海賊王におれは・・・・・ならないから! 作:ダーク・シリウス
次なる島を指す『
「まだ朝の時間帯なのにこの一帯の海域だけ暗雲。・・・・・おでんの日誌通りなら―――」
「全員、船の中に入るか何かに全力でしがみ付け!!
海中から爆発的に突き上がった莫大な量の海水の柱が天を衝くように立ち昇り、おれ達を乗せる船は海柱が発生した際に生じている突風に押し出されながら空高く天へ―――。
「着いた~!! 空島だぁ~!!」
歓喜に叫ぶヤマト。雲の上に島があるなんて、一部の人間しか知らない現実だろう。カイドウは知っていそうだな。
「雲の海ってんなら、泳げれるのか?」
「海底が無い海だぞ。泳げようと真っ逆さまに上空一万メートルから落ちるって」
「ガシャシャシャ!! そんなこともわからねェなんて馬鹿な下等種族だな!!」
「んだと!!」
だからそこで喧嘩するなよお前等・・・・・。
「セルバンデス」
「心得ております。この島にしかない物資を搔き集めましょう」
「ああ、頼む。ルフィ、エース、サボ。お前達も買い出しを頼むからな。セルバンデスの言うことは絶対に従えよ」
「「「わかった!」」」
おれ達が乗っても立つことが可能な雲に喜々と降りたおれ達は空島を観光するのだった。雲なのにふかふかな感触を覚えながら町へ赴く。どうやって作ったのか分からない登った階段の先にある建造物の光景と植物に大変興味を持ち、空島名産の食事を堪能し、空島の生活と文化を支えてる貝殻の
空島の住民の多くは、髪の一部を触角のようにした「天然アドバルーンヘア」(通称:天アド)という髪形をしている。挨拶は「へそ」。通貨単位は「エクストル」で、1万エクストルが1ベリーに値する。・・・・・なんで挨拶の言葉が「へそ」なのかは意味不明だが、
「さて・・・・・そろそろ行くとしようか」
「目指すは黄金の大鐘楼!!」
皆が集まり次第、船を出航させて神が住まう地である『アッパーヤード』へ向かった。空島にないはずの広大な大地へ。その全貌が肉眼でも捉えられる距離になれば巨大な森がおれ達を出迎えてくれた。
「空に陸があるなんてどういうことだ?」
「十中八九、
「確か、この空島の下にはジャヤって島があったよね。じゃあ元々一つの島が超巨大な
「辻褄が合うわね」
試しに空島へ寄る前に寄ったジャヤの地図とこの島の地図を合わせたら意外な事が判明した。
「ドクロみたいな島に見えるな」
「で、これからおれ達はどこに行くってんだ」
「おでんの日誌によればこのドクロの右目に黄金郷があり、天にまで伸びてる植物の先に巨大な黄金の大鐘楼があるようだ。おれ達はそれを見に行って大鐘楼を回収する」
「ワノ国に置くのか?」
船に置いてもおれは構わないが、どうするから見てから考えるとしよう。船を岸に寄せて錨で固定。
「止まれっ!!」
「ゲリラではないな何者だ!!」
背中に羽が生え、武器を持った衛兵らしき空島の住民達と出合い頭に警戒されてしまっている。
「青海から来た空島を観光しに来た一行でーす」
「ここはどこだか知っての侵入か!」
「青海にあった島の一部だろ? あー・・・・・名前のことなら神の島アッパヤードか?」
「そうだ。このアッパーヤードは我々衛兵や神しか許されぬ聖地である。青海の人間が無作法に入って良い場所ではない。早々に立ち去れ!!」
そう言われて素直に従うわけにはいかないんだが。・・・・・・ん?
「全員、警戒しとけ。巨大な何かが接近してくるぞ。」
「え?」
なんだそれは? という気持ちを露にするみんなからの視線を一身に向けられた時それは現れた。この空島で長いく生きただろう数百メートルは優にある巨大な蛇に対して、まず衛兵たちが襲われる。おれ達に構っているよりも超巨大ウワバミに専念しなければ喰われかねないからだろうが、これは好都合だ。
「よし、今の内に黄金郷に向かうぞ」
「あの大蛇は!?」
「基本的に無視だ。空から行くぞ!!」
魔法で全員を浮かし、目的の場所へと連れてひとっ飛びする。ウワバミと衛兵たちがこっちに意識を外している瞬間の好機は、例えこの場から離脱する姿を気付かれていようとあっという間に遠ざかってしまえば見失うだろうさ。
そして―――。
「すげェ・・・・・本当に黄金だらけだ」
「眉唾もんかと思えば、実在していたのか」
「長生きするものですね。よもやこのような光景を見られるとは」
黄金で出来た古代の建造物。所々に空島にまで打ち上げられた衝撃と永い年月で壊れている建物が目立つ。それでも、おれ達を圧倒させるこの光景は目に焼き付けさせるには十分すぎる黄金郷に辿り着いたのだった。
「さて、ここらで探検しよう。まだ残っていた財宝は見つけ次第回収だ。壊れた黄金の建物の残骸でも構わないぞ」
「先におれが見つけてくるー!!」
「あ、待てルフィ!!」
「抜け駆けすんな!」
先駆けるルフィ達に続き、他のみんなも散らばって探索しようとする。。
それから、皆が戻ってくるのを待っていれば黄金の財宝をたんまりと両腕では抱えきれない量を持ってきて来た。しかもまだたくさんあると言う。それは魔法で増やした分身体達に回収してもらい、おれ達はまた空を飛び巨大な蔓へ向かって移動を開始した。螺旋状に回りながら上へ上へと天辺まで登り詰めるのもあっという間で・・・・・。
「あれ、ない?」
これ以上先に進めないところで止まり、大鐘楼の影の形も見当たらなかった。
「おでんの日誌の日誌には、雲の上にあったって書いてあるのに」
「堕ちたか、鐘楼を乗せた雲が分離して離れてしまったかだが・・・・・ちょっと待ってろ」
皆から離れ飛ぶ。アッパーヤードを一周するようにぐるりと円を描きながら徐々に大きく回って動いたら、煌めく何かを発見した。そこに向かうと・・・・・おおっ、これか!!!
お目当ての物を見つけ創造の力で複製したそれを、魔力で雲から浮かせて引っ張るように皆のところへ戻ると、ヤマト達が感嘆の息を吐いた。
「凄い、これがそうなんだね!! なんて美しいんだ・・・・・」
「本当にあったとは驚きだ。これ全部が黄金で出来てるなんてな」
「見つけたならさっさと船に戻ろうぜ」
同感だ。船に戻るとしようか。またあのエンジェル島に行ってのんびりしたいしな。こうして無事に目的の代物を手に入れたおれ達は、戻った船でエンジェル島へとんぼ返りする。数日だけ過ごした後は―――。
「「「うわあああああああっ!!? 落ちるゥ~っ!!!」」」
ぎゃあああああっ!! と目玉と歯茎が飛び出てるガキんちょ達の絶叫を愉快に聞きながら、上空一万メートルからの自由落下して青海へ帰ったのだった。
旧ワノ国 新鬼ヶ島
青海に戻った後、お土産用に複製した黄金の大鐘楼をカイドウに献上してみた。どこに設置しようかと相談してみれば花の都の中心部に置けと言われたからその通りに置いた。既に久里へ移住を果たした花の都の住民達の代わりに百獣海賊団の団員達が入れ替わるように元住民達の民家を我が物顔で住んでいたり、海賊なのに商売をしていた。―――まぁ、そうするよう狂死郎に指示を出したんだがな。
『花の都の住人を全員、久里に移住させる!?』
『ああ、全員労働力として働いてもらうためだ。カイドウもそうつもりだろうからな』
『おぬし、それは無茶な話だぞ。一体花の都にどれだけの住人がおると思っておるのだ』
『逆だ。事前に住民を避難させるための移住なんだ。百獣海賊団の本拠地が花の都に移った今、決戦の場は一体どこになる』
『・・・・・花の都になるど』
『そう言うことだ。そして移住先は久里以外適していない。と言うか現状、花の都と久里、兎丼の囚人採掘所に希美のおこぼれ町にしか殆んど人が住める場がないんだ。環境的にも久里の方が個人的にいいと思っている。何よりここは旧おでん城があるところだ。ワノ国の原住民の心の拠り所にするなら久里が一番いいハズだ』
『『『・・・・・』』』
『それにお前たちの戦いはまだ終わってないんだろ。なら、カイドウを倒す刃を研ぐ時間があるなら命を守る方法も企てないと』
『・・・・・相分かった。仮の主君のお考えは否と答える理由はござらん。して、労働力にするというのは一体何をさせるのですか』
『これからワノ国は外国から人間が集まってくるだろう。それに備えて農業を中心に働いてもらいたい。ああ、採掘場の方は?』
『仮の主君のご命令通り、勤務と食事の改善を施しましたところ以前よりだいぶ良くなりました。何より私に対する支持と発言力は高くなり、あなた様から任された将軍の立場のおかげで採掘場の権利をクイーンからもぎ取ることが出来ました』
『おお、真か!! これで全ての採掘場にいる囚人達を何時でも解放できるということなのだな!!』
『戦力は多い方がいい。だが、武器はどうするんだど。武器が無ければ戦えん』
『それも考慮してある。な、狂死郎』
『ええ、既に動いております。カイドウが目指す海賊の楽園とやらを考慮した方法ならば、自然と誰の手にも武器を持てる環境にしてみましょうぞ。これも将軍の地位を代理として拙者に任せてくれたあなた様のおかげで事が順調に進めます』
『油断とスキを見せるなよ。監視をしてる忍者がいないとは限らないからな。カイドウと百獣海賊団の忠実な人間として動け。信用と信頼が人との付き合いにおいて最強の武器となる。相手が相手だから遺憾だろうがそれだけは忘れるな』
―――と、いう感じでこの光景を窺えば狂死郎の計画は順調だということが明らかだ。さて、大鐘楼を置く場所にあった家屋は思い出している間に百獣海賊団の団員達によって撤去されていた。事前カイドウに伝えたからか、黄金で出来た大鐘楼を一目見ようと百獣海賊団が集まってきて、感嘆や驚嘆の息を漏らしつつ魅入っていた。
「すげー、アレ全部黄金で出来てるのかよ」
「こりゃあ一部でも売れば高く売れるだろうな」
「バッカ!! そんなことしたらイッセーさんに殺されるぞ!!」
「よくこんな物を見つけるなんて。さすがにカイドウさんと肩を並べる四皇だぜ」
大鐘楼を設置し終えたおれは、ざわめく彼等に振り返って一言申す。
「この大鐘楼は鳴らしてもいいし、触っても構わないが、一部でも盗んだ奴は処刑するからそのつもりでいろよ。ドラゴンの逆鱗に触れる大馬鹿者がカイドウの部下にいることはないと思ってるけどな」
『も、もちろんですっ!!』
釘を刺したところで効果があるかは判らないが、取り敢えず大鐘楼を置く用事は済ませ、新鬼ヶ島を後にどこかの海に航海している船へと転移して戻った。
―――水の都ウォーターセブン
次に寄港した島は巨大な噴水が目立つ珍しいところだった。船でも通過できる広い水路に進む途中で、島民の人から停泊する場所を教えてもらった。島の裏側の岬に錨を降ろし陸地に足を運ぶ。
「みんな! 早く行こう!!」
「上陸するたびにヤマト様は嬉しそうですね」
「冒険をする事が夢だったからな」
誰よりもはしゃいで、誰よりも楽しむヤマトが先行していく後ろ姿におれ達も追いかけていく。
ヤマトが向かう先は事前に決め合った海列車の見学だ。新聞で島々へ続く海道に線路が敷かれ海の上に走っているかのように見える鉄の乗り物、列車が完成したことが載っていたからな。おれ達もそれなりに興味があったから一目見ようと思っていたんだが・・・・・。
わしはロジャーという男に力を貸したことをドンと誇りに思っている!!!
どーやらそれどころじゃないらしいな。
「あの野郎・・・・・」
何だか人の集まりが多い気配のところへ来てみれば、倒れてる負傷した魚人を取り囲む海兵と黒一色の服を着込んだ者達、彼等から遠巻きに見ている野次馬の一般市民達の姿を建物の屋根の上から見下ろしていると横から呟く声を耳朶が刺激した。
「メガロー、知ってるのか」
「顔見知り程度だ。すぐに顔を見なくなったがこんなところにいたのか」
「それ、魚人島で大暴れしたお前が追放されたから会えなくなっただけだろ」
あ、押し黙った。図星のようだなこいつ。しかしあの魚人がロジャーの船を造った船大工か。レイリーさんとも顔見知りなのは間違いないか。
「ん、あの魚人を助けにでも行くか」
「今からなら僕は行くよ」
「いや、こういう時はタイミングが大事だ。セルバンデス、エニエス・ロビーってのは?」
「司法の島の名前です。世界政府直属の裁判所がある「司法の島」で、ここ『偉大なる航路』前半にある別称不夜島(昼島)。あそこで罪を犯した者を裁判し判決を定められますが、一度も無罪放免された例外なく「正義の門」からタライ海流で大監獄インペルダウンか海軍本部に連行される」
タライ海流? それも聞けば、三角形の位置にある海軍本部マリンフォード・大監獄インペルダウン・司法の島エニエス・ロビーの間で流れる海流だそうだ。その海流に乗って航海すればその三つの場所に行き来できるらしい。
「しかし、マリンフォードとインペルダウンへ向かうには正義の門という巨大な門を通過せねばならないと耳にしたことがございます」
「海は広いのにタライ海流から抜け出せないのか」
「通常の船ではタライ海流を抗うことは不可能かと。船が空を飛ばない限りは」
ほほーん・・・・・船が空を飛ばない限り、ね。
「おい、どうするんだ。魚人の奴が運ばれていったぞ」
おっとガンヴァの言う通りだな。
「そんじゃ、さくっと魚人の救出してくる。皆はここで待ってくれ」
海賊王ゴールド・ロジャーの船を造ったとして極刑「死刑」を執行するために十年懸けて完成した海列車に乗せて連行されるという皮肉なことになってしまった世界一の船大工を救わんとする一人の弟子の少年が海列車に撥ねられてからしばらく。海列車が世界政府直属の裁判所がある司法の島エニエス・ロビーに到着した。罪人を裁判所へ連行する途中、二人の巨人が門番している門を通過して島の中心にまで海兵と世界政府の人間達が移動したところで―――。
「聞いたぜ、その魚人を死刑にするんだってな?」
空から訪問者が現れ地上にいる者達に声を掛けた。相手が誰なのかその姿を見てほぼ全員が仰天した。
「き、貴様は四皇の天龍!!?」
「なんでこの島に来ているんだ!!!」
「げ、迎撃をしろ!!! それとマリンフォードに至急に連絡するんだァ!!!」
慌てふためき銃を構える海兵達から発砲されても見えない何かに弾かれて天龍には通用しなかった。
「その魚人、死刑にするなら誰が殺しても同じだよな?」
「な、なんだとぉっ!!?」
「手を貸してやるよ。おれは優しいからな」
天龍がそう言うと天にむかって翳した掌に膨張を繰り返す火炎の球、それを放たれるその光景を見て海兵と役人たちが四方八方に逃げ出し、処刑するはずの魚人が無造作にその場に放置されたまま巨大な火炎球がエニエス・ロビーの中心部に落ち、天を衝く勢いで空へ舞い上がる炎の嵐が巻き起こった。
「龍の炎は全てを燃やし尽くす。骨すらな」
炎の嵐があった場所だけ黒く焦げ、業火によって焼失しただろう姿形もない魚人の火葬を最後まで見届けた後、天龍が光と化してエニエス・ロビーから消え去ったことで、遅れながらマリンフォードに天龍の出現の一報が送られ、自由過ぎる四皇天龍の行動が読めないことに元帥と海軍の英雄は頭を悩ませた。
「とまぁ、そういうわけでレイリーさん。預かってくれない?」
「もちろんだとも。大切な友を助けてくれて感謝するよ一誠君」
「世間的に死んだことになるだろうけど、魚人島に住んでもらうようにお願いできるか?」
「善処するよ。だが、否と言うのであれば私は彼の気持ちを尊重したい」
「んん~・・・・・しょうがないな。死ななければいいよ。あ、話は変わるけど。ロジャーの息子と一緒にいるんだけど会ってみる?」
「おおっ、あいつの息子か。本当に作ったのだな。是非とも一目見たい。何時か会いに行くよ」
「じゃ、待ってるよ」
密かに救出した魚人を頼れる元海賊王の副船長に預けウォーターセブンにとんぼ返りをした。すぐにヤマト達のところへ戻り姿を見せたらメガローが訊いてきた。
「あの野郎は?」
「頼れる人に預けた。元海賊王のクルーにな」
「ゴールド・ロジャーの? 誰だそいつは?」
「冥王シルバーズ・レイリー」
「生きた伝説の名があなたから聞くことになろうとは驚きましたな」
あてなく歩き回っていた仲間達と買い物したり食べたりして、客に扮して造船所に足を運んで大砲を見たりと回った。それとなく犯罪者というレッテルを張られた魚人が住んでいた場所を訊き込み調査したところ―――廃船と鉄屑ばかりが打ち上げられた場所に訪れた。
「廃船ばかりだな」
「そうだな。えーと、トムズワーカーズの本社はっと」
人の気配をする方へ進み橋の下の倉庫のような扉を叩くとしばらくしたら、片手に酒の瓶を持った一人の長身の女性が出てきた。
「なんだいあんたら・・・・・」
「よう、随分久し振りじゃねェか。あーココロつったか?」
「・・・暴れん坊のメガロ-? こんなところに何しに来たんさね。ウォーターセブンで暴れまわるつもりなら止めておきな」
「暴れねぇよ。あのフグ野郎の事で話をしに来ただけだ」
メガロ-とは旧知の仲らしい。
「こいつがフグ野郎を助け出した。まだあいつは生きてるぜ」
「なんだって・・・・・?」
おれを見るココロという人に説明を付け加える。
「レイリ-さんのところに預けた。海賊王ゴールドロジャーの副船長だ」
「レイリ-。久し振りに聞く名前だね。だけど、世界政府からトムさんを助け出したなんてとてもじゃないけど信じられないよ」
「おれ、四皇の天龍って呼ばれてるけどそれでも?」
手配書を見せつければ、ココロさんは目を丸くした。
「あんた、海賊だったんかい」
「海賊じゃないよ!!」
なんて失敬なことをいうんだこの人は!?
「違うなら何だってんだい。四皇の奴らは海賊だよ。お前さんもどう違うってんだい」
「海賊旗を掲げてない!! というか、そんなことより例の魚人は本当に助けてレイリ-さんのところに保護してもらったから死んじゃいないことを伝えに来たんだ」
「それを証明できることがあるなら信じるよ」
証明ね。なら、ほい。シャボンディ諸島に直接空間を繋げて傷だらけの魚人に包帯を巻いてるシャクティを見守るレイリ-さんの姿が視界に映り込む。
「レイリーさん」
「ん? おお、これはまた不思議な。それにココロじゃないか。久し振りだな」
「レイリー、それにトムさん!!」
躊躇なく空間を潜って気絶してる魚人に駆け寄るココロさん。これで信用してくれただろう。
それから数時間後、すっかり暗くなったウォーターセブンの廃船島の橋の下倉庫にでココロさんの手引きで一人の青年と会わされた。トムさんを青年にも会わせてほしいと願われ、また繋げると意識を取り戻し、レイリーさんと会話していたようで何が面白かったのかツボに入って笑っていた。
「トムさんッ!!?」
「おお、アイスバーグ。たっはっはっはっ、ドンと死ななかった」
「ば、バカ野郎ォー!!!」
もう死んだと思っていた師を一目見て泣きながら怒る青年アイスバーグ。怪我人を殴るんじゃないぞ。
「ん? そこにおるのはメガロ-か? 懐かしいな」
「はん、あん時から変わらずのようだな。魚人街にある舟を造れる船大工になるって夢はまだ諦めてねェのか」
「そのノアの方舟を壊さんとしたお前を食い止めるのに随分とてこずったもんだ。壊しておらんだろうな」
「してねェよ。タイ以外におれ様と張り合える奴はお前しかいないんだからな。あれはお前に対するエサにしてるんだ。またやりあおうぜ」
言外に壊されたくなきゃ闘えと脅してるよなお前。そんなメガロ-にトムという魚人は溜め息を吐いた。
「相変わらず困った奴のようだな。まぁそれはさておき、わしを救ってくれたのはお前さんなのだな? レイリーから聞いた。見ず知らずのわしを助けてくれて感謝する」
「ゴールド・ロジャーの船を造った船大工を失うのは惜しいのと、レイリーさんの友人だから助け出したのさ。だけど、二度とウォーターセブンに戻れなくなったけどこれからどうする」
「船造りは止めん。わしの生き甲斐だからな。できればウォーターセブンに戻ってまた前のような生活と時間を過ごしたいところだが、わしはもはや歴とした犯罪者。そうすることもできねェな」
「トム・・・・・」
誰だって幸せな時間を取り戻したいと願う時がある。トムもまたその一人で罪を帳消しできたら、家族と仲間達と船を造り続けたかっただろうな。
「ふむ・・・・・一誠君、キミならなんとかできるのではないかな?」
「おれが?」
「あっ、そうだよイッセー!! 姿形を変えられる魔法とか道具とかこの人にもやって上げれば問題ないんじゃないかな!!」
ヤマトの言葉に納得する。あーそういうことかと。
「レイリー、どういうことだい?」
「一誠君はかなり特殊でね。彼に頼めばある程度のことぐらいは何でもやってくれてしまうのさ。それこそ不可能を可能にするほど、それも世界政府から一人の魚人を自ら殺したように目を欺け、密かに助け出してみせるようにね」
そういうことだと一つ頷き、トムに問う。
「トム、だったか。昔のまんまとはいかないが、海軍や世界政府の目を欺いてウォーターセブンでまた生活が送れるとしたらどうしたい?」
「一体何をするつもりだ?」
「なァに、ちょっとお前を変装させるだけさ。姿と名前をな」
数年後―――。
天才的な造船技術を駆使した二人の大工職人が後のウォーターセブンに現れて職人達を魅了した後、一人は今後ウォーターセブンの市長として、もう一人は造船所の社長としてそれぞれ働きながら周囲に慕われる存在となったのである。
「いやァ、まさかのお礼にこんなモノが手に入るとは思いもしなかったわ」
「どうするのそれ?」
「取り敢えずコレクションとして複製する。オリジナルは手元に置くしコピーした方はいずれカイドウに渡そう―――古代兵器プルトンの設計図をな」