魔神王の娘として彼女は生まれた。
彼女は上の2人の兄に比類する才を持っており、2人の兄と同じく魔神族の希望として最前線で女神族率いる四種族と争った。
彼女は女神族達と争うことに疑問を持ちながらも心優しい彼女は愛する父や兄、そして自分を慕う同族達のために心を鬼にして戦った。
そんな彼女の内心に気付いていた父——魔神王は彼女に戒禁を与えることはなかった。
しかし、2人の兄に比類する才を持っていた彼女は戒禁無しで四大天使に警戒させるほどに戦場で活躍した。
そこまでの活躍をすれば十戒入りしないことに疑問に思われるだろうが彼女は甘かった。
もちろん殺し合う相手に手心を加える程に甘かった訳ではないが、非戦闘員や逃げ出した者、降伏した者を殺すことは無く、部下にも殺すことを許さなかった。
そんなことをしていて不意打ちを受けたことは1度や2度ではない。
しかし彼女はそれを辞めることはなかった。
彼女が十戒になれない理由に納得した周りの者は彼女に甘さを捨てるように何度も進言した。
だが、彼女は兄や十戒の言葉にすら耳を貸すことはなかった。
そんな彼女は戦場でとある女神族に出会った。
彼は女神族の長——最高神の息子だった。
何度も戦場で戦う中で2人は次第に惹かれ合い、そして恋に落ちた。
魔神族と女神族。
敵同士であるが故に会える機会はそう多くはなかったが2人は幸せだった。
しかし、その幸せも長くは続かなかった。
魔神王の息子であり、十戒の統率者でもあり、次期魔神王ともまで言われていたメリオダスの裏切り。
それは魔神族だけでなく他の四種族にも激震を走らせた。
そして、彼女に選択の時が来た。
メリオダスと同じように愛する者のために同族を裏切るか、否かを。
彼女には決めることなど出来なかった。
自分の恋のためという自分勝手な理由で自分を慕う同族や愛する家族を裏切り、戦うことも。
最愛の彼や愛する兄と戦うことも。
そして——最愛の彼に同族を裏切らせ、戦わせることも。
そのどれも、心優しい彼女には選ぶことなどできるわけがなかった。
そう葛藤し、涙する彼女を彼は————殺した。
僅かな苦痛すら与えられずに、何が起こったのか分からないという表情でその命を落とした。
その彼女の亡骸を抱きしめた彼は涙を流しながら、とある術を使った。
〝転生の誘い〟。
ただ1度だけ前世の記憶を携えたまま魂を新たな生命へと転生させる術。
彼にはもう見ていられなかった。彼女が傷ついていく様を。
心優しい彼女にはこの戦、時代に生まれるべきではなかった。
だから彼は彼女を逃がした。この時代から。
彼にはメリオダスのように同族を裏切り、最愛の彼女のために戦う覚悟はあった。
だがそれでは彼女を苦しめるだけだ。
だから彼は彼女が転生した時に幸せになれる世界にするために全てを背負い戦いへ身を投じた。
彼女を殺した彼への魔神族達の憎しみは凄まじいものがあった。
魔神王の娘で最上位魔神でありながら下位魔神にも優しい彼女は甘さがあったとはいえ大半の魔神族から慕われていた。十戒にすらも。
最愛の彼女が慕われていることへの嬉しさを感じながらも彼は戦いを辞めることはなかった。
彼女を慕うものを殺すことへの罪悪感は多大にあった。
だが、全ては彼女が幸せになるために。
地獄へ落ちようとも彼女だけは幸せに。
彼女に憎まれても構わない。彼女が幸せになってくれるなら。
だが、彼が死ぬ前にゴウセルの禁呪が発動した。
女神族は常闇の棺を使い、魔神族は封印され、聖戦は終わった。
そして、彼女が転生したのは聖戦が終わってから3000年後。
盗賊都市 レイブンズ。
後に彼女の兄の親友となり。
七つの大罪
——キリアとして。