海賊王におれは・・・・・ならないから!   作:ダーク・シリウス

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海賊王&四皇VS四皇

「ジャックから話しは聞いた。それで、全面戦争をおっ始めるつもりなのか?」

 

「今話している時間はねェ。単刀直入で言う。リンリンとそのガキ共をこの新鬼ヶ島から追い出す協力をしろ」

 

カイドウのところに向かう最中、派手に飲食していた兵士たちが大慌てで戦争の準備に急かされて動いていた。寝耳に水もいいところなビック・マム海賊団の入国に新鬼ヶ島が始まって以来の大事件。

 

「それは構わないが奴さんどこにカイドウがいるのか分かってないだろ? 連中は今どの辺りだ?」

 

「すでに九里に迫ってきてる」

 

あらら、それは一大事じゃないか。よりにもよっておれが収めてる郷に上陸して住民達に危害を齎すことがあれば・・・・・。四皇と海賊王が収める国に喧嘩を売る奴はそれ相応の代償を支払ってもらおうか。

 

「お前に会わせる奴らはいたが、それもババアを片付けてからだな」

 

「ふぅん? 戦いの最中でもできないのか? 幹部だったら目立つだろ。ま、お前の方が一番目立つがな」

 

「テメェの方が目立つだろうが」

 

「身長的な意味でだよ!」

 

 

 

 

―――そんな話を戻ってヤマト達も避けられない戦いになるだろうと悟った表情をしていて、喧嘩している連中にもこれから戦闘が始まることを伝える。

 

「ガシャシャ!! 下等種族共を海の底に全員沈めてやる!」

 

オオメジロザメの魚人、メガローが凶悪で鋭利な歯を覗かせる笑みを浮かべ、好戦的な態度を示す。

 

「ったく、はた迷惑な海賊王に巻き込まれるのは面倒なもんだぜ。あと、上陸してるから海の底には沈めれないぞ」

 

「同感だ。海賊と手を組んでいるとはいえ、こっちは海賊ではないのだからな」

 

ヴェージとガンヴァはあまりやる気を感じさせないが、攻めてくるなら仕方なしに応戦するという風体だった。

 

「悪いな。ヴェージ、ガンヴァ。おれ達はこういう末路なのさ」

 

「既に心に決めておりますとも」

 

気にしないで欲しいと、セルバンデスの言葉に本当申し訳ないと思わせるわ。

 

「・・・・・問題ない」

 

「おう、頼むな」

 

全身黒ずくめの者、ギリュー・ブラッティはそう言ってくれ、白髪で乳白色の瞳の少女ヒナタもオドオドと口を開いた。

 

「わ、私・・・・・」

 

「ヒナタは弱くないことをここにいる全員が知っている。戦わずにいてくれてもいいし、共に戦ってくれるなら心強い。とにかくお前のことは頼りにしている。いつも通り小さくても勇気を出して行動して欲しい」

 

「あ、ありがとうございます・・・・・が、頑張りますっ」

 

ヤマトとロビンに挟まれた席に座ったまま大袈裟に頭を下げるヒナタを一瞥、目を閉ざしてる若い法師に視線を送った。

 

「ワオウ、お前も戦うか?」

 

「あなたが治めている里の危機です。勿論、無辜の民を守るために戦います」

 

全員の言葉を聞き、他の皆の顔を目で見回す。

 

「うし、なら行くぞ。四皇ビック・マム海賊団とは今までにない激戦と成り得るだろうから気を付けろ」

 

「おい、今四皇の名前をさらっと出しやがって。いまこれから戦う相手は四皇の連中かよ」

 

ガシガシとオレンジ色の髪を掻いて至極相手にするのが面倒くさそうな表情を隠さないヴェージ。ふむ、と顎に手をやって激戦区の海域へ見るセルバンデス。

 

「この国に元四皇を含め三人の皇帝が集う瞬間を目の当たりにすることになるとは。いやはや長生きすると人生は何があるのか分かりませぬな」

 

「楽しそうでねセルバンデスさん」

 

「私、好奇心旺盛なもので。これは歴史的に残る戦いになり、その大戦に私達も関わる・・・・・ふふ、年甲斐もなく興奮してきますよ」

 

ワオウの指摘にほくそ笑むセルバンデスの知らないところを知れて軽く驚嘆した。意外と好戦的なんだな。

 

「ガシャシャ!! 大海賊時代以降初めての大戦争!! その中心となって戦える喜びは俺も感じるぜ!! 話が分かるじゃないかジジイ!!」

 

痛そうに眉根を寄せているセルバンデスの背中を叩きながら大笑いするメガロー。対照的に淡々とガンヴァは催促してきた。

 

「戦うならさっさと行こうぜ」

 

「ああ、わかった」

 

―――一方。ビック・マム海賊団は電撃的な速度で九里のおこぼれ町に侵入し悪逆非道、無慈悲による住民達の命を蹂躙―――。

 

「ん~・・・・・イイ匂いだねェ・・・・・・そしてこの甘さはおれ好みの美味しい食べ物だよ」

 

「まだまだたくさん作りますから、どうぞ食べてくださいね!」

 

「そうかい!! それじゃあ遠慮なく食べさせてもらうよ」

 

甘味処にてビック・マムはおしるこの味に心を奪われ、おこぼれ町と住民達に襲撃せず大きな寸胴鍋分も食べていた。甘ったるい匂いを嗅ぎ付け、この店に訪れては店主がにこやかにおしるこを提供したことから始まり、今ではビック・マムの子供達にも海外から来た客としておこぼれ町の住民達から料理を振る舞われている始末だ。

 

「ママ・・・・・襲撃はどうするのだ」

 

「こんな甘くて美味しい食べ物があるんだ。小僧共をブチ殺した後はおれのためにおしるこを作ってもらうから手を出すんじゃないよ」

 

気まぐれな一面もあるビック・マムは今その気まぐれを窺わせて部下達の心情を呆れにした。甘味ひとつで住民達は幸運にも住処や命を守られたのだ。どれが時間稼ぎにもなっていることを誰一人露にも気づいていない。

 

「おい、カイドウとイッセーの奴はどこにいるか知ってるかい?」

 

「それならここから真っ直ぐ進むと花の都っていう場所があって、そこにある巨大な髑髏の城におりますよ」

 

「そうかい。教えてくれてありがとうねェ」

 

何も知らずに呑気に教えてくれる甘味処の店主を、後の為に優先的に保護することを決め満足するまで腹いっぱいおしるこを食べるつもりでお代わりを求めたビック・マムであったが。

 

「・・・・・のんびりおしるこを食っていたのかビック・マム」

 

「おや、自分からわざわざ殺されに現れるとはねェ」

 

「馬鹿言え、ここは俺が統治している場所なんだ。誰一人命を奪っていないなら情状酌量の余地はあるかな?」

 

一誠が率いるヤマト達とビック・マム海賊団の前に姿を現したことで、お代わりはできないかと思われたが。

 

「まだ食うつもりなら待つぞ」

 

「殊勝な考えだね。じゃあ、もう少し待ってな。まだまだおしるこは食い足りないからよォ」

 

「自分の国に帰るなら、おしるこのレシピを渡すぞ」

 

「必要ないよ。クソ生意気な小僧共を殺したらこの国をおれの物にするからねェ・・・・・!!」

 

「できるのか? 一度無様におれに捕まったことがある四皇最弱のお前が、おれとカイドウと同時に相手にできるとは考えにくいもんだよ。好き勝手に国を荒らされたこと、忘れたわけじゃないだろうに」

 

本当に待つ姿勢でいる一誠の前でビック・マムはそれから何度もおしるこをお代わりしては食べ続けた。

その裏で一誠はおこぼれ町の住民達を甘味処の店主以外を避難活動をカイドウの部下達にさせている。

 

ここが戦場と化して町が滅びることを考慮してだ。

 

「ぷはぁ・・・・・!! 美味しかったよおしるこ。また後で食べさせておくれ」

 

「はい、かしこまりました」

 

「なら、花の都で買い出しに行ってくれ。こいつの胃袋は底なしだから材料が足りなくなる。ああ、こいつが今まで食ったおしるこの代金は俺が払う」

 

「わかりました一誠様」

 

店主は何の疑いもせず、言う通りに花の都へ買い出しに赴いたその姿が見えなくなるまでおれ達は待った。

 

「意外だな。すぐに襲ってくるかと思ってたんだが」

 

「あの店主はおれに親切をしてくれたからねェ。おしるこを食べさせてくれたんだ。この店だけは特別に壊さず残してやるのことに決めたのさ」

 

「そうか。なら、守ってみろよ」

 

空が暗雲で覆われ始め、雷雲の中から巨大な龍が姿を現した。そして、おこぼれ町に数多くの百獣海賊団の兵士が全員武器を持って到着した。

 

「まだババアを殺してねェのか」

 

「場を整える時間が欲しかったからな。今なら避難を終えた住民のことを気にせず戦える」

 

「甘いな。愚民共が減ろうが補充ができるだろう」

 

「元ワノ国の原住民だぞ? 海外から連れてくる人とは違って替えの利かない人材だ。武器製造の技術だってこの国の住民じゃなきゃいけないことぐらいお前だって理解しているだろ? それを継承させるための人間だって必要だ。毎日お前が飲んでいる酒も誰が作っていると思っているカイドウ」

 

カイドウにそう話しかけ言い続ける。

 

「まぁ、ビック・マムの国から大量の人間が簡単に手に入るから更に生産の力が増すだろうよ。四皇の国だ。さぞかし新鬼ヶ島のいい戦力となってくれるんじゃないか」

 

「ウォロロロロロ・・・・・。確かにその通りだ。さっさと始めるぞイッセー」

 

「ああ、始めよう」

 

ビック・マム海賊団へ手を突き出す。

 

「世界最強の海賊王、百獣海賊団!! お前達の力を四皇弱小のビック・マム海賊団に教えてやれ!!」

 

『ウォオオオオオオオオオオオオオ~~~~~!!!!』

 

「生意気な小僧ォ!! テメェの首だけはおれの手で獲ってやる!! いけェ!! 野郎どもォ!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ~~~~~!!!!』

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

魔剣創造(ソード・バース)!!」

 

百獣海賊団の兵士全員の前に魔剣を創造した。相手は四皇の兵士、並みの相手じゃないからな。ならば、強力な武器で戦力を埋めて戦うべきだ。各々はおれが創造した刀剣類を握り、掴み取って駆け出して行った。ビック・マム海賊団も駆けだし、二つの大海賊の兵士たちが、おこぼれ町を戦場にして衝突した。まずは兵士たち同士がぶつかり合い、倒しにかかり出した。

 

「相手は悪魔の実の能力者がこっちより多い。実力も劣っていないから一人じゃなくて複数で組んで戦え・他の皆にもそう戦うよう伝えろ」

 

「「「わかりました一誠様!!!」」」

 

近くにいた兵士達に伝え回ってもらう俺にヴェージが口を開いた。

 

「心配性だなうちの大将は。それ、おれ達にも言っているなら、おれ達が負けるとでも思ってんのか?」

 

「何も思っていないなら早死にするぞヴェージお前。ここにいる殆どの人間はビック・マム海賊団と戦ったことが無い。警戒して当然だろ」

 

目を真っ直ぐ向けつつ真剣な顔で言う俺から離れるメガローが、ヴェージに嘲笑を浮かべながら話しかけた。

 

「ガシャシャ!! おう、あっけなく無様に死ぬ下等種族はこれ以上のない面白い見物だ。精々イッセーの警告を忘れずに倒されないでいるんだな!!」

 

頭と耳に無線機のイヤホンを付けるメガローは先に駆けだし、チェスを模した兵士達に対して暴れ回れ出していった。

 

「ヒナタ」

 

白髪の少女、ヒナタにも声を掛ける。

 

「ヒナタ、お前も戦う気なら無茶をする前提に死なない程度に戦えよ」

 

「は、はいっ・・・・・・!」

 

怖くても向き合おうとする彼女の頭に手を置いて撫でから、仮面を被り両腰の鞘から刀を抜いて戦場へと駆け出す。

 

 

メガローside

 

 

一誠作の巨大なハルバードを豪快に振るい、一度に十人以上のチェスの駒兵達、チェス戎兵を薙ぎ倒す腕力と戦い方は魚人族として相応しい姿を見せつける。威風堂々たる戦いぶりに圧倒されるもチェス戎兵達は臆さず果敢に挑む。

 

「わらわらと蛆虫みてぇに湧いてくるな下等種族共!!!」

 

力任せに敵を吹き飛ばし、放たれる銃弾や砲弾にはハルバードを力強く振って弾き、防ぐ技量は確実に強者の類のもの。

 

「ガーシャシャシャ!!!」

 

「この鮫野郎!!」

 

上空から飛び掛かってくるビック・マムの子供にも軽くいなし、胸倉を掴むと地面に叩きつけたその後に地面が凹むほど踏み抜いた。

 

「雑魚は沈んでいやがれ!! ―――永遠になァ!!」

 

メガローの身体に変化が起きる身体に腰から二股の尾ビレが生え体躯も20m近く巨大化した。身長だけでも巨人族並みに高く、人を丸のみにできる凶悪な牙を生え揃った大きな口を窺わせ、小さくなったビック・マム海賊団の兵たちを見下ろす。―――魔法で宙に浮きながらでだ。

 

「悪魔の実の能力者!?」

 

「〝ホエホエの実〟古代種モデル〝リヴィアタン・メルビレイ〟。俺はイッセーと出会いを経て最高の力を得た最強の魚人だ!」

 

地面に武装色で硬質と化した巨大な頭で突っ込んだその威力は、広範囲で地面にクレーターを作るほど誇っていた。更には―――地面に向かって海のごとく沈み泳ぐメガローは魔力で地面の質を変えながら自由に泳いで見せた。

 

「ば、馬鹿な・・・・・地面を泳いでいるだと!?」

 

「ガーシャシャシャッ!! さぁ、最高の殺戮のショーの始まりと行こうか 下等種族共!」

 

 

ギリューside

 

 

「はぁ・・・・・今のはメガローの仕業か」

 

既に獣型の姿でいるギリューはティラノサウルスの風貌に似た恐竜の姿で呆れ口調でため息を吐いた。〝リュウリュウの実〟古代種モデル〝インドミナス・レックス〟。それが口にした悪魔の実の能力だ。

 

「殺せ!!」

 

悪魔の実の能力者に対する戦い方を熟知している上官の命令に従って、チェス戎兵達はあの手この手でギリューを攻撃する。

 

「・・・・・ふん」

 

鼻で笑いギリューの身体が周囲の風景と溶け込んでチェス戎兵達の目から姿を消した。慌てて見つけようと探すチェス戎兵達を嘲笑うかの如く殴る、蹴る、尾で薙ぎ払い飛ばすギリュー。更には口からビームを出した。

 

「ギャアアアアアアアアアッッ!!!」

 

味方諸共、攻撃に巻き込んでしまってもギリューは大して気にしなかった。自分達は百獣海賊団の味方ではないので心にも痛まないのだ。

 

 

ガンヴァside

 

 

剛毛で覆われた巨大な体躯、四肢に長い鉤爪があり、尾は太く長い。二本足で立ち上がって鉤爪の付いた強い前足でチェス戎兵に攻撃する〝ジュウジュウの実〟古代種モデル〝メガテリウム〟の能力者、ガンヴァ。

 

「後ろを狙え! こいつの動きは鈍いぞ!」

 

「そんなこたァ知ってんだよ」

 

舌を鋭くゴムのように伸ばして背後に立つチェス戎兵達を鞭の如く弾き叩く。

 

「だがな。あいつに悪魔の実の能力とは別の強い力を与えてくれた。最高だぜこの力は。ものにするのに時間は掛かったがな」

 

鉤爪に雷を帯びた風を纏うガンヴァ。それを駒のように身体ごと回転しながら一度振るうと飛ぶ斬撃と化して、刻まれたチェス戎兵は次に電撃を食らって倒れる。

 

「次は早く動けるよう特訓だな」

 

 

 

ヴェージside

 

 

「あの鮫野郎がっ!」

 

〝ワニワニの実〟古代種モデル〝デイノスクス〟の獣型姿で八つ当たり気味周囲に攻撃する。巻き込まれたチェス戎兵兵は無事では済まさず、魔力で地面を操作してチェス戎兵に当てる。槍のように回転しながらビック・マム海賊団のチェス戎兵を倒していくヴェージと対峙していた周囲のチェス戎兵は何時しかいなくなっていたが、己を見下すメガローと何時か絶対に決着をつけるという意欲の炎を燃やし、次の敵の所へと移動する。

 

 

セルバンデスside

 

「ふむ、まだビック・マム海賊団の戦力は上のようですな」

 

羽毛が色鮮やかな大きな鳥が、セルバンデスが〝トリトリの実〟古代種モデル〝アルゲンタヴィス〟の姿で空に留まって戦況を分析、その情報を他の味方に無線機のイヤホンで伝え、サポートに徹していた。

 

「個の強さも兵の数もビック・マム海賊団がまだ優っている状態。中々に手強いですねさすがは四皇と言うべきですか」

 

そんな誤算など一誠にとっては小さな誤差でしかないだろう。セルバンデスは悪天候の空を見上げながら悟った。

 

 

ウオオオオオオオオオオッッッ・・・・・!

 

 

明後日の方角から獣の咆哮と共に空から雷が落ちたを確認、自然で落ちた雷ではないことを察した。

 

「ヒナタさん。戦う決意をしましたか」

 

 

 

ヒナタside

 

 

「ううう・・・・・戦いを早く終わらせる・・・・・!」

 

そうすればこんな怖い戦いは終わって温かくて優しい時間を過ごせることができる。その思いからヤマトとロビンに見守られながら〝ネコネコの実〟幻獣種モデル〝白虎〟の獣型に変身した。

 

「皆の武器を、奪う・・・・・!!」

 

真っ白な毛並みから稲妻が発生してチェス戎兵から武器を引き寄せて巻き上げる。そして奪った金属の武器を生成、堅固な鎧、鋭利な金属の爪として身に纏った。更には空から雷の雨を降らせその中で暴れ回るヒナタは―――。

 

「―――オラオラァッ!! さっさとぶっ倒れやがれこの(ピー)がァッ!!!」

 

能力を使うと臆病の性格はどこへ行ったのやら、荒い言葉遣いと好戦的なまでの攻撃を繰り広げるのであった。メガローですらヒナタの豹変に驚愕を禁じ得なくて、「能力を使わきゃ下等種族だが、使えばおれより強ェ・・・・・小動物の皮を被った何かかよありゃあ」と感想を述べるほどだ。因みにそんなヒナタの戦いぶりをカイドウは見ていて愉快そうに笑みを浮かべていた。

 

「ウォロロロロロ・・・・・。イッセーの部下共はいい戦力だ。天龍と呼ばれてる小僧の配下なら、九頭龍とでも称してやるか」

 

本人が聞いたらなんだそりゃあ、と呆れていたところだろう。

 

 

ワオウside

 

 

彼は〝ヒトヒトの実〟モデル〝千手観音〟の能力による変身した姿でチェス戎兵を一網打尽にしつつ、武装色使いの幹部相手に手数が多い攻撃で圧倒している。ほぼ千の数の張り手やワオウも魔力で属性攻撃を放ってビック・マムの子供の幹部まで倒してる。

 

「早々に決着をつけ、安寧を取り戻さなくては」

 

 

荒ぶる炎の嵐、稲妻を帯びた嵐、 全てを凍てつかせる氷の嵐を具現化してみせている一誠は確実にビック・マム海賊団の戦力と兵力を削っていた。そこへ坊主頭でピアスを付け、肩口が異様に大きいファーコートを身に着けた男が、ビック・マムの息子シャーロット・ダイフクが身体をさすって人間ではない何かをベルトから出した。それの正体は矛を携えてる、超人系悪魔の実の能力〝ホヤホヤの実〟による召喚された魔人なのだ。

 

魔人を駆使して一誠に攻撃を仕掛けたが。案山子のように棒立ちな坊主頭の男の懐に飛び込んで刀の代わりに魔方陣から取り出した銃器で射撃した。

 

ドン!! ドン!! ドン!!

 

ゼロ距離で坊主頭の男を撃った。ただの銃弾なら反撃できるが、一誠が撃った銃弾は能力者の能力を封じる海楼石を加工した特殊な銃弾だ。

 

「な、なんだ・・・・・力が・・・・・!?」

 

魔人の姿が掻き消え、ダイフクが膝をついて焦りの汗を浮かべる。

 

「海楼石の銃弾だ。能力者にはかなり利くだろ?」

 

驚倒一色なダイフクを更に海楼石で加工した鍵穴がない拘束具を付けて放置する。不意に空を見上げると金棒を振るカイドウと黒い雲を乗って剣と髪を燃やしているビック・マムが衝突して戦っていた。

 

「他の皆も能力を使ってるみたいだし、おれも変身するかな」

 

空高く飛び、空中で真紅のドラゴンに変身した一誠を見たビック・マム海賊団は愕然の面持ちを浮かべて見上げ、百獣海賊団は絶対の勝利に歓声を上げた。

 

『ビック・マム海賊団。最初で最後の降伏勧告だ。今すぐ分かり易く地面に平伏して投降しろ』

 

さもなくば、と半数のチェス戒兵を魔法で空高く浮かせる。口内で一点に集中、圧縮した魔力を解放。極太のビームが極光の柱と化してチェス戒兵達へ走り直撃し煌めいたその刹那。空が真っ赤に染まるほど天候が変わり、地上は爆発で生じた余波によって、爆風が敵味方問わずおこぼれ町の家々など、なにもかも全て凪払っては更地にしたのである。唯一、農園は魔法の結界で守護されていたので無事だ。

 

「ウォロロロロ!!! いい破壊力だなイッセー!!」

 

それを心から楽しげに笑うカイドウ。対して唖然とチェス戒兵の消滅を見せつけられたビック・マムの子供達は言葉を失い、身体の浮遊感を覚えた時は、空高く己の意思に反して地面から浮かべられていたことに気づいた。

 

『次はお前達だ。その気になればおれ一人でお前らを消し去ることが簡単なことを、今分かっただろう?』

 

「・・・・・ッ!!」

 

『空中でも能力が使えるだろうが、おれはそれ以上の攻撃を以て凌駕する。ああ、一人ずつ問い詰めるが、一人断ったら指名した五人もれなく消滅するからそのつもりで。無論、沈黙は拒絶と見なして指名した十人殺す』

 

完全な理不尽極まりない脅しにビック・マムの子供達は戦慄を禁じ得なかった。大切な家族を、兄弟姉妹を犠牲になど言語道断。そんなことするぐらいなら己が犠牲にして守らんと―――そんな自己犠牲をする考えを持つ者は何人いるだろうか。

 

「お前、天龍!! おれの可愛い子供達に―――!!!」

 

「ウォロロロロ!! 黙って見ていろリンリン。これから面白いショーが始まるんだからよォ」

 

一誠に飛び掛からんとするビック・マムだが、カイドウに目の前を立ち塞がれて邪魔をされる。

 

『それじゃ、最初はそこの飴男。降伏するか否か、選べ』

 

呼ばれた男は周囲の視線を浴びながら逡巡してから口を開いた。

 

「選ぶ前に質問だ。降伏したら私達をどうするつもりだペロリン♪」

 

『知りたいなら降伏してみろ。そうしたら他の連中も興味を持って同じ選択をするだろうよ』

 

「ペロスペローッ!! わかってるだろうねェ!! 降伏なんてするんじゃないよォ!!」

 

恐い母親から怒声を投げられた。それは他の子供達にも降伏は許さないと言っているのと道理であり、死を選べと命令しているようなものだ。

 

「・・・・・降伏は、断るっ!」

 

『では、これから消滅する五人を選んでもらおうか。ただし、誰も選ばない選択は無しだ。もししたら、命の代わりにお前の大切な物を奪う』

 

「できるものならやってみせろッ!! おれ達はお前には屈しはしないぞ!!」

 

言質を取ったことで周囲の空間から鎖が飛び出してペロスペローと呼ばれた男を縛り上げ、身体に沈んだ。そしてさらには、一誠の双眸が妖しく煌めく瞬間を見た男がどんどん老けて、実際の年齢よりも年を取って老人となってしまったのだ。

 

『おれの能力で悪魔の実の能力を封じた。その能力を解かない限りは一生、お前の強みの筈だった悪魔の実の能力は使えない。そして、お前を老人にした。元の若さに戻すのもこの世界で若さを関係する悪魔の実と俺しかできない』

 

「っ!!?」

 

地面に降ろされたペロスペローは自分の能力を振るおうとしたが、本当に悪魔の実の能力が食べる前の自分だった頃のように、本当に能力を封じられてしまったことが判明して絶望した。百獣海賊団の兵士達に告げる。

 

『お前等、そいつは能力が使えない生身の老人だ。殺さず丁重にもてなしてやれ』

 

―――ニヤァ、と一誠の言葉の意図を察した者達は邪な笑みを浮かべ顔を青ざめるペロスペローに近寄る。身の危険しかない感じない現状に一誠に仰ぐ。

 

「こ、降伏する!! だから能力の封印を解いて元の若さに戻してくれ!!」

 

『それは無理な相談だ。お前が判断した選択だぞ? 命があるだけでもありがたいと思え。お前という犠牲がこれから同じことを問うこいつらの助けとなるのだから、心から感謝されることを喜びに思え』

 

死か能力を封じられ老人にされるか―――能力者にとって最悪な選択を問いと共に押し付けられるビック・マムの子供達の中に能力者はいないが、それでも全て拒否すると一誠の力によって―――老人にされてしまう。その現実に―――。

 

『さぁ、次は誰にしようか』

 

「「「・・・・・ッ!!!」」」

 

ビック・マムより質が悪すぎるッ!! そう思わずにはいられないが、今度は脚が長い長身の女が問われた。

 

『足長女、お前は降伏するか?』

 

「降伏などしない。老人にしたければすればいい。だが、覚えておけ。お前を倒しにカタクリが―――」

 

『四皇にもなれない格下の相手におれが負けるとでも?』

 

双眸がまた妖しく煌めいて足長女の身体が老人となった。それから続けて問い掛けたら、誰一人仲間を、家族を犠牲にせず己が老人となることを選ぶ選択をしていった。そして、とうとうビック・マム海賊団の幹部は全員老人だらけとなり、百獣海賊団の兵士から嘲笑の声を向けられる。それを見た大看板のジャック達は顔をしかめた。

 

「あの野郎、その気になれば世界中の人間を老人だらけに出来るのかよ」

 

「カイドウさんも防ごうがない」

 

「敵にすれば災害、いや人害になる」

 

後の九頭竜達は。

 

 

「ほう、年を取らせるならば若返らせることも可能なのでしょうか」

 

「四皇の幹部を赤子の手をひねるように無力化しやがった」

 

「あの男こそ世界最強だろ」

 

「他にも力を隠していそうだな」

 

「あれも魔法か・・・・・?」

 

「素晴らしい。無血で戦争を止められる力を持っていようとは」

 

「本気も出していないねイッセー」

 

「誰も敵わないわ、あれじゃあね」

 

「ヒャッハーッ!!」

 

 

一連の様子を見ていたカイドウは勝敗は決したとビック・マムに告げる。

 

「てめェの敗けだリンリン。お前も降伏しろ。もうお前が連れてきた幹部や兵は使えモンにならなくなったぞ」

 

「黙りなッ!! おれはまだ敗けちゃいねェよ!!」

 

『威勢いいなビック・マム』

 

空にいるカイドウの隣まで浮かぶ一誠。

 

『だが、下の奴らはともかくおれ達相手に勝てる筈がないだろ。というか、老婆をいたぶる趣味はないんだよおれは』

 

だから、と口にする一誠の全身が真紅の光に包まれカイドウに向かった。その光を浴びたカイドウの全身が全長百メートルとなり、一誠はカイドウの真紅の鎧状態となってビック・マムと対峙した。

 

『お前にも問おう。古代兵器顔負けの破壊力を持つおれ達相手に、勝てるのかビック・マム?』

 

「ウォロロロロロロロロ!!! イッセー、お前の力は最高じゃねェか!!!」

 

金棒を天に向かってかざすカイドウに呼応して雷雲が金棒に雷を落とした。更には炎も纏いだし紫色の炎雷の金棒と化した。

 

「残念だったなリンリン。これで終いだ」

 

「そんなモン、当たるワケが―――!!?」

 

回避しようとするビック・マムを予想していた一誠が彼女の持つ剣と太陽と黒い雲を消失させたことで、真っ直ぐ地面に落ちるしかできなくなったビック・マムをカイドウが追い打ちをかけた。

 

「〝炎雷 八卦〟!!!」

 

「!!?」

 

雷を帯びた紫焔の金棒が稲妻の如く振り下ろされ、ビック・マムを地面に叩きつけた。迸りながら天に昇る炎雷の柱はどこまでも伸び、それが大海賊同士の戦いの終幕を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四皇ビック・マム海賊団を打倒し、それから一誠とカイドウと話し合いで百獣海賊団の傘下に加えることで話が決着した。無論、それを断じて否と拒むビック・マムの反応は予想済みだ。なので絶対に逆らえない状況化を作ることにした。一誠がビック・マムの(ソウル)を半分だけ抜き出し、それを専用の鳥籠に収めた。

 

「これに刺すと(ブスッ)」

 

「ギャアアアアアアアアアアアッ!!?」

 

「こんな感じに激痛を感じさせるから逆らえなくさせることができるぞ」

 

「それは壊すことはできるのか?」

 

「この鳥籠に入っている限りは絶対に壊れない。その方が魂を握られている実感を与えられるからな」

 

こいつ、鬼だ。とクイーンはそんな思いを抱いていると、一誠が振り返ってニコリと浮かべる笑みを向けられた。

 

「鬼だと思ったろクイーン。お前の魂も握ってやろうか? 優しく徐々に力を込めて痛みつけてやるぞ」

 

「そ、そんなわけねェだろ!! 絶対にするなよお前っ!! いいな、絶対にだぞ!!?」

 

「ふん、過剰にビビって情けないなクイーン」

 

「なんだとキング!! おいイッセー。この拷問好き野郎が魂を握られる気分を味わいたいそうだぞ!!」

 

「おー、そうかそうか。それじゃあやってやろうじゃん。クイーン、そいつを押さえておいてくれ。痛がる生意気でムカつく相手を見てみたくないか?」

 

「よしきた、任せろ」

 

「ふざけるな!!」

 

そんなおふざけも程々にしてから幹部達の命も握る為に半分だけ奪い、若さと能力を使えるように戻した後は新鬼ヶ島から追い出して―――数日後。再び一誠達は海へと旅立った。


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