海賊王におれは・・・・・ならないから!   作:ダーク・シリウス

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タイヨウと魚人、フィッシャー・タイガー

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それはとある島フールシャウトという島に寄り道した時の話。一誠とヤマトが冒険に出る目的の一つ、おでんを人々に食べてもらうこと。付き合ってくれるメンバーだけ同行してもらい、そうじゃない面々は船に残ってもらうことにした。外出用に四皇〝天龍〟として仮面を被ってヤマト、セルバンデスともう一人と大量の食器や箸とフォーク、巨大な荷台に乗せるための巨大な鍋を準備してから船から降りた。

 

「個人的にお前も残る側だと思ってたんだがメガロー」

 

「長時間待つのは嫌だからな。あと小腹が空いてんだ。おれもおでんを食いてェからついてきた」

 

ドシドシと巨躯の身体を支える足が前に運ぶ度に鈍重な音を鳴らすメガローは、荷台に乗せた事前に調理し終えたおでんが入ってる大きな鍋を見て言った。

 

「相変わらずの食欲だな。好物は海王類のステーキだっけ?」

 

「肉厚で食い甲斐があるからな。だからジジイの作るステーキは最高だぜ。あー、思い出すとますます腹が減ってきたァ・・・・・!!」

 

「もう目の前だから我慢しろよ」

 

人が住む家々の建造物が肉眼でも確認が出来て―――おれ達は絶句した。既に何者かに連れ去られた跡しかなく、住民達が人っ子一人も遺体すらなく姿を消していた。

 

「海賊の仕業か? だが、人の気配が・・・・・」

 

無傷で放置されてる建物を見回し、そして家の影から大きな人影が出て来た。赤い身体をした巨躯の胸に太陽のようなシンボルマークを掘った、人間ではなくメガローと同じ魚人だ。

 

「てめェ、タイガーか」

 

「メガロー・・・・・どうしてお前がここにいる」

 

「それはこっちのセリフだ。噂には聞いたがタイヨウの海賊団とかいう頭になっているんだってな?」

 

どうやら知り合いらしい。尋ねてみた。

 

「友人か?」

 

「そんなんじゃねェよ。同じ魚人街に住んでいた仲だっただけだ。俺からすれば地上に出て冒険する変わり者でおかしな奴だがな」

 

「そう言うお前は、昔から人間を見下していたのにどうして人間と行動をしている」

 

「ガシャシャ!! 下等種族でもおれァ気に入る人間ぐらいはいるってことよ」

 

鍋の蓋を開けて、おでんを食べようとするメガローを好きにして視線を下に落とす。幼い少女がタイという魚人の脚に引っ付いてこっちを見てくる。

 

「もしかして、この島の住民かその少女は?」

 

「・・・・・ああ、そうだ。この島まで連れて来た」

 

連れて来た? 元々は別の場所にいて目の前の魚人がここまで船に乗せていたということか。

 

「なんだ、意外と優しいんだな」

 

「違う、押し付けられただけだ」

 

「たとえそうだとしても拒絶できたはずだろ。案外お人好しなところもあるから少女に懐かれてるんだ。それが証拠だろ」

 

「ガシャシャ!! ヤキが回ったかタイ!!」

 

「黙れメガロー!!」

 

面白がって笑いながらおでんを食べるメガローと怒鳴るタイ。少女に器によそったおでんを差し出す。

 

「食べるか? 美味いぞ。熱いから少し冷めてから食べろよ」

 

「い、いただきます・・・・・お、美味しいっ」

 

「おう、タイガーも食うか? 美味いぜ」

 

「いらねェ。この事を船にいる連中にも伝えなきゃいけねェんだ」

 

魚人族だらけの船かな? おれも見てみたいな。・・・・・無理かな?

 

「タイガー、と言ってたな。おれはイッセー。これからこの少女をどうするか訊いてもいいか?」

 

「イッセー・・・・・その仮面は見覚えがある。マリージョアを暴れ回って奴隷達を解放したっていう四皇か」

 

「お、知られていたか。人権を奪い人間を奴隷にする天竜人が嫌いだからついでに半殺しをして解放したんだがな。これから今後もするぞ」

 

「・・・・・」

 

凄く警戒している目で見られるが、こっちはおでんの処理をどうしようか悩まなきゃいけない。

 

「あ、そうだ。もしよかったらお前ンとこの仲間におでんを食わせてくれないか? メガローでも食いきれないからさ」

 

「そういうことならおれが持っていってやるぜ。タイガーとは久方ぶりに話してェからな。いいだろ」

 

珍しく提案を物申すメガローにナイス!! と心中で称賛した・

 

「よし、他の海賊の魚人族と触れ合う口実が出来た!!」

 

「おい、おれは許したつもりはないぞ。ついてくるな」

 

「海賊相手に遠慮する必要がどこにあるんだっけメガロー」

 

「ないな!!」

 

そんなこんなで半ば強引に船に戻るタイガーと同行することに決めた。肩を並べて歩く二人の背中を見つめているとセルバンデスが顎に手をやりながら不意に口にした。

 

「魚人族のタイガー・・・・・もしや」

 

「どうしたのセルさん」

 

「三年前、イッセー様がマリージョアを襲撃する前よりも天竜人から奴隷達を解放、マリージョアを大暴れした者がいたのです。その者の名前はフィッシャー・タイガー。彼であることは間違いないかと」

 

「「!!」」

 

その情報はヤマトと一緒に知らなかったおれは驚嘆の念を吐いてタイガーを改めて見つめた。確かその名前・・・・・ハンコックから聞いたのと一緒だ。まさか、その人物とこの場で出くわすとは・・・・・。

 

 

―――ガチャッガチャッガチャッ!!

 

 

無数の銃がおれ達を囲むように付きつけられる。そうした者達は―――海軍の海兵達、そして縦に伸びる長い髪の海兵の上官。

 

「私は海軍本部ストロベリー少将。キミがこの島に来ることはある島の者から報告を受けている」

 

「―――――」

 

絶句している様子のタイガー。待ち伏せされていたとは思わなかったんだろうな。おれもその一人だったが、それはどうやら向こうも同じだったようだ。ストロベリー少将がおれにも話しかけて来た。

 

「よもや、タイヨウの海賊団だけでなく四皇天龍までこの島に来ていたとは予想外だ。だが、絶対の正義の名の下に・・・・・」

 

「一つ聞いていいかストロベリー少将」

 

話を遮ってまで訊きたいことはただ一つ。

 

「この島の住民はどこにいるのか知っているなら教えてくれるか? この少女は関係ないと思うが」

 

「ああ・・・・・世界政府が『世界徴集』を行った故にマリージョアへ運送された」

 

「「「!?」」」

 

「すべては世界貴族、天竜人のためだ。そしてそこの少女も『世界徴集』の対象者でもある」

 

「なんだと・・・・・!!」

 

怒気を露にするタイガーに天竜人のところへ連れ戻されることを少女は酷く怯え、タイガーのズボンを強く握り締めた。まさか、天竜人の奴隷だったのか?

 

「元々は天竜人の所有物だ。海賊から取り戻して何が問題ある」

 

・・・・・つまりは今マリージョアへ行けば奴隷達がわんさかいるってことか。そしてそれをこの場で告げておれ達に倒される前提でしているならば、おれを釣るためのエサかな?もしそうならお前等海軍の考えがよくわかったよ。だが敢えてそれに乗っかってやる。

 

「でもな。おれは人の人権を奪う奴等は嫌いなんだよ。たとえ誰であろうともな。お前、おれを怒らせない方が賢明だぞ。龍の逆鱗を触れていいものじゃない」

 

「正義の為に犠牲はつきものだ。この場にいる我々がお前達に破れることになろうとも相手が巨悪だろうと決して屈しはしない」

 

「なら問おうかこの場にいる海軍!! お前等の家族も喜んで正義のための犠牲に天竜人の所有物として差し出せるのか!?」

 

「・・・・・」

 

「それが正義のための犠牲とならば、お前達も自分の家族を犠牲にするべきだろう!! 天竜人を守るのが義務があれば尚更だよな海兵達!! 」

 

おれの問いに海兵達は誰一人答えなかった。ったく、シラけるなおい・・・・・。

 

「自分達が正義や秩序の為に命をなげうって全うする覚悟があるから、天竜人の暴走した権力に巻き込まれないから安心しているなら、それは大間違いだぞ。天竜人は海兵も見下し気まぐれでお前達にも矛先を向けるだろう。一生奴隷としてな。それは少将のお前も例外ではないぞ?」

 

「そんなことは海軍の海兵全員が承知の上だ」

 

「へぇ? じゃあ、お前等を捕まえて天竜人の奴隷にしても覚悟が出来ているんだな」

 

海兵達から動揺の気配がこの時感じられた。

 

「今思いついた。今後見つけた海軍は全員、天竜人の奴隷にしてやろう。天竜人を守るのが義務なら、天竜人のご機嫌を取るのも海軍の義務だよなァ?」

 

「貴様・・・・・!!」

 

「一時の間だけ、お前等の記憶を封じて頃合いを見て封じた記憶を解こう。その頃は立派な天竜人の奴隷として生きているだろう。そして自分達が海兵だと主張しても連中は果たしてお前達を奴隷から解放するかな?」

 

「―――撃て!!」

 

ストロベリー少将の命令で海兵達は銃声を鳴らす。飛んでくる銃弾は全て、おれが途中で停止させて海兵に返した。敵に当たるはずの銃弾が自分達の身体を貫く、悲鳴を上げる海兵達はあっという間に戦闘不能に陥り、ストロベリー少将だけとなった。

 

「遠距離攻撃は通用しないぞ?」

 

「ならば、近接戦闘はどうだ!!」

 

上から飛び掛かってくるストロベリー少将。対応しようとする俺よりも動く巨体があった。

 

「食べた後の運動をさせてもらうぜ」

 

武器を持ってきていないがメガローは拳を突き出してストロベリー少将と衝突した。

 

「イッセー様。ここに海兵がいるとすれば・・・・・」

 

「だろうな。ということでタイガー、さっさと船に戻ってくれ。軍艦が迫って来ている頃だろう」

 

「お前たちはどうする」

 

「おれ達の存在は予想外だったみたいだから船への被害は多分無いと思うけど、心配だから戻る。後で勝手に合流するから無事でいろよ」

 

メガローにも声を掛ける。

 

「先に戻ってるぞメガロー」

 

「おうよ!!」

 

ついでに海兵の武器を回収っと荷台を引いて、少女を抱えて走るタイガーを視界に入れながら船へと戻った。軍艦の影は見当たらない。ヤマトが安堵した。

 

「よかった。無事みたいだね」

 

「さっきも言ったが、おれ達の存在は予想外だったみたいだからな。今すぐ出航するぞ。タイガーを助ける」

 

「うん!!」

 

船にいるギリュー達にはセルバンデスから伝えてもらい船を出航させる。全速前進する船は時間を掛けてようやく何かを取り囲んでいる数多の軍艦が捉えた。砲撃の音が聞こえてくる。やっぱりタイガーの船を沈めようとしているのか。船首が魚の船を見つけると、おれは船から飛び出し、空から手を突き出して魔法を使った。魚人族が乗っている一隻だけ残して他は海から高く浮かせ、逆様にしては海兵を海へ全員落としたらこっちに引き寄せる。タイガーの船は、どうやら捨てる気のようだ。そして陸から負傷したメガローが現れ船へ転移させる。その後、軍艦を奪った魚人達が島から離れる様子を見てヤマト達にその軍艦を追いかけてもらったら、浮かせていた軍艦はまた一隻のこして残りは新鬼ヶ島に転送しよう。百獣海賊団のちょっとした土産になるだろう。

 

 

 

「ざまァねェな鮫野郎。下等種族にボコられて戻ってきやがったのか?」

 

「ンなわけねェだろうが!! きっちり痛めつけてから戻ったんだよ!!」

 

「ああ、痛み分けという引き分けで終わらせたのか。イッセーから魔力を与えられたのに勝てないとはな」

 

「なんだとこの鰐野郎が・・・・・!!」

 

船に戻れば一触即発の喧嘩腰になっていた二人を見てため息を吐く。

 

「ヴェージ、メガローを煽るな。戦闘になればいくら強い力でも戦えば怪我ぐらい負うことは誰でもあるんだ。おれだってそうさ。それが弱さだというなら今度はお前も将校クラスの海兵と戦ってみろ。怪我したらメガローに対して人のことが言えないぞ」

 

「・・・・・チッ」

 

指摘すれば何も言い返さず不機嫌な顔でそっぽ向くヴェージから、セルバンデスに手当をしてもらっているメガローに意識を向ける。

 

「お前もご苦労だった。将校クラスはやっぱり強いか?」

 

「中々骨のある奴だったのは確かだぜ。魔力を使わずに戦ってこのザマだがな」

 

「戦い方は戦闘の度に変わっていく。それらすべてが経験となり強くなるのも道理だ」

 

「ガシャシャ!! 四皇様が言うと説得力があるなァ!!」

 

怪我しても元気があるメガローの視線は軍艦に変わった。

 

「それで、これからどうするつもりだ? タイガーを何時までも追いかけるわけじゃねェんだろ」

 

「ああ、もう次の行き先は決まった。―――天竜人に集められた奴隷達を解放しに行くぞ。これが海軍の、おれを誘うための罠だとしても助けに行かなくちゃな。まったく奴隷を集めるなって警告したのに無視しやがって・・・・・まだ恐怖感が足りなかったようだ」

 

「であれば、今度こそは天竜人に対して見せつけに何人か殺しでもしますか?」

 

ワオウがそんなこと言い出す。

 

「いや、そんなことしたら簡単すぎて意味がない。奴らには今まで奴隷にして来た人間達の憎悪と怨みを思い知らせる方法でないとダメだ。そうだな・・・・・魂を奪って脅迫観念を植え付けるか」

 

「なるほど、魂を介して痛めつけるのですね」

 

「人は恐怖よりも肌で感じる方が嫌がるもんだからな。いい嫌がらせになるだろうよ」

 

いや、それは嫌がらせどころの話じゃないって・・・・・。と心中で呟いた一誠とワオウを除いた全員だった。

 

「おい、お前等!!」

 

ふと、軍艦の方から声が掛かった。一人の魚人が甲板から催促の言葉を飛ばして来た。

 

「タイガーさんがお呼びだ!! メガローとイッセーという人間だけ話があるってよ!!」

 

「メガロー、問題は?」

 

「ねェよ」

 

手当は殆ど終わっており、包帯を巻いた痛々しい姿でもメガローは軍艦に赴く意を示す。一緒に軍艦の方へ乗り込むと負傷者だらけの魚人族達と、タイガーと幼い少女が食堂と思しき大量の椅子と長い机がある部屋に集まっていた。

 

「おい、あいつメガローじゃないか!?」

 

「同名の奴かと思ったんだが、あいつかよ・・・・・!」

 

「人間と一緒にいるなんて・・・・・」

 

「散々人間を見下していた奴がどうしてなんだ」

 

あっという間に同族のメガローが注目の的になった。

 

「お前、魚人街にいた頃なにしていたんだ?」

 

「別に何もしちゃあいねェよ。って、んん? そこにいるのはチビガキ共じゃねェか? ガシャシャ!! 懐かしいなおい!!」

 

鋭利なノコギリのような形状をした鼻の大柄な男と下顎から2本の牙を生やした大柄な男。後ろで束ねた髪、渦巻いた眉毛ともみあげが特徴で、着物の上に外套を羽織り下駄を履いている。その二人に対して言うメガローに問うた。

 

「どういう関係?」

 

「なに、ただのヤンチャ坊主共がちょっかい出して来たもんだからよ。逆に返り討ちにしてやった程度だ。こいつらはタイガーによく懐いていたがおれにはてんで懐かねェ可愛くもない奴らだったぜ」

 

「懐くかよアンタには!!」

 

「ワシらからすれば、お前さんは全ての魚人の恐怖の大王じゃからな。理由もなく街を破壊し、暇だからと魚人街や魚人島の者達を殺し回っておったその凶暴性は誰もが忌避し、恐れておったもんじゃ。じゃから魚人島から追放されたんじゃ」

 

そんなことしていたのかお前、と責めるような目つきで睨む。そんなおれに気にしていない風な態度で「そういやァそんなことしていたな」と風に昔のことを思い出していた。

 

「おれ、そんなことしていた奴を仲間にしてたなんて知らなかったわ。今更な話だが」

 

「ほんと今更だな。だが、どうでもいいだろそんなこと」

 

「まァな。昔の恐怖の大王とは思えない大人しい魚人しか見ていないからな」

 

その一言で信じられないと、メガローのことをした顎から本の牙を生やした大柄な男が言う。

 

「お前さん、この男が大人しいわけが無かろうて。暴れるのが生き甲斐じゃと何かを破壊しない日が無かったのじゃぞ。タイの大兄貴じゃなければ誰も止められんほどじゃ」

 

「あー、だから顔見知り以上の関係だったなわけね。納得したわ。お前、ほんと暴れ過ぎ。反省しろ」

 

「ガーシャシャシャッ!!」

 

笑ってごまかせると思うなよ全く・・・・・。

 

「話は済んだか」

 

タイガーが口を開いた。

 

「悪いな。メガローが懐かしい顔があったみたいで思ったより会話の花が咲いたわ」

 

「気にするな。そいつは大体、相手のことなんざ無視して毎度面倒事を起こす奴だ」

 

「そうかよ。それで、本題はなに?」

 

「まずは礼だ。海軍から逃がしてくれて感謝する。おかげで軍艦を奪いやすくなったからな」

 

気にするな、と手を振って示す。

 

「これからどうする気だ。その少女の今後についてだ。天竜人の奴隷に親が連れ去られたんじゃどうしようもないんだろ?」

 

「ああ・・・・・もうしばらく一緒にいることになるだろう」

 

「それが賢明だろうな。海軍もまさか小さな少女を狙ってくるとは思わなかったし、お前達が守らなきゃならなくなったしな」

 

まァ、ここの魚人達と馴染んでるみたいだから安心だろう。

 

「ニュ~、残念だなコアラ。せっかく故郷に帰れたと思ったのに・・・・・」

 

「連れ去られた後じゃ、おれ達にはどうしようもない」

 

「その代わりにおれ達とずっと船にいられるな!! 寂しい思いはさせないぜ!!」

 

実際に本当に仲が良い関係を築いていた。何気に強かというかまだ幼いのに凄いな・・・・・。

 

「タイガー、話は終わりか? おれは船に戻るぞ」

 

「礼は要らないのか。この軍艦の積み荷や宝でもいいぞ」

 

「これからマリージョアへ行くつもりだからな。のんびりはできんのさ」

 

「警備が強化されていると聞く。簡単には奴隷達を解放できないぞ」

 

「問題ない。遺憾だがおれは四皇の一人だぜ。その程度なら大したことじゃないさ」

 

ポンとメガローに触れる。

 

「気が済んだら船に戻って来いよ。あと暴れるなよ」

 

「分かってる」

 

「・・・・・メガローを置いていくのか」

 

え”と魚人達の顔色が一斉に変わり、心底嫌そうなだったり怖いものを見る目で見るようになった。

 

「タイガーと久しぶりに話がしたいって言っただろ? なに、迷惑するようなことしたら呼んでくれ」

 

「いるだけでトラブルを招くから連れて行ってくれないか」

 

「メガローさん?」

 

今度はちょっと、本当に一回ぐらい謝れよお前コラ!! と怒気を込めて笑顔を浮かべるとメガローはおれから逃げるように顔を逸らしやがった。

 

「あのメガローが・・・・・」

 

「なんなんだあの人間は。奴を圧倒してやがる」

 

「何となくじゃが、大人しくしている理由が分かった気がする」

 

結局、メガローを連れてはタイヨウの海賊団とすぐに別の道に航海することにした。タイガーが心底から迷惑がられちゃしょうがないからな。

 

「さて、メガローの傷が完治したら天竜人を半殺しに行くぞお前ら」

 

「マリージョアへ向かうつもりですか?」

 

「そうだ。でも、今回は朝っぱらからじゃなくて夜中に忍び込んで解放する手段で行く。警備がどう強化されているのかまだ知らないからな。三大将の誰かが居ついてもおかしくもないから調査もする。ギリュー、お前も頼んでいいか?」

 

「わかった」

 

「イッセー、僕達は?」

 

「調査が終わるまで待機だ。まず面倒な大将を無力化しなくちゃ厄介すぎるからな」

 

 

そう決め合ったおれ達は夜になるまで待った―――。

 

 

深夜―――。

 

夜の帳が降りて夜中に警備をしている兵を除いて全員が夢の中へ旅立っている時間帯に、マリージョアへギリューと侵入した。分身体を大多数作って天竜人がいる居住区にいる警備兵は出会い頭に魔法で眠らせて無力化にし、警備兵に変身して異常が何もない風に装う。しかし、破壊し尽くした建物をこんなに早く復興させるとは・・・・・。

 

「さて、警備が強化されている話だが・・・・・あんまり変わってないのか?」

 

あまりにも拍子抜け過ぎる。これも罠だろうか? そう思うおれは時間を掛けてすべての奴隷達の把握をし後からヤマト達を呼んで奴隷達の対応をしてもらう。

 

「セルバンデス。お前の国に奴隷達を住まわせていいか」

 

「構いませんとも。少なくなってしまった民の国に住みついてくれる人がいるなら歓迎いたします」

 

「よし、なら始めるぞ。奴隷解放だ」

 

 

海軍本部―――。

 

 

「げ、元帥!! センゴク元帥!! い、一大事でございますッ!!」

 

寝室で寝ていたセンゴクは叩き起こされ、ただ事ではない事態が起きていると察しながら耳を傾けた。

 

「何事だ・・・・・」

 

「聖地マリージョアに火の手が回っております!! 襲撃が受けていると思われます!!」

 

「っ―――何だと!? まさか、天龍か!! 他に報告は!?」

 

「以前ありません!! 既に壊滅状態であると思われます!! 天竜人の安否は未だ不明です!!」

 

してやられた、そう思わずにはいられないセンゴクは報せに来た海兵に、聖地マリージョアへ出航する準備が出来次第、救援しに行くよう指示を出した。

 

「軽々と襲撃してくれるっ、おのれ天龍・・・・・!!」

 

その報告を受けた頃には聖地マリージョアは火の海が広がっており、また十字架に張り付けられ魔法で老人にされた天竜人の魂を抜き取り、命を握っていることを実感させていた。『世界徴集』で奴隷として集められた奴隷達はセルバンデスの国に繋がっている空間の穴へと続々と潜っていく。

 

「お前等、本当に懲りない奴等なのがよくわかった。だから決めたよ。―――ここを滅ぼすわ」

 

「ふ、ふざけるなだえ!! そんなこと神である我々が許すとでも―――!!」

 

「許可なんて必要か? それと知らないだろ。神は反逆される立場でもあるんだぜ?」

 

不敵に物申す一誠がそう言っている間にも海軍が赤い土の大陸(レッドライン)を挟んで2つ存在する巨大な港、赤い港(レッドポート)からシャボン玉で飛ぶリフト『ボンドラ』によってマリージョアへ出入りしようとしていた。しかし、それぞれそこにはガンヴァ達がいてリフトの綱を切り落として、魔力でリフトを破壊、マリージョアへ上がって来られないように阻んでいた。リフトの壊れ様を確認した後は撤退。

 

「駄目です、赤犬さん!! リフトが落とされていて我々がマリージョアへ昇ることが不可能になっております!!」

 

「天龍め、こざかしい真似をしよってからに・・・・・!!」

 

「これじゃあ海兵達がいけれないねェ~・・・・・」

 

「おれが氷で道を作ろうが乗せて上に運ぼうが、直ぐには着けれねェなこれは」

 

大勢の海兵、将校、大将達も現地にいて修復しないと出入りできない状態になっているボンドラの前で立ち尽くしていた。修復するにも相当の時間が用意て、今日中にマリージョアへ昇ることは不可能な状態に焦らされている。

 

「じゃがそれしか方法がないんじゃ。さっさとやれクザン」

 

「はいはい、わかってるよ」

 

アイマスクに青いシャツに白いベストを着用した長身の男の手が氷に覆われ、そして一瞬で大人数でも乗れる氷の足場を作り出した。急いでそれに海兵達が乗るとクザンと呼ばれた男は氷の足場を真上に伸ばして運ぶ。

 

「―――サカズキさんがマグマで赤い土の大陸(レッドライン)の中を溶かして道を作るもんだと勘繰っていたんだが、まさか氷で運ぶとは予想外だな」

 

一行を乗せた氷の足場を支える柱を袈裟斬りで両断。間も置かずに赤い土の大陸(レッドライン)から遠ざける蹴りで吹っ飛ばした。

 

「貴様っ、天龍ゥ~!!!」

 

「制空権確保している以上は、これ以上先には行かせないぞ」

 

天使の姿で海へ落ちる海軍達を見下ろす一誠が現れたことに、大将達は黙ってはいなかった。

 

「〝八尺瓊勾玉〟」

 

空中に移動し、両手の指で作った円から無数の光の弾丸を雨のように発射する。

 

「〝大噴火〟!!」

 

拳を巨大なマグマに変化させ、噴出する。

 

暴雉嘴(フェザントベック)!!」

 

雉型の巨大な氷の彫刻を作り出し、相手に突進させる。

 

と三人はそれぞれ離れた相手へ攻撃した。しかし、それらは全て歪んだ空間に吸い込まれ―――自分達の真上に広がった空間の穴から三人の攻撃が飛び出して来た。氷の大地は砕かれ、マグマで溶かされ、とうとう足場が完全に崩壊して海兵の中で厄介そうなクザンをマリンフォードまで転移させたことで、彼等がマリージョアへ辿り着く手段を奪った。

 

「俺に飛び道具やその類の攻撃は一切通用しないぞー」

 

「おのれ、おのれェ~~~~~!!!」

 

暗闇の海へ落ちる海軍一行。能力者は沈むしかないが、ボルサリーノだけは無事に港へ光速で移動したので無事だった。

 

「本当にキミは厄介すぎるねェ~・・・・・クザンはどうしたのか教えてもらってもいいかなァ~?」

 

「マリンフォードに送った。それじゃ、また会おうなボルサリーノさん」

 

「また会ったら捕まえるよォ~」

 

できるならやってみろ。そう言い残して光と化した一誠は眩い閃光と共にボルサリーノの前から消失した。一緒に落ちた海兵によってサカズキは海から引き揚げられたが、任務は失敗に終えたことは確かである。

 

その後―――。

 

セルバンデスが暮らしていた国は海賊の襲撃を受ける前よりも人が溢れ、心に傷を負った者同士助け合って明日を生きようと、タイヨウの海賊団のマークとは違う掲げた太陽のシンボルマークの旗の下で誓った。

一誠の意思で誰が奴隷だったかを分からなくするため、奴隷全員が奴隷の烙印の上から太陽マークの焼印を入れて―――。

 

 

 


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