海賊王におれは・・・・・ならないから!   作:ダーク・シリウス

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幸せ

 

とある島―――。

 

「私は心から幸せだった」

 

待ってくれ、あともう少しで金が貯まるんだっ!! 彼女を救い出す必要な金が―――!!

 

「返せ、彼女を返せえええっ!」

 

「大人しくしていろ!!」

 

「そいつも連れていくだえ。二人仲良く奴隷にしてやるだえ」

 

「はっ!」

 

おれが奴隷にされるために連れていかれるなら、彼女を解放してくれ!! 金をもう少しで揃えるんだ!!

 

「お前、いいこと教えてやるだえ。世の中は金と力がある者こそ何でも支配できるんだえ。それができない輩は人間以下のゴミクズだえ」

 

「おっしゃる通りです。この世界は神たる天竜人の所有物であり、全て天竜人に従う摂理であります」

 

ふざけろ天竜人、ちくしょうっ、こんな奴らなんかにっ・・・! 何が神だ、何が天竜人だっ・・・・・!! 彼女を救えるならおれはどうなっても構わない、金と力がない今の自分自身がこんなに悔しくて憎く思ったことはないっ!!

 

「さっさと帰るだえ。天龍に見つかってしまうことになれば私の身が―――」

 

「おや、奇遇だな天竜人の御人!! 」

 

快活な声が聞こえてきた。周りの人間は跪いて顔を俯いて天竜人と視線を合わせないようにしているのにだ。誰だ、と思っていたら・・・・・。能面の仮面を顔につけてる男の背中から金色の翼を十二枚も生やして、背筋が凍る恐怖とプレッシャーがおれにまで伝わってくる。

 

「奴隷を引き連れてる現場を目撃されちゃあよ、おれに粛清してほしいといっているもんだぜ天竜人さんよぉ?」

 

「ひ、ひいいいいっ!? て、天龍ぅぅぅっ!!?」

 

あの天竜人が腰を抜かして、顔を青ざめて恐怖で脂汗を流した。コイツがあの天龍・・・・・!? 何度も天竜人を襲う世界的犯罪者のっ。それに手に持っているのは・・・・・焼印? まさか・・・・・。

 

「もう仏の顔も三度までだから、容赦はしないぞ天竜人」

 

焼印が赤熱し出した。触れれば火傷どころではないと誰が見ても明らかだった。

 

「せっかく独立国家と世界貴族を認定してもらったってのに、お前のせいでそれが剥奪されるじゃんか。どーしてくれる」

 

「ま、待つんだえっ!? こ、この下々が欲しいならくれてやるえ!! だから、だから―――!!」

 

「乗ってきたお前の船にある全部もよこせや」

 

あの天竜人を脅す人間が目の前にいた現実に目を疑い天龍は、天竜人が手放した奴隷と彼女の首輪を素手で引きちぎって解放してくれた。

 

「さて、行くぞ」

 

「え?」

 

「お前らを引き取るついでに天竜人の船の積み荷の運搬の手伝いをしてもらうぞ。」

 

何を言っているんだ・・・? 見ず知らずのおれ達を助けてなんの得が・・・・・。

 

「それとお前にとって大切な女なら、しっかり手を繋いでいろ。その絆はおれが守ってみせる」

 

「―――――」

 

相手は世界的犯罪者。おれより年下の男。なのに、見せてくれるその背中は眩しくてとても大きく見えてしまう。この男はもしかしてとてつもないことをしてくれるかもしれない。大切な彼女を天竜人から守ってくれたことも含めて、深く感謝したおれは気づいた時にはこう言っていた。

 

「おれはテゾーロ。あんたの役に立ってみせる。だからおれを仲間に―――!!」

 

「違うな。お前は愛した女のために役に立て。守る力が欲しいなら手元にある力を与えてやろう」

 

配下にするわけでもなく、ステラのために生きろと言う天龍。その言葉を従うことにおれは頷き、それから彼が経営してるグラン・エレジアというカジノの代理オーナーとゴルゴルの実を与えてくれた。この船の守りの番人として・・・。

 

「おれの留守の間、この船にいる全ての人間達を守ってくれ。何か要望があるならば必ず言うように」

 

「ああ、わかった。まかせてくれ、受けた恩は必ず報いてみせる」

 

「ステラの話もしっかり聞くんだぞ。島で暮らしたいと言ったら、自然に囲まれた場所で暮らさせろ。おれが連れてってやる。そこで仕事が終わったら帰れるようにする」

 

「ありがとう、私とテゾーロのために何から何まで」

 

「どういたしまして。それじゃ、さっそくだがグラン・エレジアを出航させるぞ」

 

何やら急な用事が出来たようで、グラン・エレジアは天龍の手によって別の海域へと移動を始めた。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

―――女ヶ島。

 

 

「一度ならず二度も攻めてくるとは!!」

 

「しかも、今度は大将が一人だけじゃないっ!!」

 

「厄介極まりない・・・っ」

 

ハンコック達は厳しい苦戦に強いられていた。押し寄せてくる数多の海兵を相手にする中でも、5人の強者の風格を窺わせる海兵によって、九蛇海賊団は壊滅的被害を受けていた。

 

「天龍はおらんようじゃな。まぁいい、さっさとケリをつけちゃる」

 

「何も気付かずに大事なモンが失うのは、まぁ・・・仕方がないってことで」

 

「わっしらもいつまでも負けてばかりじゃあ大将の立つ瀬がないからねェ~・・・・・」

 

赤犬サカズキ、青雉クザン、黄猿ボルサリーノ。

 

「らははは!! 残念だな、この島はかわいこちゃんがいっぱいなのに捕まえなきゃならないとは」

 

「それが定めとならば仕方がねェことですさァ」

 

そして誰もが認知していない二人組もおり、その実力は三大将クラスであることをハンコック達は身を以て体感した。

 

「姉様、イッセーは・・・・・」

 

「もうじき来るはずじゃ。それまでーーー」

 

「そうはさせないよォ~」

 

黄猿の足から太いレーザーがハンコック達を貫かんと放たれ、目の前が真っ白で光速の攻撃に直撃する直前に、彼女達の目の前に現れた人影がレーザーを真上へ反らして守ってみせた。

 

「人の妻を攻撃してくれるなよ」

 

「イッセーッ!」

 

「おいでなすったか天龍」

 

「こなくちゃならないだろうって。ところで見知らぬ二人がいるな新参者?」

 

イッセーの問いに肯定するボルサリーノ。

 

「新しく大将を二人も増やしたんだよォ~。キミのおかげでねェ~?」

 

「で、ハンコックを捕まえておれを誘きだしに来たと」

 

「話がわかるんじゃないの。ボア・ハンコックはただの海賊。捕まえない道理はないんで」

 

「それを邪魔するっちゅうんなら、貴様もろとも捕まえちゃる」

 

出来るのか? と言うイッセーを中心に負荷が掛かった。―――重力だ。

 

「ということで、大人しくして頂やすぜ天龍」

 

「うーん、大人しくしてたらハンコックが捕まえられる。邪魔しなければいまの立場と権力は守られるか。ま、決めるまでもないがな」

 

イッセーが全身から衝撃波を放ち、重力を吹き飛ばした。それが5人に対する答えだと、暗に告げた矢先に触手のように伸びる木の蔓が襲いかかってきた。妖しく煌めく瞳がそれを停止させて、上空から無数に飛来してくる光のレーザーを、ロジャーの剣『エース』の一振りで全て弾き、立つ地面が赫々と染まり次に起こる熱の爆発がイッセーを飲み込むつもりが、強い踏み足の衝撃で拡散させた後に瞬間冷凍されたが、自力で氷の中から脱した。

 

「最後の氷はやめろぉっ!? 昔氷漬けにされて氷と丸ごと食べられた記憶が甦ってしまったじゃんか!!」

 

「どういう人生を過ごしたんだお前」

 

「5人でもダメージが入らないとは厄介だねェ~」

 

「伊達に四皇ではないようだ」

 

「感心しとる場合か藤虎」

 

「さて、どうするか」

 

五人の大将を相手に余裕のあるイッセーの腕に着けてる小型の電伝虫が鳴り出した。

 

『イッセー様。準備が整いました』

 

「おし、やれ」

 

『はっ!!!』

 

何かを指示したその時に、島全体が震えるように揺れた。クザンが訊く。

 

「お前さんの仕業として、何をした?」

 

「女ヶ島とおれの船のグラン・エレジアと連結しただけだ」

 

「連結じゃと」

 

「そうだ。ハンコックとこの島を護るために結婚したってのに、こんな現状になるならこうするしかないだろ? 世界貴族の一人の王としてこの島を独立国家であるグラン・エレジアの領土の一部にする。ということでお引き取り願おう海軍諸君」

 

指を弾くイッセーに呼応してサカズキ達が一瞬にして軍艦の甲板の上に移動させられた。女ヶ島に上陸していた他の全海兵もそうであった。さらには信じ難いことに、眼前の島の背後に光に包まれている超巨大な艦の姿があった。女ヶ島も光に包まれると眩い閃光と共にこの海域から消失したのだった。

 

 

 

 

 

「イッセー、本当に島を動かしているのだな」

 

「グラン・エレジアの後部の超巨大なクワで、海中の女ヶ島の土台の部分を切り取って挟んでいる状態だ。正直、おれと結婚しているからって島が守れる保証は半信半疑だったからこの手で実行してみた。船で生活している人間達が女ヶ島に入らせないようにするが、ハンコック達は自由に出入りしててくれ」

 

グラン・エレジアは女ヶ島と新世界の海に転移して戻り、航海は超巨大海楼石製の三対六のバトルシップと船底に同じ大きさと数のスクリューが稼働して船を動かしている。ハンコック達はグラン・エレジアの王座の間に案内され、設置されている円卓の前に腰を下ろしていた。

 

「感謝するわイッセー」

 

「大将が来るだけじゃなく複数で来られた時はゾッとしたわ」

 

どういたしまして。そう言うイッセーはハンコックに告げた。

 

「ということで、女ヶ島はおれの船の一部となったから女ヶ島はおれの物だ。ハンコックは女帝を止めて本格的に嫁ぐ形で側にいてくれないか? おれの愛しい女として」

 

「ッ!!!」

 

ズッキューンッ!!

 

この瞬間、ハンコックの心はイッセーの嫁としている決心をした。愛しい男に全てを任す。己の心と身体を、女ヶ島の全権を、何もかも全てイッセーの意のままに従うことを。

 

「や、流石に女帝を止めさせるのは駄目か。次の女帝が決まるまで今の地位はそのままで傍にいてもらう方がいいか」

 

「なんであれ、わらわはイッセーの傍にいることに異存はない。二人とも、よいな」

 

「「ええ、姉様のご自由に」」

 

妹達も反対しないと肯定する言葉の後、王座の間の扉が開き一人の男性が入って来た。

 

「これでキミ達の安泰は守られたも当然だな」

 

「「「レイリーっ!?」」」

 

「報せるべきことだからおれが招いた」

 

「その通りだ。しかも私とシャッキーもこの船に住むことにした。この船を守る恩恵として彼の権限で飲食は無料、好きなだけカジノを楽しめるのだよ」

 

娯楽の謳歌が出来るとレイリーは満面の笑みを浮かべた。この場にいないシャッキーは自身の店の準備で忙しくも、カジノの中で大いに客達からぼったくる気満々でいることをイッセーとレイリーを除いて、ハンコック達は知らないでいる。

 

「それにしてもイッセー君。その剣はロジャーが使っていた愛剣『エース』だね。どこで見つけたんだい」

 

「息子の方のエースの母親の墓の中に眠っていた。その母親を甦らせてエースが暮らしていた村に生活してもらっている」

 

「死者を甦らすことも出来るのかキミは。・・・ではロジャーも?」

 

「残念ながら骨がないとできないんだ」

 

そうか、と相槌を打っただけで残念がらないレイリー。特に会いたいと思ってはいないのだろう。しかし、心のどこかで彼なら・・・・と思っていたりいなかったりする。

 

「さて、イッセー君。次はどうするつもりなのかね?」

 

「そうだな・・・一先ずこの船で次の島へ向かうつもりだから、しばらく仲間達と一緒にハンコックと過ごすかな」

 

結婚後、ハンコックは女ヶ島の女帝としての立場があり別居状態が続いていた事を考慮しての提案に、ハンコックは尻尾があったら千切れんばかり振っているだろう、そんな歓喜の色を顔に浮かべていた。

 

「あ、そうだ。九蛇海賊団にグラン・エレジアの海賊同士の戦いを行わせるコロシアムの運営とこの船の警備を任せてもいいか?」

 

「そのようなものがこの船にあるのか? だが、そなたの頼みならば引き受けよう」

 

「ありがとう。おれ達がいない間にでも海賊達はカジノをしにやってくるだろうから一般人に対応させるのは難しいからな。信頼できる海賊なら任せられる。助かるよ」

 

「それくらいのことならばイッセーの役に立ってみせよう」

 

島ごと自分達を守ってくれるイッセーの頼みを何故断るのか逆にあり得ない。船の一部となったのならばグラン・エレジアは自分達の家当然だ。守り役に立つのは当たり前だと断定するハンコックは満面の笑みを浮かべたイッセーが後日、アップルパイを食べる姿にキュン死した。

 

「それと、女ヶ島におれ達の仲間も入っていいか?」

 

「無論じゃ。むしろイッセーの仲間なら遠慮なく来ても構わぬ。女ヶ島はいまやイッセーの船の一部、了承を得ずとも自由に出入りしてくれてよい」

 

「ありがとう。一応聞かないといけないから、男子禁制の島でもあるんだし」

 

「島の風習や掟がイッセーをそうさせるのならば、わらわの代で撤廃してみせよう」

 

いや、そこまでしてもらわなくてもいいから!! と焦るイッセーにお構いなしと動くハンコック。ニョン婆の猛烈な抗議など聞く耳は持たず男子禁制の制度を撤廃したのだった。


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