鬼滅の刃 鬼斬り武者   作:戦国のえいりあん

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久しぶりの投稿です!
休みができたので頑張って書きました!



第二十四話 忍び寄る魔手

 

・刀鍛冶の里 入り口

 

「外しますよ」

 

「わーーー!すごい建物ですね!!しかもこの匂い、近くに温泉があるんですか?」

 

「ありますよ」

 

「刀鍛冶の里…久しぶりだなぁ。珠希さんから日輪刀を貰って時に来て以来だね」

 

隠の隊士によって炭治郎と静音もまた刀鍛冶の里へと足を踏み入れていた。炭治郎は鋼鐵塚蛍から新しい日輪刀を受け取るため、静音は傷の療養に加えて知り合いの鍛冶師に自身の日輪刀を研ぎ直してもらうというそれぞれの目的のためにこの地へやって来た。

 

隠の隊士と別れた後、炭治郎は大声で感謝を伝えると静音と一緒に鉄珍のいる屋敷へと向かったのだった。

 

「そういえば煉獄さんもこの里に来てたんだったよな…?後で挨拶に行かないと!」

 

「うん、確か左馬介殿とカナエ様も来てるはずだよ。私もいろいろと話したいことがあるの」

 

ーーーーーー

 

・刀鍛冶の里 鉄珍の屋敷

 

 

「コンニチハ、ワシはこの里の長である鉄地河原鉄珍。よろぴく」

 

「竈門炭治郎ですッ!よろしくお願いします!」

 

「まあ、ええ子やな。おいで、かりんとうをあげよう」

 

「ありがとうございます!」

 

「鉄珍様、お久しぶりでございます」

 

「おお、静音ちゃんか、久しぶりやねぇ。確か…珠希の日輪刀を受け取りに来た時以来やな」

 

その後、鉄珍から聞いた話によると炭治郎の日輪刀を担当している鍛冶師・鋼鐵塚蛍は現在、行方が分からないそうで里の者が総出で捜索しているらしく炭治郎の日輪刀はまだ用意されていないようだった。

 

「あの子は小さい時からあんなふうや、すーぐ癇癪起こしてどっか行きよる…すまんの」

 

「いえ、そんな!俺が刀を折ったり壊したりするから…!」

 

「いや、違う。折れるような鈍作ったあの子が悪いのや」

 

「……」

 

(…すごい圧、やっぱり鉄珍様って怒ったら怖いなぁ)

 

鋼鐵塚が見つからない場合は別の者が刀を打つということで話はまとまった。その後、二人は鉄珍の勧めで戦いの疲労を温泉で癒すようにと伝えられたのだ。二人はお言葉に甘えて里の坂の上にある温泉に向かったのだった。

 

ーーーーーーーーー

 

・刀鍛冶の里 湯治場 女湯

 

 

(ふう…この里の温泉も久しぶりだなぁ、ここの温泉は傷や疲労によく効くから有り難いよ)

 

手ぬぐいを片手に静音は女湯へと足を踏み入れる。静音の胸部には上弦の陸・妓夫太郎の斬撃によって刻まれた一文字の刀傷の跡が残っている。さっそく温泉に浸かろうとするとするが、そこに二人の先客がいた。

 

「あら?」

 

「あ…どうも、えっと…カナエ様ですよね?」

 

「ふふ、こんにちは。しのぶが言ってた静音さんかしら?」

 

「わぁ!私やカナエさんの他にも女の子の隊士がまだいたんだ!はじめまして…だよね?会えてとっても嬉しいわ!」

 

「は、はじめまして…甘露寺様」

 

先に温泉に浸かっていたのはしのぶの姉、カナエと恋柱・甘露寺蜜璃だった。軽く身体をお湯で流すと静音も二人の間に入るように温泉に浸かる。

 

「この温泉はお肌や傷にとっても効くの!静音ちゃんもゆっくり浸かって疲れを癒して行ってね!あとあと!ここの里のご飯はすっごく美味しいんだよ!特に魚料理が絶品で…」

 

「あ、ありがとうございます、まだ身体が鈍ってるので有り難いです」

 

「ふふ、緊張しないで。せっかく温泉に来たんだからしっかりと休んで楽しまなくちゃ!」

 

「えっと…確かカナエ様は新しい日輪刀を取りにこの里に来たのですよね」

 

「ええ、鉄珍様が私と煉獄さんの日輪刀を急拵えで打ってくれたの。依頼して数日間の間であれだけの日輪刀を造れるなんてあの方は本当にすごい人だわ」

 

「あはは、いつもはちょっとお茶目なお爺さんですけどね」

 

しばらく三人で談笑しながら温泉に浸かり日頃の疲労を癒していると今度はお互いの任務での出来事や思い出話の話題になり、話題が盛り上がる。

 

「ねぇねぇ!静音ちゃんは上弦の陸と戦ったんだよね?すっごく強かったの?」

 

「…はい、正直に言ってよく生きて帰ってこれたと自分で思います。宇髄様や左馬介殿が一緒に戦ってくれたからなんとか勝てましたけど、あの二人がいてくれなければ私は間違いなく死んでいました」

 

「しかも、鬼は二体いたのよね?宇髄さんから聞いた話では同時に頸を斬らないと倒せない上にどちらも柱の剣士を何人も食らっている難敵だと…その戦場から生還したんだから静音は本当にすごいわ」

 

「そうそう!宇髄さんも静音ちゃんのことすっごく褒めてたよ!『上弦の陸の片方の頸を一人で斬ったのはアイツだ!まあ、それより強い本体の鬼を倒したド派手な俺様には及ばねぇがアイツは最近じゃ珍しい将来有望な剣士だ!』って柱のみんなに言ってたの!」

 

「宇髄様がそんなことを…」

 

「ええ、すごく嬉しそうに静音のことを話してたわ。この間、甲の階級に昇進したでしょう?それだけお館様や柱のみんなもあなたに期待してるの」

 

実は静音が刀鍛冶の里に旅立つ数日前に階級昇進の連絡が本部から届いていたのだ。静音の階級は戊だったが、鎹鴉を通じて昇進の一報があり一般隊士としては最高位にあたる"甲"に昇格していたのだ。

負傷し戦闘不能になったものの上弦の陸の片方の頸を一人で切断し勝利に貢献した成果が天元と小芭内によって報告され、さらに共に戦った天元の強い推薦が認められ今回の昇格に至ったのだ。

 

「もう少しで静音ちゃんも柱の剣士の仲間入りだよ!私、すっごく応援してるから頑張ってね!」

 

「ふふ、私としのぶも応援してるわ。あなたならきっと柱の剣士になれる」

 

「あ、ありがとうございます!まだ未熟ではありますが、全力で精進致します!」

 

「さあ!難しいお話は終わりにして…今日はゆっくり休みましょう!美味しいご飯が私たちを待ってるわ!早く行こ!」

 

「あらあら、あんまり食べ過ぎたら太っちゃうわよ?この間もアオイが伊之助君とおはぎを食べすぎて体重が増えたって落ち込んでたし…」

 

(ちょ、ちょっと!?カナエ様、それは黙っててあげましょうよ…!)

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

・刀鍛冶の里 湯治場 男湯

 

 

場所は移り、女湯とは少し離れた場所にある男湯に疲れを癒すべく炭治郎がやって来る。わくわくしながら湯治場を歩いているいたが、どうやらこちらにも先客がおりその姿を見た炭治郎は嬉しそうにお辞儀する。

 

「煉獄さん!どうも!傷はもう大丈夫ですか?」

 

「おお!竈門少年か!よく来たな!ああ、傷はもうほとんど治っている!」

 

「明智さんもいらしたんですね」

 

「ああ、この里の温泉は傷と疲労によく効くと聞いた。お前も休んでいくといい」

 

「はい!失礼します!」

 

先に温泉に浸かっていたのは杏寿郎と左馬介だった。温泉の広さに驚きながら水しぶきを飛ばさないよう静かに入浴する。ちなみに一緒に来た禰豆子は杏寿郎と左馬介がいるので炭治郎と二人きりになるまで入浴はお預けであり少し不満そうな表情で木箱の中で待機していた。

 

「竈門少年、俺が上弦の参との戦いで戦死した後、煉獄家を訪れ二人を励ましてくれたそうだな。父上と千寿郎も君に感謝していたぞ、俺からも礼を言わせてほしい」

 

「そ、そんな!むしろご迷惑をかけてしまって申し訳ありませんでした!それに…お礼を言いたいのは俺のほうです…!」

 

「ん?俺は別に君に何かをした覚えはないが…」

 

「…いえ!無限列車での戦いの後、煉獄さんが俺達にかけてくれた言葉があったから…今まで戦って来れたんです!まだまだ俺は煉獄さんには及びませんけど…もっと強くなります!」

 

「うむ!いい心がけだ!竈門少年!だが、柱への道はまだ遠いぞ!今度は俺が君を鍛えてあげよう!」

 

「はいッ!!稽古をつけてくださいッ!」

 

これまで二人でゆっくりと杏寿郎と話す機会がなかったことから話したいことが多くあったのか、今までの出来事をなど話題に三人でのんびりと談笑しながら温泉を楽しんでいた。すると突如、杏寿郎の表情が真剣な表情になり隣にいた左馬介にあることを聞いた。

 

「明智殿…少し教えてほしいのですが」

 

「どうしたんだ?」

 

「ゴーガンダンテス…あの剣士について何かご存知ですか」

 

杏寿郎が左馬介に尋ねたのは那田蜘蛛山で剣を交えた幻魔の剣士・ゴーガンダンテスについてだった。あの時、杏寿郎は持てる力のすべてを出して彼に挑んだがその凄まじい剣技と防御術の前にまったく歯が立たず情けをかけられ生かされたのだ。今度こそあの剣士を討ち倒さんと再戦に燃える杏寿郎はあの幻魔を倒すヒントがこの左馬介から聞けるのではと睨んだのだ。

 

「奴についてか…」

 

「はい、あのゴーガンダンテスという剣士は想像以上の強敵でした。…ひょっとすると俺が戦った上弦の参の鬼以上の強さかもしれない…だが、俺は必ずあの剣士を超えてみせる!」

 

「そうだな、ゴーガンダンテス…奴の剣技は幻魔王である織田信長にも匹敵する実力を持ち、"絶対防御"と称されるほどの堅牢な防御術を自ら編み出し、攻守共に隙のない幻魔界最強の剣士…これがあの幻魔だ」

 

「あの化け物共の王に匹敵する強さ…なるほど」

 

「奴を倒したある友の話によると、あの剣士を倒すためにはある道具が必要だと言っていた」

 

「なんと…!あのゴーガンダンテスを倒した者がいるのか!?いったいどんな人物なのですか!」

 

「…柳生十兵衛宗厳、俺の友であり同じ鬼の力を持つ剣士だ。今は柳生石舟斎と名乗っているがな」

 

左馬介が語ったのは戦国時代にいる戦友であり盟友でもある柳生十兵衛だった。かつて十兵衛は幻魔王・織田信長にたった一人で決戦を挑み、自身の血に宿る鬼の力で信長を打ち破りその野望を一度挫いた左馬助と同じ鬼武者だ。その戦いの中、十兵衛はゴーガンダンテスとも幾度となく剣を交え激闘の末に辛くも勝利したのだ。

 

「ゴーガンダンテスを倒すには"破魔の笛"という道具が必要で、それを使えば奴の障壁を無効化できると十兵衛は言っていた。だが…その笛が何処にあるのかは検討がつかない」

 

「破魔の笛…それがあればあの剣士の守りを打ち破れるのか」

 

「煉獄さんでも敵わない剣士…いずれはその幻魔とも戦わなければいけないんですね」

 

「何か手がかりがあるはずだ、その破魔の笛についても探しみよう」

 

「はい。ところで明智殿、俺と手合わせして頂けませんか?いつでも構いません、あなたと剣を交えてみれば何か掴めるかもしれない」

 

「…分かった、だがまずは木霊を見つけるほうが先だ。お前の体内にある幻魔蟲を取り除いてから考えよう」

 

「そうですね、分かりました!その時が来たら是非手合わせをお願いします!」

 

「え?ゲンマチュウ?何のことですか?」

 

「…気にしなくていい、こっちの話だ」

 

「ああ!竈門少年!気にする必要はないぞ!」

 

「……??」

 

ーーーーーーー

 

・刀鍛冶の里 珠希の鍛冶場

 

 

温泉から上がった後、カナエたちと別れた静音は自身の日輪刀を片手にある場所にやって来ていた。訪れた場所は刀鍛冶の仕事場で辺りからは鉄を打つ音とじっと立っていても汗をかいてしまうほどの熱気で包まれている。すると一つの鍛冶場の奥から一人の女性が姿を現した。

 

「珠希さん!お久しぶりです!」

 

「おう!静音!よく来たねぇ、待ってたよ!」

 

静音の前に現れたのは鍛冶師の鉄賀珠希という刀鍛冶の里では珍しい女の鍛冶師だ。赤みがかった黒髪の短髪の上に右側面に黒い火男のお面を被り、丸に金槌の模様がいくつも入った紅色の職人服を着ていた。性格は刀鍛冶の里で育った影響か男勝りで豪快であり、男にも負けない気合と強い信念を持った芯の強い女性だ。

静音の師匠とは親友の間柄であり、彼女のために精魂込めて打った日輪刀を餞別に渡した過去があるのだ。

 

「久しぶりだな、一年ぶりぐらいか?最後にあんたの顔を見たのは」

 

「はい、それぐらいですね。お元気でしたか?」

 

「あったりまえだぜ!気合いと元気だけは里でも一番だからな!それよりあんたも傷はいいのか?上弦の陸と戦って死にかけたって聞いてたけどよ…」

 

「あはは…危うく死ぬところでした。でも、こうしてなんとか生きてますよ!」

 

「まあ、無事で何よりだ。よし!それじゃ刀を鍛え直してやるからちょっと待ってな」

 

「はい!よろしくお願いします!珠希さん!」

 

静音から日輪刀を受け取る珠希はさっそく刀を鍛え直そうと鞘から刀身を抜くが、その刀の刀身を見た珠希は言葉を失っていた。

 

「…オイオイ、なんだいこりゃあ…」

 

「ど、どうかしましたか?」

 

「あたしが打った日輪刀…いつからこんな光を放つようになったんだ?まるで妖刀みたいになってるじゃねぇか…」

 

珠希は握っただけで、その日輪刀がもはや普通の刀ではなくなっていることに気づいたのだ。それを聞いた静音は少し気まずい気分になり申し訳なさそうな表情をしながら珠希に理由を説明した。この日輪刀には今、無数の幻魔の魂が込められており刀の硬度や斬れ味もより凄まじい物になっているのだと。

 

「この刀…実はかなりガタがきてたから新しい刀を準備してたんだが、どうやら新しい刀は要らないみてぇだな」

 

「えっと…その…すみません。珠希さんの日輪刀に勝手な事をして…」

 

「まあ、あたしの日輪刀を大切に使ってくれてるみたいだし良しとするさ。そうだな…じゃあ、ちょっと研ぎ直してやるよ!ピカピカにしてやるからちょっと待ってな!」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

「…担当が鋼鐵塚のオッサンじゃなくてよかったな。多分、アイツの刀に同じことしたら間違いなく殺されるぞ」

 

「あ、あはは…」

 

(私の刀の担当…珠希さんでホントによかった…!)

 

数時間後、静音の日輪刀は珠希の手によって研ぎ直されより鋭い斬れ味になったのだ。鞘から日輪刀を抜き刀身を眺めてみると美しく研ぎ澄まされた刀身には不気味な幻魔文字に異様な雰囲気を思わせる青い光が灯っている。

 

「珠希さん…ありがとうございます!私、絶対に師匠の仇を討って鬼を残らず討ちますから!」

 

「ああ、頑張れよ!アイツの…雪香(せつか)の分もな」

 

「…はい!絶対に師匠の無念を晴らします!珠希さん、また来ますね!」

 

雪香とは静音の師匠の名であり、決して忘れることのない大切な名前だ。お互いに拳を軽くぶつけ合った後、静音は珠希と別れ自分の宿泊する施設へと向かったのだった。

 

ーーーーーーーーーー

 

・翌朝 刀鍛冶の里 左馬介の宿泊部屋

 

静音と炭治郎が里に到着したその翌朝。左馬介と阿児のいる部屋に杏寿郎とカナエが集まっていた。三人が里を訪れて一週間ほど経つが、未だに木霊は見つけられていないのだ。手分けして里の周辺を探索しているがまったく成果がなく木霊探しは難航していた。

 

「うーん…見つからないなぁ」

 

「里の周辺の森林には木霊はなかったな。もっと奥の森林を調べてみるか」

 

「この辺りは他よりも霊脈が強い場所が多いから可能性は高いんだけど…」

 

「大丈夫、きっと見つかるわ阿児ちゃん。みんなで探しましょう?」

 

「だ~か~ら~!阿児ちゃんって言わないでよ!あたいはアンタよりず〜っと年上なんだからさ!」

 

「いいじゃない、だって阿児ちゃんは小さくてとっても可愛いもの!呼び捨てにするなんて勿体ないわ!」

 

「あ~…今ならしのぶの気持ちがよぉ〜く分かるよ…」

 

「時間はまだある!明智殿の言うとおり今日はもっと奥の森林を調べてみよう!」

 

今日は捜索範囲を広げて、この里からより離れた奥の森林を探すことになり四人は早朝から刀鍛冶の里から出ていったのだ。ちなみに何の対策もなく刀鍛冶の里の周辺を出歩くのは大変危険であり最悪の場合遭難してしまう恐れがあるのだが、阿児がいるおかげで現在地は正確に把握できるので安心して木霊探しに集中することができるというわけだ。

 

四人が里を出発した後、同じく宿泊施設にいた静音は左馬介の部屋を訪れていた。吉原遊郭での戦いから左馬介とは会話ができておらず色々と話したいことがあったのだが、すでに左馬介は杏寿郎たちと木霊探しに里を出ていっており入れ違いになっていた。

 

「あれ?左馬介殿と阿児…いないのかな」

 

(そういえば、何か大事な用事があるって言ってたけど…なんだろう?)

 

杏寿郎とカナエのことで何か重要な案件のために左馬介はこの里に来ていると簡単に聞いていたがあまり詳しくは聞いていないため分からなかったのだ。

 

「う~ん…休めとは言われたけど、じっとしてるのはなんか落ち着かないんだよなぁ」

 

相変わらずまた静音の悪い癖で療養のためにこの里に来たはずが、できるならこの時間を使って鈍った身体と感覚を取り戻そうとしていたのだ。そこで再び左馬介の破魔鏡を借り、鬼の修練場で鍛錬をしようと考えていたわけだ。

 

「……今、できる修行をしよう。休みながらでも何かできるはず!」

 

そうと決めた静音は何かできる修行はないか考えながら自室に戻っていると廊下の前から鬼殺隊の隊服を着た黒髪で毛先が浅葱色の小柄な少年が歩いて来た。

 

「あ…!」

 

「君は…えーと、誰だっけ?」

 

(霞柱…!時透無一郎様だ!)

 

静音の前に現れたのは鬼殺隊の柱の剣士で霞柱の称号を持つ時透無一郎だった。静音や炭治郎より年下の少年でありながら剣を握って僅か二年という凄まじい速さで柱の称号を得た天才剣士でその才能は天元も認めるほどだ。

 

「時透様、お疲れ様です」

 

「あ…!思い出した、黒髪に毛先が緑色の女の隊士…君、伊角静音…だよね」

 

「そ、そうですけど…よく私のような平隊士のことをご存知でしたね」

 

「前に宇髄さんが君のこと褒めてたんだ。上弦の鬼と一緒に戦って生き残った将来有望な若手の剣士だってね」

 

(若手って…私より年下の子にそんな風に言われるなんて…)

 

蜜璃やカナエも話していたように無一郎もまた天元から静音の活躍を聞いており、その名を覚えていたのだ。最近、鬼殺隊の若手の質が下がっていると嘆いていた天元だが静音という柱に届きそうな若手の剣士が育ってきたことがとても嬉しいようだ。

 

「確かに…君はその辺りの平隊士とはちょっと違うね。まあ、頑張りなよ」

 

「ありがとうございます!まだ、時透様や柱の皆様には及びませんがいつか必ず柱の剣士になってみせます!」

 

「…それじゃ、僕は急いでるから。どいてくれない?」

 

「あ…お邪魔してすみません、どうぞ」

 

そう言うと無一郎はそっけない態度で静音の横を通り過ぎ去って行った。そんな無一郎を静音は礼儀正しく一礼して見送った後、彼の若さと才能に驚いていた。

 

「私より年下なのに柱の剣士かぁ…すごいなぁ。天才って時透様のような人のことを言うんだろうな」

 

(…私には時透様のような才能はない。凡人の私にできるのは死ぬほど鍛えるだけ…!)

 

そう心に強く誓い静音はできる修行を考えるべくをするべく足早に自室へと戻っていった。

 

ーーーーーーー

 

・数日後

 

 

左馬介と炭治郎たちが里に来て数日後、あれから捜索範囲をさらに広げて木霊を探し続けたところ進展があったのだ。里からかなり距離があるものの霊脈が特に強い地点をカナエが発見し本日はその場所を中心に捜索することになっていた。阿児の話によれば木霊が見つかる可能性が他よりも高いと睨んでおり一同は今日こそ木霊を見つけようと意気込んていた。

 

「今日は昨日、カナエが見つけたあの大樹が立ち並ぶ場所をよく調べてみようか」

 

「うむ!阿児さんの話によればその場所からは強い霊脈が感じるそうだ、木霊があるかもしれないと話していたぞ!」

 

「あれ?その阿児ちゃんは何処に行ったのかしら?」

 

「阿児なら静音の部屋だ。今、あいつの修行を手伝っている」

 

「修行?」

 

場所は移り、静音の宿泊部屋では布団の上に胡座をかいて座る静音とその頭の上に阿児が乗っていた。片手には破魔鏡が握られており今、精神世界の鬼の修練場で幻魔を相手にした修行を行っていたのだ。現実では数時間しか経っていないが精神世界での中では半日ほどの時が流れており、鬼の修練場での修行すれば僅かな時間でも長時間鍛えることが可能というわけだ。

 

「……」

 

「は〜い、今日はここまでだよ。そろそろあたい行かなくちゃ」

 

「…ッ!はぁ…!はぁ…!ありがとう阿児…」

 

「静音ってホントに強くなったわよね、もう下等幻魔程度じゃ相手にならないぐらいだよ」

 

「そ、そうかな…えへへ」

 

阿児も驚くほど静音の実力は上達しており下等・中等幻魔も難なく撃退できるほどの腕前になっていた。相変わらず疲弊してしまうが最初の頃に比べれば精神世界での修行も長時間耐えられるようになっていたのだ。

 

「そろそろ高等幻魔と戦ってみてもいいかもね」

 

「うん!次はそれで戦ってみたいよ」

 

「…言っとくけど、高等幻魔は下等や中等幻魔とは比べ物にならないよ?ホントに強いからね」

 

「う、うん、頑張る。また時間ができたらお願い」

 

「今日はちょっと遅くなるかも…里からけっこう離れた場所になるからね」

 

「ええ、何をしてるかは知らないけど…大事な事なんだよね?頑張ってね」

 

そうして阿児と別れたると大の字に布団に倒れ込む。鬼の修練場での修行は精神と身体に大きな負担をかけるため短時間でもかなり疲労が蓄積するのだ。

 

「ふぅ…やっぱりあの修行は身体が疲れるなぁ」

 

(でも、動きは間違いなくよくなってるし、剣技の切れも増してる。後、もう一つ何か掴めたら…!)

 

自身の上達を再確認しながら今の自分に足りない部分は何かをじっと思案していた。そんな時、静音の頭にあることが浮かんでいた。

 

(……あれ?そういえば炭治郎君は何してるんだろ?)

 

里に一緒に来て数日が経つが、あれから炭治郎の姿を見ていないことに気づいた静音は気になったのか炭治郎のことを探しに行ったのだ。里の者に聞くと同じ日に温泉に入ったその翌朝から姿が見えないらしく宿泊部屋にも戻ってないそうなのだ。

 

最後に見た目撃情報を元に里の裏山に向かうとその奥の森林で目を疑う光景を静音は目撃していた。

 

(えっ!?炭治郎君…何やってるの!?)

 

「炭治郎さん!遅い!全然ダメ!」

 

「ゼーッ…!ゼーッ…!」

 

なんと炭治郎が六本腕の絡繰人形と激しく打ち合っていた。その人形は"縁壱零式"というもので腕が六本腕なのは六本でなければその元になった剣士の動きを再現できないからなのだ。人形は凄まじい動きと六本腕による嵐の如き剣技で炭治郎に襲いかかる。しかし、どういうわけか炭治郎はギリギリでその攻撃を避けておりその中で隙を見つけて反撃の機会を狙っていたのだ。

 

(…来る!見えた!)

 

そんな中、炭治郎は人形の見せた僅かな隙を見事に突き攻撃を繰り出したが、その一撃は人形の右脚を掠めただけだったが見事に一撃を人形に当ててみせたのだ。

 

「やっと一撃入りましたね炭治郎さん!ショボすぎて人形ビクともしてないですけど!食べ物あげましょう!」

 

「お、おにぎりと梅干しッ!!お茶は…高級玉露でッ!!」

 

聞けは炭治郎はあれから一緒にいた小鉄という少年と一緒にこの縁壱零式人形を使って修行していたそうで、なんとその日から飲まず食わずの絶食状態で修行を継続していたことを聞いた静音は顔を青くしており最後に心の中でつっこんでいた一言が…

 

(ほぼ絶食状態で一週間修行してたって…なんで生きてるの?)

 

ーーーーーーーーーー

 

・刀鍛冶の里 入り口付近

 

 

その日の夜、一人の鍛冶師が里の入り口付近にある倉庫に鍛冶道具を取りにやって来ていた。辺りはすっかり暗くなり森林の奥は漆黒の闇に覆われている。

 

「危ねえ…!忘れるところだったよ。あれを準備しとかないと親方がうるさいんだよなぁ…」

 

鍛冶師は倉庫から道具を取り出しそれを手に宿泊施設に戻ろうとするが、ふと周辺の様子に違和感を覚えたのか足が止まった。

 

(……変だな、虫の音が聞こえない)

 

いつものこの時間であれば蟋蟀や蛙などの虫の音が聞こえてくるのだが今夜はまったくその音が聞こえてこない。

 

…そう何も聞こえないのだ。

 

(…気味が悪いな、何だ?)

 

普段とは何か違う雰囲気に恐怖を覚えた鍛冶師は足早に里の方へ戻ろうとするが、今度は背後から聞き慣れない大きな足音のような音が聞こえてくる。森林の奥から何か大きな何かが近づいてくる。その"何か"は漆黒の闇の中から突如現れた。

 

「……あ…ああ…」

 

その何かを見た鍛冶師は腰を抜かし道具を落としその場にへたり込む。目の前にいたのは下半身は四本脚で上半身は筋骨隆々の異形の化け物で手には巨大な斧を持っていた。

 

「お?丁度いい!オイ!そこの人間!」

 

「……ば、化け物…だ…」

 

「叩っ殺されたくなかったら猩々緋鉱石って石をありったけ持って来い!」

 

化け物はその斧を鍛冶師に眼前に突き付ける。もはや頭は恐怖に耐えられずその頭に従わないという選択肢は存在せずあるのは死にたくないという思考だけだった。

この化け物の名はギンガムファッツという高等幻魔で鬼武者・柳生十兵衛と幾度となく戦った肉弾戦を得意する幻魔だ。

 

「わ、分かり…ました…こ、殺さないでくれ…!」

 

「よしよし、いいぞぉ!てめぇら!派手に暴れてやれぇ!」

 

(…た…大変だ…!このままじゃ里が…!!)

 

ギンガムファッツの号令と共に森林の奥から大量の下等・中等と幻魔が大勢現れ、里に向かって侵攻を始めたのだ。そう杏寿郎を追跡していたボルチマンドによって里の位置が特定され大量の幻魔たちが刀鍛冶の里を襲撃したのだ。

 

 




敵は大量の幻魔に加えて鬼までいますが、鬼殺隊側も左馬介に加えて煉獄さんとカナエもいます!
頑張って面白く書いていきますので気長にお待ちください!
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