彩りの少女たちとの日常   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。

 今回は前回の続きとなっておりますので、前回までのお話を読んでもらえたら今回のストーリーが読みやすくなるかと思われます。


 それでは、スタートです。

 最後までごゆっくりお楽しみ下さい。


第五話

「……ふふっ、何回見ても颯樹は最高っ♡」

 

 

 長期間に渡るお仕事を終え、愛しの彼とも離れて自宅に帰還して暫くした頃、私は自分の部屋でアルバムを開きながら、その傍らにパスパレの曲を流して、一人机に向かって思い出に耽っていた(もちろん妹や母に迷惑にならない様に、片耳イヤホンをしてる)。

 

 

「私たち、本当に色んな事があったわよね……。幼稚園の時は遠足のおやつを買いに来たにも関わらず、私が迷子になって泣きじゃくってしまって。そして、そんな私を颯樹が見つけ出してくれた……まあ、その後に確り怒られちゃったけど」

 

 

 颯樹との思い出を振り返りながら、私は少しずつページを捲って行く。どの写真を見ても、どんな書き込みを見ても……彼と紡いで来た思い出が昨日の事の様に思い出せてしまう。

 

 

 颯樹が一度東京を離れるまでは、薫もそれなりに可愛かったのに……それが今では何処へやら。道行く女の子達の視線を一手に寄せ集めて、さも当然と言わんばかりにキザな台詞でその心を掴み、羽丘の王子様として振舞っている。私の何が影響を与えたのか知らないけれど、本人は至って真面目にやってるのだからこれまた質が悪い。

 

 ……薫も颯樹の前では可愛い所を見せるのだから、それが自然に出来れば大丈夫だと思うのだけれど……それが叶うのは一体何時になるやら分かったもんじゃない。

 

 

「……本っ当に颯樹と薫は大違いね。私は颯樹みたいな何でも素直に答えてくれる人が好きなのに」

 

 

 そこまで言った所で、私の口から溜め息が出てしまう。

 

 

 ……私の心は、もう全て颯樹に奪われてる。

 

 彼の事を考えない日を数える方が少ない程には、私は颯樹に対して恋をしてるんだ、と自覚してる。それは彩ちゃんや花音にとっても同じ事だし、他のメンバーだって少なからずそう思ってるはず。

 

 

 だけど、負けないわ。

 

 最後に笑うのはこの私よ。……例え、どんな障害が立ちはだかったとしてもね。

 

 

『千聖〜、ちょっと良いかしら〜?』

「っ!?」

 

 

 そんな言葉と共に部屋に入って来たのは、母だった。妹は既に自室に入って勉強をしているとの事らしく……その激励の為に軽食を持って行く途中みたいで。その最中で私の呟きが聞こえて来た為、今現在入室していると言う次第だ。

 

 

「随分と思い出に耽っちゃって……。やっぱり颯樹くんと出会えたのは間違いでは無かったわね」

「……そうね。彼が居なかったら、と思うと……想像も出来ないわ。それくらい、私にとって颯樹は大切な存在」

「……そう、それが聞けて安心した。貴女の将来……貴女がウェディングドレスを着て、颯樹くんの嫁に行くその瞬間まで……私に見守らせて頂戴」

 

 

 母はそんな事を言って、私の肩に手を置いて来た。

 

 彼の周囲には想い人が沢山居るなんて、そんなのハナからわかってる。なら、全力で奪うまで。他のオンナの手が届かないくらい、強く……深く。一生消えない痕を刻んでみせるわ。

 

 

「ありがとう、お母さん」

「ふふっ。それでね、千聖。少しお母さんから頼まれ事をしてくれない? もし引き受けてくれたら、そのまま颯樹くんの家にお泊まりして来ても構わないわ♪」

 

 

 颯樹の家に……お泊まりですって!?

 

 

「分かったわ。それで、その要件って?」

「あら、予想通りの反応をありがとう。えっと、その頼み事って言うのは……」

 

 

「もしかして、お母さんはこうなる事を事前に見越していたのかしら?」

 

 

 彼の家までのちょっとの距離を歩く私が持つのは、先程母から手渡されたおかずの入ったタッパー。どうやら今日の夕食で食べた回鍋肉を少し作り過ぎてしまったみたいで、それを颯樹の所にお裾分けと言う名目で持って行って欲しい……との事だった。

 

 

 お隣同士で幼馴染とは言っても、あくまでも私たちは他人である事に変わりない。だからこそ、正当な手段で渡しに行こうと思うけれど、それが終われば後はこっちの領分。

 

 ……ふふっ、彼の驚く顔が楽しみね♪

 

 もう寝る前のその時だったら、私もそのご相伴に預かる事が出来るし……何より、愛しの彼と一晩を共に過ごせるなんて、私にとっては好機以外の何物でも無い。

 

 

「……っ、開いたわ♪」

 

 

 私は彼の家の前に着き、鍵を取り出して解錠を行った。

 

 そして家のドアノブを右に回して、颯樹の家の中に入ろうとしたわ。……と、ここまでは良かったのだけれど……。

 

 

「ダーリン、少しお母さんからお裾分k……っ!?」

 

 

 そんな事を言った直後に、私の顔スレスレを通る謎の影があった。それは家の中にある物で且つ、投げても大して痛みを伴わない物になる……でも、私が言いたいのはそんな事じゃない。

 

 その物体が飛んで来た方向を見ると、私の方を見て顔を真っ青にしている日菜ちゃんと……それを見て驚いている京介くんやつくしちゃん、透子ちゃん。それに、トイレの前に居る颯樹の姿が目に入った。

 

 

 颯樹がトイレの前に居るのは、大方彩ちゃん絡みね。彼女は大のホラー苦手だもの……そうなる気持ちも分からないでは無いわ。でも、日菜ちゃんに関してはそうさせてしまった前科持ち。更に透子ちゃんは、聞けば今回の事案を持ち込んで来た元凶……だったら。

 

 

「日菜ちゃん……。私に向かってクッションを投げるなんて、随分と身の程知らずじゃないかしら?」

「ち、千聖ちゃん……」

「「ち、千聖先輩(さん)……」」

 

 

 私の顔を見た4人が何やら震えているけれど、私にとってはそんな事は二の次三の次。まずは要件を済ませてしまわないとね。

 

 

「颯樹、少しこっちに顔を貸して?」

「ん、良いけど……どうしたの?」

 

 

 そう答えて彼が私の元に駆け寄って来る。

 

 彩ちゃんには少しだけ寂しい思いをさせてしまうけど、直ぐに終わる事だから問題無いわ。

 

 

「はい、これ。お母さんからお裾分けよ」

「何これ……おぉ、回鍋肉だ。と言う事は作り過ぎた?」

「ふふっ、察しが良くて助かるわ♪ 一度冷蔵庫の中に入れておいて、また私がここでお泊まりをするとなった時に、一緒に食べましょっ♡」

「……そうだね、ありがとう。美凪さんには改めてお礼をしに行こうかな。貰いっぱなしは性にあわないからね」

 

 

 それでこそ、私の愛するダーリン♪

 

 ……さて、次はあの二人ね。

 

 

「ち、千聖ちゃん……? 顔が、怖いよ……?」

「そ、そうですよ千聖さん! アタシらみたく笑顔の方が」

「……ダメだ、今のちーちゃんにそんな事言ったら!」

「え?」

 

 

 私のダーリンをこんな事に勝手に巻き込んだ挙句、剰え笑顔の方が、ですって……? しかも時間帯は夜遅くじゃない……日菜ちゃんや彩ちゃんに関しては散々注意しているのだけれど、言って分からないなら力ずくで分からせようかしら…っ!

 

 

「……そう。二人はお説教よりも、お調教の方がお好みらしいわね?」

「「お、お調教!?!?!?!?!?!?!?!?」」

「と、透子ちゃん……」

「……こればっかりは、南無三だな」

 

 

 呆気にとられている京介くんとつくしちゃんを他所に、私は日菜ちゃんと透子ちゃんを引き連れて、地下に設置されているスタジオへと連れて行く事にしたわ。それを見た颯樹はと言うと、トイレのドアをノックして彩ちゃんを呼んでいた。

 

 ……まあ、これ以上彩ちゃんを放っておいたら後がうるさいから、この行動に関しては目を瞑りましょうか。

 

 

「ちーちゃん」

「あら、ダーリン。なぁに♪」

「……その二人に関しては今回の元凶だ。後処理はどうぞご自由に」

「「そ、そんな薄情なぁぁぁぁぁっ!!!!!!」」

 

 

 ……あら、それは良い事を聞いたわ♡

 

 

「勿論、ナニをしても良いのよねっ?」

「構わん。許可する」

「はい、承りました♡」

「「あっ……」」

 

 

 さすがダーリン。そうよね、たっぷり……オシオキしてあげないと行けないわよねっ♪ ふふっ、今からこの二人が悲鳴をあげる様が楽しみだわ♡

 


 

「行ってしまったか……。」

 

 

 その後日菜先輩と透子は、何の前触れも無く家を訪れてきた千聖さんにお説教……もといお調教を受けるため、リビングを後にした。部屋を出て間もなくして、(つんざ)く様な二人の悲鳴が聞こえたのは気のせいだな、うん。そうだと思いたい……。

 

 

「……で、京介先輩。誰が操作するんですか?」

 

 

 俺が軽く現実逃避をしていると、つくしからのまだやりかけのゲームの操作は誰がするのか、と言う声で現実に戻った。

 

 

「……仕方ない、俺が操作するよ。異論は無いか?」

 

 

 此処は俺がやろう。……と言うより、消去法で俺になるんだろうな。だって、颯樹さんは既にラストまで知っている身だから、盛り上がりに欠けてしまう。彩さんとつくしは勿論論外、この二人はホラー系がてんでダメだからね。

 

 もし此処に千聖さんがいたら話は変わるけど、当の本人は日菜先輩と透子(愚か者二人)を調教してる為に不在だ。

 

 

 そして颯樹さんも構わないようで首を縦に振った。

 

 一方、トイレからは彩さんが『い、いいよぉ……』と声を掛けてきた。しかもその声は完全に震えていたけどな。

 

 

 まあそんな事を考えても仕方ないので、ゲームのコントローラーを握ってゲームを再開した。しかし……。

 

 

「日菜先輩、セーブするの忘れてたな……」

 

 

 俺の目の前に表示されている画面には、三つある選択肢の内の真ん中が灰色となっていた。それを見た俺と颯樹さんはあの人らしいと思ったのだが、つくしの方はと言うと一瞬で背筋を凍らせていた。

 

 

 ……とどのつまり、最初からやり直し、と言う事だ。

 

 ノーセーブ縛りでやろうと思えば出来るのだが、そんな事が出来るのは余っ程の天才か、判断力と思考力に優れていて尚且つホラーに耐性のある人間がする物だ。

 

 

「……少々手間だけど、最初から頑張るか」

 

 

 そう溜め息を零し、俺はコントローラーを持ってゲームを再開した。最初の所等は一通り見て流れは掴んでいた為、各所でこまめにセーブを取りながら、第3パートの後半……日菜先輩が余裕かましたせいでGAME OVERになった箇所まで進めて行った。

 

 

「……よし、終わった」

 

 

 GAME OVERになった箇所からピエロに追いかけ回されたり仕掛けを慎重に解いていく事数十分……。やっと執拗に追いかけてくるピエロを始末出来たかと思えば、また電車の中に戻って挽肉のコールが流れてきて、また何処かのステージでピエロに追いかけ回されるのを覚悟した俺らだが、急に夢から醒めてプレイヤーはやっと現実世界に帰ってこれたのであった。

 

 

 その証拠に主人公の少女は精神的にきてたのか、夢から醒めたのを自覚したと同時に号泣したのであった。そしてメインキャラの口から《猿夢》という言葉が出てきて、この章は終わりを告げた。

 

 

「あら、やっと一つの章を終わらせたようね?」

 

 

 ちょうどその時、日菜先輩と透子(大馬鹿者二人)の調教を終えたであろう千聖さんが俺らと合流してきた。

 

 

「お疲れ様っス、千聖さん。」

「ありがとう京介くん♪ でも京介くんの方も随分とお疲れのようね?」

「まあ、この話が長かった上に、執念深い道化(追跡者)と追いかけっこが多かったから、かなり手間取りましたけどね」

 

 

 確かにこの章は長かったよ……。

 

 何度もピエロが出てきて、追いかけてきては物に隠れてやり過ごす……というのが少なくとも3回くらいあったよ。流石の俺もそこから回数なんて数えるのを諦めた程だ。

 

 

「でも京介、この章をノーミスでクリアするなんて大したものだよ。 此処で大半のプレイヤーはミスして、さっきの日菜のようにGAME OVERになる事が多いんだ」

 

 

 すると颯樹さんから俺に対して称賛の言葉を頂いた。

 

 どうやら話を聞く限りでは、此処で躓くプレイヤーが後を絶たない様だ。まあ此処にはつくし(とトイレにこもりっきりの彩さん)がいたから、早く終わらせるに越した事はないんだけどな。

 

 

「それで京介先輩、次も先輩がプレイするんですか?」

 

 

 そしてつくしは次のプレイも俺がやるのか尋ねてきた。確かにお前の言いたい事はわかるよつくし。誰かしらにプレイさせなきゃ駄目だしね。

 

 ……話を戻そう、次のプレイヤーだけど俺にいい案がある。それは……。

 

 

「……彩さん、次は彩さんがプレイしなよ?」

「「え? ……エェェェェェェェ⁉︎⁉︎⁉︎」」

 

 

 此処で俺は彩さんにプレイさせようと、トイレの前に腰掛けて声を掛けた。それを聞いたつくし(とトイレに篭ってる彩さん)は驚きの声を上げた。

 

 

「何言ってるの京介くん! 私にもホラゲーをさせるの⁉︎」

 

 

 もちろん彩さんは断りの言葉をあげた。

 

 ……そのくらい想定内だよ。()()アンタをその場(トイレ)から引き摺り出すとするよ。

 

 

「あーあ、此処には千聖さんがいるのに残念だったなぁ」

「……それ、ホント?」

 

 

 すると俺の言葉を聞いた彩さんは、かなり食い付き気味で俺を尋ねた。うん、計画通りだな。これは美竹と良い勝負かもしれない。

 

 

「ホントだよ。それにアンタ、そのまま千聖さんにいいとこ取りされてるつもり?」

 

 

 更に俺は彩さんに対して、冷たい言葉をかけた。すると彩さんは俺の挑発に乗った様で、そのままトイレの扉が開かれた。その瞳にはやる気が漲っていて、今にも見せつけてやると言わんばかりの物だった。

 

 

「京介くん、最後は私がやるねっ」

「……やる気、出ましたか?」

「うん。千聖ちゃんばっかり良い格好させる訳には行かない……それに、こんな事で怯えてちゃいけないよっ!」

「その意気です、彩さん」

 

 

 先程俺が彩さんにかけた言葉が、余程の効力を持っていたらしく、隣に颯樹さんをスタンバイさせるのは変わらなかったが、その様は今までトイレに引き篭もりっきりだったとは言わせない程には、キリッと引き締まっていた。

 

 

 ……さあ、怪異との対決も、これで終いにしようか。

 

 俺たちはそんな彩さんを見守りつつ、最後のCHAPTERへと目を向ける事にしたのだった。




 今回はここまでです。如何でしたか?


 次回でこの『怪異症候群』パートも最終回となりますので、更新をお待ち頂けますと幸いです。


 それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
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