八月も終わって九月となりましたが、まだ暑い日が続いていますね……。ここ暫くは残暑もありますし、近いうちにまた雨も降るとの予報が私の居住地域でも出ているので、風邪をひく等の体調不良には気をつけたいものです^^;
さて、今回のお話ですが……少し、現在進行形で進められている『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の時系列に合わせまして、何話か閑話休題のお話をしようと思います。
ただこれメタい話をするなら、あるキャラの出番が本編中で驚くくらい少なくなっているのと……もう一つの理由が、この作品の前Partが6話で終わっているので、その帳尻を今回のテーマで合わせようと思ったのがきっかけです。
前書きもそこそこにしまして……。
それでは、本編をどうぞお楽しみ下さい。
第一話
「えへへっ、擽ったくて気持ちいい〜」
「お気に召して貰えて何よりだよ。風は熱くない?」
「ううん、このままで大丈夫♪」
そんな言葉を交わしながら、僕は花音の髪を手で櫛の様に梳かしつつドライヤーをかけていた。自分に偶にかかってくるドライヤーの風が心地良いらしく、彼女は目を片目だけ閉じてはいるが、その口元は笑顔を浮かべていた。
花音の髪を梳かすのは、過去に何度かお泊まりをした際に担っていたのだが、その度に香ってくる甘い香りに何度悩殺されそうになったか……今となっては数えきれないくらいだ。
同じシャンプーを使っているのに、この差は一体何だろうと考えこそしたけれど、こんなのは些事だと今なら思う事が出来ていた。
……どうして、こんな状況になったのか。
と言う疑問を持つ人も多いだろうが、実は約3ヶ月程前に僕や花音に……ここには居ない千聖も含めて、花咲川学園を無事に卒業したのである。そしてその直後にルームシェアを始め、それから少し経った頃合に大学生となったのだ。
最初こそルームシェアを3人でする、と言う意見には身内からの異議申し立てこそ無かったものの……彩からの必死の抵抗が繰り広げられていたのをよく覚えている。
僕はそれをやんわりと断っていたのだが、女性陣の方はと言うと猛反対。色々な意見を言っては彩を論破し続け、終いには有る事無い事まで言い出した物だから、もうお察しだろう。
「ねえ、颯樹くん」
「ん?」
「このまま……ずっと、どんな時も一緒に居ようねっ」
「そうだね、花音」
僕は花音からそう言われた後に、ゆっくり彼女と唇を重ね合わせた。その際にドライヤーの電源は切ったので問題は無いが、お風呂上がりだと言う事もあり、お互いの身体が瞬く間に火照って行くのを感じていた。
今は僕の部屋で乾かして居て、熱中症対策にエアコンも付けている筈なのに……身体から発せられる熱が、それすらも意味を成させなくなっていた。
「んっ…あっ…、んんっ……ちゅっ」
「か、花音……まだ寝るには早いけど?」
「颯樹くんの髪を梳かす手が凄く気持ちよくて……もう、わたし……んんっ♡」
もうここまで来てしまえば、抵抗など意味は無い。
高校の時から異様に積極性はあるなと感じていたが、行動力の高さに加えて、普段の様子からは想像もつかないくらいの色気の強さ……そして、ここまで僕の事を慕ってくれている。
……なら、僕がやれる事は一つだけだ。
「……花音」
「ふぇぇっ?」
「……ずっと一緒に居よう。絶対に離さないから」
「……うんっ♪」
花音にその様な答えを返して、僕は目の前の彼女と更に濃密なひと時を……。
「「!?」」
「花音、颯樹。入るわよ?」
「う、うん大丈夫だよっ!」
「良いよ、ちーちゃん!」
僕たちはそう答えを返して、ノックして来た
「今さっき炭酸水を容れて来たから、もし良かったら三人で一緒に飲もうと思って持って来たの♪」
「あ、ああ……ありがとう、ちーちゃん。テーブルの上に置いてて貰えるかな」
「ええ、わかったわ♡」
部屋の中に入って来たちーちゃんの手元には、炭酸水の入ったコップが3つ木製のお盆に載せられていた。お風呂上がりは水分が無くなりやすいので、僕が緊急にネット注文をして購入したのだ。
そしてそれをテーブルに置いた後、ちーちゃんは僕たちの方にするりと近づいて来て、獰猛な視線を向けて来た。
「それにしても……。二人だけで始めてしまおうなんて、随分と私も見くびられた物ね……?」
「あ、あはは……な、何の事だか……ちょっ!?」
「……颯樹くんの事が、欲しくなっちゃったんだもんっ」
「あらあら、花音もすっかり颯樹の虜ね♡」
「微笑んでないで助けて!? ……あ、ここは僕と花音にちーちゃんの三人しか居なかったんだ。詰んだや」
目の前で獰猛な目付きとなった二人に、僕は全てを悟った様な眼をして受け入れた……のは、また別の話になるとして。僕と花音は先ほどちーちゃんが持って来てくれた炭酸水を、一口飲む事にした。
この中には味付のお酢……
最初にこれを見かけた時は、かなりの大特価で販売されていたので、無香無味の炭酸水だけだと物足りないと踏んで、この手の物を買った次第だ。
「すごく美味しい…♪」
「そう言って貰えると、買って来た甲斐があるよ」
「そうね。近くのお店では他の味も置いてあったし、美酢が安い時を見かけたら買っておく様にしましょうか」
そんな言葉を交わしながら、僕たちは炭酸水を少しずつ飲んで行った。そうして暫く経ち、二人も飲み終えた頃を見て僕から話を切り出す事にした。
「それはそうと……明日は出かけるけど、準備の方はできてたりする?」
「……あっ、明日だよね? 勿論出来てるよ♪」
「ええ。今年もとびっきり良いのを選んだから、楽しみにしていて頂戴♪」
「そっか。移動の方は僕と千歌の方で車を用意するから、心配しないで」
僕はそう言って二人に用件を伝えていった。
実は明日……僕たち三人に彩やイヴ、千歌や京介に七深を含めた8人で、ここから少し離れた海に出かける事になっている。当日までの時点で、他のメンバーには必要な道具等を揃えておく様に伝言をしている為、余程のトラブルが無ければ、明日のお出かけは滞り無く進められるだろう。
ただ、その最中に聞こえて来た事はと言うと……。
「……京介くんの方も苦労するわね……」
「あ、あはは……」
「そうだね。以前、千歌と一緒に羽沢珈琲店で会って話を聞く機会があったんだけど……京介も京介の方で、なかなか問題が山積みだよ」
僕たちの方も問題が多いには多いのだが、取り分けその苦労が強く感じられるのは京介たちの方である。ただそれは正確には、京介が……と言うよりも
モニカの方はと言うと、月ノ森の理事長が今年度から新しい人に変わった事で、少し唯ならぬ状況下に置かれたらしい。生徒会メンバーとして活動している瑠唯が筆頭となり、バンド活動を続ける為にあの手この手でやっているみたいなのだが、どうしてもその理事長先生が一筋縄では行かない様で。
それに加えて、いつもの透子の事もある……と来たら、僕も千歌も同情……と言えばまあそこまでなのだが、京介に降り掛かる苦労の重さを痛感してしまった。
「とは言え、明日はみんなでお出かけするんですもの……少しくらい、そう言う事は忘れてもバチは当たらないんじゃないかしら?」
「そうだね。行く以上は思いっきり楽しまないと」
「うんっ♪」
「じゃあ、私は後片付けをして来るわね。出かけるとなれば明日の朝は早いもの……早めに出来る事はやっておきたいわ」
そう言ってちーちゃんはその場から立ち上がり、コップを纏めてお盆に載せて立ち上がろうとした。
「待って」
「……颯樹……?」
「僕が片付けをして来るよ。女の子に頼りっきりなのは如何なものかとも思うし、それに……たまには、僕にもカッコつけさせてよ」
……普段から彼女にはお世話になりっぱなしだ。
こう言う時くらい、僕自身で何とかしなければ。
「……ありがとう、颯樹。でも、私がやりたいからやってるのよ♪ 花音と一緒に待ってて頂戴♡」
「……わかった」
僕はちーちゃんからの言葉を受けて、花音と先に歯磨きを済ませて、就寝準備まで終わらせる事にした。そして彼女も同じく終えたタイミングで、各々の部屋に入って眠りに着いたのだった(ちなみに部屋割りに関しては、男女各々で別々にしました(後からゴネられると困るので、先んじて手を打っておくってね))。
「おはよう、千歌」
「はい、おはようございます。颯樹。時間通りですね」
「これは事前に決めてた事だからね……自分がすっぽかしてどうするのさ」
そして翌日。
起床して朝食を食べたり出発準備を済ませた僕たちは、玄関先で待っていた……グレーの長髪を一部編み込みにしていて、涼やかな服装に身を包んだ少女である、千歌と合流した。その傍らには彼女の運転する赤い普通自動車が止まっていて……助手席に京介が座っており、そして後部座席に七深とイヴが座っていた。
「それじゃあ、僕たちは彩を迎えて来るけど……千歌たちはどうする? 海に先に行ってる?」
「いいえ、私も同行します。颯樹の車だけで行くと、出発までかなりの時間を要する危険性がありますので」
「……了解。それなら、先ずは車を出して来るね。千歌はその後ろから付いて来て」
「分かりました」
千歌とそんな会話を交わした僕は、花音とちーちゃんを連れて駐車場に止めてある自分の車へと乗り込んだ。ちーちゃんは助手席に乗り込み、花音は運転席側の後部座席に座った。
「……じゃ、行くよ。シートベルトはOK?」
「もちろんよ♪」
「うんっ♪」
二人からの同意が聞けた後に、僕はブレーキペダルを踏みながらシフトレバーをドライブに入れ、車を走らせた。僕の運転する車が駐車場から出て来たのを確認した千歌は、それに続く様に車を出したのだった。
そして残る一人の参加者である彩を迎えたのだが、彼女の方はどうやら
それを見た京介と千歌は呆れ顔になっていて、花音は苦笑いを浮かべていたが、七深とイヴは興味津々と言った様子だったのを付け加えさせて貰おうかな。
そんな事もありつつ、ドライブならではの事態に見舞われながらも、僕たちは目的地である海へと到着した。
『おぉ〜!』
「すごく綺麗だね〜」
「はいっ! こんな風景を見たら、思わず駆け出したくなりますっ!」
「イヴちゃん、花音ちゃん、行こっ!」
彩は車から降りるなり直ぐにイヴと花音の手を取って、海へと駆け出して行った。……イヴは笑顔だったけど、花音が若干焦り気味だったのは指摘するべきかな……。まあ、はしゃぎたくなる気持ちも分からないでは無いが。
「全くもう、彩ちゃんったら……」
「そりゃあこんな綺麗な海を見れば、はしゃぎたくなる気持ちも分かりますよ〜。しろちゃん達も来れたら良かったのに〜」
「あ、あはは……。あの二人は課題が終わってないって聞いたから、仕方ないと言えばそこまでだけど」
「……そうッスね。ましろは、まあそこまで心配してないが透子だしな」
「……ええ、全くです」
ちーちゃんが彩に対して毒を吐く一方、七深は目の前に広がる光景について感想を述べていた。彼女の言う様に、ましろ達も来れたら良かった、と言うのは僕も同意見だったのだが……その彼女と
その為今日は瑠唯とつくしが各々に着き、マンツーマン形式で終わらせると言う事になった様で(それに影響されたのか、バンド練習は今日は行わない方針らしい)。
……つくしとましろは百歩譲ってマシだが、透子と瑠唯の組み合わせは一番危険な気がするのは気の所為だろうか。あの二人は毎度毎度言い争いが絶えない様で、お互いの性格を考えればまだ分かるのだが、如何せんやり過ぎだと思えなくも無いのだ。
「まあ、起こっちゃった事を気にしても仕方ないよ。今日はめいっぱい楽しんで、後日お土産話でもしてあげよう」
「そうッスね。気持ちを切り替えないと」
「それじゃあ、私は千聖さんや七深さんと一緒にあの三人を捕まえてから着替えて来ます。颯樹は京介さんと協力して、敷物を敷いたりパラソルを張って頂けますか? これは力仕事になるので、お二人の力が必要です」
「了解、こっちは任せて」
そう言って千歌はちーちゃんと七深を連れて、駆け出した三人の捕獲と同時に更衣を済ませる為に、水着の入ってるであろう荷物を持って移動し始めた。
それを見た僕と京介は、車のトランクルームの方に回り込んでドアを開けて、パラソル等の道具を出してから準備をする事になった。まだまだ暑い日が続いているし、パラソルはそれなりに重さもあるので大変だと思うが、これからの事を考えたら、そこまで大変な事では無いだろう。
……さて、高校を卒業して最初の夏……思いっきり楽しもうか。
今回はここまでです。如何でしたか?
このお話の時系列は、前書きでもご説明しました様に『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』season3の時間軸となっております。その為、主人公を含むメンバーが進級または進学していますので、そこは予めご了承ください。
あと、ついで感覚にはなりますが……恋愛要素も確り出していこうかなと思います。ただ、その要素はいつものメンツで出すのは当たり前なんですけど……そこそこ出番が無かったキャラでも作ろうかと思ってますので、把握頂けますと嬉しいです。
それでは、また次回の更新にてお会いしましょう。
ちなみにこれは余談なのですが、先日前島亜美さんが芸能活動再開&新しい事務所に所属された事……そして、丸山彩の声優を続投すると言う報せを受けまして、現在彩をメインにした作品を短編感覚で一話(長くても二話程)執筆しようかと検討中です。
その話に関しては、また内容が決まり次第X(旧Twitter)で報告しようと思いますので、楽しみにして頂ければと思います。