海賊王におれは・・・・・ならないから!   作:ダーク・シリウス

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約束と未来

島全体に巨大な岩壁が立ち並んでおり、岩壁の高台に町があるそんな島におれ達は辿り着いた。天気は生憎の雨で建物の中に籠る者は多い中、俺はこっそり傘差して島の町中を歩いていた。この国の―――ドレスローザの王は元海賊にして王下七武海であるドンキホーテ・ドフラミンゴは元ドレスローザであるリク王に対して国家転覆をした疑いがあるらしい。ま、十中八九そうなんだろうがな。元々国を統治していた王が海賊に王座を譲るはずがない。疑問はどうやってしたかだが、おれには何の関係もない―――。

 

ドンッ・・・・・!!!

 

「・・・・・?」

 

銃声? ・・・・・気になるな、行ってみるか。悲鳴も聞こえる場所へ足を運べば、血を流して倒れている女性に寄り添って慟哭の声を上げている・・・・・おもちゃ? なんて珍妙なと思いつつ紙袋と女性を横に抱えては、片足だけでどこかへ移動するので後を追いかけた。

 

時間をかけて女性を運んだおもちゃは、ひまわりがたくさん咲いている畑にいた子供の許へまできた。既に死んでいる女性は子供の母親のようで、母親の死に泣く子供におもちゃはこれから一緒に暮らすことを言った。ふむ、そう言うことだったら・・・・。

 

「なら、おれの船で生活をしないか?」

 

「なに者だ!?」

 

「ただの通りすがりの冒険家だ。一部始終を見させてもらった。今ならその母親を生き返らすことが出来る。どうだ? 生き返らしたらしばらくおれの船で生活しないか?」

 

案の定、おれの言葉は信じられないと拒絶された。飛び掛かる兵隊のおもちゃを掴み止めたまま幼女に聞いた。

 

「お母さんを生き返らしたらしばらくおれの船で生活しないか?」

 

「・・・・・ほんとうに、お母様が生き返るの?」

 

「ああ、嘘じゃない。取り敢えずおれの船でしてやろう」

 

「行くなレベッカ!! この男は信用できない!!」

 

「であれば、行動で示そう。信用を得る為に」

 

転移魔法で船へ三人と一緒に戻り、レベッカという幼女に食事と風呂を提供している間に兵隊のおもちゃの前で女性の死者蘇生を施した。

 

「・・・・・ここは?」

 

「初めまして。ここはおれの船の中だ。自分が死んだこと自覚しているか?」

 

「・・・・・はい、ですがどうして私は・・・・・」

 

「お前の娘もこの船の中に居てもらっている。会いに行くといい」

 

レベッカのことを言ったら、はっと我に返ったような反応を示し深々とおれに頭を垂らしたら娘のところへと向かった彼女を、兵隊のおもちゃと見送った。

 

「さて、おれの言葉は嘘じゃないことを示した。これで信用してくれ」

 

「・・・・・ああ、きみを信用する。それから感謝する。ありがとう・・・!!」

 

こっちも頭を下げて来るのでようやく話ができると思って事情を聴く。

 

「ところでおもちゃ、だよな? この国はお前みたいなおもちゃが他にもいるのか?」

 

「違う・・・信じてもらえないだろうが、私は人間だったのだ」

 

「人間?」

 

首を傾げる。人間がおもちゃに・・・・・? いや、魔法で王族が蛙になった話もあるんだ。可能性を考慮すれば悪魔の実の能力者が人をおもちゃにしたのかもしれないな。

 

「事情があるようだな。その身体になった原因が摩訶不思議な力だったら、五分五分の確率で元の姿に戻るかも」

 

「ほ、本当か・・・!?」

 

「ただし、その姿でしかできないこともあるかもしれない。これからお前がどうしたいのか、それ次第で敢えて試さない。だから事情を教えてくれないか?」

 

兵隊のおもちゃはおれにおもちゃになった経緯を教えてくれた。今王族となったドンキホーテ・ドフラミンゴによる国家転覆でリク王の危機に駆け付けた際、片足を失った次に賊に与していると思しき幼女に触られたらおもちゃの姿にされたことを。

 

「ふむ、やっぱり海賊の仕業か。それでその姿にされたら身体以外にも変化はあるか?」

 

「ある。私を知る者達は皆、私のことを覚えていなかった。姿がおもちゃでも声だけは人間だった頃の私の声だ。しかし、誰一人として私を覚えていない。私の存在が他者の記憶から消えているのだ」

 

「・・・・・それは、厄介な能力だな。となれば、おもちゃから人間に戻ったらお前という存在をドレスローザの人間達は思い出すのかもな。だとすればドンキホーテ・ドフラミンゴ達もお前の存在を忘れているとなるのか」

 

顎に手をやって未来を想像して考え込む。

 

「兵隊のおもちゃ。その姿でも協力してくれる者はいるか?」

 

「・・・・・小人のトンタッタ族ならあるいは」

 

「小人? トンタッタ族?」

 

「うむ。皆、手のひらサイズの大きさでありながら人の何倍も強い力がある昔からドレスローザに住んでいる妖精だ」

 

ほう・・・・・!! とても興味深い種族がいるのか。是非とも会ってみたいものだな。

 

「彼等なら、賊共の目を盗んで計画を立てられるだろう」

 

「そうか。因みにおもちゃでも空腹と疲労は?」

 

「悔やむがおもちゃになってから何も感じられなくなったのだ。死にゆく妻の体温ですらも」

 

どれだけ絶望したんだろうな。自分のことを忘れて気付かれず愛した女が死んでいく様を目の当たりにして・・・・・。

 

「兵隊のおもちゃ、一矢を報いたいならはしばらくその姿でいた方が都合がいいかもな。誰も彼も忘れられて、今後もドレスローザにおもちゃにされた人間が増えるなら木を隠すなら森になる」

 

「・・・・・確かにそうかもしれない。だが―――」

 

「それとおもちゃにする人間を調べることも出来る筈だ。機を窺いおもちゃにする元凶をどうにかすれば、おもちゃにされた人間が元に戻り、ドンキホーテ・ドフラミンゴの悪事が瞬く間に国内や国外へ広まって海軍や世界政府にも伝わるはずだ」

 

何か言いかけた兵隊のおもちゃを制し、言い続けた。

 

「そうなればドンキホーテ・ドフラミンゴはただでは済まなくなる。いまの兵隊のおもちゃができる唯一の方法だ」

 

「・・・・・」

 

今すぐ倒したい気持ちはあるだろうが、ドンキホーテ・ドフラミンゴを倒しても誰が王になる? 国家転覆を許してしまった王が王族に返り咲くとならば市民はそれを許すか? 俺はそれが判らない。

 

説得、話し合いを続けた末に兵隊のおもちゃは今の姿で出来ることをする事に決めた。次は―――。

 

「レベッカって女の子とあの女性は時が来るまで預かっていいか。また俺のいないところで殺されるか捕まることになったら敵わないからな」

 

四六時中ずっと二人の傍にいる事はできない。それが兵隊のおもちゃにとって痛感させた出来事であり、永遠の別れをさせてしまった。今のドレスローザより安全な場所ならばという苦渋の選択をしたかもしれない兵隊のおもちゃは言った。

 

「・・・・・約束してほしい。必ず取り戻したドレスローザに―――」

 

「皆まで言わなくていい。絶対に真の平和を取り戻したこの国に送り届けるよ」

 

「・・・・・よろしく頼む」

 

兵隊のおもちゃの了承を得て、身の安全と衣食住が不自由ないグラン・エレジアで件の二人を暮らさせることにした。その後、ドレスローザから離れるおれ達は。

 

「という話し合いをした末に、預かることになったドレスローザの元国王の娘とその子供だ。船の生産職に働いてもらうから」

 

「うわぁ、新しい女の子! 私はウタだよ。あなたは?」

 

「え、えっと・・・レベッカ」

 

「よろしくねレベッカ!」

 

ウタが心底嬉しそうにレベッカを見ては、彼女の手を取って早速交流を交わしたのだった。ルフィ達もウタ以外の女の子の友達になろうと積極性を見せる様子をおれ達は見守った。レベッカも自衛の力ぐらいは身に着けさせるとするかな。

 

「あ、そう言えばイッセーがいない間にセルバンデスから連絡が入ったよ。計画の要が完成したって」

 

セルバンデスの伝言を思い出した風に言うヤマトの言葉。ついに―――完成したおれの計画が報告を受けた。喜々としてみんなにも見せてやろうと案内したのが・・・・・。

 

「おいおい、こりゃあ・・・デカ過ぎだろ。一体どのぐらいあるんだ」

 

「船、なのか?」

 

「島一つぐらいの大きさだな・・・・・」

 

連れて来た場所は全長数十kmは優にある巨大な船。船内にはカジノ、劇場、水族館、プール、サーキット、ゴルフ場、巨大観覧車、闘技場など様々なアトラクション施設がある。無人の船の中を歩き回って仲間に驚嘆させていく。道幅は全て巨人が横並びで五人歩けるほどが広いのが密かな特徴だ。さらに後部には超巨大過ぎる円型のクワがある一つの島を挟んで連結するためだ。

 

「ここは、娯楽を楽しむための巨大な船かイッセー? 聞いていた計画の話が趣きが違ってるぞ」

 

「違ってないぞ。非加盟国の人間達を集めてこの船で独立国家を目指す。海軍を悔しがらせることもな」

 

「じゃあ、どうしてこんな娯楽の船を?」

 

「ここで生み出す利益、資金を海軍に譲渡してやるんだよ。ふふ、四皇が稼いだ金を海軍が使うなんて皮肉じゃないか? それに天竜人はおれの手の中にある。海軍と世界政府にとっておれやお前達を手出せば天竜人の命がないも当然。天竜人を交渉の材料に使えば連中は否が応でも従うしかないだろう?」

 

まぁ、拒絶したら明日の世界経済新聞社の新聞に、世界政府が天竜人を見捨てた記事が世界中に届くがな。

 

「ということでわかったな?」

 

「ああ、お前は天竜人よりコエー奴だってことを再認識させられた」

 

「おいおい、おれはこう見えても敵に容赦しないだけの優しい男だぞ」

 

「いやいや羊の毛皮を被った魔王だろう」

 

「天使のような悪魔とも言える」

 

まったく失礼なことをいう奴がいるな。―――事実だから言い返せないのも極めて遺憾だけどな!!ああ、因みに名前はグラン・エレジアだ。

 

 

 

 

ゴードンやウタを船に招いてから歌の歌唱力で非加盟国や天竜人への天上金で国家が飢餓地獄となった国に対して慰安活動を始めた。飢えと貧困で明日を憂いる民間人には、ボーイン列島から食材を提供して救いながらウタに歌ってもらって、グラン・エルジアの移住を提案した。お前達を助ける。この島で野垂れ死にしたくない意思があるなら、おれに付いてこい―――と。戦争して敵国を倒して得る金品で海軍に守ってもらおうとする国に対しても。

 

他国を滅ぼして得た金は、また次も手に入ると限らない。その場凌ぎで加盟国に入っても、海軍の助けが間に合わなかったら意味がないぞ。その時はどうする? また天上金を払うことになったら次も払えるのか?

 

王族を説得して戦争を止めさせ、島に国が複数あるなら合併してひとつの国にすればひとつの島として天上金は減ることもアドバイスした。

 

そんなこと繰り返していたら世間はおれのことを救国の救世主なんて呼ばれるようになり、グラン・エルジアは非加盟国にとって夢の楽園と称されるようになった。加盟国ではない国を一切守らないだろう海軍に代わって、ここ数ヵ月でグラン・エルジアやタイヨウの国に集まる非加盟国の一般市民達、総勢数十万規模を守ることになるとは・・・・・思いもしなかったぜ。

 

「カジノの従業員兼市民も大分集まったねイッセー」

 

「ほとんどそれが非加盟国の人間達なんだがな」

 

「仕方がないでしょう。海軍は有限でお金を払う者にしか優しくなく守らない正義の組織なのですから」

 

「ワオウ、思いっきり毒と皮肉を言ってるぞ。事実だがよ」

 

グラン・エルジアの街中を歩き、働いている元非加盟国の人達と見つつ警邏してる。運転する車でだ。一時停止した最中、高いビルに大きな映像電伝虫による映像で大きく映っている放送機器にウタが映っていた。世界中に向けて彼女の歌が人々の心に響き渡らせる時間のようだ。まだ幼い故に体力がないから長く歌えないが、それでもしっかり届いているに違いない。

 

「ゴードンの方も順調のようだったな」

 

「子供から大人まで、音楽の素晴らしさを教えていますからな。だからこそ、まだ無名だったこの船の名前をグラン・エレジアにしたのでしょう?」

 

「それに、あれからまたエレジアに戻って使える楽器を集めたもんね」

 

「ああ。意外にもたくさんあったし、有効的に活用しないと。それに空島で得たトーンダイアルでウタの歌を記録して色んな島国に提供してウタの歌を聴いてもらおう」

 

「ウタ殿の歌声が人々の生きる糧と幸せになること願うばかりですな」

 

「そんな新時代を作るのが今の少年少女達だワオウ」

 

「うん、きっとそうだよね!!」

 

そしてそれに便乗するのがおれ達だ。だからおれ達は、おれは負け組に埋もれるつもりはないぞ? なァカイドウ―――。

 

「頼むよウタ~。将来おれの船の音楽家として乗ってくれよ~」

 

「いやだって何回も言っているでしょ!!!」

 

「ウタ、ルフィがダメならおれの船にも乗ってくれないか?」

 

「おれもおれも、ウタみたいなやつと一緒なら大歓迎だぜ」

 

「論外!!」

 

仕事を終えたウタを労いに来てみれば、わんぱく坊主達がウタを勧誘していた。ウタを船に乗せてから、海賊の船に乗る誘いをして断られる光景も見慣れて来たな。

 

「あ、イッセー!! この三人をどうにかしてよ!!」

 

そしておれを見るなり、ルフィ達から逃げるようにおれの後ろに回って懇願する。まったく、と思いを抱いて三人に向かって言う。

 

「ウタを誘いたい気持ちは非常に理解するが、男がフラれた以上は潔く諦めるのも肝心だぞお前等。今誘ってもウタの心は変わらないぞ」

 

「だってイッセー。ウタの歌はすげぇーんだぞ。一緒に海賊をやったら絶対に楽しいんだ」

 

「言っただろうルフィ、理解できるって。だがな、今のウタはおれの船で世界に歌を轟かせる大切なことをしているんだ。悪者の海賊の船に乗ったらそんなことできなくなるだろう?」

 

「イッセーだって悪者じゃん」

 

・・・・・ほほう? サボ、そいつァどういうことかな~ん?

 

「おれが悪者だからって海賊だと思っているのかサ~ボ~く~ん? (バキバキ)」

 

「えっ、いや、そ、そんなこと思っていないぞ・・・?」

 

笑ってない般若顔で指の関節を鳴らすおれをヤバいと察したか、冷や汗を掻いて二歩程おれから後退するサボ。つられてルフィとエースも緊張の面持ちを浮かべていた。

 

「世の中には音楽が好きな海賊団がいてもおかしくはないんだ。そんな海賊や海賊になってもいいという人間を探して我慢しろ」

 

「ブーブー!!」

 

口先を尖らせ凄く不満顔を浮かべ納得しないルフィに魔法の言葉を送ってやろう。

 

「―――これ以上文句言うならお前のジイちゃんのところに連れて行くぞ? おれと一緒にいること自体が許さないでいるようだから、きっと怖い顔で拳骨をして怒って説教されるだろうなァー」

 

「ごめんなさいっ!!」

 

効果覿面だなガープ。ルフィが頭を下げるほど厳しい祖父なのか・・・・・?

 

「なら話は以上、これでお終いだ。もうウタに海賊になる誘いをしてやるな。絶交されてもおれ達は知らないから。それでもいいなら嫌われるぐらいもっと誘え」

 

それは嫌だ。そんな感じな気持ちを顔に出すエースとサボは、ウタにごめんなさいをしてウタも受け入れた。

 

「そんじゃ、運動着に着替えてウタも含めて体力作りをするか。何事も長時間、激しい運動が出来るようになればやりたいことがたくさん出来るようになるからな」

 

「はーい」

 

「「「わかった」」」

 

その後は何十人分も食料を食べる未来が想像に難しくないのだ。主にルフィの胃袋までゴムだから尚更だ。

 

「ねェ、その後またイッセーの故郷の歌を聞かせてよ。『翼をください』のような楽しくて盛り上がるステキな歌をもっと知りたい」

 

「おーいいぞ。それを基にウタがアレンジしてみて歌ってみろ」

 

「うん、何時か必ず歌うね」

 

可愛く笑うウタにおれも笑い、彼女を肩車してやってルフィ達と一緒にトレーニングルームへ足を運ぶ。ヤマトとワオウもついてくる。

 

「イッセー、ルフィ達も成長しているね。何時ごろ元の島に送り返すの?」

 

「ん、そうだな・・・・・5年以内にはするつもりだ」

 

そのぐらいの期間があればもう十分強くなっているはず。それぐらいあいつらは素質が芽生えてきているんだからな。

 

 


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