海賊王におれは・・・・・ならないから! 作:ダーク・シリウス
甦生したスカーレットとその子供のレベッカを一時預かり、グラン・エレジアでの生活に馴染んできたところ、船は砂漠だらけの島に寄港した。初めての砂漠の島にヤマトは大はしゃぎ、
「砂だらけだー!! あっちゃーっ!?」
「そりゃ、砂は日差しを受けてるから熱いだろ」
「「「あっちゃあああッ!!!」」」
「ガキ共もなにやってんだ」
砂漠にダイブして砂の熱で熱がるヤマトとルフィ達。セルバンデスと日差し避けのフード付きローブを人数分、大量の水を入れた大樽を用意していたら、ガンヴァとヴェージが何か呆れていた。
「ところで人はいるの?」
「散らばってるが、たくさんいるぞ。どこも同然遠いがな。歩いたら数時間は掛かる」
「えー・・・この熱い中をそんなに歩くの?」
熱さが鬱陶しいとげんなりするウタ。隣にいるレベッカも汗を掻いて暑苦しそうにしている。
「歩けば、な? ウタとレベッカは知らんだろうかおれ達は飛んでいくんだ。今回は飛ばないがな」
飛ぶ? 首をかしげるウタとレベッカが次に驚くまで一分後だった。
「グラン・エレジアは陸海空、どんな障害をも乗り越える自由な巨船!! つまり砂漠の世界でも進むことが可能なのさ!!」
パドルシップの底力をナメンナヨー!!海から陸に上がりだすグラン・エレジアは砂を掻いて進み出す。
「「「「マジか」」」」
「マジですよ。イッセー様の設計上狂いはございません」
これだけ広大な島だ。住民の皆さんの迷惑は掛けないさ!!
―――サンディ島 アラバスタ アルバーナ宮殿
「ほ、報告いたします!! 巨大な船がこちらに接近しているとのことです!!」
「船? この広大な砂漠に巨大な船がどうやって進んでいるというのだ」
「し、しかし現にここアラバスタに接近しており―――!!」
「急報!! 巨大船が西南の階段前に停止しました!! 海軍や海賊の船ではない模様です!!」
信じられない報告が現実味を帯びた。正義の船でも悪の船でもない不可思議な船から敵意はないように窺える。
「国王、相手の狙いはわからない以上我々にお任せください」
「ああ、頼む」
相手の真意を探るべくして、国を害する者達ならば容赦なく迎撃する。そうでなくとも厳戒態勢を布き相手の言動を窺うつもりで動いた。市街地を掛ける国王軍達の姿に市民達は当惑と困惑し、何か遭ったのかと不安の色を顔に浮かべる。警戒の色を浮かべる兵士達が西南の階段へ着いた頃には―――巨大な船から大勢の人間達を引き連れる赤髪隻眼の男と鉢合わせしたのだった。
「お初にお目にかかる。おれはグラン・エレジア王国の王、天龍と申す。突然の来訪に要らぬ騒ぎとご迷惑をかけたことに深く謝罪の念を抱く」
宮殿の王座にいるアラバスタ王国の国王ネフェルタリ・コブラとの謁見が叶うことになった。この国の兵士達が船にやってきたので自ら説明したところ、国王が直接顔を見てみたいと言うことになり今に至る。
「天龍・・・幾度も天竜人に手を出し、拉致した天竜人の解放を条件に世界政府と海軍を脅して独立国家と世界貴族の認定をさせた男がどうしてここにいる」
「そう警戒しないでくれ。単なる王族同士の交流が目的だ。砂漠の世界に住む人間達に是非ともうちの船に来て遊んで欲しい思いもある」
「それを、断ったらどうする気だね」
「他の町々に訪ねて、膨大な量の水の提供をしてあげようかなと思っている。うちの船には海水を真水にする濾過装置があるからな。もし水不足している町があるなら手助けをしたい」
それが本当ならば雨が降らなくなって干害しまった町に対して非常に助かる事なのだが、相手は天竜人に手を挙げる危険極まりない男。警戒と用心をして対応せねばなるまいと国王は問うた。
「・・・・・その濾過装置とやらを我が国にも提供してくれることはできるかね」
「だとすると、かなり長いパイプとポンプが必要になるな。同様に時間も掛かる。それでもいいならお手頃価格で提供しよう」
コブラ王は舞い込んできた危険な男との取引を成立させ―――天龍一行は2年間サンディ島に停留することとなった。
メガローの協力でサンドラ河に濾過装置の土台を建設。念には念を入れて海楼石製のポンプとパイプを作り、各町々にまで繋げ伸ばして貯水池と貯水タンク、風呂もとい公共銭湯なども作っては人々を圧巻させて大いに喜ばした。その間、何度も海賊の襲撃もあったが全て守った。それ故に国王コブラからも信頼され友人となり、民衆からは英雄として国王以上の熱狂的な支持を受けていた。
そしてウタの歌をサンディ島全土の町に聞いてもらい魅了した人々から、“砂漠の歌姫”と称されるようになった。
「イッセーくん。今年も
「各国の王が集い会合する催しだったよな。」
「そうだ。この海と世界について語り合い王が決めたことは、海軍にも影響が出る重要で重大な会議だ」
大浴場で裸の付き合いをしている時、コブラ王が教えてくれる王達の会合に参加するか否か・・・・・。
「参加は自由なのか?」
「170ヶ国の政府加盟国の内、代表として50の国の王が集まらねばならない」
コブラ王の話を聞けば―――加盟国の中から50の国の王達が一堂に会し、世界中の由々しき案件を言及・討議し、今後の「指針」を決定する。ただし、各国の首脳はどれも癖が強く、国によって貧富や宗教が異なるため、やりとりはうまく進まないことが多い。また世界中の首脳が集まるため、些細な争い事も戦争のきっかけとなる。議長は毎回持ち回りになっているそうだ。
「ふぅん。じゃあ、王下七武海の制度の撤廃も可能なわけだ」
「賛否の数で賛成派が多ければな。・・・・・イッセー君、もしや望んでいるのかね?」
「世界政府公認の海賊なんてあり得ないだろ? 海賊および未開の地に対する海賊行為が特別に許されているなら国の乗っ取りだって許されちゃうんじゃないのか? 現にドレスローザは海賊に王座を奪われた王がいるし、王国を乗っ取られてるわけだしさ」
「確かにそうだが・・・王下七武海は四皇に対する抑止力の勢力として政府が設けた必要な制度だ」
わからなくはないが・・・コブラ王に指さして指摘する。
「それ、自分の国も海賊に乗っ取られてももう一度言えるのか?」
「・・・・・」
沈黙するコブラ王。自分の国も乗っ取られはしまいという他人事のような考えはしていたのかねこの王様は。
「海賊は色んなのがいる。国家を転覆させる海賊がいるなら、国家を二分にして反乱軍の内乱を引き起こす海賊だっているはずだ。もし王下七武海の誰かがこの島に来たら何か企んできたと思った方がいいぞ。例え正義の味方のような言動をしてでもだ」
「きみにそれほどまで言わせる海賊がいると言うのかね」
「王なら国にとって最悪な想定を常に考えなくちゃ守れないぞコブラ王」
「・・・・・耳が痛いな。だが、きみの言う通りだ」
いい王様だな。ダメだしされてるのに真摯に訊き受けるとはな。湯船に浸かってそれから少しの間は沈黙を保ったが話を切り出した。
「突然だけどおれ達はこの国を出るからな。依頼も果たしたしこの国も十分探索できた」
「そうか・・・きみ達には感謝する。濾過装置で雨が降らなくなっても他の町が水不足にならず済む」
「濾過装置に関して何か問題が起きたら電伝虫で連絡してくれ。すぐに駆け付けて問題を解決するよ」
「わかった。では値段を言ってくれるかね。かなりの高額でも何とか揃えて払うよ」
と言うコブラ王にどれぐらい吹っ掛けてやろうかと脳裏で思っていたが・・・・・。
「うんや、金よりいくつか了承してほしいことがある」
「了承? なんだね?」
「一つはおれとコブラ王の同盟だ。サンディ島で問題が起きたらおれも協力して解決する。そしてこっちの問題をコブラ王も協力してほしい」
最初の一つは二つ返事で受け入れてくれた。
「もう一つはコブラ王の娘、ビビがいつか大人になったら一時預からせてくれ。ウタと一緒に世界中に向けて歌ってもらいたいからだ」
「私の娘も歌わせたいのかね?」
「ああ、ビビは成長すれば美しい王女になる。それから彼女以外にも歌姫を7人集めたいと思っている。歌で世界中に届けて歌で世界の人々に幸せになって欲しい、ウタの願いを叶えるために」
「・・・素晴らしい夢を抱いているのだなあの少女は」
「だから応援したくなるのさ。何の夢も望みもないおれなんかよりずっと立派だ」
二つ目のおれの要望にコブラ王は了承してくれたので交渉は成立したも当然だ。後は時を待つだけ。
「最後は、この島出身の動物の超カルガモをたくさん引き取りたいんだが」
「超カルガモをか・・・・・ふむ、それは少々時間は掛かるがいいかね」
「目途がついたら連絡してくれれば大丈夫だ」
「わかった。必ずきみの要望に応えよう」
握手を交わし合うおれ達。
「しかし、きみ達が去ってしまうとビビも寂しがるな。特にイッセー君に懐いているから非常に残念がるやもしれん」
「何なら、おれの船とこの王宮のどこかと行き来できる装置を用意してやろうか。それならいつでも会えることができるぞ」
「海水を真水に濾過する装置だけじゃなく、そんなことも?もしや大移動せずにこの首都アルバーナと他の町々と直接行き来できることが?」
「できるがなにか」
その話をしてから出航を数日伸ばしたその後。グラン・エレジアに青い髪の少女がよく遊びに来るようになったのであった。ただ、初日に来るとは思わなかったので、セルバンデスと今頃宮殿内は騒動と化しているだろうと想像したのだった。
ウタside
イッセーのおかげでもう一人の女の子の友達が出来た。ネフェルタリ・ビビって女の子と仲良くなりレベッカと一緒に歌を歌ったりルフィ達も混ぜて遊んだりと、エレジアにいた頃よりずっと毎日楽しくて嬉しい生活が送れている。
「ウタって本当に歌が上手だね!」
「うん、何度聞いてもウタは凄いよ。わたし、ウタの歌が好きよ」
そう言ってくれる二人も私は好き。だからイッセーのお願い、私以外の女の子と一緒に歌って欲しいと聞いた時は楽しそうだと思った。だから今、ゴードンに歌い方を教わって練習中だ。そんな私達を見てゴードンは嬉しそうに、楽しそうにしている時が多い。
「さぁ、今日の練習は終わりだ。気を付けて帰りなさい」
はぁーい!!
「ウタ、行こ?」
「今日はアラバスタの料理を食べさせてあげるね」
「うんっ」
ゴードンに歌を習っているわたし以外の子供もたくさんいる。一人で歌うより皆と一緒に歌う楽しさを知ったいま、この生活を手放すことが難しくなったかも。音楽室を後にする他の子達と一緒に私達も出ようと歩く。
ゴードンside
静寂に包まれた音楽室に子供達がいなくなったのを見計らったように、私しかいない時に入って来たイッセー君と言葉を交わす。
「ウタ達はどうだ?」
「とても楽しく歌っているよ。他にも友達をたくさん作って、エレジアにいた頃よりは笑うようになった」
「あんたの頑張りも含まれているだろうに」
「私は当たり前のことをしているだけだ。あの子を引き取ってから世界一の歌手として育てて来た」
「・・・赤髪のシャンクスか。きっとウタの現状を知っていると思うが、連れ戻しに来ると思うか?」
ウタと赤髪海賊団の間の問題に懸念する彼を安心させる。
「心配しなくていい。彼等は話が分かる海賊団だ。ウタの活躍を知っているなら見守ってくれている。もちろんきみの人柄を感じ取れているなら尚更だよ」
「おれの人柄ねェ~。世界政府と海軍、天竜人相手に喧嘩をふっかけて敵対した四皇だぞおれ」
「それを知った私は心底驚いたものだ。しかし、実際に話し合ってみれば赤髪海賊団と似た雰囲気を持っているきみと他の仲間達で安心したよ」
「言外に海賊だと認識してたのか」
海賊と認識されたくない彼にとって至極遺憾の意を示すように深く肩を落としてしまい、私は自分の無意識な発言に申し訳なくなって謝罪した。
「ああ、気にしないでくれ。勝手に落ち込んでいるだけだ。でもそうか、赤髪海賊団と似た雰囲気とは随分と賑やかな海賊なんだな」
「きみと同様に海賊とは思えないぐらいにな」
「でも、そんな男がウタを手放す理由が判らないんだが? ゴードンなら理由を知っているだろ」
知っている。私はその当事者の一人だ。だからこそ、何も知らないウタは赤髪海賊団と海賊を恨んでいる・・・・・。
「今教えてくれなくてもいい。いつかウタに告げるなら俺にも教えてくれ」
私の心情を酌んでくれた彼に頭を下げて感謝と謝罪の念を伝えた。
コブラ王がイッセーに参加を持ち掛けた世界各国の政府加盟国170ヵ国の内、50の国の王達が一堂に会して行われる会議が、聖地マリージョアで始まろうとしていた。王達は7日間も世界中の由々しき案件を言及・討議し、今後の「指針」を決定する。
「今回は政府を直接倒さんとする革命家ドラゴンと多くの天竜人を拉致して解放条件に世界貴族を認定させた四皇天龍の危険性について話し合いをしたい。万が一にもこの二人が手を組むようなことがあったら革命軍の思惑が現実的になる恐れがあるからだ」
「最近では超巨大な船を手に入れ、カジノを運営するようになったではないか」
「そもそも天龍は四皇だったカイドウを海賊王に祭り上げさせた海賊だ。そんな男が天竜人になるなど・・・・・」
「革命家よりも性質が悪く、そして何を考えているか不透明過ぎて逆に恐ろしいな。世界政府と海軍が目の敵にするのも頷ける」
「今は酔狂なことに非加盟国に対して歌によるボランティア活動をしているそうじゃな」
「マーハハハ!! カーバじゃないか天龍と言う奴は」
危険性について話し合う最中に、イッセーを馬鹿にする王の発言に場は一瞬静まり返り―――次に目を見開くことになった。
「ほぉ? 人のやり方を馬鹿にする口はこれか。すぐに閉じないとな」
動物の毛皮を纏っている一人の王が、突然に雷光を受けた。全身に巡る雷による激痛で絶叫をあげる王に他の王達はただ見守るしかできなかった。それからしばらくして見えない敵からの攻撃に警戒と恐れを抱く、そんな、世界会議となってしまったのであった。なお、敵は最後まで発見されることはなかった。
「あ、戻ってきた。どこに行ってたのさ?」
「王達の会議を覗いてた。おれと革命家ドラゴンって人の話をしてた」
「革命家ドラゴンは有名よ。直接世界政府を倒そうとする勢力のトップの男であり、素性が知られてない謎に包まれた男でもあるわ」
ロビンの知識に軽く相槌を打ち、次の目的の島―――ロビンの故郷オハラに船を進ませた。
「エレジアを思い出させる荒廃した島だな。あの巨大な倒木は?」
「全知の樹よ」
「全知か。大層な名前の木なら普通の木ではなさそうだな」
「ええ、あの下には図書館が存在しているの。今はもう燃え尽きているでしょうね」
ひたすら偉大なる航路の西方の海を突き進み、地図から名前が消えたというロビンの故郷を探したところ。ようやく辿り着くことが叶った。おれはロビンとだけで行動し、ヤマト達は自由に散策してもらっていた。それが彼女の願いだからだ。どこかに案内され着くまで沈黙が続いたが、ロビンの様子が・・・・・。
「うそ・・・・・どうして・・・・・!!」
「??? どうしたロビン」
空いた口が塞がらず何か信じられないモノを見たか知ったような反応をするロビン。おれの目には地面から生えている草や崖沿いと大海原が見えるだけで特に変わったものはない。でも、ロビンには激しい違和感を覚えさせる何かがあるようだ。
「私の記憶が間違いなければ、ここに私の友達が・・・・・青雉に凍らせられた場所なのに、彼がいない・・・・・!!」
「彼? それに青雉か。しかも凍らせられた、ねェ・・・・・」
彼が凍らせられたはずなのにその氷像がない。導かれるのは・・・・・。
「氷が融けた上に目覚めて自力で島から脱出したか、後から青雉が能力を解除して放置した。それ以外だったら融けた後に彼とやらを捕食した肉食生物の腹の中か、の予想だが」
「・・・・・」
苦悩の表情を浮かべるロビン。自力で脱出したなら望みもあるだろう。青雉が能力を解いた後でもな。
「考えても仕方がない。仮に生き延びているならどこかの島で会えるはずだ。違うかロビン」
「・・・・・ええ、そうね」
「よし、次に行こう。図書館跡地に連れて行ってくれ」
踵を返して全知の樹のところへ先に歩く。ロビンは少しその場に佇んで、遅れて案内してくれた。
「よい、っしょ!!」
出入り口を塞いでいた燃え尽きた大木の破片をどかし、道を解放した。見渡す限りドコモ真っ黒に焦げていて魔力で光球を用意しないと何も見えないほどに暗い。
「さすがにここまで燃え尽きているか。上から落ちてきた大木も他にもあるし」
「・・・・・」
ここで生きながら焼かれ息絶えた人間の人骨が少なくないのか。ん? この人骨だけおかしいな。
「ロビン。この魔訶不思議な骨になっても尚、花弁がついているのは誰だ?」
「・・・・・クローバー博士よ。私に考古学を教えてくれた」
「ほー、そうなんだ。取り敢えず、ここにある人骨は全部回収するか」
魔法で見える範囲の人骨を宙に集める。下敷きになっている骨もあるだろうからそれらも探す。全部終えると外に戻ったら骨を地面に置く。
「・・・・・イッセー、その杯は何?」
胸から出した聖杯に質問をするロビンには敢えて答えず、生命の理を覆す能力を使った。器の中で並々と溜まり出す液体を花弁が付いた頭蓋骨に掛ける。するとどうだろうか。その骨が光を放ち、人の形作ると素っ裸な初老の男性がおれ達の目の前に。
「!!?」
今まで見たことがないロビンの驚く表情。更に彼女を驚かせることが起きた。老人の瞼がゆっくりと開き、太陽の光を眩し気に細めて手で覆い隠す。
「おはよう、目が覚めたようだな」
「・・・? 誰じゃ?」
「今はおれのことより、彼女の話し相手になってくれ」
「―――――」
もう溜まらない涙が頬に流れて汚しているロビンを見て老人はゆっくりと口に出した。
「おぬし・・・・・もしや、ロビンか・・・・・?」
「・・・ぐすっ、うん、クローバー博士」
「おお・・・・・ロビンか。オリビアと瓜二つになるほど成長したのじゃな」
抱擁し合う二人から離れ、他の人骨にも聖杯の液体をかけて使者を復活させていく。その中の一人がロビンの母親らしくて、ロビンが白髪の女性も目覚めた。
「お母さん!!!」
「・・・・・? あなた・・・・・ロビン? でも、私はどうして生きているの・・・・・?」
尤もな疑問はロビンが答えてもらう。魔法で全員分の服を着させて皆が落ち着くのを待つこと10分。
「・・・・・そうか。あれから大変な思いをしたのじゃな」
「けど、私達が甦るなんて奇跡的で思いもしなかったわ」
「私も・・・みんなとこうして再会できるなんて思わなかった」
・・・・・そろそろいいかな? なんか海の方から近づいてくる気配も感じ始めた。
「ロビン、全員を船に連れて行くぞ。海から迫って来る強い気配を感じる」
「誰?」
「おれ達以外はみんな敵でしかないからな」
ヒュ~・・・・・ドンッッ!!!
「―――砲撃ッ!?」
ほらやっぱり。さっさと戻らないといけない時に一人の男性が待ったをかけた。
「待ってくれ!! 泉に我々が落とした大量の本がまだ眠っているはずなんだ!! それだけどうか回収したい!!」
「本の価値を知っているのは考古学者のお前達だけだ。水の中に捨てられた本は価値のない本だと認識されるだろうから後でまたここに来る時に回収すればいい。今は船が大事だ」
「背に腹は代えられない事態じゃな。みんな、今は堪えてくれ」
転移魔方陣で船に戻り、散策してるみんなも魔法で船に戻して出航する。さっきから砲弾をぶっぱなしてくるやつはどこの・・・・・。
「天龍ゥ~~~ッ!!!」
「ゲェッ!! じーちゃんだァー!!」
「早く逃げようぜ!! 捕まったら殺されちまう!!」
「なんでここにいるんだァー!?」
子供三人が騒ぎ立つ。もう目の前にいる犬が船首の軍艦から、バカデカい声を張り上げる老いてなお屈強な老人に心底怯えている。おれも今は戦う余裕がないから要望に応えて船を魔法でオハラの島の向こう側へ跳躍し、大逃げする。
ほどなくして落ち着きを取り戻した船の中でロビンがおれを紹介した。
「お母さん。紹介するわ、彼は私の夫のイッセーなの」
「ロビン、あなた結婚していたのね・・・・・今は幸せ?」
「ええ・・・私の夢には敵が多すぎても彼は守ってくれるから」
「そう、よかった・・・・・イッセー君。どうか娘のことよろしく頼むわ」
「もちろんだ」
「だけど、お母さんも一緒に愛されたらいいんじゃない? まだ若いのだから」
お茶目な事を言うようになったロビンが新鮮だったが、まさか生き返らせたお礼として母親まで夜の部屋に訪れてこようとは想像もしなかったおれだった。
そしてオハラの考古学者達はその後、ラフテルへ案内をしたら「ここに住む!!」と言い出されロビンの母親はオリビアもラフテルに残った。時々出入り可能にしたゲートから船に戻ってきては娘と一緒に俺と夜を過ごすことがあるがな。