霊を見つけるだけか」
「この辺りは他よりも霊脈が強い場所が多いみたいだから一個ぐらいなら落ちてそうなんだけどなぁ」
「時間はまだある、じっくりと探すとしようか」
「そうだね!カナエと杏寿郎のためにも頑張らなきゃ!」
(…幻魔の動向が気がかりだ、バルドスタンがこのまま大人しくしているとは思えん)
そして辺りが暗くなり刀鍛治の里に明かりが灯り始めた時間帯にある知らせを聞いた杏寿郎とカナエは再び鉄珍の屋敷へと向かったのだ。その理由は新しい日輪刀を二人に渡したいということだった。
「出来上がっとるよ、これが二人の新しい日輪刀や」
そういうと鉄珍の背後にいた二人の弟子が杏寿郎とカナエの前に日輪刀の入った装飾入りの木箱を差し出した。箱の中には二人のために鉄珍が精魂を込めて打ち上げた日輪刀と鞘が収められており、二人は深く正座したままお辞儀する。
この短期間で柱の剣士が使うに相応しい日輪刀を打つ事ができるのは鉄珍ただ一人だろう。
「鉄珍殿、感謝致します!大切に使わせて頂きます!」
「無理を聞いてくださって本当にありがとうございます」
「構わんよ、ワシも二人が生きて戻って来たと聞いて嬉しかったんや、その刀でまた鬼退治を頑張ってな」
その後、二人は差し出された日輪刀をそれぞれ手に取って刀身や握り心地を確かめてみる。"色変わりの刀"の通り杏寿郎が持った日輪刀は炎のように赤く染まり、鍔は以前に使用していた物と同様に炎の意匠をしていた。カナエが持った日輪刀は桃色に変化し鍔は花の意匠をしている。
手に馴染み具合と切れ味…どちらも柱の剣士である二人を唸らせる出来栄えであり、改めて目の前の鉄珍という名工の凄さを再認識したのだ。
鉄珍から日輪刀を受け取った二人はそれぞれの宿泊部屋に戻り、一度左馬介たちと相談した結果、さっそく翌日の早朝から刀鍛治の里の周辺を探索し木霊探しを行うことに決定したのだった。
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・数日後 蝶屋敷
左馬介たちが刀鍛治の里へ向かった日から数日後のこと、数ヶ月ぶりに目を覚ました静音は蝶屋敷にて機能回復訓練を行い鈍った身体を鍛え直していた。今日は伊之助も善逸も任務で蝶屋敷を留守にしており現在、蝶屋敷にいたのは静音と新しい日輪刀の到着を待っていた炭治郎とその妹の禰豆子の三人だ。
「んぎぎぎ……!」
「はい!次は肩ですよ」
「身体が重い…こりゃ復帰まで大変だなぁ」
寺内きよに身体を押さえられながら静音は訓練を行っていたが、その隣で炭治郎が落ち着かなそうにそわそわと日輪刀の到着を待っていた。
「そういえば、炭治郎君の日輪刀…なかなか届かないね」
「そうなんだよ!もう一週間前に鋼鐵塚さんに新しい刀を早くお願いしますって手紙を出したんだけどなあ」
(俺の日輪刀…煉獄さんと戦った時に粉々になっちゃったんだよなぁ…鋼鐵塚さん、怒ってるだろうなぁ〜…)
「善逸と伊之助も任務に行ってるし、早く俺も鬼退治に行きたいんだけど」
以前の那田蜘蛛山で杏寿郎と戦った際に炭治郎の日輪刀は修復が不可能なほどに破損してしまったのだ。最初の刀を折ってしまった時や無限列車での戦いで無くしてしまった時は殺されるのではないかというぐらいの勢いで激怒されており今回はどんな風に怒られるのか内心かなり恐怖していた炭治郎だったがその時、二枚の手紙を持った中原すみが慌てて部屋へと入って来た。
「あ、あの〜…刀鍛治の里からお手紙が届いたんですけど…炭治郎さんと静音さん宛にです」
「手紙?私に?」
「ひ、ひょっとして…鋼鐵塚さんからかなぁ…」
すみから手紙を受け取った二人はさっそく手紙の内容を確認するが、内容を読んだ炭治郎は引きつった表情で顔を蒼くしながら固まっていた。
「…これは…まずいぞ…」
「で、ですよね…」
炭治郎の手紙は鋼鐵塚からだったのだが『お前にやる刀は無い』『ゆるさない』『憎い』という凄まじい怨念が込められた怪文書のような内容だったのだ。この内容から察するにどうやら炭治郎の日輪刀はまだ用意されていないようだ。
「あ、あはは…日輪刀なんてすぐ壊れるのに一本折れただけでそこまで怒られてたら堪らないなぁ」
「鋼鐵塚さんはちょっと気難しい方なんですよ…」
「う、う~ん…やっぱり怒ってるよなぁ…前は折っちゃったけど今度は粉々にしちゃったからなぁ…」
「そういえば、静音さんのお手紙はどなた様からだったんですか?」
きよに言われて静音は手紙を確認してみる。すると静音の顔が嬉しそうな表情になり笑顔がこぼれていた。手紙の差出人は静音と縁深い人物からだったのだ。
「ど、どうしたんですか?とても嬉しそうですけど」
「珠希(たまき)さんからだ!久しぶりだなぁ」
「知り合いなのか?」
「うん!私の日輪刀…というより私の師匠の日輪刀を打った鍛治師なんだ、刀を鍛え直してやるからまた時間があれば顔を出せってね」
差出人は静音の育手であった人物の日輪刀を打った鍛治師からであり、里では数少ない女性の刀鍛治だ。名前は鉄賀珠希(てつがたまき)といい静音の師匠とは親友の間柄で今は亡き友が育てていた静音のことを案じておりの日輪刀を彼女に渡したのも珠希なのだ。
「そういえば…珠希さんに最後に会ったのは師匠の日輪刀を受け取った時だったかな?でも、刀鍛治の里って鬼殺隊の重要な拠点だし一般隊士の私が軽々しく行って大丈夫なのかな」
「大丈夫ですよ?」
「…えっ!?ほ、ホント!?」
「はい、お館様から許可が降りれば行っても大丈夫です。つい数日前にカナエ様と左馬介さんも刀鍛治の里に行きましたし」
「じゃあ、俺も行ってもいいかな?」
「はい!直接里の方とお話されたほうがいいと思います。さっそくお館様にご相談してみますね!」
それから数日後、炭治郎と静音も刀鍛治の里へ行くことが許可され二人も里へ向かうことになったのだ。静音は持っている日輪刀を鍛え直してもらう他にまだ疲れが抜けきれてない身体を湯治によって癒すのが目的であり、炭治郎は新しい日輪刀を受け取るために二人は左馬介たちの後を追って刀鍛治の里へ向かうのだった。
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・那田蜘蛛山 地下洞窟 バルドスタンの研究室
同時刻、那田蜘蛛山の地下にて忙しそうに手を動かし実験台の上に転がる死体に手を加えるバルドスタンの姿があった。そんな時、慌てて研究室に入って来たのは腹心のゴルドーだった。
「バルド様!吉報にございます!」
「…うむ、きたか。そろそろ来ると思っていた」
「は…?」
「言わずとも分かっている。見つかったのか?鬼狩り共の刀鍛治の里が」
吉報を届けようと急いで飛んで来たゴルドーだったが、すでにバルドスタンは聞くまでなく内容を言い当てたのだ。まるで近い内に刀鍛治の里の場所が分かると悟っていたかのように…
「お、驚きました…!まさかこうなることが分かっておられたのですか!?」
「ボルチマンドに奴らの追跡を命じていたのだ、煉獄杏寿郎と胡蝶カナエのな」
「あの二人を…ですか?」
「…クク…吾輩が何の策も無くあの二人を蘇らせたとでも思ったのか?このために奴らを利用したのだ」
そしてバルドスタンはゴルドーにこれまでの行動の理由を話し始めた。杏寿郎とカナエを蘇らせたのはどちらかを敢えて鬼殺隊に帰還させることであり、寝返りは元から予想の範疇だった。少しでも戦わせて鬼殺隊の戦力を消耗させる予定だったがさすがに二人同時に寝返えられるのは想定外だったものの当初の予定通り杏寿郎とカナエを鬼殺隊に帰還させることに成功したのだ。
実はバルドスタンの本当の目論見は鬼殺隊の刀鍛治の里を見つけ出すことだった。
「数ヶ月、三ツ目と闇蜘蛛を日ノ本全土に放ち鬼狩りの刀鍛治の里を探っていたがついに見つけることはできなかった…そこで吾輩は一計を案じたのだ。こうなれば奴らを直接、追跡するしか方法は無いとな」
「その方法が煉獄杏寿郎と胡蝶カナエを蘇生させる…ということですか?」
「うむ、奴らの身体には幻魔蟲が仕込んである。数ヶ月すればあの二人は死ぬが、あの蟲にはもう一つ役割があったのだ」
「役割…でごさいますか?」
「…クク…あの幻魔蟲は我ら幻魔にしか感じぬ特殊な気配を放つのだ。その気配を辿れば追跡は容易よ」
すると同じく報告を聞いたのかゴルドーに続いてゴーガンダンテスも研究室へと高笑いを放ちながら入って来た。
「ハッハッハ!!慎重なお前が随分と危険な賭けに出たものだ。もし、杏寿郎と胡蝶カナエが刀鍛治の里に直接行かなければどうするつもりだったのだ?」
「…貴様も戦士であるなら分かるだろう。己が振るう武器は自分の目で見定めたい…そうではないのか?」
「…おっと、これは一本取られたな。まさしくお前の言う通りだ!ハッハッハ!」
するとバルドスタンがゴルドーとダンテスに指示を出す。様々な手段を用いてようやく鬼殺隊の刀鍛治の里を見つけ出した幻魔軍は行動を起こそうとしていた。
「ゴルドー、此度の作戦の指揮は貴様に全て任せる」
「なんと…!そのような大役をオレに…!有難き幸せ!」
「貴様に下等・中等含めた幻魔軍二百体を預ける。準備が整い次第、刀鍛治の里を攻めよ」
「我らの戦力の半分を使ってまで攻めるのか、あんな小さな里、拙者やゴルドーだけで十分ではないか?」
「…奴らを甘く見るな、敵の武器供給拠点だ。少なくとも柱の剣士が複数人常駐していると見て間違いない。報告では明智左馬介も刀鍛治の里にいるそうだ、激しい戦いとなるだろう。この戦いに我ら幻魔の命運がかかっているのだ!」
バルドスタンは先の那田蜘蛛山での戦いで人間の底知れぬ力を見たことから人間は警戒するべき危険な相手であると認識を改めていたのだ。冷静に戦力を分析した結果、此度の作戦には全戦力の半分を投入しなければ作戦は成功しないと予想していたのだ。
「すでにガートルードと"奴"を先行部隊として里に向かわせている。貴様らもすぐに出陣せよ!」
「フッ…任せておけ、必ず吉報を持って帰るぞ!さて、どんな強い鬼狩りの剣士がいるのか楽しみだ!」
「ハッ!先の戦いでの失態…この作戦で挽回致します!この筋肉に誓って!フンッ!」
「ええい!貴様の筋肉の話はもうよい!早く行ってこい!」
「ハッハッハ!では、行ってくるぞバルドスタン」
「よいか!必ず刀鍛治の里にある"猩々緋鉱石"を根こそぎ持ち帰れ!里の人間共は皆殺しだ!貴様らの活躍…期待しているぞ!」
こうして幻魔軍が刀鍛治の里を目指して行動を開始したのだった。
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・おまけ
※鬼武者によく出る文書的なものを書いてみました!
バルドスタンが書いた日記みたいな内容でこれまでの幻魔の裏での活動が描かれていますので、よかったら読んでみてください!
・幻魔大正記録 壱
我が師、ギルデンスタンに従い『時のねじれ』の研究を行っていたが事故が起こった。装置の誤作動で吾輩と腹心のゴルドー、そして僅かな中等幻魔たちと共に別の時代に飛ばされてしまった。
どうやらこの時代は我らのいた戦国の時代から四百年もの時が過ぎた日ノ本のようだ。口惜しいことに地上は人間共によって支配され我ら幻魔の存在は闇に葬られたようだ。
一刻も早く我が師のいる戦国時代に戻らなければならぬが、今の吾輩には過去に戻る手段がない。この僅かな戦力で日ノ本を支配するのは至難の業だ。まずは情報の収集と拠点となるべき場所が必要だ。やるべきことは山積みだ、早々に取り掛かるとしよう。
これからの作戦行動を記録として残すことにする。
・幻魔大正記録 弐
良き拠点がないか探していたところ那田蜘蛛山という人間があまり寄り付かぬ山があった。ここを我ら幻魔の拠点にすることにしよう。調べてみると少し前までこの山はこの時代を生きる鬼の一族が支配していたようだ。
だが、我らの知る鬼の一族とは似ているようで違うようだ。凄まじい生命力に加えて『血鬼術』と呼ばれる特殊な術を用いる…思ったよりも厄介な存在のようだ。
他にも人間でありながら鬼を狩る『鬼殺隊』なる存在があることも確認できた。人間の分際で鬼の一族と戦おうとするとは無謀かそれとも蛮勇か…実に興味深いものだ。
我が師と研究していた記憶を頼りに時のねじれ装置の製造を急いでいるが状況は最悪の一言に尽きる。素材と材料には事欠かぬが時のねじれを発生させる"動力"の不足が深刻だ。当初は師と同じく電力での供給を考えていたが、この時代には時のねじれ装置を動かせるほどの電力が存在しないことが分かった。まだこの時代ではそれほど電力が普及しておらず不十分なのだ。
水力、火力、電力…これらを用いた動力生成は地形の関係に加え現状の拠点と設備では生成することは不可能だ。つまり今の我らは八方塞がりの状況なのだ。
僅かな電力を頼りになんとか小さな時のねじれを作り出し、今の過去がどうなっているか調べたところ吾輩は言葉を失った。なんと我が師と我らが幻魔王、信長様が明智左馬介によって敗れていたのだ。何故、変わらず人間共が地上を支配していた理由がこれで分かった…我ら幻魔はあの明智左馬介に敗れる運命にあったと。
だが、まだ吾輩がこうして生き残っている。幻魔の命運は吾輩の手にかかっているのだ!必ず時のねじれ装置を完成させて戦国の世へと戻り、我が師と信長様を復活させてみせよう!
・幻魔大正記録 参
造魔共を生み出し、少ない魂と素材を巧く使いつつ死んだ高等幻魔たちを復活させながら装置を製造を行っていたが、予想外の事態が起こった。なんと戦国時代から吾輩を討つために明智左馬介がこの時代にやって来たのだ!まさかこんなところまで追ってくるとは信じられぬ…
先ほど奴の強さを目にしたがあのゴーガンダンテスや我が腹心のゴルドーを相手にまったく遅れを取らぬその強さ…やはり間違いなくあの男に師は敗れたのだ。
だが、吾輩は決して諦めぬ。こうなれば一刻も早く時のねじれ装置を完成させ戦国に戻らなければならぬが、相変わらず動力の問題が解決していない以上できることは限りがある…なんとも口惜しきことか。
だが、興味深い物をダンテスが持ち帰った。鬼狩り共の刀に使われる『猩々緋鉱石』なる未知の鉱石だ。三ツ目の報告によればこの時代の鬼の一族は首を落とす他に太陽の光でなければ滅すことはできないと聞く。となればこの鉱石に何か糸口が隠されているかもしれぬ、さっそく調べてみることにしよう。
・幻魔大正記録 肆
例の鉱石を調べていたら実に興味深いことが分かった。どうやらあの鉱石には凄まじい太陽の力が込められているようだ。その太陽の力を刀に混ぜ込み鬼の一族の首を斬ることを可能にしているのであろう。
その時、吾輩はこの困難を打開する一手を閃いたのだ。太陽…すなわち陽光を動力に変えられないかと。
本来であれば陽光を用いた動力生成は大掛かりな設備と手間がかかるのだが、あの猩々緋鉱石を用いればそれも可能だ。あの鉱石は陽光を吸収しやすい上に一つの鉱石に強い太陽の力が込められている…我ら幻魔の科学力を用いれば動力に変換することなど造作もないことだ。
そうと決まればさっそく行動に移すことにしよう。吾輩が予想するにあの鉱石は鬼狩り共によって取り尽くされているはずだ、ならば鬼狩り共から奪えばよいだけのこと。まずは奴らの武器供給拠点を探すことが先決だ。
『時空脈』が一致する日が刻一刻と迫っている…この時を逃せば今度はいつ機会が来るか分からぬ。残された時間は残り僅かだ、必ず猩々緋鉱石を手に入れてみせよう!
なんというか…今回の話は鬼よりも幻魔の活躍のほうが目立ちそうですね、そもそも重要拠点である刀鍛治の里を攻めるのに上弦の鬼二体だけは少なすぎますよ無惨さん…
しかも特性上協力して戦えないのはキツすぎる…