狩人様の英国魔法界観察録   作:黒雪空

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職場が大変な事になってしまい、なかなか続きを書けずにいました…。

アーマードコア6発売が近くなって気が狂いそうなので、興奮を落ち着けるためにも書きました。



ロンは純正魔法族の子なので、生き物が爆ぜても、現在自分に直接向かう外敵が居なければわりと平気なんじゃないかなって。
だって、新しい呪文作ろうとして当人が爆発四散したり、わりと倫理観バグってる種族だし…魔法族…。


その夜に

 

ホグワーツの夜が揺らぎ、静まり返たった城内に小さな少年が形作られた。

 

もしもそれを目撃した者が居れば、地上で最も悍ましい生物の称号は吸魂鬼よりも、その子供の方が相応しいと考えただろう。

実際の所、その子供は地上の生き物どころか、次元の異なる存在なのだが、そんなもの低次の存在には理解できない。だからそこ『わからない』ものを悍ましく思うのだ。

 

城内に降って沸いた、灰色の髪に青い目の子供はふむ、と小さく首を傾げ、自身の体を見下ろす。

 

「保護者らしくはないな」

 

薄気味悪いことに、悍ましい子供は当然の様に人間の言葉を口にした。幸い、その場にはゴーストさえもおらず、子供の言葉は夜闇に吸い込まれて消えた。

 

「こんなものか」

 

そうひとつ頷いた時には、少年の背丈は大きく伸びシルクハットの紳士を形どっていた。

青褪めた瞳をぐるりと巡らせ、ゴーストや絵画たちさえ静まり返った城内を見渡し、まるで勝手知ったる自宅のように迷わず足を進める。

 

辿り着いた先は医務室。

暗く静まり返ったそこは、予め人払いがされておりベッドが一つ埋まっているきりだった。

ひとつのベッドに幼い少年と少女が、お互いを庇うように抱きしめ合い眠っている。まるで人間のように、穏やかな規則正しい寝息が聞こえた。

 

自身の子の穏やかな寝顔を見た父親がやるような、ささやかな微笑みを浮かべ、白い頬をそっと撫でる動作をとる。

 

「すまんの。せっかくわしらを信用し、大事な『子供』を預けてくれたというのに」

 

静まり返った医務室に、穏やかな声と一緒に長身の人影が現れる。

 

「なに。気にすることはない。既にここまでの経過は得ている」

 

我が子を愛おしむような表情を作り、労わるように優しく撫でる動作を取りながら、悪夢が形をもったような紳士はなんの感情の機微も籠らない声音で言う。

それは薄気味悪さに拍車をかけている。

 

くるりと悍ましい男はダンブルドアに向き直る。

 

「私の『こども』はいくらでも代えがきくが、貴公の駒はたったひとつだろう? もう少し慎重に扱ったらどうだね」

 

穏やかに輝く海面の様な青の瞳と、寒々とした月光の様な蒼い瞳がかち合う。

 

「これからも『人らしく』在りたいのなら、ソレはやめた方がいい」

 

にっと男の表情が今まで一番人間らしく歪む。

ダンブルドアはふう、と一つ息を吐き出して真正面からぶつかり合っていた視線を外し、ふるりとやるせないというように首を振る。

 

「あのこには、巨悪に立ち向かう力必要なのじゃ」

 

そうか、そうか、と男は辛うじて人間らしく見える笑みで頷くが、それ以上は何も言わない。

 

「……さて、ここは保護者らしく『何があった』とでも聞くべきだろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トロールの侵入によるパニックの中、上級生に先導され始める子供の流れを器用に横断し、物凄い形相のアルフレッドが接近してきた。

 

「アリアナは?」

 

怒った風でもないくせに、冷たく硬い声音にびくりとする。

常に動いて居る生徒達の中にアリアナの姿を見つけられないのに気づいて、慌ててスリザリンの生徒たちの中からやってきたのだろう。

 

「分からない。見てない。ああ、違う。多分、ハーマイオニーの所だ」

 

ちらりと女子たちがそんな話をしていて、アリアナが席を立った気がした。今日はアルフレッドが近くに居ないから、意識の三分の一位、彼女の方へ向けていたのだ。

 

「では彼女はどこに?」

 

その問いにも、ハリーとロンは首を振る。

 

「寮に戻ってるかもしれないけど……」

 

年長者染みたアリアナの手腕なら、ハーマイオニーを宥めて、早々に寮に帰っている可能性もある。

 

「……ありがとうございます。探しに行きます」

 

少し考え込むようにした後に、すぐさまそう結論を出し一人駆け出そうとするアルフレッドの腕をハリーが掴む。

 

「僕も行くよ」

 

その発言にロンがぎょっとした顔をして、ぎゅっと口を引き結んでから重々しく頷いた。

女の子二人が危険に瀕している要因は、自分にあるという意識があるのだ。

 

「先生や、パーシーに見つからないように、慎重に行こう」

 

「わかりました」

 

三人頷き合い、身を屈め同寮生の列から抜け出す。

確か女子たちはハーマイオニーがトイレで泣いている、と話すのを聞いていた。既にアリアナが宥めて大広間に戻らず寮に戻っていればそれでいい。

廊下を走り女子用のトイレへ急ぐ中、アルフレッドが急に足を止め、ハリーとロンの腕を掴み角を曲がろうとするのを引き戻す。

 

「誰か来ます!」

 

「パーシーに気づかれたかな?」

 

同い年とは思えない腕力で腕を引かれてよろめくロンが焦ったように、曲がり損ねた角から恐る恐る顔を覗かせる。

 

「いえ。足音的にあなたのお兄さんではなさそうです」

 

アルフレドが否定すると同時に、三人の目前をスネイプが駆けていく。

 

「Missグレンジャーは授業を疎かにする人物ではないですし、午後の授業に出ていなかったのを先生方も気づいたのでしょうか?」

 

「それだったら、マクゴナガルが行くんじゃないの?」

 

女子トイレにこもっているという情報は知らないにしても、同性の、そのうえ寮監の教師が探しに行く方が理に適っているだろう。現にスネイプは誰かを探すそぶりはなく、例の四階へ向かっていく。

 

「……獣?」

 

「え?」

 

スネイプの行く先を目で追っていたハリーは、アルフレッドの小さな呟きに振り返る。

 

「お二人は下がってくだ」

 

二人には聞こえない何かに耳を傾けるようにしてからアルフレッドが続けようとするが、その前に酷い臭気が辺りに漂い、首を傾げていたハリーとロンもナニカの存在に気づく。

 

酷く醜い、くすんだ灰色の巨体がのっそりのっそりと歩んでいる。悪臭もその愚鈍な生物から漂っていた。

哀れな程に小さな頭部と、不格好に短い足。だらりと長い腕の為に握られた棍棒がごりごりと床を擦る。

ハリーとロンが、恐ろし気な巨体に息を潜め、アルフレッドはあれがトロールなのかとぱちくりと瞬く。

 

アルフレッドから見れば、取るに足らない相手に感じる。

父が時々狂ったように狩り続ける『デブ』の方が若干小ぶりだが、今目前に居る愚鈍の実体化のような生物よりも厄介だろう。

それに相手は一体だ。

 

問題なく狩れる。

 

アルフレッドはそう結論付け、夢と現の間に手を伸ばし己の仕掛け武器を掴もうとし、その手の触れたものに心臓が跳ねる。

何故、こんな物が自分の元にあるのかと、心拍数が跳ね上がる。

 

何故、あの忌まわしい処刑隊の、ローゲリウスの車輪を、自分が所持しているのだ。

 

アルフレッドの動揺など、正真正銘の11歳の少年たちに気づく術はない。目前のトロールへの緊張感でいっぱいいっぱいなのだ。

 

「鍵穴に鍵が刺さったままだ。あいつを閉じ込められる」

 

のっそりと扉をくぐり何等かの部屋に入った事で、トロールの姿が見えなくなり、幾分落ち着いたハリーが提案する。

いつあの巨体が振り向いて、廊下の自分たちを見つけ、棍棒を振り上げるのかと思うと、恐怖心が駆けあがり、緊張で喉がひりつく。

それでも動かなければ、と扉に飛びつき、素早く鍵を回す。

 

「やった!」

 

「アルフレッド! トロールを……アルフレッド?」

 

無事にミッションを達成した歓喜に飛び上がり、背後を振り返り、目を見開き硬直したアルフレッドに気づきハリー顔を顰める。

飛行訓練の時の比ではないほど、尋常ではない様子にもう一度友人の名前を呼ぼうとした瞬間、女子の甲高い悲鳴が上がる。

 

「しまった」

 

アルフレッドに負けない程、ロンの顔色も悪くなる。

トロールを閉じ込めた部屋こそが女子用トイレだったのだと気づく。つまり、今の悲鳴は……。

今度は慌てて閉めたばかりの鍵を開けようとするが、焦りのせいでうまく鍵が回せない。

 

「退いてください……!」

 

アルフレッドの大声に肩を跳ねさせ、反射のように二人は扉の前から左右に飛びのく。

それを確認したのかも怪しい勢いで、アルフレッドが走り込み、鍵の掛かった扉をけ破り破壊する事で開き、そのまま駆け込んいく。

いったいいつの間に、どこから持ってきたのか、馬車の車輪によく似たものを担いでいる。

 

呆気にとられる二人が何かを言う前に、トロールの背に向かって担いでいた車輪に見える重量のある物体を横凪ぎに叩きつける。

魔法族の子供にはいささかピンとこないし、非魔法族の子供だってそんな現場を目撃することは皆無に等しいが、トロールは大型重機に衝突されたかのように、肉も骨も破裂させた。

 

巨大な水風船が破裂したような音から、少ししてぐちぐちと血肉が滴る音がする。

 

しん、と静まり返った女子トイレ内に、ハリーとロンもおっかなびっくり踏み込む。

 

トイレの中はまさに地獄絵図だった。

破壊された内装の上に、臭い血肉がまき散らされ、床には生臭い血だまりが出来ている。

ハーマイオニーは呆然としたままどす黒い水たまりの上で腰を抜かし、座り込んでいた。この現状を作ったアルフレッドは、背中しか見えないが、アリアナがふらふらとしながらきょうだいへ歩み寄る。

 

「アルフレッド。それ、放したら?」

 

きょうだいの声に反応することもなく、じっと無残な生ごみとなったトロールの残骸の中に佇む。

肩で息をしていたアルフレッドが、がばりと顔を上げ、酷く歪んだ笑みを浮かべて、咆哮のように叫ぶ。

 

「父よ、血の女王よ! ご覧あれ! 私はやりました、やりましたぞ! 獣にも劣る醜い汚物を、潰して潰して潰して、ピンク色の肉塊に変えてやりましたぞ!」

 

ヒャハハハ、とまるで気でも狂ったかのような笑いで、高らかに叫ぶ。

焦点はどこにも定まっておらず、瞳孔が開き切っている。

 

「…………っ」

 

普段の姉ぶった態度をとるアリアナだが、その腰は引けている。『放したら』と言ったきり、中途半端に腕を持ち上げて固まってしまっている。

皆が金縛りにあったように硬直する中、ハリーが踏み出した。

 

「アルフレッド、アリアナが怖がってる。それは…、放した方がいいよ」

 

ひきつけのように狂笑を上げるアルフレッドに近づくのも、声をかけるのも、血肉に濡れた手に触るのも、心底怖かった。ただそれよりも、その異様な様子の友人をこのままにしていては、その数少ない友人を失ってしまう気がして、そちらの方がいっそう恐怖だった。

 

勇気を振り絞り、彼の手に触れる。

 

同じ歳で、しかも少しばかり後に生まれているはずなのに、年上の子のように大きなアルフレッドの手を掴み、トロールの生臭い血肉をまとわりつかせた車輪から引きはがす。

数秒前まで命だった粘つく汚物よりも、今生きているアルフレッドの手の方がずっと冷たく感じた。

 

「……大丈夫?」

 

ゆっくりと、手を引きはがすと、アルフレッドはぴたりと口を閉ざす。

返り血塗れで分かりつらいが、すっかり血の気が引いて蒼白になっているアルフレッドの顔を覗き込むが、返答はない。ただ、芒洋とした表情のままこくりと一つ頷いた。

 

「ハリー…! ありがとう! 本当に、ありがとう!」

 

普段大きな声を出すことのないアリアナが、叫ぶように名前を呼んで、アルフレッドの手を掴んだままの手に、細い指を重ねて強く握りしめる。

彼女の手が震えている事に、やはりとんでもない異常事態だったのだと思い知ると同時に、アルフレッドの手を握ることが出来て、本当に良かったと詰めていた息を吐き出す。

 

友人を失わずに済んだ。

 

「……えっと、大丈夫、じゃないよね。これ、使いなよ」

 

事態についていけず、座り込んでいたハーマイオニーにロンがくしゃくしゃになったハンカチを差し出す。

当のハーマイオニーは、まさか自分を毛嫌いしている相手がそんな行動をとるとは思ってもおらず(それに、なにかといい加減な彼がちゃんとハンカチを携帯していることにも意外さを感じた)、きょとんとロンを見返す。

もっと他に、驚き、反応すべきことはあるのだが、幼い人間の子供のキャパシティーは当に限界を超えており、魔法という非常識に触れたばかりの彼女には、それ以上の『非常』を受容することが出来なかった。

その結果、まだすんなりと理解できる目の前の小さな驚きにのみ、反応を示した。

 

「ほら」

 

「あ、ありがとう……」

 

いつまでも呆然と固まっているハーマイオニーの手を取って、立たせて、ハンカチを握らせる。

ハンカチ一枚でどうにかなる汚れではないが、確かな思いやりはあった。

 

「いったいこれは、どういうことなんですか⁉ いったい誰が……」

 

相変わらずの地獄絵図を背景にだが、何となく危機がさった空気に、慌ただしく駆け込んできた教師三名の内、マクゴナガルが鋭い声を上げた。

残りの二名、クィレルはトイレを覗き込んだ瞬間硬直しその場にへたり込み、スネイプは目を見開き、辛うじて形の残ったトロールの下肢を見、異物である車輪へ視線を向けた。

 

「誰か……説明を……」

 

あまりの現状に、心臓でも痛んだのか胸を押さえながらも、姿勢正しくマクゴナガルが問いかける。

 

「説明が欲しいのはわたしたちなんですが」

 

すっかりいつも通りの穏やかに美しい微笑を浮かべたアリアナがこてんと首を傾げ、真っすぐに教師たちを見つめる。

 

「先生たちも知っている方は居ると思うのだけど、今日は午後からハーマイオニーちゃんがずっと授業に出ていなかったの。お夕飯の時間になっても、現れないんだもの。探しに来たら、気分が悪くてずっとトイレに居たらしいの」

 

責める口調ではないが、年齢に似つかわしくない立ち居振る舞いは、若輩者たちが自ら間違いに気づかせる為にゆっくりと事実を羅列しているように見える。

 

「それで、気分も少しよくなったようだから二人で大広間に戻ろうとしたら、この獣が現れたのよ。アルフレッド達が来なければ、わたしたち何も分からないまま死んでいたのだけれど、いったいどういうことなのかしら?」

 

うふふ、と本当に『不思議、どうして?』とでも言う顔で可愛らしくアリアナは教師たちの目を、あの、全てが『見えている』かのような瞳で覗き込んだ。

 






アリアナ・ハントの含有物
ユリエ+アリアンナ+アイリーン

アルフレッド・ハントの含有物
流血鴉+アルフレート+???



アリアナは、既にアイリーン成分を必要の部屋に置いてきちゃいました。
アルフレッドのもう一人入ってる成分は、殆ど表出しません。参照した人物が狩人様にとって、他の人物と別区分に入っているので。

ステ振りのようなものと、使用武器もわりと参照元に引っ張られていますが、狩人とは別種の生き物な上、一応まだ幼体。成長中という扱いです。

しかしアルフレッド、11歳(仮)で最低でも筋力20はあるの、だいぶアレ。
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