鬼滅の刃 鬼斬り武者   作:戦国のえいりあん

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久しぶりの長期休暇だったので
止まってた鬼滅×鬼武者の続きを書きました!
今回はまさかのあの人が登場するので楽しんでもらえると嬉しいです!


第二十七 最凶の刺客

 

・刀鍛冶の里 森林地帯

  

 上弦の肆・半天狗との激戦が続く中、本体の鬼を追跡していた竈門兄妹、不死川玄弥、阿児は里から離れた森林地帯を走っていた。

 

「北東に気配を感じる…近いよ三人とも!」

 

「恐らく本体は低い位置に血を隠してる!」

 

 阿児の鬼の気配を察知する能力と炭治郎の嗅覚で本体の位置は正確に把握できており、目標が潜んでいると思われる地点に向かって三人が走り出す。

 

「くそっ!!どこだ!!見えねぇぞ!」

 

「ムー…」

 

 周辺を警戒するがそれらしき姿は見当たらない。すると、背後から炭治郎たちを追跡してきた分身体の哀絶が追いつてきたのだ。

 

「⋯やっと追いついた、あまり儂を苛つかせるな」

 

「くそっ⋯!鬼が追いつて来やがったか!」

 

「玄弥、禰豆子!鬼は俺が食い止める!本体を倒してくれ!」

 

「ムン!」

 

「分かってる!今、探してんだよ!!」

 

 十文字槍を手に襲いかかる哀絶の攻撃を炭治郎が受け止める。しかし、可楽や空喜といった厄介な能力を持たず槍による物理攻撃しか能力を持たない哀絶では炭治郎を圧倒するような強さはなかった。

 

(この分身体は厄介な能力を持ってない⋯!煉獄さんと明智さんが他の分身体を食い止めてくれてるおかげだ!)

 

「⋯おのれ!この小僧が!」

 

「お前一人なら問題ない、本体は玄弥と禰豆子が倒してくれる!」

 

 炭治郎の剣技は半天狗の分身体たちとの戦闘でさらに練度が増し哀絶を圧倒していた。その頃、玄弥と禰豆子は阿児の言葉を頼りに半天狗の本体を捜索していた。

 

「もっと右だよ!そこを真っすぐ!」

 

「ムン!」

 

「ホントにいんのかよっ!影も見えねぇぞ!」

 

「多分、すごく小さい鬼だよ!足元をよく見て!」

 

「何!?」

 

 言われたように足元に注意して指示された地点を見渡すと草木の中に小動物ほどの大きさの人影が怯えながら立っていた。その姿は炭治郎と無一郎が遭遇した時と同じだったが大きさは非常に縮んでいたのだ。

 

「ヒィィィ!」

 

「⋯⋯ちっさ!!こいつが本体なのか!?」 

 

(くそったれが!見つけられるかこんなもん!野ネズミ程度の大きさじゃねぇか!)

 

「いたー!そいつだよ!二人ともお願い!」

 

「ヴヴゥー!」

 

 本体を捕捉した玄弥と禰豆子は頸を斬ろうと襲いかかる。玄弥は散弾銃を撃って牽制しつつ一気に距離を詰めると片手の日輪刀で半天狗の頸を狙って斬撃を放った。

 

パキィィン!!

 

 しかし、玄弥の日輪刀は半天狗の頸を切断できず逆に真っ二つに割れ破損してしまったのだ。

 

(き、斬れねぇ!!馬鹿な!指一本の太さしかねぇ頸だぞ⋯!)

 

「ヴヴゥー!!」

 

 続けて逃げようとする半天狗を禰豆子が捕まえようとするが、素早く動き回る本体をなかなか捕らえられずにいた。すると、何かの気配を察知した阿児の顔色が真っ青になり大声で叫んだ。

 

「た、大変だよ!残りの分身体が全員こっちに向かってるよ!すぐそこまで来てる!」

 

「畜生ッ⋯俺じゃ頸は斬れねぇ!呼吸も使えない俺じゃあ駄目なのか…!」

 

「玄弥ーー!!諦めるな!!もう一度狙え!次は斬れる!」

 

「⋯⋯!!」

 

 そこには哀絶を戦闘不能にして合流した炭治郎がいた。残りの分身体が到着するまで時間は残り僅かしかない、炭治郎も本体討伐に加勢し頸を斬ろうと試みる。

 

「⋯くそっ!今回はお前に譲ってやる!俺じゃ頸は斬れねぇ!援護してやるからお前がやれ!」

 

「⋯分かった!」

 

「ムー!!」

 

「禰豆子!そっちだ、捕まえてくれ!」

  

 逃げる半天狗を玄弥が散弾銃で牽制しているところを禰豆子が飛びつきながらなんとか捕縛すると炭治郎が斬りやすいように両手で前に突き出した。必死に逃げようとするが鬼である禰豆子の腕力からはもはや逃げられない。

 

「ヒノカミ神楽⋯碧羅の天ッ!!」

 

「いけーーー!!」

 

ガキィィン!!

 

 炭治郎の技は半天狗に命中したがその刃は頸を両断できず止まってしまった。

 

「ギャアアアアアアア!!」

 

(硬い⋯!これ以上は斬れない!!)

 

「え⋯?嘘ッ!?気配が一つになった⋯!」

 

 その時、こちらに向かっていた複数の気配が一つになったことに阿児驚いていた。しかも、それはすでに炭治郎の背後へと迫っていたのだ。

 

(何だ!?俺の後ろに何かいる!!喜怒哀楽のどの鬼とも違う匂いだ⋯!)

 

「ムーー!!」

 

 炭治郎の危険を察知した禰豆子は半天狗の拘束を解除すると大急ぎで炭治郎を抱えながら必死に回避行動を取るも片脚を鬼の攻撃によって切断されてしまった。

 

「⋯ね、禰豆子!!」

 

「ゥゥ⋯⋯」

 

 禰豆子の片脚は樹木で生成された蛇ような形をした鬼の攻撃で食いちぎられたが鬼の力ですぐに再生し事なきを得た。そして、炭治郎たちの前に現れたのは喜怒哀楽のどの鬼とも異なる別の個体だった。現れた六体目の鬼は憎珀天という鬼であり窮地に追い込まれた半天狗の新たな分身体だった。

 

「弱き者をいたぶる鬼畜、不快⋯不愉快⋯極悪人共めが」

 

「ろ、六体目の鬼⋯!!」

 

(さらに出てきた!!もういい加減にしてくれ!!)

 

「多分、錫杖の鬼が残りの三体を吸収して生まれた別個体だよ!さっきの四体とは比べものにならないぐらい強力な力をもってる⋯気をつけて!」

 

 すると憎珀天は背中の太鼓を鳴らすと土中から樹木が現れ半天狗を守るように囲った。

 

「待て!!」

 

「⋯何ぞ?貴様、儂のすることに何か不満でもあるのか」

 

「⋯ッ!!?」

 

 その言葉を聞いた憎珀天は炭治郎を鋭く睨みつける。その凄まじい威圧に炭治郎や玄弥、禰豆子は動けなくなった。

 

「のう、悪人共めら」   

 

「ど⋯どうして⋯どうして俺たちが悪人なんだ?」

 

「"弱き者"をいたぶるからよ、先程貴様らは手のひらに乗るような"小さく弱き者"を斬ろうとした」

 

「⋯⋯」

 

「何言ってんの⋯コイツ⋯!」

 

「何という極悪非道、これはもう鬼畜の所業⋯」

 

 

黙れ

 

 

「⋯ッ!?」

 

 その一言を聞いた憎珀天の言葉が止まる。それと同時に背後から憎珀天を越える凄まじい威圧と覇気がゆっくりと近づいてくる。

 

「手前ェの身勝手な理屈を俺たち人間に押し付けるな、醜い化け物が何をほざきやがる」

 

「⋯貴様は」

 

「あ、明智さん!!」

 

(と、とんでもない威圧感と覇気だ⋯!やっぱり、明智さんの強さは計り知れない!)

 

(左馬介、すっごく怒ってる⋯あんな左馬介を見るのは久しぶりだなぁ⋯)

 

(ば、化け物かよ⋯!あのサムライ⋯!)

 

 憎珀天の前に現れたのは炭治郎たちを援護しに来た左馬介だった。憎珀天の身勝手な理論を聞いていた左馬介はこれまで犠牲になった人々や鬼殺隊の隊士たちを思うと怒りが抑えられなかった。目の前の鬼は幻魔にも劣らぬ畜生の如き存在だと実感した左馬介は憎珀天を睨めつけ明智拵を突きつける。

 

(⋯何だこの感覚は?儂が恐れているのか?儂が恐れるのはこの世でただ御一人の筈だ⋯!)

 

「手前ェは必ず地獄に落としてやる」

 

「⋯やってみろ極悪人め」

 

「炭治郎、コイツは俺が殺る。お前は本体を倒してくれ」

 

「は、はい!お願いします!!」

 

 憎珀天の相手を左馬介に任せた炭治郎は残りの玄弥、禰豆子たちは本体を討つべく行動を開始した。それを見た憎珀天は妨害しようと樹木の龍の攻撃・石竜子を繰り出そうとする。

 

「⋯童共が」

 

「何処を見てる、手前ェの相手は俺だ」

 

「⋯な」

 

 気がつくと眼前には天双刃を構えた左馬介が迫っており、一瞬で一足一刀の距離を詰められる。太鼓による音撃で距離を取ろうとするがそれでも左馬介のほうが速かった。

 

ザンッ!

 

 憎珀天の頸は天双刃の一撃で断たれたが、これまでの分身体と同様で本体を斬らない限り効果がないのか憎珀天は両断された頸を素早く切断面にくっつけて再生する。

 

(この侍、速い⋯!!この儂が反応できぬとは)

 

(やはり、本体を斬らない限り再生するか⋯)

 

(接近戦では分が悪いか、ならば近づかせん)

 

 近距離での攻撃は左馬介に対応できないと判断した憎珀天は背後の太鼓を打ち鳴らす。

 

「血鬼術・無間業樹」

 

 憎珀天の周辺に無数の樹木の竜である石竜子が出現し、左馬介めがけて一気に襲いかかる。

 

(この術は避けられまい)

 

 しかし、左馬介はまったく動じない。武器を天双刃から地豪斧に切り替え、飛び上がり力を込めて斧を地面に叩きつける。

 

「おりゃァァァ!!」

 

 戦術殼・地によって憎珀天の血鬼術に勝るとも劣らぬ広範囲の大爆発を発生させ両者の技が衝突した影響で周辺の地形が変化するほどの轟音と振動が発生する。

 

(⋯信じ難し!!こやつ一体何者だ⋯!)

 

 すると休む間もなく爆煙の中から戦術殼・炎の業火がうねる龍の如く憎珀天に襲いかかる。しかし、この戦術殼は通常よりも鬼力を抑えたものであり吉原遊廓で見せて時よりも威力は低かった。

 

「⋯くっ!炎をも操るか」

 

「遅い、こっちだ」

 

「何ッ!?」

 

 気がつけば左馬介は憎珀天の背後におり、すでに避けられない間合いにいたのだ。今度は地豪斧を装備しており憎珀天の頭部をめがけてフルスイングで斧を薙ぎ払う。

 

「無駄だ、本体を斬らぬ限り儂は死なぬ」

 

「確かに倒せんが、これならどうだ?」

 

 なんと左馬介は地豪斧の刃ではなく斧頭の部分で憎珀天の脳天を力いっぱい打ち抜いた。まともに直撃した憎珀天の頭部の半分が弾け飛び、思わずよろめいていた。

 

「ガッ⋯!?」

 

「頸は斬れんが衝撃までは防げないだろう」

 

 すぐに頭部は再生したが凄まじい威力の一撃を頭部に受け激しく脳を揺らされた憎珀天はふらついており、身体が僅かに震えていたのだ。頸は斬らないが地豪斧による重い一撃を何度も頭部に与えて視界と術の精度を低下させる戦法を考えたのだ。

 

 憎珀天の広範囲による音撃と血鬼術も戦術殼を巧みに操れる左馬介であれば無力化することが可能であり、相手に合わせて臨機応変に鬼の武器を切り替え戦闘スタイルを変える戦法は非常に強力だった。

 

「⋯おの⋯れ!!許さんぞ⋯!」

 

「言ったはずだ、手前ェはここで終わりだ」

 

ーーーーーーー

 

・刀鍛冶の里 里長の屋敷付近

 

 その頃、里長の屋敷付近の森林で双頭獣ガートルードと戦闘していた時透無一郎と伊角静音だったが戦況は一進一退の攻防が続いていた。

 

「霞の呼吸⋯弐ノ方・八重霞」

 

「水の呼吸⋯肆ノ型 ・打ち潮!」

 

「ギャウッ!」

 

 無一郎の技はガートルードの左頭部、静音の技は右頭部にほぼ同時に命中した。しかし、頭部に装着されている分厚い甲冑のせいで攻撃が遮られ少しよろめく程度のダメージしか与えられていない。

 

(くっ…!硬い!!攻撃が通らない)

 

(身体を覆っている甲冑に加えて刃を通しづらい強靭な肉体と巨体⋯厄介な相手だね)

 

 ならば甲冑がない部分を攻めればと考えてそれ以外の部分にも攻撃を加えたがガートルードの肉体は柔軟かつ強靭な皮の装甲であり、日輪刀による斬撃は通り難かった。

 

「グォオオオオオン!!」

 

 咆哮を上げガートルードの左頭部が氷のブレスを二人に向かって吐きかける。無一郎と静音は左右に分かれながら回避するがその場には巨大な氷の柱が生成される。

 

「なんて冷気⋯!当たったらひとたまりもないよ」

 

「静音、気をつけて。あの氷の柱は電撃を誘電するから近づいちゃ駄目だ」

 

「わ、分かりました!」

 

 無一郎はこの前の戦いでこのガートルードが氷柱と電撃を用いた戦法で上弦の伍を撃破したのを見ている。この猛獣は本能に任せて戦うだけなく知能を使った戦闘もできるのだ。

 

(やはり手強い相手だ、どう倒す⋯?)

 

 戦闘しながら無一郎はガートルードを倒す作戦を考えていた。何度も攻撃を当てていて分かったがまったくダメージがないという訳ではなく、その証拠にダメージは軽微だが二人の呼吸の技を受けてガートルードはひるんでいる。

 

(⋯恐らく弱点は頭部だな、防御が一番厚いのは左右の頭部を覆っている甲冑だ。まずはあの甲冑を破壊する!)

 

「静音、まずは左頭部に攻撃を集中してあの甲冑を壊す!僕に遅れないでね」

 

「承知しました!」

 

 活路を開くべくまずはガートルードの頭部の甲冑を破壊し弱点を攻める作戦で二人は行動を開始した。厄介な氷のブレスを吐く左頭部を無力化できれば少しながら有利になるはずだと考えたがガートルードも簡単に攻撃させてくれるはずもなく地面を蹴る動作のあとに無一郎に向かって勢いよく飛びかかる。

 

「おっと⋯」

 

 しかし、無一郎はガートルードの動きをしっかりと見切っており、ギリギリまで引きつけて跳躍しながら回避する。飛んだ勢いを利用し一本の樹木に着地すると同時にガートルードに向かって跳躍し一気に距離を詰める。それを見た静音も加速し上空に飛び上がりながら水の呼吸の構えを取る。

 

「霞の呼吸⋯参ノ型・霞散の飛沫」

 

「水の呼吸⋯弐ノ型・横水車!」

 

 無一郎の凄まじい勢いの回転斬りと静音の弐ノ型はほぼ同じタイミングでガートルードの左頭部に命中した。破壊するまではできなかったが二人の強烈な攻撃で甲冑に僅かにヒビが入っていた。

 

「ギャウッ!?」

 

「あともう一息ですよ!時透様」

 

「ああ、でもここからが勝負だよ。気を抜かないで」

 

(あの宇髄さんが褒めるだけはあるね、技の威力と精度は柱に届くものだ)

 

 改めて静音の強さに無一郎は驚いていた。技の威力は柱の剣士にも匹敵するものであり、静音と自身ならこの猛獣を倒せると確信した無一郎はさらに攻勢を強める。

 

 引き続き左頭部に攻撃を集中するがガートルードもただ攻撃を受けるだけではなく、二人の攻撃をバックステップや巨体からは想像できない俊敏な動きで巧みに回避しつつ爪で反撃する。

 

「ガゥ!!」

 

「くっ!素早い⋯!」

 

「僕が奴の注意を引きつける、君は左頭部の攻撃に集中して」

 

「分かりました!」

 

 無一郎がガートルードを正面から引きつけ静音がその隙を左頭部に攻撃する⋯そのためにガートルードの注意を自身に集中させるために前に出る。

 

「⋯来い、化け物」

 

「グォオオオオオン!!」

 

 正面に堂々と立ちつくす無一郎にガートルードは地面を蹴る動作と共に身体に稲妻をまとって突進する。しかし、無一郎は独特な動きでガートルードの攻撃を回避する。

 

「霞の呼吸⋯漆ノ型  朧(おぼろ)」

 

「ガゥ⋯!?」

 

 無一郎が編み出した独自の歩行術で亀のように遅く大幅な緩急をつけた動きで相手を翻弄する技であり、痣を発現させたその速さによってガートルードは無一郎を捉えられなかった。

 

「もらった!水の呼吸⋯捌ノ型・滝壷!」

 

 翻弄されていたガートルードに向かって静音は上空に飛び上がって勢いをつけながら左頭部めがけて技を繰り出そうとする。しかし、静音の技はガートルードに届かず全身に発生した虹色の光によって弾かれてしまった。

 

(きゃっ!?は、弾かれたッ!)

 

「静音、一度距離を取るんだ!その光を出している時は攻撃は通じない!」

  

 この光も先の上弦の伍との戦いで見せた防御であり、鬼の攻撃を無力化するほどの光を破るのは困難だった。するとガートルードの右頭部が口に金色の電撃を溜め、無数の光の球体を発生させ戦場全体の上空に配置する。

 

「グォオオオオオン!!」

 

 咆哮と同時に発生させた球体から稲妻が降り注ぎ、あっという間に戦場全体が稲妻の嵐に包まれる。一定間隔で不規則に降り注ぐ稲妻に無一郎と静音の行動は大きく制限されてしまった。

 

「くっ⋯!厄介なことをしてくれるね」

 

「これじゃ近づけません!」

 

 上空の稲妻に警戒していると今度は正面のガートルードが左頭部による氷のブレスを二人に吐きかけてくる。上空からの稲妻の嵐とガートルードによる氷ブレスの波状攻撃に今度は二人が防戦一方になっていた。

 

(なんとか回避できてるけど⋯このままじゃやられる!)

 

「静音、逆に攻める好機だよ。よく見て」

 

 無一郎の言うとおりガートルードもエネルギーと体力の消耗が激しいのか全身にまとっていた虹色の光が消えていた。つまり今ならこちらの攻撃が通る好機というわけだ。

 

「今度は私が化け物を引きつけます。その隙に時透様は攻撃を!」

 

「分かった、気をつけて!」

 

 今度は静音がガートルードの注意を引くために正面に出る。上空からの稲妻に警戒しつつ正面からの氷ブレスを正確に回避しつつ距離を詰める。

 

 ガートルードは完全に正面の静音に気を取られているのか無一郎のいる方向を見向きもせず攻撃に集中している。一方の無一郎は高速でガートルードの側面に回り込み上空の稲妻の嵐をものともせずに急接近する。

 

(甲冑のヒビ割れを狙う、これで弱点を攻撃できる)

 

 この攻撃で甲冑を破壊しようやく弱点を突くことができると確信した無一郎は一気に加速する。虹色の光もなくガートルードはまったくこちらに気づいていない⋯しかし、無一郎の勘が危険だと警鐘を鳴らしていた。

 

 その時、ガートルードの右頭部が突然上を向くと静音ではなくあらぬ方向に向かって電撃を放った。それを見た無一郎は思わず焦りの表情を浮かべた。改めて周辺を見ると戦場全体に無数の氷柱が発生しており、静音に攻撃を集中するように見せかけて実は氷の柱を配置していたのだ。

 

 この氷柱はガートルードの電撃攻撃を誘電し、さらに強力な稲妻に強化させて周辺に激しい電撃を撒き散らすのだ。一発の電撃が周辺の氷柱に誘電され戦場全体に凄まじい電撃が二人を襲った。

 

「しまった⋯!静音、避けるんだ!」

 

「⋯っ!!」

 

 ガートルードに急接近していた無一郎は慌てて立ち止まって回避しようとするが、電撃を避け切れず片脚に電撃を食らってしまい動きが止まってしまう。一方の静音も左肩に電撃が命中しその場に倒れてしまった。

 

「ぐあっ⋯!!」

 

(くそっ⋯右脚をやられた⋯!)

 

「グォオオオオオン!!」

 

 するとガートルードは無一郎の方に振り向くと左頭部による氷のブレスで完全に動きを止めようとする。片脚を電撃で負傷した無一郎は必死に回避しようとするが間に合わない。

 

「時透様ッ!!危ない!!」

 

 無一郎に氷のブレスが命中する瞬間、それを庇うように静音が両手を上げて背中で防いだのだ。静音の咄嗟の判断で無一郎は無傷だったがそれを庇った静音は下半身と背中一面が氷漬けになって完全に身動きが取れなくなってしまった。

 

「し、静音ッ!」

 

「⋯と、時透様!大丈夫ですか!?」

 

「僕は大丈夫だ!でも、君が⋯!」

 

 静音はなんとか動こうとするが凄まじい冷気で凍りついた身体はまったく動けない。それと同時にガートルードが地面を蹴る動作と共に二人向かって突進してくる。 

 

「時透様ッ!!早く!!逃げてくださいッ!!」

 

「駄目だ!君も一緒にッ⋯!」

 

「お願いしますッ!!早く逃げて!!」

 

(くッ⋯動けないよ⋯!)

 

 ガートルードは二人の眼前に迫っており、動けない静音にもはや避ける術はないがまだ無一郎だけは助かると思って必死に叫んだ。一方の無一郎も静音を助けようとするが下半身から足元までブレスによって凍りついて固定されておりこの状況で彼女を助けるのは不可能だと瞬時に悟っていた。

 

 このままでは二人とも致命傷は免れないと判断した彼は苦渋の表情で自身の回避を優先してその場から離れたが、動けない静音はガートルードの突進をまともに食らってしまい激しく上空に打ち上げられた。

 

「⋯ぐあッ⋯!!?」

 

 突き飛ばされたと同時に凍りついていた下半身が粉々に砕け散り周辺に鮮血と共に欠損した静音の身体の一部が飛び散る。そして、その場から少し離れた地点に上半身と右腕だけが残った血塗れの静音が倒れていた。

 

「静音ッーー!!」

 

「グォオオオオオン!!」

 

「⋯許さないぞ、よくも仲間を⋯!!」

 

 激しい怒りを顕にして無一郎はガートルードに向かって急接近する。上空から降る稲妻を容易く掻い潜り左頭部に技を繰り出した。

 

「霞の呼吸⋯壱ノ型 垂天遠霞!」

 

 両手によるシンプルな突き技だが痣と怒りによって無一郎の攻撃の威力は倍増しており、体力を消耗していたガートルードは光による障壁が使えず無一郎の技をまともに食らってしまった。その一撃はガートルードを大きくひるませたが肝心の甲冑にはさらに細かいヒビ割れが入っただけで破壊するには至らなかった。

 

「ギャウッ!!?」

 

「くそッ⋯!面倒な甲冑だな!!」

 

(硬い⋯手応えはあったはずだけど)

 

 ガートルードの動きが止まっている間に急いで近くに倒れていた静音の元に駆けつけた。だが、横たわる彼女の無惨な姿を見た無一郎は言葉を失っていた。

 

「⋯ゴホッ⋯と、時透⋯様⋯」

 

「静音、気をしっかり持つんだ!」

 

「⋯わ⋯私⋯もう⋯駄目みたい⋯です⋯」

 

 片目は潰れ左腕は吹き飛び上半身から下は臓腑が飛び出し大量の血が流れ出ていた。誰が見ても手の施しようがないほどの致命傷であり静音の瀕死の状態で今にも意識が途絶えそうだった。

 

「⋯時透⋯様⋯あとは⋯お願い⋯しま⋯す」

 

「くそッ⋯!静音、死んじゃ駄目だッ!!」

 

「⋯いっぱい⋯訓練したのに⋯情けない⋯なぁ⋯」

 

 静音の声はだんだんと小さく弱くなりその瞳からは光が消えていく。それでも右腕に握られている日輪刀はまだ手を離れていない。

 

「⋯やだよ⋯死にたく⋯ない⋯まだ⋯仇を討てて⋯ない⋯」

 

「静音ッ!!」

 

「⋯父⋯上⋯母⋯う⋯え⋯」

 

「⋯⋯ッ!!」

 

 その言葉を最後に伊角静音は力尽きた。必死に握っていた日輪刀も右手から離れていた。自分を庇ったせいで大切な仲間を彼女を死なせてしまった⋯そう思うと無一郎は涙が止まらなかった。

 

「グォオオオオオ!!」

 

「⋯⋯殺してやる」

 

 振り返る無一郎の表情は怒りと憎悪に染まっていた。何があっても目の前の化け物は必ず地獄に落とす⋯日輪刀を強く握りしめ無一郎はガートルードに向かって行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その頃、憎珀天の相手を左馬介に任せ炭治郎たちは半天狗の本体を必死に追跡していた。

 

「ガアアアア!!クソがァァ!!いい加減死んどけお前っ!!」

 

 逃げる半天狗に玄弥は周辺の樹木を引き抜いてそれを次々と投げつけるが容易く避けられてしまう。続けて禰豆子が鷲掴みにしようと飛びかかるが半天狗がさらに加速し四人との距離を離す。

 

「なんなのよアイツ!逃げ足速ッ!!」

 

「ムゥゥ⋯」

 

「クソがァァ!!追いつけねぇ!!」

 

「ヒィィィィィ!!」

 

(はっ⋯速い!!延々と逃げ続ける気だな、夜が明ける前に!)

 

 しかし、半天狗と炭治郎たちの距離はどんどん離されていく。何にか方法がないか考えていた炭治郎だったがその時、かつて善逸から聞いた何気ない一言が頭に浮かんでいた。

 

"雷の呼吸って一番足に意識を集中させるんだよな"

 

"自分のさ、体の寸法とか筋肉の一つ一つの形って案外把握できてないからさ"

 

"それら全てを認識してこそ本物の『全集中』なりって⋯"

 

 

「⋯⋯!」

 

(筋肉の繊維一本一本、血管の一筋一筋まで空気を巡らせる⋯力を足だけに溜めて、一息に爆発させる!空気を切り裂く雷鳴みたいに⋯!!)

 

 その言葉をヒントに炭治郎はまるで雷の呼吸の壱ノ型のように一気に加速し一瞬で半天狗に追いつき頸に日輪刀による一撃を繰り出した。

 

(いけ!!いけ!!今度こそ渾身の力で⋯!!)

 

「お前はぁぁ⋯儂がぁぁぁぁ可哀想だとは思わんのかァァァ!!!」

 

 突如、半天狗が巨大化し両手で炭治郎の顔を鷲掴みにして握り潰そうとする。

 

「弱い者いじめをォ⋯するなぁぁぁぁぁ!!!」

 

「テメェの理屈は全部クソなんだよ!ボケ野郎がァァ!!」

 

 炭治郎を助けようと玄弥が半天狗の巨大な腕を掴み拘束から解放しようとするが、なかなか振りほどけない。するとその背後から禰豆子が現れ血鬼術の爆血を半天狗に浴びせる。

 

「ギャッ!?」

 

「うおおおお!!」

 

 力が緩んだ半天狗の腕を玄弥は力で無理矢理引きちぎり炭治郎を解放した。それによってバランスが崩れ、炭治郎と禰豆子は半天狗諸共背後の崖下に落下してしまった。

 

「炭治郎ーー!!禰豆子ーー!!」

 

 煙の中から頸に日輪刀が食い込み両腕のない半天狗がよろよろと歩き始めた。その近くには禰豆子が倒れており、必死に立ち上がろうとしている。

 

(まずい⋯再生が遅くなってきたぞ⋯人間の血肉を補給せねば!)

 

 さらに信じられないことに気づいた半天狗の表情がみるみる焦りに変わっていく。

 

(そんな馬鹿な⋯!憎珀天の力が弱まっている⋯!ま、まさか…!)

 

 憎珀天の視界を見るとその場に片膝をつきまったく動けず力もほとんど使い果たした状態であることに気づいたのだ。つまり、憎珀天は左馬介によって無力化されてしまったというわけだ。

 

(ま、まずい⋯!!あの鬼の侍が来るぞ⋯!)

 

「待て⋯」

 

「⋯!?」

 

「逃さないぞ⋯地獄の果てまで追いかけて⋯頸を斬るからな⋯!!」

 

 そこには頭部から血を流しながらも激しい形相で半天狗を睨む炭治郎の姿があった。目の前の炭治郎に加えて左馬介も近づいており近くに食える人間の気配もなく半天狗はもはや逃げるしかできなかった。

 

「ひ、ヒィィィィィ!!」

 

(急げ!もう一度だ!もう一度地面を全集中で⋯)

 

 その時、追跡しようとした炭治郎の目の前に謎の四角い空間が発生し、襖のように両方が勢いよく開かられるとその中から謎の人影が姿を現した。

 

(何だ⋯?)

 

「⋯半天狗、退け」

 

「ヒィィィ⋯こ、黒死牟殿⋯」

 

 逃亡していた半天狗は謎の人物が現れた四角い空間に飛び込み戦場から撤退してしまった。追い詰めたはずの半天狗をあと一歩のところで取り逃してしまったのだ。

 

 炭治郎の前に現れたのは紫色の上着と黒い袴、長髪を一つに束ねたまるで侍のような姿をした人物だった。鬼と同様の肌に首元から頬にかけて炎のような痣があり、特に異様だったのはその者の顔には六つの赤い目があったことだ。真ん中の左右の目には"上弦の壱"の文字が刻まれている。

 

 この異形の者こそ十二鬼月最強の鬼である上弦の壱"黒死牟"だった。

 

(上弦の壱ッ⋯!?)

 

「半天狗をここまで追い詰めるとは⋯見事だ」

 

(と、とんでもない威圧感だ⋯!!震えが止まらない⋯!体が動かない、体が戦うことを拒否している⋯!)

 

「お前が⋯竈門炭治郎か⋯」

 

 突如、目の前に黒死牟の禍々しくも重厚感すら感じる桁外れの威圧感に炭治郎の身体は震えその場から動けなかった。黒死牟は炭治郎を少し観察していたが耳に付けてある耳飾りを見た瞬間、様子が一変し凄まじい殺気を放った。

 

「その耳飾り⋯そうか、まだ残っていたか⋯"日の呼吸"を受け継ぐ者が⋯」

 

「日の呼吸⋯?」

 

「竈門炭治郎⋯お前を生かしておく理由はない⋯」

 

「え⋯」

 

 気がつけば黒死牟は抜刀し炭治郎の眼前に迫っていた。刃はすでに首に迫っており日輪刀もない炭治郎に防ぐ術はない。しかし、間一髪でその刃は突如現れた何者かに受け止められていた。

 

「⋯!!」

 

「あ、明智さん⋯!」

 

「下がっていろ、お前は禰豆子を守るんだ」

 

 炭治郎を救ったのは憎珀天を無力化し追いかけて来た左馬介だった。黒死牟を押し返すと両雄は静かに睨み合う。

 

 瞬きする間に何が起こったのか理解が追いつかない炭治郎は困惑していた。だが、確かに言えるのは左馬介が駆けつけてくれなければ自身は間違いなく死んでいた。遅れて恐怖と動揺が身体に現れ弱々しくその場に片膝をつく。

 

 離れた場所から黒死牟を見ていた玄弥と禰豆子もまたその並外れた威圧感に恐怖を覚えていた。

 

(じ、上弦の壱⋯とんでもねぇ威圧感だ⋯!震えが止まらねぇ⋯!)

 

「ム、ムゥ⋯」

 

「す、凄い力の鬼だ⋯前に見た上弦の参の鬼とは比べものにならないよ⋯!」

 

(ひょっとしたらあの信長にも匹敵するかもしれない⋯!)

 

 阿児もまた黒死牟の桁外れの力に驚きを隠せなかった。そして、その実力は幻魔王であった織田信長の強さに迫るほどのものだと感じていた。

 

「⋯そうか、あの御方が言われていた鬼の侍はお前だな⋯」

 

「お前が上弦の壱か」

 

「お前⋯名は何という⋯」

 

「⋯明智左馬介秀満だ、貴様らの思い通りにさせん」

 

「明智⋯?そうか、やはり⋯お前は私と同じ時代を生きていた者だな⋯」

 

「何?ならば貴様も戦国の世を生きていた人間か?」

 

「私が戦国を生きていた時の名は継国巌勝⋯」

 

 黒死牟は左馬介の姿と名前、そして喋り方などから目の前の鬼の侍はかつて自分が生きていた戦国時代の人間あると確信したのだ。さらに黒死牟は左馬介の姿をじっと俯瞰し驚きながらも口を開いた。

 

「⋯信じ難し、我らと同じ鬼でありながら人の形を保っている。それでいて肉体は練り上げられ全盛期を維持している⋯お前ほどの剣士を見たのは三百年振りだ⋯」

 

「⋯⋯」

 

「しかし、分からぬ⋯あの御方の血も受けぬ戦国の人間であるお前がなぜこの時代を生きている⋯?」

 

 左馬介もまた眼前の黒死牟の放つ凄まじい威圧感と並外れた闘気に驚いていた。しかし、長年の死闘と数々の強敵との死線を潜り抜け戦い続けてきた左馬介の強靭な精神力と闘志はまったく動じておらず明智拵を構え戦闘態勢に入る。

 

「貴様を斬る、覚悟しろ。継国巌勝」

 

「この時代でお前ほどの剣士と戦えるとは⋯来い⋯明智左馬介⋯」

 

 黒死牟もまた愛刀である虚哭神去を抜き構える。刀身から鍔に至るまで本人と同様に無数の目が浮かび上がった不気味かつ異様な刀だった。互いに戦国時代を生きていた武人同士通じる者があるのか両者共に気分が高揚し集中力は極限に達していた。

 

 先に動いたのは左馬介だった。全集中の常中を発動し袈裟斬りで斬りかかる。しかし、黒死牟は難なくそれ片手で受け止めそれを皮切りに凄まじい剣戟の応酬が始まった。

 

 目で追うのは困難とも思えるほどの速度で両者は激しく剣を振り、両者どちらも一歩も譲らぬ攻防が続くが驚くことに左馬介の身体に無数の刀傷が刻まれ始めていた。しかし、戦っていた左馬介はその異変にいち早く気がついていた。

 

(この鬼の攻撃⋯斬撃に不規則な刃な付いている。確実に防いでも攻撃を食らってしまうのはこのためか⋯)

 

「見事だ⋯凄まじい斬撃と速度、型にとらわれぬ独自の技に全集中の常中による身体強化⋯そして完成された鬼の肉体⋯素晴らしい」

 

(こいつも呼吸の技が使えるのか⋯呼吸音が鬼殺隊の剣士たちと同じだな)

 

 この黒死牟は呼吸によって身体能力、再生力、攻撃速度、威力を底上げしていたのだ。両者の力は拮抗しているように見えたが、ここで流れを変えようと左馬介が武器を明智拵から疾風刀に換え戦闘スタイルを変更する。 

 

(武器が変わった⋯興味深い⋯)

 

 先ほどとは打って変わって疾風刀による手数と速さを活かした猛攻に黒死牟は難なく対応し左馬介の変幻自在の攻めも確実にいなしていた。すると、今度はこちらの番と言わんばかりに黒死牟は独自の構えを取り左馬介の攻撃の隙を突くように技を放った。

 

「月の呼吸⋯弐ノ型  珠華ノ弄月」

 

「⋯!!?でいやァ!!」

 

 黒死牟の弐ノ型は虚哭神去の斬撃で広範囲を激しく攻撃する技だが左馬介は技を繰り出す瞬間を見切っておりその技を戦術殼・風で迎え撃つ。

 

「⋯⋯」

 

「信じ難し⋯風をも操るか」

 

 両者の打ち合った技は互角の威力だったのか相殺され互いに無傷かと思われたが左馬介の足元に血が流れ落ちる。

 

「⋯だが、私には及ばん」

 

「⋯くっ!」

 

 なんと左馬介の胸部には一文字の斬撃が刻まれており、口元から一筋の血が流れていた。本来ならばこの一撃は命に届くものだったが紅具足と鬼の力による身体強化のおかげで致命傷は免れていた。

 

(どういうことだ⋯?まるでこちらの動きがすべて読まれているようだ)

 

「さ、左馬介ッ!大丈夫っ!!?」

 

「あ、明智さんッ!!」

 

(あの明智さんが押されている⋯!上弦の壱⋯異次元の強さだ⋯!!)

 

 その一部始終を見ていた炭治郎たちも驚きを隠せなかった。これまで上弦の鬼や高等幻魔を難なく打ち破ってきた明智左馬介が苦戦している⋯彼をここまで追い詰めるこの黒死牟という鬼の強さは相続を超えていた。

 

(強い⋯この強さ信長に迫るものを感じるな)

 

「明智左馬介⋯お前の力はその程度か⋯」

 

「⋯⋯」

 

 このまま戦ってもいずれ敗北すると悟った左馬介は鬼の籠手を前に構え目を瞑る。すると鬼の籠手が紫色の光を放つと同時に全身を包み込む。

 

「⋯⋯!?」

 

 なんと左馬介の姿が異形の姿へと変わっていく。頭髪は白髪になり肌は黒く変色し鬼特有の波紋も浮かび上がる。目は血のように真っ赤に染まり紫色の仰々しい闘気を全身にまとった異形の侍の姿がそこにあった。

 

「あ、明智⋯さん⋯?」

 

(か、変わった⋯!!この気配、お、鬼だ⋯!!)

 

 この姿は左馬介が鬼の力を解放した姿であり、この姿こそ幻魔王・織田信長を始め数々の幻魔を屠った伝説の"鬼武者"だった。左馬介は武器を疾風刀から雷斬刀へ切り替え再び構えを取る。

 

(まだ力を残していたか⋯面白い⋯!)

 

「勝負はここからだ、いくぞ巌勝」

 

「そうこなくては⋯来るがいい」

 

 夜明けが迫る中、最強の鬼武者二人による死闘が始まり刀鍛冶の里での戦いはさらなる混迷を極めることになった。

 




ホントは鬼武者化左馬介と黒死牟の挿絵を入れる予定だったのですが、なかなか納得できるのが描けずにこのままじゃ投稿できないと感じたので、完成したらまた載せようと思います!

次回は煉獄さんやカナエたちの戦況なども含めて暗躍する幻魔たちの動きも書いていくので気長に待っててもらえると嬉しいです!
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