鬼滅の刃 鬼斬り武者   作:戦国のえいりあん

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新作、書けました!
幻魔初登場です!



第三話 暗躍する魍魎

長野の密林で鬼殺隊の静音と別れた左馬介と阿児はその後、密林を後にすると新たな目的である東京を目指していた。幻魔に関する情報の収集と別れた静音と再び再会することが目的だ。未だに幻魔と思わしき噂や被害は出ていないらしく道中ではそれらしい噂話も聞こえていない。四百年先の日ノ本の景色や建物、文化などに触れながら二人はのんびりと東京へと向かっていた。

 

 

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・十四日後 東京都 新宿

 

 

「すっご~い!またパリの町に来たみたいだよ!」

 

「ああ」

 

 

長野を出発して二週間、その日の夕方に二人はようやく東京の新宿にたどり着いていた。到着して早々二人はその壮大な町並みと人混みの多さに驚かされていた。五百年先の大都市であるパリの光景を一度見ているが、この東京の町並みと風景はそれにも劣らない。四百年の時を経て大きく発展し人々が平和に暮らす日ノ本を見ると二人は少し嬉しくなる。

 

 

「日ノ本もちゃんと発展して大きくなったんだね。てっきりまだ木で家を建ててるのかと思ってたよ」

 

「そうだな、こうして大きく発展した日ノ本を見ていると感銘深いな」

 

「うん!あたいもだよ!」

 

 

ちなみに左馬介は静音の忠告どおりに身に付けている刀と鎧を隠している。東京までの道中で何度かバレそうになった時もあったが何とか人通りの少ない道を通るなどしてやっとたどり着いたのだ。だが隠していると言っても鎧の上に全身を隠せるほどの大きさの古い外套を上に一枚被っているだけで外套を捲られれば一瞬でバレてしまう。

 

 

「左馬介、早く行こ。こんな所で見つかったら大変だよ」

 

「ああ、じゃあ静音の言っていた宿場に行ってみるか」

 

 

左馬介は静音から受け取ったメモ書きを取り出す。メモを見ると宿場は左馬介たちがいる場所からそう遠くない。少し要り組んだ場所にあるようだが阿児もいるので迷うことはないだろう。メモを頼りに左馬介は人混みに注意しながら町中を進んでいく。

 

 

「なあ、知ってるか。また何人か行方不明だってよ」

 

「本当かよ…今回で何件目だ?」

 

「八件目だ、最近多いよな。急に人が消える事件」

 

 

歩いていた左馬介の側にいた数人の町人が何やら噂話をしていた。内容が気になった左馬介は歩みを止める。少し立ち止まって町人の噂話を聞いていたが話によると近頃この東京の町中で町人が突如行方不明になる怪奇現象が多発しているそうなのだ。しかも最近になってその現象が頻繁に起こっているようだった。

 

 

(左馬介、今の話聞いた?)

 

(ああ、怪しいな。奴らの仕業かもしれん)

 

 

ひょっとしたらこれは幻魔の仕業では無いかと二人は睨んだ。しかしこれだけでは決定的な証拠にならないため幻魔の仕業だと決めつけるのは早計だ。気になるところだがまずは静音との合流が先決だと判断した二人はひとまずその場を離れた。

 

その後、メモに従って同じような狭い道や人通りの多い大きな道などを曲がったり下ったりして歩いているとようやく二人は例の宿場の前までやって来た。

 

 

「はぁ~やっと着いたよ。同じような道ばかりで迷うかと思った」

 

「どうやら、この宿場のようだな」

 

 

昔から営業しているのか宿場の建物にはずいぶん年季が入っている。表にある看板には達筆な字で「秋風」と書かれている。最近は客足が少ないのか利用している客はあまりいないようだ。早速二人は宿場の中へ足を踏み入れる。

 

 

「すまん、邪魔をする」

 

「ごめんくださ~い」

 

古い外見とは裏腹に内装はかなり綺麗で和風の雰囲気を感じさせる内装だ。すると奥からこの宿場の女将らしき女性が歩いてくると二人の前に礼儀正しくお辞儀する。

 

 

「いらっしゃいませ、よくお越し下さいました」

 

「少し聞きたいことがあるんだが」

 

「はい、何でございましょうか?」

 

「伊角静音という女子を知らないか?」

 

「静音ですか?私の姪ですけど…」

 

「左馬介が訪ねて来たと伝えてくれないか?」

 

それを聞くと女将がハッと思い出したような表情をする。

 

「まあ、あなたが静ちゃんの言ってたお友達です?ふふ…あの子も隅に置けませんね。いつの間に素敵な彼氏を作ったのかしら」

 

「……いや」

 

「……」

 

「ささ、どうぞ上がって下さいまし。こちらへどうぞ」

 

 

女将はニコニコと微笑みながら奥へと歩いていった。一方、静音の彼氏だと誤解された左馬介は珍しく困惑していた。

 

 

「…参ったな」

 

「…行こ、左馬介。女将さんを待たせちゃだめだよ」

 

 

すると隣にいた阿児の機嫌がなぜか急に悪くなり、左馬介を置いて一人で先に宿場の奥に進んでいく。

 

 

「おい阿児、待て」

 

「ふんだ!左馬介なんて嫌い!」

 

「一体どうしたんだ、全く…」

 

(左馬介の想い人はあたいなのに…!ホントっ鈍いんだから…!)

 

 

その後、二人は宿場の奥にある特別客室に案内されると静音が来るまでのんびり過ごすように女将から言われたのだ。女将の話によれば静音はまだ東京に到着していないらしく明日の朝にはこの宿場に戻ってくるそうなのだ。その夜は何故かとても豪華な夕食を提供され二人はゆっくりと夜を過ごした。

 

 

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・翌朝 東京都 新宿 宿場「秋風」

 

 

宿場で一日を過ごした二人は部屋の窓から東京の町並みを眺めながら静音が来るのを待っていた。ちなみに左馬介は現在、具足を外し宿場に置いてある浴衣に着替えている。

 

 

「遅いな~まだ来ないの?」

 

「あいつも忙しいんだろう。それに傷もまだ治っていないはずだ」

 

「そうだよね、いくら丸薬で治癒力が高まってても二週間ぐらいじゃあの傷は治らないよ」

 

 

そんな話をしながら静音を待っていたのだが突如、部屋の襖の先からドタドタと足音が聞こえてくる。音は徐々に大きくなり次の瞬間には襖が勢いよく開かれていた。

 

 

「さ、左馬介殿っ!!叔母上にいったいどんな説明をしたんですかっ!!」

 

「あ、来た!遅いじゃない!」

 

「静音、来たか。待っていたぞ」

 

「待っていたぞ、じゃありませんよっ!帰って来ていきなり『あなたの素敵な恋人が奥で待ってますよ』なんて言われたら驚きますよ!」

 

 

静音は顔を真っ赤にして左馬介にガミガミと文句を言う。しばらくしてようやく落ち着くと静音は左馬介の前に腰を下ろす。

 

 

「えっと…わざわざ東京まで来てもらってすみません。道中、何もありませんでしたか?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「はあ…よかったです。何処かで憲兵に捕まってないか心配してたんです」

 

 

そう言うと静音は改めて二人の前に正座し深くお辞儀をする。

 

 

「先日は本当にありがとうございました。お二人のおかげで無事に仲間の元に戻ることができました。改めてお礼を言わせてください」

 

「無事に帰れたんだ。よかった~こっちもあんたが何処かで倒れてないか心配だったんだよ」

 

「あはは…心配してくれてありがとう。実はその…まず、お二人に謝らなければならないことがあります」

 

 

すると静音が申し訳なさそうな表情で急に土下座した。しかし、何のことで謝罪されているのか分からない左馬介と阿児は困っていた。

 

 

「ちょっとちょっと!どうしたの?」

 

「本当にすみません…!実は左馬介殿が倒した鬼の手柄が私の手柄になっちゃったんです!」

 

 

あの後、しのぶに介抱されて近くにある町の診療所に運ばれた静音は適切な治療を受け、無事に事なきを得たのだ。しかし問題はここからで、静音を救助したしのぶによって彼女の生存と鬼を討伐した成果が鬼滅隊の本部に報告されたのだ。部隊全滅の中で奇跡的に生き残り、さらにその鬼までも倒したことが評価されたのか静音の階級が癸から辛に昇進したのだ。もちろん自分で鬼を倒したわけではない静音は昇進を丁重に断ったのだが、かの鬼滅隊の当主・産屋敷輝哉の言葉でもあったため断れず昇進を受けてしまったのだ。

 

 

「すみません…本当は左馬介殿の手柄なんですけど、本当のことを言ったら私は柱の人たちに殺されてしまいます…ううっ、お腹が痛い…」

 

「まあ、別にいいよ。あたい達はそんなこと気にしてないし、ね?左馬介」

 

「ああ、出世してよかったな静音」

 

「左馬介殿…阿児…ありがとうごさいますっ!」

 

 

よほど罪悪感があったのかその言葉を聞いた静音は安心したようにホッと安堵のため息をつく。しばらく三人で簡単な談笑をした後、静音が本日の本題を口にする。

 

 

「では、早速ですが話をしましょう。どちらからお話しましょうか?」

 

「そちらからで構わないぞ」

 

「あたいもそれでいいよ」

 

「分かりました。では私の方から、単刀直入に申し上げます。左馬介殿…あなたに頼みたいことがあります」

 

「頼みたいこと?何だ」

 

「…お願いします!あなたの鬼の力を私たちに貸してください!」

 

 

静音は再び二人に対して土下座をすると、その理由を静音は淡々と話し始める。

 

 

「私、最初はあなたのことを他の鬼と同じ人を喰らう化物だと思っていました…でも、こうして言葉を交わしてみるとあなたからはそんな鬼の気配が全くしません」

 

「……」

 

「それに私を助けてくれました。何度か会って分かったんです…左馬介殿は人を襲わない、いい鬼なのだと」

 

「そうか」

 

「今の鬼殺隊には左馬介殿のような強い戦士が必要なのです。鬼を全て滅ぼすためにはあなたの鬼の力が不可欠だと私は思ったんです」

 

 

つまり静音の頼みは左馬介にも鬼の討伐を手伝って欲しいと言っているのだ。しかし左馬介からすればこちらの世界の鬼の討伐はあくまでも幻魔を根絶する目的のついでであり本来の目的ではない。しかも、あくまでこれは静音の個人的な頼みであり鬼殺隊からの依頼ではない、下手に首を突っ込めば静音と最初に出会った時のように鬼と勘違いされて鬼殺隊の隊士から襲われる恐れもあるのだ。幻魔の討伐を優先するなら左馬介にとっては厄介事になるため、断られるのを承知で静音は頼んだのだが左馬介からは意外な返答が返ってきた。

 

 

「分かった。手伝おう」

 

「え…!?ほ、本当ですかっ!?でも、左馬介殿は幻魔という化物を倒さなくてはいけないのでは…」

 

「左馬介、ホントにいいの?元の時代に帰るのが遅くなっちゃうよ?」

 

「別に構わない。この時代の鬼の一族が日ノ本の人々を脅かしているなら見過ごすわけにはいかない。俺でよければ力を貸そう」

 

 

なんと左馬介は快く鬼退治を承諾したのだ。その言葉に静音は思わず涙がこみ上げてきた。彼が力を貸してくれるのならきっと鬼を残らず討ち倒すことができる…心強い味方が増えた嬉しさと左馬介のその大きな器と優しさに心を打たれていたのだ。

 

 

「…っ…ありがとうごさいますっ!自分勝手な私のお願いを聞いてくれるなんて…本当にありがとうごさいます…!」

 

「気にするな。共に鬼を倒そう」

 

「まあ、左馬介がそう言うなら仕方ないか。あたいも手伝うよ」

 

 

強力な戦力である左馬介の協力を得た静音は早速、これからのことをお互いに相談し始めた。鬼の情報はこれから静音を通じて左馬介に伝えられ共に現場に向かう方針に決定した。本来であれば鬼殺隊本部に左馬介を案内して当主である産屋敷輝哉と謁見し鬼退治に協力することを伝えなければならないが左馬介が鬼である以上うかつに柱や他の隊士に知られるのは危険だった。その名の通り鬼殺隊の隊士のほとんどは鬼を激しく憎んでおり鬼である左馬介のことを信用しない可能性が非常に高いのだ。

 

 

「申し訳ありませんが戦場で他の鬼殺隊士に会ったら決して危害を加えないでください。他の隊士はあなたが味方であることを知りません、隊士に危害を加えてしまったら左馬介殿も他の鬼と同様に敵と判断されてしまいます。そうなってしまっては私でも擁護できません」

 

「分かった。お前と同じ着物を着ている奴には手を出さない」

 

「まったく、面倒な連中だよね。あんたがいる鬼殺隊って…いい鬼と悪い鬼の区別もできないの?」

 

「それだけみんな鬼を憎んでるし警戒してるの。鬼に家族を殺された人なんてたくさんいる…左馬介殿みたいないい鬼は本当に珍しいから」

 

「しばらくはお前だけと連絡を取るほうが良さそうだな」

 

「はい、そのほうがいいと思います。力を貸して頂けるのはとても嬉しいですけど、十分に注意してください」

 

 

こうして静音の話が終わると今度は左馬介と阿児が口を開いた。まだ静音には簡単な説明しかしていなかったが彼女が幻魔退治に力を貸してくれるなら話は別だ。もっと詳しい幻魔の情報を二人は静音に伝える。左馬介と阿児がこれまで見てきた幻魔という化物の存在とその恐ろしさを全て話した。

 

 

「…これが俺と阿児が知る幻魔の全てだ」

 

「…目から鱗が落ちたような気分です。その話が全て本当なら日本の歴史がひっくり返ります…!」

 

「とにかく幻魔は危険なんだよ。あいつらを野放しにしてたら何をしでかすか分からない。あたいらはそれを阻止しに来たのさ」

 

「そうだったんだね…それにしても幻魔は鬼の一族を滅ぼしたと言ってたけど本当なの?」

 

「うん、本当だよ。あいつらの科学力はホントにすごいんだ、時を移動する装置やすごく強い幻魔を造り出したしたりするんだよ。鬼の一族でもあいつらの力には敵わなかったんだよね…」

 

「鬼も滅ぼす力…そんな化物の残党がこの時代にいるなんて大変だ…!絶対に止めないと!」

 

「ああ、奴らに平和な日ノ本を壊されるわけにはいかん。なんとして俺たちで阻止するんだ」

 

「分かりました…私にも手伝わせてください。微力ですが私も左馬介殿と阿児の力になりたいんです」

 

 

静音もまた左馬介が目的とする幻魔の討伐に協力することになったのだ。静音が幻魔討伐に協力するに当たって左馬介は懐からある物を静音に手渡した。

 

 

「これを持っていろ。幻魔と戦うなら必要になる」

 

「これは…数珠ですか?」

 

 

左馬介から渡されたのは不思議な形をした数珠で親玉の形が鬼の頭部のような型でその口が大きく開いているデザインだ。

 

 

「それは幻魔の魂を封じ込める力があるんだよ。幻魔は倒すと魂が出るんだけどその数珠があれば魂を吸収できるの。幻魔を倒したら魂を数珠に封じ込めてよ」

 

「魂を?」

 

「うん、魂を吸収しないとあいつらに回収されてまた新しい幻魔を造られちゃうの。だからあたい達が封じ込めて処理しなきゃ」

 

 

幻魔の魂はその後しばらく辺りをさまようのだが幻魔にはその魂を回収するギャラーンという幻魔も存在し、倒した後に魂を吸収しなければ再び魂を回収され新たな幻魔に作り替えられてしまうのだ。

 

 

「分かりました。もしその幻魔と会ったら必ず討ちます。魂のことも任せてください」

 

「あ!そうそう。その事で話があるんだけど…」

 

 

阿児は早速、先ほど町人がしていた噂話を静音に伝える。最近、東京の町のあちこちで行方不明者が続出しているという出来事だ。失踪した現場からは大量の血痕が見つかったり千切れた手足が見つかるなど内容は凄惨な物ばかりだと言っていた。

 

 

「確かに怪しいね、その幻魔の仕業かもしれないし、もしかしたら鬼の仕業かも…調べてみようよ」

 

「よ~し、そうと決まれば"善は急げ"だよ。左馬介、行こ!」

 

「ああ」

 

 

三人は宿場・秋風を後にすると早速、行動を開始した。まずは宿場のある新宿付近から捜索することになり三人は手分けして噂話について片っ端から聞いて回った。すると聞いた情報によればこの新宿でも行方不明が出ているらしく左馬介が到着した昨日も若者が一人謎の失踪を遂げたらしいのだ。そして、三人が噂を調べ始めて三日経った日のこと、遂に噂の正体を掴んだのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

・三日後 東京 新宿

 

 

「静音!こっちで間違いないの?」

 

「うん!間違いない!確かに誰かが拐われるのを見たの!」

 

「急ぐぞ!」

 

 

静音に案内され左馬介と阿児は新宿の町中を全力疾走していた。調査を始めて三日…噂は聞くが何の手掛かりも得られないまま変わらずに手分けして情報収集をしていたのだが、一人で歩いていた静音がある現場を目撃したのだ。静音が見たその"何か"は目にも止まらぬ速さで子供を拐い瞬く間に消え去ったのだ。しかし、嗅覚の訓練をしている静音はその何者かの匂いを覚えており、その後すぐさま左馬介に連絡しその後を追っているわけだ。

 

 

「ねぇ、ホントに分かるの?」

 

「信じて!確かに覚えてるの!あれは確かに血の匂い…それも物凄く強い血の匂いだった。まるで何人も殺していてその血の匂いが腐って残ってる…そんな感じの匂いだったの!」

 

 

その言葉は信じて二人はただ静音の後を追い続ける。しばらく走ると静音が突如、足を止めた。静音が見ているのは先が見えないほど暗い裏路地だ。静音の表情は険しく暗闇の一点を見つめている。

 

 

「ここです…その裏路地の奥にいます…!」

 

「下がっていろ」

 

「いえ、私も戦います。子供を拐うなんて…許さない!」

 

 

少し裏路地に入り、人目が無くなると二人は刀を抜く。警戒しながらゆっくりと通路を進む。すると静音の頭上から何かが高速で接近してきた。

 

 

「……!!?…くっ!!」

 

 

それに素早く気づいた静音はその攻撃を防御する。防がれた瞬間、何かは素早く間合いを取り二人の目の前に立った。その姿を見た静音は言葉を失っていた。

 

 

「な、何なの…?この化物は…」

 

 

静音の前にいたのは姿は人と同じでかつて戦国に存在した忍者を思わせる出で立ちだった。しかし頭部にある目が三つありその目は暗闇でも不気味なほどに赤く光っていた。右手には血で染まった大きな刃…不気味な唸り声を上げて静音を見ている。この化物こそ左馬介が言っていた幻魔だった。この忍者のような幻魔は"三つ目"と呼ばれており、その素早さは熟練の武者であっても捉えるのは困難なほどだ。

 

 

「気をつけろ!来るぞ!」

 

 

左馬介が言った直後、三つ目は凄まじい速度で静音に近づき刃で斬りかかって来た。並みの相手であればこれで決着が付いていたが静音は間一髪でこれを防ぐと何とか押し返す。

 

 

(…くっ!?は、早い…!!このっ!!)

 

 

負けじと反撃するが三つ目は静音を嘲笑うかのように頭上を軽やかに飛び超して攻撃を避けた。すかさず再び襲いかかり静音を追い詰めようとする。しかし静音も負けておらず、迎え撃とうと水の呼吸の構えを取る。

 

 

(水の呼吸・弍ノ型、水車(みずぐるま)!)

 

 

三つ目より少し先に行動した静音は水の呼吸の技を放つ。三つ目にも劣らぬ速さで間合いに入った静音は弍ノ型である水車を繰り出す。そして攻撃が先に命中したのは…

 

ザンッ!!

 

「グォォォ!!」

 

(やった…!!斬れた!)

 

 

勝負に勝ったのは静音だった。水車を食らった三つ目は身体を真っ二つに斬り裂かれ、それと同時に血が周りに飛び散る。何とか幻魔に勝利したと安堵する静音だったが戦いはまだ終わっていなかった。着地した静音の背後からもう一つの影、その正体は…

 

 

「嘘っ…!?しま…」

 

 

なんと三つ目はもう一体居たのだ。一体だけだと油断していた静音は完全に無防備になっており、攻撃を避ける余裕は無かった。しかし…

 

 

「グォォ!?」

 

「え…!?」

 

 

襲われる瞬間、三つ目は頭部に何かを撃ち込まれそのまま動かなくなった。その頭に刺さっていたのは矢だった。飛んで来た方向に目を向けるとそこには弓を構えた左馬介の姿があった。

 

 

「大丈夫か?静音」

 

「は、はい…助かりました…左馬介殿が居なければ私は…」

 

「まったく!油断し過ぎだよ!幻魔は一体だけとは限らないの、もっと注意しなきゃ!」

 

 

左馬介に手を借りながら起き上がると静音は倒した幻魔をじっと見つめる。すると倒した二体の幻魔の身体が溶けて崩れると中から桃色をした魂のような物が出現した。

 

 

「これが…幻魔の魂ですか?」

 

「ああ」

 

「そうだよ。さあ、吸収して静音」

 

 

静音は左馬介から受け取った数珠を魂に向ける。すると魂が静音の数珠に徐々に引き寄せられ最後には数珠の中に吸い込まれてしまった。

 

 

「これで魂の封じ込めは完了だよ」

 

「な、なるほど…」

 

「これから幻魔を倒したらこうやって魂を吸収してね」

 

 

無言で頷くと静音はしばらく幻魔の血痕を見て立ち尽くしていた。

 

 

(半信半疑だったけど、あれが幻魔…あんなのがこの時代にいるなんて…信じられないよ)

 

 

左馬介と阿児から聞いてはいたがこうして直接目にして戦ってみれば自分の考えが甘かったと思い知らされた。先ほどの三つ目も左馬介が言うには下等幻魔と呼ばれる実力の低い幻魔らしいのだがそれでも静音から見ればかなりの強さだ。

 

 

「さっきのは"三つ目"だね。やっぱりこの時代に幻魔の残党がいるのは間違いないみたい」

 

「ああ、しかし奴らは何を企んでいるんだ?」

 

「う~ん…さすがにまだそれは分からないや。きっとこの付近での事件の犯人はこいつらの仕業だよ」

 

「そうだ!拐われた子供を探しましょう!きっとこの辺りの何処かに…!」

 

 

その後、幻魔がいた裏路地付近を捜索すると拐われた子供を発見した。外傷は無く気絶していただけのようで三人は子供を保護した後、子供を親の元まで送り届けた。

そして陽は沈み、町が静まり返った夜のこと。

 

 

「はあ~疲れた…今日は大変だったなあ」

 

「でも、幻魔も倒せて子供も無事だったんだからいいじゃない」

 

「そうだな、今日はそれでよしとしよう」

 

 

宿場・秋風に戻っていた三人は部屋で休息を取っていた。夕食も済ませ後は寝るだけだったのだが、阿児の提案で今宵は遅くまで語り合おうということになったのだ。そんな時、静音が左馬介にある質問をした。

 

 

「あの…左馬介殿、前からお聞きしたかったのですが」

 

「ん?何だ」

 

「左馬介殿って、お幾つなんですか?ずっと気になってたんですけど…」

 

「…四十と九だ」

 

「……はい?」

 

それを聞いた静音は目を丸くする。

 

「えっ!?じ、冗談ですよねっ!?その顔で四十九歳なんてあり得ませんよっ!!」

 

「嘘じゃないよ、左馬介は鬼の力で老化が遅くなってるの。顔が変わらないのも鬼の力の影響だよ」

 

「あ、あはは…す、すごいなあ、鬼の力って…」

 

 

二十歳後半ぐらいかと思ってたのに…と静音は内心驚愕していた。そんな何気ない会話を三人でしていると突如、部屋の窓から何かが侵入してきた。部屋に入って来たのは烏だった。

 

 

『伝令…伊角静音…至急、那多蜘蛛山ニ急行スルデゴザル』

 

 

なんと烏が言葉を発したのだ。しかし烏天狗の少女や幻魔などを見ている左馬介はまったく動じない。この烏は鎹烏と言って鬼殺隊の隊士一人一人につけられ鬼殺隊本部からの伝令を伝えるのが主な役目だ。このように人の言葉を喋れるほどに知能が高く一匹一匹の性格もまったく異なるのだ。

 

 

『静音…任務ダ…準備スルデゴザル』

 

「ありがとう。伝令ご苦労様、闇丸」

 

 

静音の鎹烏の名前は闇丸(やみまる)。片目に傷跡があり喋り方も落ち着いた口調で話すが何故か語尾に"ござる"をつけるなど昔の武士のような喋り方をするのが特徴だ。

 

 

「へぇ~烏で伝令を伝えるのか。こっちの時代では鳩を使ってたんだけど、変わったんだな~」

 

『ナッ!!?ナント美シイオ方ダ…!拙者、闇丸ト申ス。以後オ見知リオキヲ…』

 

 

阿児を見た瞬間、闇丸の顔が若干赤くなる。烏の視点からでは阿児はかなりの美人に見えるようだ。美しいと言われて嬉しかったのか阿児も満更でもなさそうな表情をしていた。

 

 

「ふ、ふ~ん…よく分かってるじゃない。あたいは阿児よろしくね」

 

『阿児殿カ…良キ名前デゴザルナ』

 

 

そんな二羽の烏たちを放置して、左馬介と静音は闇丸が伝えた指令について話をしていた。指令のあった那多蜘蛛山…そこでは前々から鬼による犯行と思わしき事件が多発しており強い力を持った鬼が潜んでいると以前から報告があったのだ。

 

 

「次の場所は那多蜘蛛山…」

 

「その山に鬼がいるのか?」

 

「はい、以前から鬼の情報が入っていました。鬼殺隊の隊士も何名かがこの山で行方不明になっています」

 

「俺も同行して構わないか?」

 

「もちろんです!左馬介殿のご助力があればすぐに鎮圧できます。どうか力を貸してください」

 

 

こうして左馬介と静音の新たな行き先は那多蜘蛛山に決まり、まだ見ぬ凶悪な鬼が潜むこの山に三人は歩みを進めようとしていた。




次回から原作の那多蜘蛛山編に突入です!
実は鬼武者から新たな登場人物を出そうと思っています!お楽しみに!
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