旅人はどこかズレている 作:歩みを止めた旅人
ここはテイワット大陸のとある場所。周囲には木々が茂り目の前には高い崖がある。
「さて、ここに集まってもらったのはいかに早くこの崖を登り切るか?足場や気流など工夫ができるみんなに手伝ってもらいたくてね?」
旅人はそう言うと3人を見据えた。そこには、
「普段は本気を出せないからね、途中までしか上げられないや」
風を操る
「僕の疑似陽華でも途中までしか上昇できないよ?あぁ、でも上昇し切る前に跳ぶと少し高く跳べるね。試してみるかい?」
岩の花をエレベーター代わりにできる
「なぁ、この2人と比べたら俺できること無くないか?」
炎で吹っ飛ぶ
「でもベネットのスキルならこの中の誰よりも高く吹っ飛ぶ筈だよ?前にも飛んでたよね?たしか清泉町あたりだった気がするんだけど?」
旅人はそう言うがベネットはどこか不満そうだ。
「あれ見られてたのかよ。俺も何が起こったのかよくわかってないんだぞ?」
「再現しようと思えばできるんじゃないの?よく吹っ飛んで崖から落ちてるみたいだし」
ベネットの返しに旅人は再現すればいいと提案する。よくわからないことはとりあえず色々試してみれば案外再現できたりするものだ(もっとも、それに他費やす時間は膨大だが)。
「うーん、わかった。やってみるよ。行くぜ?はぁぁぁああああ!」
ベネットは力を溜めると炎を纏った剣を勢いよく振り下ろす。そして...
崖とは反対の方向へスーーッと飛んでいってしまった。
「あ、ベネットが飛んでいっちゃった」
「おいいい!旅人!!あれほっといて大丈夫なのか!?」
「大丈夫だよパイモン。以前吹っ飛んでいるのを見かけた時も翌日には冒険者協会の近くを歩いていたから」
「ふむ、剣を叩きつけたエネルギーが反対方向へと流れて行ったのだろうか?実に興味深いね?彼のデータも取りたくなったよ」
「あはははは!彼すごいね?風も使わずにあんなに綺麗に飛んでいくなんて」
「オィィ!まともなのはオイラだけかぁ!?」
パイモンだけがツッコミを入れる中、周りの反応はそれぞれだった。
アルベドは今起きた現象を科学的に捉えようとしたり、ウェンティは飛んでいったことに関心を示したり、旅人は方向さえ任意に決められればなと考えていた。パイモン以外誰もベネットの身を心配する者はいなかった。
「さて、興味深いものが見れたけど方向を任意に決められないといけないし、なおかつしっかりと着地しないといけない。2人は何か意見はないかな?...はい、ウェンティどうぞ」
旅人の質問に対してウェンティが手を挙げる。
「これは少し前にエンジェルズシェアで飲んでる時に聞いた話なんだけどね?教会のシスターが段差を飛び降りようとした際に偶然下に大型の風スライムがいたらしくて、スライムが飛び上がるのと彼女が飛び降りたのが重なってシスターは勢いよく前方に弾かれたそうだよ?幸い彼女は風の翼を持っていたからそのまま飛んで怪我とかはなかったんだけど、うまく使えば真上に飛ぶことだってできるんじゃないかな?」
「確かに、それなら乗る角度を調整するだけでなんとかなりそう。でも場所が限られてしまうのが少し残念かな」
確かにタイミングが合えばうまく飛べるだろう、しかし必要な時に風スライムがいるかと聞かれたら話は別だ。そうしてあーでもないこーでもないと話していると不意にアルベドが姿を消した。旅人たちはしばらく彼を探していたが、頭上から声がしたため上を見上げる。そこには風の翼を広げゆっくりと降下してくるアルベドがいた。
「ふむ、色々やってみるものだね。崖上までしっかりと飛べたしこれはもう完成でいいんじゃないかな?」
「あ、アル、アルベド?今何やったんだ?」
「難しいことはしていない。疑似陽華の上で剣を振ったのさ」
そう言うと彼は木の近くに疑似陽華を展開し、その上に乗った。花が上昇を始めると木に向かって剣を振り次の瞬間、ものすごい勢いで上空へと射出された。旅人はすぐさま彼と同じように花に乗り、上昇に合わせて剣を振った。しかし上空へと射出されることはなく、ただ木に剣を叩きつけた感覚だけが残った。
「あ、あれ?飛べない...一体どうやったんだろう?」
「オイラにはさっぱりだぞ?アルベドに聞いたらわかるんじゃないか?ほら、ちょうど降りてきたぞ」
「旅人、どうしたんだい?」
旅人はアルベドに問いかけた。同じように花に乗り、同じように剣を振った。しかし自分は飛べなかった。他に何が必要なのかわからないと。
「乗るタイミング?それとも乗る角度?スライド移動はできないよ?乗せる足は左足からの方がいいかな?それとも剣を振る速度や角度?乗る前に儀式とか踊りとかしたほうがいい?」
「旅人、少し落ち着くといい、ちゃんと説明するとも」
アルベドは旅人を宥めるとゆっくりと自分がしたことを語った。
「乗り方や角度、それは特に意識しなくていい。剣で木を叩くことのできる距離であれば問題ない。次に剣を振るタイミングだが、疑似陽華の上昇が始まってからだ。そして剣で木を叩いたら即座に跳ねる。これを陽華の上昇が終わるまでに行うと...」
アルベドが剣を振る、そして彼はまたまた上空へと射出された。旅人は一度深呼吸し、彼の行動を精密に再現する。
「...ここだ!!!」
かくして旅人は遥か上空へと射出された。覚悟していた強烈な空気抵抗もなくしかし眼下にはウェンティやパイモンが豆粒のように小さく見える。
先に降下したアルベドを追い旅人もゆっくりと降下していく。下で待っていたウェンティは弓矢では無理だったと肩をすくめた。今度彼には自分自身が矢となり飛んでいく技でも教えようか。パイモンは興奮気味に旅人に近づいた。
「すごかったぞ旅人!これで探索の幅も広がるな!」
「確かにそうだね。でもきっとそこ「そこまで長続きはしないだろう」...アルベドもそう感じた?」
「旅人、アルベド、それってどう言うことだ?」
旅人の言葉に被せるようにアルベドは言葉を発した。曰く、長続きはしないと。パイモンは納得できないと2人に疑問をぶつけた。
「パイモン、モンドから璃月までを最短で進もうとするならドラゴンスパインを必ず通るよね?」
「んん?そうだな、まっすぐいくならそんな感じの道になるな」
「でも今まではそうじゃなかった。私たちは石門を通って璃月へと向かっていた。それはなぜ?」
今でこそ七天神像やマーカーを頼りに転移できるが、最初はどこへいくのも自分の足だった。高い崖を登ったり、ひたすら泳いでたどり着いたりと色々あった。しかしまっすぐ進めばいい筈なのに何故か周り道をしなければいけなかった。それは何故か。パイモンが答えを考えていると旅人が不意に言い慣れた台詞を言う。
「"またあとで来よう、今は他を探索しよう!"、そう言われて崖から落とされたこともあったっけ」
「まてまて、オイラのせいだって言うのか?この世界に来たばかりの旅人が危険な場所に足を踏み入れないように案内してるんだぞ!」
確かにその通りだ。このテイワットに来たばかりの頃の旅人ではドラゴンスパインに足を踏み入れたらきっと大変な目にあっていたことだろう。なら今は?確かに厳しい土地であるがそこまで危険とは感じていない。何故か?簡単なことだ、強くなったから。モンドで、風龍廃墟で、璃月で、黄金屋で、様々な経験を積み重ねて強くなったからだ。それはまるで、
「経験を積んで強くなって、そして探索の幅が広がる。それはまるで物語のようだ。どこの世界でだったか、そんな感じのことを言っている人がいた気がするよ」
「それは興味深いね、新しいことを覚えたら古いことは忘れてしまうのかな?」
「そうだね、新しいことはあくまで古いことの延長線上のことだから」
だから、かつて覚えたことが出来なくなる。それは今できることの下位互換でしかなくなるのだから。
「だからそのうち、この天高く飛ぶ術も、出来なくなるんじゃないかな?」
もしくは世界の修正力が働いて、そんな言葉を旅人は飲み込んだ。
「よし、とりあえずの目標は達成したから今日は帰ろう!みんなで鹿狩りでお腹いっぱい食べよう!」
「お、いいな!オイラも賛成だぞ!」
そうして3人と1匹はモンドに帰るのだった。
「あれ?オイラたち何か忘れてるような......ま、いっか」
「ところで旅人、スライド移動ってなんだ?」
「爆弾が爆発する寸前に前転して近づいて爆発とほぼ同時に盾を構えると反対方向に延々と移動し続けるとある世界の技だよ。馬と同じくらい早いんだ」
「その世界の人間は何故それをしようと思ったんだ?」
「なんでだろうね?わかんないや」
ベネットさんェ...
「俺はいつまで飛び続けるんだろうか」
今回はTwitterとかで流れてくるアルベーターさんの上昇バグでした。他にも風スライムのトランポリンやベネットくん空を飛ぶなどバグだったりバグじゃなかったりする技を書いてみました。そのうち修正されるんだろうな。
今回も別ゲーの技やバグなどを織り込んでいます。