海賊王におれは・・・・・ならないから! 作:ダーク・シリウス
新世界のとある島を見つけ上陸するべく船を進めた。晴天に恵まれたおれ達は意気揚々と上陸したもののすぐに異変に気付いた。
「ここ、荒廃してる島か」
「街並みが廃墟だね」
復興作業の手が入っていない街並みを通り、ここは昔国が存在していたという事が明らかだ。人の気配は殆どないに等しいが・・・・・いるな。
「人の気配を感じる。話を聞きに行くぞ」
「うん」
ヤマトと一緒に赴き街から離れた海を一望できる場所へ足を運ぶにつれ聞えて来る歌声。透き通った声、目を閉じてこの歌を何時までも聞いてみたいという魅力さがある。そんな歌を歌っている人物の後ろ姿を捉えると、その場で立ち止まって歌い終わるのを待った。途中で停めさせるのは無粋だからな。
「~~~♫ ~~~♬ ~~~♩」
おれ達に気付かず歌い続けるのは、赤色と薄いピンク色のツートンカラーの髪が特徴的な少女だ。密かに少女の情報を能力で探って見たところ・・・・・はっ? ・・・・・マジ、で? 衝撃的な少女の事実に大きく目を張った矢先、歌が止まった。
「・・・・・ねぇ、さっきからそこで黙って見られると気が散るんだけど」
「気付いてたか。すまない、おまえの歌を邪魔しちゃ悪いと思ってたからな。教えてほしいがこの島の住民か?」
「そうだと言えるし、そうじゃないとも言えるわ」
「えーと? もしかして島の外から移住してきたの?」
だったらなに、とおれ達はあまり歓迎されてないようだった。
「おれはイッセー・D・スカーレット。こっちは自由と冒険が大好きなヤマトだ」
「よろしく!! キミの名前は何て言うのかな?」
「・・・・・ウタよ」
「ウタか。単刀直入に言うが、ウタの音楽の才能を非加盟国の為に使ってみないか?」
提案を述べるおれに訝しむウタ。
「非加盟国? って国のために? それで私の歌がどうなるってのよ」
「おまえの透き通った歌は絶対にこの世界の人間を生きる活力を与える。特にお金を払わないと海軍に守ってもらえないでいる、お金を払っても食べる物を買えない貧乏な国はこの世界には沢山ある。そんな人々には生きる気力、心の拠り所が必要なんだ。その一つが心に届く歌だ」
「・・・・・」
「おれの言っていることは綺麗事に聞こえるだろう。実際その通りだ。それでも放っておいていい筈がないのさ、目の前に今を苦しむ人間達をよ」
少女の瞳に真っ直ぐ見つめ、おれの視線を反らさず受け止めるウタは耳を傾ける。
「それに外から来たウタがもしも会いたい人がいるなら一緒に探すことも出来るぞ」
「っ・・・・・」
「歌うことで有名になったら、会いたい人が来てくれるかもしれない。いないならそこまでだがその過程で、歌を通じて世界中の人々を幸せにすることができる。いや、ウタしかできないことだ」
おれが出来るとすれば土台を作る程度だと付け加えた。
「返事は今すぐじゃなくていい。おれ達は数日ぐらいこの島に留まる。港で待っているよウタ。仮に他にも連れて行きたい人がいるなら一緒に船に乗せるよ」
邪魔した、そう言い残してヤマトと一緒に来た道へ戻る。
「イッセー、会いたい人って誰だかわかるの?」
「ああ、情報を探ったところ。ウタは義理だが赤髪のシャンクスの娘だ」
「えっ、海賊王ゴールド・ロジャーの船員だったあの!?」
「そうだ。だから最悪・・・無理矢理にでも他にもこの島いる人間も一緒に連れ出すぞ」
船に戻る道中、海を見渡せる場所を通った時に他の皆と鉢合わせして一緒に島を探検した。その結果二つほどの発見をした。ルフィ達が美味しそうだと手を出しかけたキノコは、毒キノコだと知っていたセルバンデスが慌てて食べてはならないことを厳命したほどヤバいらしい。
「知識しか知りませんでしたが、一度食べれば不眠症になる他、数時間以内に死に至るモノです。さらに感情のコントロールが効かず凶暴化になるとも」
「そうか。止めてくれてありがとう。お前等、見分けつかないのにキノコを手出しするんじゃない!! おれ達まで殺す気か!!?」
ゴンッ!! ゴンッ!! ゴンッ!!
「「「いてぇ~っ!!?」」」
たんこぶが出来るぐらいの強さでそれぞれ一人に三回拳骨した。セルバンデスがいなかったらマジでヤバかったからな!!
「それでワオウはそれか?」
「なにかないかと探したところ、映像電伝虫達を発見しました。どうやら新種のようですな」
「この島国が荒廃した原因でも映されてるのか?」
「どうせ海賊だろうな」
軽い気持ちで一部始終を記録されていた映像を見た。・・・・・なんですかねコレ。
「なんだこのデカブツは?」
「普通の生き物じゃない、それだけは確かですな」
「・・・・・国が滅んだ元凶はこいつで間違いない」
「あっ、消えた・・・」
誰かと戦っていたように見えたが、その人物の顔がよくわからなかった。怪物は倒されて消えたか、何かしらの理由で消えたか予測がつかない。
「この世界にこんな存在もいるとは信じられないな。悪魔の実の能力者だったら海軍は―――いや、世界政府と海軍はこの存在のこと知っているか?」
「知らない方がおかしいかと。おそらく大将以上の海兵が認知していると思います」
だよな・・・。
「そう言えば、この島の名前はわかったか?」
「ええ、音楽の島“エレジア”です。かつて赤髪海賊団が滅ぼしたと言い伝えられている島でした」
「音楽の島か!! そんな島だなんて、ますますこの島が化け物に壊滅されたのが残念だならないな。うん・・・? 赤髪海賊団が滅ぼした? なんか矛盾してるな。セルバンデス、タイヨウの国にいるゼファーって海兵は元大将だったよな? そいつからエレジアに現れた化け物のこと聞きだしてくれるか?」
これを証拠に持って行かせるおれから映像電伝虫を受け取るセルバンデスは、了承して転移魔法の門へ向かう。
同時刻―――。
「ねぇ、私の歌が必要だって言う人が来たんだけど」
「人? どんな人だね?」
「多分、イイ人そう。イッセー・D・スカーレットとヤマトって男の人と女の人」
「そうか。ウタはどうしたい?」
「・・・わからない。ゴードンも一緒に連れて行ってくれるらしいけれど、あの人は私の歌を通じて世界中の人々を幸せにすることができる。って言うの」
「・・・・・」
「もしも本当にそうなら、やってみたいって感じなの。ゴードン、どうかな」
「・・・ウタの気持ちを尊重する。ウタが歌う理由が何か忘れていなければ、この島から離れて世界を見て聞いては、歌うことで世界中の人々を幸せにできるかもしれない」
「そうかな?」
「ああ、だからウタの歌を聞いてイッセー・D・スカーレットという者がそう言ったのだろう?」
「うん」
「では、後はウタ次第だ。私も連れて行ってくれるなら一緒に船に乗ろう。断ればいつも通り生活をしよう。彼はまだいるかな?」
「港にいるって。数日間は私の為にいるらしいよ」
「ならばその間ゆっくり考えなさい。自分が決めたことに後悔しないように」
「わかったよ」
海軍本部―――。
「天龍の居場所が判明しました!!」
「どこにいた。いや、どこにいる」
「数年前に赤髪海賊団の襲撃、潰滅に遭った音楽の島エレジアです」
「あの島か。一体何の因果か・・・・・そのまま監視をさせろ。今や独立国家と世界貴族に認定された世界最悪の犯罪者だ。今は大人しいが問題を一つでも侵したら、即それらの権利と権限を剥奪して捕えてやる」
「で、ですが・・・・・この事を知ったガープ中将が血相変えて軍艦に向かわれました」
「すぐに連れ戻せ!?」
―――数日後。
今日も返事を待っていたらヒナタが教えてくれた。海の方へ見やれば軍艦が遠めでも見えるぐらい現れていてた。その数は十隻以上。あのー? おれは貴族に認定されてるのにどうしてそんな物々しい軍艦を引っ張ってきているんでしょうかー?
「ルフィーッッッ!!! エースゥッッッ!!!」
「ジジイだ!?」
「ヤバイッ!! 逃げなくちゃ捕まっちゃうよ!?」
まだ距離もあるってのにこの地声・・・・・メガホンでも使ってるのか? だけどさぁ~・・・・・。
「世界貴族の一人なのになんで追い回されなくちゃならないんだよって話だよなー」
「まったくですね。こちらから海軍に攻撃すれば、それを理由に貴族と独立国家の権限と権利をはく奪する気満々でしょう」
ワオウに同感するよ。だからさっきの言葉が出て来るんだよ。ルフィとエースを見る。
「この二人を生贄に差し出せば平穏が訪れるか?」
「えええー!?」
「ヤメロッ!? 怒るジジイの拳骨は痛いんだぞ!!」
冗談だ冗談。でもどうすっかな。まだ返事を聞いていないから待っているんだが・・・・・。今日も来ないとなると海軍に囲まれて捕まる恐れがあるんだよな。脱出は容易いけどさ。
「あっ、来たよイッセー!!」
ヤマトが叫ぶ。荒廃した街に続く道に私物を詰め込んで膨らんんだ鞄を背負う、ウタと頭に傷跡があるサングラスを掛けた大男がいてこっちの現状に気付いているかいないか知らないが、ゆっくりと歩いてくる。そんな二人に待ちきれず魔法で甲板に召喚した。
「え、ここって?」
「悪いが海軍が来ているんでな。すぐに出航するぞ」
「あれ、お前ウタ? ウタじゃんか!!」
「え、ルフィ!?」
おや、顔見知りだったか。ま、それは後で知るとして船を動かすか。
「待たんか天龍ッ!!」
あの海軍の英雄様は砲弾を投げて来るしな!! それに対して抗議を申しつけるおれだ。
「オイコラッ!! こっちには民間人がいるんだぞ!! 砲弾を投げるなんて、お前の孫もろとも船を沈める気かっ!!?」
「その民間人を海賊の道に引きずり込もうとしているのはどこのどいつじゃー!!!」
ブチンッ!!
「誰が海賊だクソジジイィイイイイーッ!」
「うわぁー!!! イッセー、攻撃しちゃダメだよー!?」
「メガロー様、船を出してください」
「ああ、わかった」
「そんじゃ、おれ達ァ砲弾を迎撃するか」
「おれらも真似して砲弾で砲弾を当ててみるか?」
「何でもいいですから応戦しますよ」
「・・・・・」
「ヒナタ、ウタちゃん達を船の中へ」
「う、うん」
わぁー!! ぎゃー!! ドカーンッ! ボカーンッ!
・・・・・。・・・・・。・・・・・。
・・・・・。・・・・・。
・・・・・。
数ヵ月後。
新世界とある島。
「お、お頭ぁー!!」
1隻の海賊船にニュース・クーから新聞を受け取った船員がよんでいたところ、幹部の一人が新聞に載ってる記事を見て驚愕した。船員から奪い取って席に座ってる船長へ駆け出していった。
「どうした。騒がしいな」
「こ、これを見てくれっ!!」
テーブルに叩きつけ広げた新聞には、非加盟国に対する歌で慰労するボランティア活動をしてる少女の写真が載っていた。
「ウタが、あの島から離れて四皇天龍といるようだ!!」
「な、なんだと!!」
他の幹部達も信じられないとざわめつく。船長は写真の女の子の顔、笑顔を浮かべてるその近くには左眼の下に切傷がある幼い男の子も写っていた。
「・・・どんな偶然か、また巡り合ったようだな」
「連れ戻しに行くか?」
船長は自分の呟きを拾い問う煙草を吸っている男に小さく笑って言い返した。
「いや、好きにさせよう。見ろ、ウタが笑っているじゃないか。天龍はどうやら悪いやつじゃないようだ」
「ルフィと一緒にいるとは思いもしなかったがな!!」
「ああ、そうだな!!」
「次に会う時が楽しみだ。おれ達を越える海賊になると豪語したんだからよ!!」
「よーし、今日は飲むぞー!! ウタとルフィの未来を祝してかんぱーい!!」
「おおう、かんぱいだー!!」
急に酒を飲み交わしながら騒ぎ始める幹部達。船長もそれに交らないわけがないと酒を片手に飲み始めるのだった。