彩りの少女たちとの日常   作:咲野 皐月

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 皆さま、おはこんばんにちは。咲野でございます。


 挨拶も簡単に済ませまして……今回お届けいたしますお話は、遂に1st chapterのラスト回となります!内容的には最後に相応しい物になっていると思いますが、投稿直前まで割と不安を感じておりました( ̄▽ ̄;)


 それでは、本編スタートです!


第五話

『……』

「みんな寝ちゃったね」

「そうだね。たくさん動いたから、その分だけ疲れも溜まってたのかな」

 

 

 パーティーの余興として行なった信号確認ゲームで、ひと騒動あってから約数分後……最後のお風呂を済ませた私と颯樹くんが目にした光景は、他のメンバー全員が床や布団などに思い思いに寝転がっている状況でした。

 

 

 私は四人を起こそうとしたのですが、颯樹くんからの指摘を受けて、床に寝ているイヴちゃんと麻弥ちゃんをベッドに運んで寝かせる事にしました。

 

 その配置としては、千聖ちゃんの隣にイヴちゃん、日菜ちゃんの隣に麻弥ちゃん、と言う感じで……窓際に4つのダブルサイズベッドがある形でした(四人が寝ている場所は全てテーブル側の二つ)。

 

 

「そろそろ……僕たちも歯磨きをして寝よっか。寝てるって言う事は、他のみんなは済ませてるって事だし」

「うん。あ、でもその前に……」

 

 

 私はそう言葉を続けた後、傍に居た彼の服の裾を掴んで合図をしました。それに気づいたのを見ると、ドアの方向を指差しでこう言う事にしたのです。

 

 

「……ねっ、みんなには悪いけど……ちょっとだけ、夜更かししちゃおっか♪」

 

────────────────────────

 

「んー! やっぱり外の風は涼しいね〜!」

「そうだね。この場所が海に近いからか、潮風も心地好くて夜の散歩にはバッチリだ」

 

 

 私と颯樹くんは、今泊まっている宿から少し離れた海岸沿いの道を歩いていました。こんな所を千聖ちゃんに見つかったら確実に大目玉を喰らってしまうので、他の皆にはこっそり黙って外へと出てきているのです。

 

 

「しかしまあ、本当に今日はビックリしたよ。まさか彩が自分で海の場所や宿の予約をしていたなんて」

「えへへっ、驚いてくれて私嬉しいな♪ 今回のこの場所はあまり人通りも少ないから、アイドルが隠れて休暇を過ごすには持って来いだと思ったんだ〜。それに、皆と一緒にお泊まりする機会ってあまり無いから、こう言う時にでもやりたいと思って♪」

「なるほどね」

 

 

 そう言いながらも、私たちは泊まっている宿からどんどん離れて、砂浜へと足を踏み入れました。一応ビニール袋は余分に持ってきているので、靴を脱いで袋に入れ、そのまま駆け出す事にしました。

 

 

「あっははは! ほど良く冷たくて夜の海もすっごく気持ちいい〜! ほらほら、颯樹くんもおいでよ!」

「全く……そんなに飛ばしてると、翌朝になった時に疲労が残っちゃう『ほらほら、行くよっ!』ちょっ、待てって!」

 

 

 彼の零した制止も気に留めず、私は颯樹くんの履いている靴を自分の靴が入っているビニールに入れ、右手を引いて海の方へ走りました。

 

 互いに寝間着を着ているとは言っても、半袖薄い生地の長ズボンだから、この涼しい風を受けたら少し寒いくらい……だったら、今しか出来ない事を思いっきり楽しんじゃおっ!

 

 

「うふふっ、それっ!」

「ちょっ!? ……彩、やりやがったなそれっ!」

「きゃあっ! ふふっ……もう一回、それっ!」

 

 

 互いの服が海水で濡れてしまう事もお構い無しに、私たちは勢い任せに水を掛け合って遊びました。両手で水を掬ってみたり、時には足で水を蹴り合ってみたり……普段こう言う様に羽目を外せない都合上、この機会が数少ない思いっきり何もかも忘れて遊べる時なんです。

 

 

 そして風も強く吹き付けて来て、少し足を浸けている水が冷たく感じた頃合いを見て、私たちは砂浜に戻って来ました。お互いに顔を見合わせてみると、如何にも水遊びをした様に服も水気でピッタリ肌とくっついていて、髪からもポタポタと水滴が落ちていました。

 

 幸いにも着替えとタオルは持って来たので、着替えようと思ったらそうする事も出来たのですが……颯樹くんからこんな事を聞かれたのでした。

 

 

「ね、今回は何でこんな事をしたのさ」

「そりゃあ……いつもお仕事ばっかりで、お休みがなかなか取れなかったからだよ?」

「あのね……それだけだったら、僕と二人っきりでこんな所まで来て夜の海で水遊びなんてしないでしょ。それこそ、日中にみんなで楽しく海水浴でもすれば良いんじゃない?」

「……やっぱり、颯樹くんに隠し事は無理だったか」

 

 

 私がそうポツリと言うと、彼は少し眉に皺を寄せながら呆れた様に一言……『彩がわかりやすいだけ』と言いました。

 

 

 なんだか……私が颯樹くんと一緒に行動する様になってから、私の取る行動が全部彼にお見通しな気がするな〜。あの手この手で取り繕ったとしても全部バレてるし、更に言うならそれを見越して、事前に対策を打たれてるんだもん。

 

 挙げ句の果てには、料理もできる家事も出来る勉強も出来る……なんか、女の子としてだけじゃなく、色んな意味で負けた気がするよ……。

 

 

「……ねぇ、颯樹くん」

「ん? どうしたの?」

「颯樹くんから見て、私って……どう見えてるの?」

 

 

 この事を聞いた自分でも、今まで支えてくれている彼に対して、変な質問をしてると言うのは百も承知だったけど、それでも……私としては、彼の中の私に対する想いがどうなっているのか、気になっちゃったのも事実でした。

 

 

「僕から見た彩か……そうだな……。リーダーとしては本っ当に頼り無いし、そそっかしいし、ちょいちょいドジ踏んじゃうし、見ていてハラハラするし」

「……そ、そこまで言わなくてもいいんじゃない!?」

「まあまあ、落ち着いて。これは僕の彩に対する素直な気持ちだから、聞いていて損は無いはずだよ?」

 

 

 うぅ……なんだか、聞いてて質問した自分が馬鹿みたいに思えて来ちゃうよ……。けど、千聖ちゃんからはよく怒られるし、日菜ちゃんからはからかわれたりするし……確かに、私って今更だけどリーダーとしてあまり自信持って言える程の事をしてないかも……。

 

 

「けどね、ここぞと言う時の思い切りの良さってのは良いよね。誰かが尻込みしてしまう様な状況でも、プラスな思考を持ちつつ望む事が出来るんだから。あとは常に笑顔ってのが良い所かな。どんな時でも心の底から笑顔で居られる彩は凄いと思うよ」

「え、えへへ……そ、そうかな……」

 

 

 颯樹くんってば……本当に人が聞いていて恥ずかしくなる様な言葉を、いとも簡単に言うよね……キミの事を知らない女の子がそんな言葉を聞けば、その気にしちゃう事だってあるかもしれないのに……。

 

 でも、そんな言葉を今は私だけ……たった一人の私だけの為に、そう言ってくれるなんて……ちょっとだけ皆とは違う優越感かな♪

 

 

「……ま、僕が彩に関して思うのはそれくらいかな。あとはお仕事やバイトに勉強にと大変だけど、弱音も吐かずに頑張ってるのが好印象に映るくらいだし」

「……そうなんだ。ふふっ、そっか♪」

「それじゃあ……手早く身体を拭いて、服を着替えてから戻るよ。皆も心配するだろうし」

 

 

 私は彼がそこまで言い終えるのを待たずに、そっと口付けを交わしました。普段なら千聖ちゃん達の妨害や指摘などがあるけど、今回ばっかりは私と颯樹くんの二人っきり……なら、このチャンスを活かさない手は無いよね♪

 

 

 千聖ちゃんが颯樹くんとやっている様に、ロマンや雰囲気のあるキスじゃないけど、私は私なりのやり方や気持ちの伝え方があるからこそ、この方法しか私には出来ないよ……。

 

 

「……彩、一体どう言うつもりなのさ」

「私、颯樹くんの事を考えるだけで、胸が締め付けられる感じがするんだ。貴方が笑っていたら私も嬉しくて、逆に貴方が泣いていると私も無性に泣きたくなって来て……」

「え……あ、は?」

 

 

 私の口から出て来る言葉に、颯樹くんは驚きを隠せませんでした。それどころか、私から少しずつ距離を取っている様で、今のこの気持ちがあまり受け入れられないのだと……この時に察する事が出来ました。

 

 

 颯樹くんは、すごく苦しい思いをしたんだよね……大好きだったお父さんに騙されて、殴られて、自分のやって来た事を全部否定されて……挙句の果てには、お母さんにまで暴力を振るわれて……怒鳴られて……私がもし、颯樹くんの立場だったら、ずっと泣いていたと思う。だって、そんな光景は私も見たくないもん。

 

 けど、颯樹くんは自分の気持ちを正直にお母さんに伝えて、この一件を終息に向かわせた……本当に凄いと思う。でも、その事があった影響で、恋人を作るのに凄く抵抗が出来てしまって……自分の気持ちを伝えるのが、少し怖くなってしまって。

 

 

 ……だったら、今の私に出来るのは……颯樹くんが今後そう言った嫌な事に出会わない様に、自分の出来る全てを使ってでも、絶対守り抜く事。

 

 初めて会った時に、颯樹くんが私の事を優しく助けてくれた様に……今度は、私が颯樹くんを守る番。

 

 

 ……だったら、あとは簡単だよね♪

 

 

「私、貴方と出会えたあの瞬間から……ずっと変わらなかった、そんな想いがあるんだよ」

「……何か察しが着いたけど、一応聞いてみようか」

 

 

 彼からの了承を受けて、私は少し深呼吸しました。

 

 ……ライブやお仕事の時とはまた違った、この独特の緊張感……でも、好きな人が目の前に居るのなら、この気持ちを絶対にその人に伝えなきゃ!

 

 

「私……私ね」

「……え、あ、はい」

「私は……颯樹くんの事が好きです。貴方が居ない未来なんて、有り得ないくらいに」

 

 

 ……きゃー! 私、言っちゃった! 颯樹くんの目の前で『好き』ってちゃんと言えた〜! 何だか言った後にすごく恥ずかしい気持ちが込み上げて来るけど、今はそれが気にならないくらいの嬉しさだよ!

 

 ……と、行けない行けない……嬉しい気持ちはわかるけど、表に出しては気分も台無しだからね……しっかりしなきゃ。

 

 

「彩……それって……」

「ううん、今は何も言わなくて良いよ。戸惑う気持ちは分かるし、事前に伝えなかった私にも非があるし。でもね」

「……何?」

「私は、颯樹くんとだったら……結婚を前提に付き合っても良いって思うよ。それくらいの自信を持って、私はキミに告白するって決めたんだから」

 

 

 ……これが、私の決意。誰にも否定されたくない、私だけのキミに伝えるラブコール。

 

 

 夜も更けた、光の射さない海岸での告白なんて……普通の男女なら絶対に選ばないやり方だけど、これはアイドルである私だからこそできる事。……想い人を手に入れる為だったら、私は何だってするよ。そう……何でも、ね♡

 

 

「……そっか。彩はもう覚悟を決めたんだね」

「うん。だから……」

 

 

 彼からの返答を聞いた後、私は颯樹くんにゆっくり抱き着きました。服越しからでも分かる逞しい胸板と、彼から伝わって来る鼓動の温かさに包まれて……この時間が長く続けば良いのに、なんて事を考えちゃう私は、ちょっとだけわがままになったのかな?

 

 ……でも、そんなのは今起こっている事に比べたら些末な事。今は他の皆が不用意に彼へ寄り付かない様に、刻みつけておかなきゃ……私と言う、一生賭けても消えない様な濃厚な傷跡を。

 

 

「颯樹くん……もう一回、キス……して?」

 

 

 そう言って私は、彼の唇を塞ぎました。身長は颯樹くんの方が高いから、自然と私が背伸びをする形になるけど……愛する彼と触れ合えている、と言う事実だけで十分。

 

 

 ……私の事、一生を賭けてでも、幸せにしてね♪

 

 

 そんな事を心の内に抱きながらも……私と颯樹くんは二人っきりのこの時間を、心行くまで堪能するのでした。

 

 

「……あら、随分と良い雰囲気ね?」

 

 

 ……え?

 

 

「……ち、ち、ち……千聖ちゃん!?」

「……彩、お叱りはキチンと受けてね」

「そ、そんなぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 その後はと言うと、如何にも怒り心頭と言う表情の千聖ちゃんに私は捕まり、夜明けまでの数時間弱……宿のお部屋にある床で正座をしたまま、お説教を受ける羽目になりました。

 

 颯樹くんに関してはと言うと、私に拒否権無く連れて来られたのだから、不問にするとの事でした。……理不尽っ!?

 

 

「な、何でわかったの!?」

「ふふふふ……♪ 彩ちゃんの行動を考えたら、それくらいはお見通しなのよ♡」

「じゃ、じゃあ……私の告白も……き、キスも……」

「全部、バッチリと見させて貰ったわ♪」

 

 

 ……そ、そんなぁぁぁぁぁ!

 

 そんな事を思いながらも、私たちの夏休みは少しずつ終わりへと向かっていくのでした(翌日はその時の憂さ晴らしも兼ねて思いっきり遊んだよ!? ……ホントだよ!?)。




 今回はここまでです!如何でしたか?


 次の更新はまた別の作品を書いてから……となる予定ですので、此方はどうか今暫くお待ち下さい(こっちが先に思いついたら先に書くかもね)。


 それでは……また次の更新にて。
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