正月そうそう霊夢に吹き飛ばされたかと思ったら、家に帰るとフランちゃんが年越し蕎麦食べてました。

もう何が何やら分かりません。


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あけました
(ミミック)
おめでとうございます


蕎麦をすするフランちゃんは確かに可愛かったけれど、私には年越しだけは認められなかったのです

「ただいま……」

 

 紅魔館の扉はいつもより重かった。

 きっと正月太りしたのだろう。今度材質変えるように言っておこう。当主の帰りなのだ、もっと軽やかに出迎えるような気概が扉にも欲しい。

 例えどんなに気落ちしようが関係ないくらいに。

 

 早い帰宅となった。辛い帰宅にもなった。

 

「せっかくの年明けなのに……」

 

 年明けテンションで博霊神社に突撃して霊夢に会ったものの、いらぬ失言してしまったらしく追い出されてしまった。

 

「寺とか神社とか大体同じじゃない。……別に怒んなくたって」

 

 思えば霊夢の表情は初めから険しかったような気がしないでもない。でも目が合った瞬間喜んでたような気がした。これも日ごろの関係性の成せる技だとほくそ笑み、楽しんでいこうとしたら、いきなり追い出された。

 

「鐘を鳴らしたかっただけなのに」

 

 あの音の余韻に浸っていたかった。

 あわよくばお雑煮とかも食べたかった。

 そんな純粋な想いを「鐘を鳴らすのは寺よ!」と般若のような顔で吹き飛ばされた。

 でもお賽銭だけはしっかりと入れさせられた。

 どうにも命蓮寺に参拝客を取られてるらしく、困っているらしい。「妖怪だろうが悪魔だろうが歓迎したいくらいだったのに、それすらも寺に取られるなんて!」ってめっちゃ怒ってた。「何がお雑煮よ! 吹き飛ばすわよ!」って、もう本当に怖かった。

 

 

 

 とはいえ気落ちしたままでいるわけにはいかない。新年のスタートがしょんぼりスタートなんて、到底許容できる話ではない。

 

「咲夜ー、いるー?」

 

 さっき買い出しに行ってたけれど、うちの優秀な咲夜ならもう帰ってきていてもおかしくないだろう。お雑煮が食べたい。

 

「あら、随分とお早いお帰りですね、お嬢様」

 

 さっと現れたのはさすがで期待通りだったけど、言葉に軽い毒が含まれているのはいただけない。毒を入れるのなら紅茶だけにしてくれないと。

 

「お雑煮食べたくなったのよ」

「……お雑煮ですか?」

「ええ」

 

 お雑煮といっても地域によって具材の違いがあるらしい。実に楽しみである。

 

「今から用意しますので、しばしお部屋でお待ちいただければ」

「いえ、食堂で食べるわ。新年だし、皆で食べようじゃない」

「……そうですか。では一応、食堂にお持ちします」

「一応?」

「あ、いえ。何でもありません。準備があるので、私はここで――」

 

 何か変な感じしつつも、気にしても仕方がない。お雑煮が待ってる。

 

 

 

 食堂の扉を開けると、そこには薄黄色の髪の天使もとい悪魔が背を向け座っていた。

 頬を膨らませながら、もぐもぐしてる鬼ほど可愛い妹がこちらに振り返る。

 

「あ、おねーさま。どったん?」

「お雑煮食べようと思って」

「ふーん?」

 

 もう興味がなくなったのか、すぐに背を向けなおしてもぐもぐし始めた。ずるずると何かをすする音が聞こえる。

 

「……フランちゃんもお雑煮食べに来たの?」

「んー?」

 

 横まで歩いていく途中で、丼ぶりが見えた。

 随分と食いしん坊を発揮してるらしい。

 

「ずるずるる。あ、メリクリ」

 

 いつの話なのだろうか。どうにもこの神にも悪魔にも祝福されているようなさすがに可愛すぎるという評判の妹の日にち感覚は、余人とは違うらしい。

 しかも口から灰色の麺が飛び出している。

 

「て、――え?」

 

 どう見ても蕎麦。どこからどう見ても蕎麦。

 

「何食べてるの」

「年越し蕎麦だけど?」

 

 きょとんとした顔で首まで傾げられた。

 かわいい。

 違う、おかしい。

 もしかして気づいていないのだろうか。

 

「私、お雑煮食べようと思ったのよ」

「そうなん」

「そうなの」

 

 再び響くずるずる音。

 伝わっていない。

 

「ねえ、フランちゃん。年越し蕎麦って年越しの時に食べるものよね?」

「うん」

「何で今食べてるの?」

「ちょっとフライング決めてみようかと」

「決めすぎよ。慣習は守らないと面白くないわ」

「仕方ないね。ありとあらゆるものを壊しちゃうからね」

「壊すのちゃんと選んで。もっと壊すべきもの壊して」

「おうちとか?」

「やめて。新年寒空スタートとか嫌よ。それに、そういうのって年越しタイミングでやるべきじゃないの」

「え? やっちゃう?」

 

 あ。まず。

 

「いやいやいや。違うから、違うからね」

「テンション上がってきた」

「やめて。上がってこないで。そのまま地下にまで下がって閉じ込めてて」

「最近お笑いにはまってて」

「はまらないで。これそういうやつじゃないの。フリじゃないから」

「かーらーのー?」

「それお笑いじゃないから。貴方と一番遠い存在の得意技よ」

 

 可愛さが限界突破してると紅魔館で噂のフランちゃんは、唇をとがらせて不満をアピールしてきた。うむむ。通も唸る可愛さ。

 

「でも出番欲しいしさ」

「仕方がないじゃない。そういう運命なのよ」

「もう設定とかよくない?」

「やめて。設定とか言わないで」

 

 そのうち公式が勝手に言ってるだけとか言い出しそう。

 

「いいじゃん。漫画のキャラとかも、初登場の時と比べると人格変わってるやついるじゃん」

「それでいうなら貴女は初めから可愛く登場したから、そのまま貫き通したらいいのよ」

「たまにはイメチェンしたい」

「神にすら難しい所業よ」

 

 ただの別キャラになっちゃう。

 

「じゃあ博霊神社で祈って来る。鐘とか鳴らしてみたいし」

「やめなさい。巫女が鬼にイメチェン……、いや、割と標準な感じで威圧してくるわよ。すっごい怖いんだから」

「鬼〇の刃見たよ」

「首斬られてもあの巫女は死なないわ」

「なにそれこわい」

 

 だいたい私たち吸血鬼だし。狙われる側だし。

 

 

 

 そうこうしてる間に咲夜がやってきた。

 

「――お嬢様、お持ちしました」

 

 ゆらゆらと白い湯気を立ち昇らせるお椀には、澄んだ汁に青々としたかつお菜、そして表面が香ばしく焼かれた餅。シンプルに勝負を挑んだ咲夜の匠の技ってところかしら。

 

「急だったので、こういうものになってしまい申し訳ありません」

「あれ、そうなの?」

 

 珍しい。

 

「館全員分の年越し蕎麦の用意で手が回らず……」

「え。みんなでフライングフランちゃんしてたの?」

「何その変な造語」

 

 フランちゃんがジト目で睨んできた。可愛い。

 

「だって年越し蕎麦って年超す時に食べるものでしょ」

「――年明けに食べるもの食べてるお姉さまに言われたくない」

「は?」

「え?」

 

 邪気を払うほどの可愛さの妹と、自慢のお茶目従者が見つめ合ってる。

 

「……お嬢様、その、ひょっとして」

「――駄目だって、黙っとこ。可哀そうじゃん」

 

 困惑の咲夜と、によによと悪い笑みの妹。

 

「あ、ハッピーニューイヤーお姉さま? 今日、大晦日だけど」

「ちょっと駄目ですよ」

「餅つき大会でもする? 大晦日だけど」

「いや、そのお嬢様が泣きそうに……」

「フライングフランちゃんしちゃう? 大晦日だし」

 

 穴があったら入りたいというのはこういうことなのね。そうね。――穴、いるわね。

 

「紅魔館爆破しちゃいましょうか」

「――お嬢様!?」

 

 




投稿日を確認したら三が日をとっくに過ぎていたので、おぜうさまには勘違いしてもらうことになりました。
元は普通にフライングフランちゃん状態での会話でした。

といっても、ちょっと書き直してちょっと書き足しただけですが……。

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