海賊王におれは・・・・・ならないから! 作:ダーク・シリウス
『四皇天龍、ついに捕縛!!』『四皇の一角が崩壊』『次の新たな四皇は“赤髪のシャンクス”か』
「・・・・・ぬふふん」
はいこんにちは。大監獄インペルダウンからお知らせします。今現在おれは白黒縞々の囚人服を着て投獄されています。海楼石の枷を着けられてるけど悪魔の実の能力者じゃないから意味をなさないけどな! いやー、監獄の中ってこんな感じなんだなー。今いる場所は石造りで出来た牢屋の中。そしておれを警戒してかジーと見つめて来る壁や床、天井にまで隙間なく埋め尽くされた監視用の電伝虫・・・・・いや、控えめに言っても気持ち悪いわっ!? ビック・マムの時もそうだったのかよこの状況!! 嫌すぎる!! しかも鉄格子の外には看守の人達が並んで突っ立っていて、何時でも俺を撃てるようバズーカとか銃とか所持しているし。
「うーん、こうもカタツムリが多いと・・・・・食用のカタツムリのことが思い出しちゃうな。こいつ等って食べられるかな?」
っ!?
何気なく漏らした一言が全ての電伝虫が怯えて殻の中に引っ込んだ。おいおい、目を引っ込めたら映像が映らなくなるんじゃないか? ああ、そのための二重による監視だったりする? まぁいい、重要なのはこっちだ。看守の人に頼んで(脅迫)持ってきてくれた新聞を見て表情には出さず心の中で歓喜極まった。
―――よっしゃ! 四皇の称号が別の海賊になったぁああああああああああああ!!!
やっぱり一度捕まってれば肩書は綺麗にできるもんだな! おれ、本体じゃないけど!!
遡ること一日前。
「常日頃から思っている。どうにか四皇と言う肩書を外したい」
「無理だと思うよ。捕まらない限り」
「捕まったらなくなるのかセルバンデス?」
「大監獄インペルダウンや監獄船に一度収監されれば肩書など無意味でありますからな。仮にイッセー様が敢えて捕まれば四皇の称号は別の海賊に成り代わります。しかし、せっかく海軍と世界政府と交渉して得れた貴族と中立の立場も失います」
「うーん、そうか。貴族は正直単なる嫌がらせだからどうでもいいんだが中立の立場は維持したいなー。もういっちょ交渉してみっかな。グラン・エレジアは中立の船にって」
「まさか、それを成功したら捕まる気でいないよね?」
「ぶっちゃけ、体験してみたいと思う」
マジで? って顔をするヤマト達。
「キミが捕まったらこの船はどうするのさー!」
「普通に動かせるから問題ないけど」
「ルフィ達はどうすればいいの?」
「いや、普通に戻れるってフーシャ村に。というか、一度落ち着け? 体験したいとは言ったが何もおれ自身ではないから」
「・・・・・どういうこと?」
訝しむヤマトに説明を・・・かくかくしかじか。
「つまりはイッセーと姿形が同じな分身体を使って自分の代わりに捕まってもらうってこと?」
「そうそう。所謂、影武者みたいなやつ。そうすればヤマト達と離れず、おれは四皇の肩書を捨てることができる且つ―――世界政府と海軍の目を欺いた情報を世界に流すというドッキリ作戦が出来るってわけ」
「いつもしていることをするつもりなんだねイッセー。ちょっと海軍が憐れに思えてきたよ」
「因みにその作戦を世界経済新聞社のモルガンズ社長に提案したらOKを貰ったぜ」
「うわー八百長・・・・・」
「ただただ海軍を陥れるための行いをするのですね」
その通り! だけど普通に捕まるのはつまらないから・・・・・天竜人を餌にしてやろうか。返還を求められてるがいつ返そうか決めてないからまだ返していないんだよなー?
そういうわけで分身体に天竜人を全員シャボンディ諸島へ連れて行ってもらい、モルガンズの部下達が事前に配置についている場所で海兵を呼び出し、海兵の前で自首した。
「もうしわけありませんでしたー!!!」
『ええええええええええええええええええええええええええええ!!!?』
髪の毛が吹っ飛んでスキンヘッドになってしまうほど海兵も超ドッキリ!!! まぁ、それからどうなったのかは語るまでもないだろう。あの天龍が大人しく捕まるはずがない! 絶対何か企んでいるからすぐ殺した方がいい! なんて話は挙がってたみたいだが、結局殺さずLEVEL6って場所に投獄することになったからそこが海軍の甘い所なんだよなー。
という経緯を経た現在。そんな仕込みのためにあちらこちら説明しに回ったが「何を考えてるんだお前」みたいな反応が殆ど一致したが、気にせず俺がしたいようにするために捕まってもらった。LDKにて海軍の対応に内心苦笑な思いを抱いてればヤマトが問うてきた。
「イッセー、これからどうするつもりなの? 偽物とはいえ捕まったんじゃ外に出られないと思うけど」
「うん? 変装すればいい以外は何一つ変わらないぞ。いつも通り冒険を楽しむんだ」
「・・・・・あれ、もしかして別に何も失ってはいないってこと?」
「四皇の称号以外は特に何も、物理的に失っちゃあいないな」
綺麗さっぱり清算? をしただけだ。この船とグラン・エレジアだって奪われたわけじゃないし。あの船にはテゾーロが守ってくれている。
「じゃあさ、天竜人を解放しちゃっても大丈夫?」
「問題ないかな」
定期的に見に行くし、もしも奴隷がいたなら夜襲を仕掛けることなく、連中から奪った半分の魂を介して攻撃するさ。
「そっか、キミが問題ないなら僕は良いよ。これからも一緒に冒険できるなら尚更ね」
「世界を何周しても冒険をしよう」
「うん!」
子供のように純粋無垢な笑顔を浮かべるヤマト。セルバンデスからお茶を受け取って飲もうとしたところでガンヴァが報せに来てくれた。
「海軍の軍艦が迫って来てるぜ。それもすごい数だ」
「本物のおれを捕まえたと勘違いした海軍が、お前達を捕まえに来たんだろうな。・・・・・んー大将クラスのクザンさん達がいないな。よし、迎撃すんぞ」
「ハハハ、そうこなくちゃな。だが、お前は戦ったらバレるぞ。いいのか?」
「変装ぐらいはするって。セルバンデス、ミホークさんにも言っといてくれ。一緒に戦うのも戦わないのも自由だって」
「かしこまりました」
真紅の龍を模した全身型鎧を魔力で具現化して纏い甲板に出れば、軍艦が十隻も砲弾を撃ってきながら迫って来ていた。そのうちの一つが直撃コースだったけど、突然真っ二つに斬られ空中で爆散した。誰がやったのかはもう明白だ。
「おやミホークさんも参加ですか。戦わずとも良いのですよ?」
「平穏な暮らしを保つためだ」
「そんじゃ、とっとと終わらせるとしようか。あ、ワオウ。海軍の積み荷の回収を頼む。今回は大量だぞー」
「ええ、喜んで。すべて回収いたしますよ」
「本当に悪徳坊主だなお前はよ」
「ガシャシャーッ! 先に行ってるぜ!! 久々に暴れ回ってやる!!」
「てめぇサメ野郎、抜け駆けすんな!!」
「・・・・・騒がしい連中だ」
「フフフッ、元気が有り余っていたようね」
「み、みんなの家を守るっ」
「これも冒険の醍醐味ッ! さぁ行こうみんな!!」
と、外で暴れている頃。監獄内にいる分身体はと言うと・・・・・。
「牢屋の中に引き籠って暮らすだけの生活はつまらないから、抜け出してやったぜ♪」
「だ、脱走~!!! 天龍が枷を着けたまま脱走~!!!」
「フハハハ!!! ほらほら、おれに付き合えよ看守諸君達よ~!!! ついでにお前らも脱走しなければ檻から出してやるよ。毎日退屈な時間の生活とのおさらば!! おれと一緒に監獄内を暴れようぜ!! さぁ、インペルダウンツアーの開始だ!!」
ウォオオオオオオオオオオ~!!!
囚人達を閉じ込めていた檻の扉が開錠されて、水を得た魚の如く檻から飛び出して看守の人達を襲い始めた。
海軍本部―――。
「天龍が動き出しました!! しかも、他の囚人達を解放しながら脱出を目論んでいる模様!!」
「やはりか!! あの男が黙って捕まるような男ではないことはわかっていた!! そのために大将も配置していたが、結果はどうなるか・・・・・!!」
「わしもインペルダウンに行った方がええんではないかセンゴク」
「ダメだ。また奴の能力でどこかに飛ばされるのがオチだ。今はインペルダウンの事変の収束を待つしかできない」
LEVEL5
極寒の気温と監獄内なのに雪と何でも捕食する白い狼が闊歩する階層を走り抜けるおれ達。途中で木を伐採して鋭い刃と化した葉っぱごと持っては、襲い掛かってくる狼の群れを蹴散らしていく。
「テキーラ・ウルフだ! 気を付けろー!」
雄叫びを上げながら走る走るおれ達。そして上の階層へ繋がる連絡路の階段を見つけ登れば、こっちの状況を把握していた看守たちが武器を装備して構えていた。
「「撃てぇー!!」」
「「「「「「おらぁー!!」」」」」
「「「「「「ウアアアアアアア!?」」」」」」
どっちも発砲の合図を出したが、槍のように投げた大木が銃弾に負けるはずがなく、看守の方が一掃された! なんかその拍子に罠が作動してしまったが問題ない! いやー、みんな意外と力持ちだな。
「到着LEVEL4!」
大きな木製の扉をけ破り、また待ち構えていた看守の数が数十人以上と出くわし、回収した大木を投げて敵を倒していく。
「看守から武器と枷の鍵を奪い取れ! 他の囚人達の解放も忘れるなよ!」
「よっしゃー!」
ここまでは順調だ。ここからが大変そうだ。なんせ・・・・強敵の数がそれなりにいるからな。その報せはすぐに来た。
「ご、獄卒獣だー!」
その1 シマウマ、サイ、コアラ、ウシみたいな二足歩行する変な生き物と出くわした。
「獄卒獣って?」
「あいつらは全員悪魔の実の能力者で覚醒した姿なんだ! パワーが強くて倒しても直ぐに復活するタフネスな奴等だ!」
悪魔の実の能力者かよあの出で立ちで。しかも奴らの傍にいるピンクのボンデージ姿の身長が高い目が隠れるほど長い髪の女がいる。
「ここから先は一歩も通さないわ~ん!」
「回ってろ」
「いや~ん!!?」
くいっと指を動かすと獄卒獣達と名も知らない女が宙に浮き始め、体が激しく回り出し一人で停めることができないまま回るしかできなくなった。その間に囚人達と走って行く。目指すは保管庫だ。
「ほらほら、進め進めー!!」
「あの厄介な獄卒獣を赤子の手をひねるように無力化にするなんてやるじゃねぇか!」
「ふはは! あの程度は造作もない!」
「そこまでじゃおんどれや」
和気藹々となりかけてた矢先、視界を埋め尽くす溶岩の手が襲い掛かった。横に力強く弾いて反らして眼前の人物を見る。その人物を見たLEVEL6の囚人達の顏が絶望に染まった。
「な、なんでインペルダウンに大将がいるんだよぉー!!?」
「しかも、赤犬のサカズキさんか。オヒサー」
手を振って朗らかに挨拶しても攻撃してきた大将赤犬は地面を蹴って赫灼に染めた拳で殴りかかって来た。その拳から躱し、巻き込まれた囚人達を気にせずこっちからも殴りかかって応戦する。
「天龍貴様、最初からこれが狙いだったんかい・・・!!!」
「いやいや、今まで悪いことした償いをしようと捕まってあげたんだよ? でも、暇すぎて監獄内を探検しようと思っただけなんだ。信じてくれよ」
「貴様の口から出る言葉なんぞ、誰が信じるちゅうか!」
「酷い!」
殴り合いの応戦をしてる最中、明後日の方に毒々しい紫色の三つ首の竜が他の道に向かって行った囚人達に攻撃していた様子が視界に入った。
「おい、アンタ! ゲリ野郎のマゼランが来るぞ! ここは逃げた方がいい!」
「マゼラン? 確かこの監獄の所長だったか。理由は?」
「ゲリ野郎はドクドクの実の能力者で毒人間だ! あいつの毒を食らったら命がいくつあってもないぞ!」
それを聞いた瞬間。即行動に出た。
「逃げるぞお前たち! 命があっての物種だ!」
「「「へい喜んで!」」」
「待たんか! 逃がさん!」
「牢屋に戻るんだよ勘違いすんなバーカ! また遊びに来るから待ってろよー! ハハハー!」
来た道に戻る脱獄者のおれ達。しかし毒の能力者がいるとは厄介だ。攻略は出来るけど長い付き合いになりそうだ。
海軍本部。
「インペルダウンから報告! 天龍達の脱獄は赤犬さんと監獄所長マゼランの防衛による失敗しました! 現在LEVEL-6の牢獄の中に・・・・・」
「・・・・・なんだと?」
「信じられん・・・・・」
「え、いえっ、あの実際に天龍と居合わせ一戦を交えた赤犬さんからの報告ですので事実なのですが・・・・・」
「違うわぃ。あの小僧が素直に引き下がったこと事態が信じられんのじゃ。あいつがその気ならとっくの昔に脱出しておるわ」
「軽々と天竜人を拉致できる男だぞ。能力が封じられていようとサカズキを相手に遅れを取るような男ではない。インペルダウンで何をしようとしている。何を企んでいるあの若造は」
「自分が捕まることで世界に影響を与える何かを求めている? もしくはインペルダウンに捕まっている間に世界の情勢を見据えるためか?」
「・・・・・なんにせよ。忌々しい男を牢獄の中に閉じ込めることができた。これで世界が静かになる」
今の今までのことがあった二人にとって不気味でしかなかったが、結果オーライということで悩みの種だった問題が解決したと心から安堵するが、それは全て偽りであることを知るのは先の話。天翔ける龍は今も大海原にいるのだから。
―――五年後。
エース、サボが17歳になったその日。年齢的にも実力的にもいい頃合いだった。フーシャ村から発しようとする二人を見送る日となった。
「エース、無茶だけはしちゃダメよ」
「わかってるお袋」
母親のルージュの心配を憂いすら感じない様子のエースだが、最後に抱擁されようとすると俺たちが見ている手前恥かしがって遠慮してたが、サボと視線を交わし一緒に後ろから蹴って背中を押してやって抱擁させた。
「エース、サボ。餞別だ」
「短刀?」
「おれが作った海楼石の武器だ。能力者相手に戦える武器は増やしておいて損はないだろ」
「そっか、ありがとうな。今日までのことも含めてよ」
「ああ、最初はどうなるんだと思っていたんだが、あんたに連れ回された旅は楽しかったよ」
「ははは! 誘拐した甲斐があったなそりゃあ!」
英雄ガープの反応を見たくてこの島から連れ去ったが、海を冒険する楽しさにそんなこと気にしない図太い神経な三人だった。それがまぁ、立派に成長しちゃって。
「二人とも元気でな。お前らの活躍の話を待っているぞ」
「あんたに鍛えられて強くなったんだ。エースより先に新聞におれの名を広めてやるぜ」
「上等じゃねぇかサボ。どっちが早く賞金首に挙がるか勝負だ」
そういう勝負はしなくてもいいんじゃないかなー。普通に仲間を集めて冒険をする楽しみで十分だろうに。
「いいなー、お前ら。おれも早く冒険がしてぇよ」
「だったらお前も出発するか? ただし、この二人のどっちかの船に乗る条件で」
「いやだ! おれは自分の船で冒険したいんだ!」
「まったく、変なところで子供なんだから」
とルフィの反応に呆れるウタもすっかり成長している。そして何故か・・・。
「何時までも子供のままじゃあ、イッセーみたいな強くて格好いい大人になれないよルフィ」
「ムカッ! そんなことねェよ! おれだってあっという間にイッセーも追い越すんだ!」
「まだ勝ててないがなー」
「でた、負け惜しみ~!!」
事あるごとにルフィの前でくっついてくる。ルフィへの当てつけか、それとも・・・・・。
「・・・・・ん、そろそろ出発した方がいいぞ」
「そうだな。そうするか」
「ルフィ、おれ達はお前を待っているからな。早くこっちにこいよ」
「ああ! 待ってろよ二人とも。おれもつぇー仲間を集めて立派な海賊になる!」
三人の交わした約束は、いつか叶うことを願う。エースとサボが船を漕いでそれぞれ違う道へと進んでいく。
「二人とも元気でねー!」
「またいつかどこかの海で会おう!」
ヤマトとおれ、他のみんなも二人に別れの言葉を送り海の彼方、この先まで見えなくなるまで見送ったのだった。
そしてさらに二年後。ルフィも旅立ちエースとサボと同じように見送った。今後の弟子たちの成長が楽しみだ。なにより・・・・・。
「20年後まであと二年だな」
「カイドウを倒すのは誰だと思う?」
「“新時代”を拓く若い世代だろうさ。おそらくルフィ達のような」
「一回り歳をとっても、僕たちも負けていられないね!」
「そうだな。“新時代”を作る方法は色々ある。ルフィ達は【海賊王】になってから作るだろうから」
現海賊王カイドウを倒さなきゃいけないぞお前ら。それが出来るまで強くならなくちゃ夢のまた夢だ。
さーておれ達も出航するか。せっかく東の海にいるから適当な海賊船を探して捕まえよう。
南の海に初めて上陸する島を発見した。ルフィは珍しく故郷の島に戻って遊ぶと言い出して今日は一緒に行動をしない。いざ散策すると老人ばかりがいる村に着き、この島のことを訊くと“ソルベ王国”という名前で、北部に行けば城と城下町があるという。
「ここは世界政府の加盟国か?」
「そうだよ。でもねぇ、ここ南部は年寄りばかりで病気になっちまうと天上金は払えねェー!!」
「そしたら牢獄さ!」
「以下も以前は南部だけ『奴隷政策』をしようとした最悪の国王なんだよ!!」
「天竜人の手先さ!」
「革命軍に入ったくまちーの方がよっぽど優しいさ!」
聞けば聞くほど現国王の評判は最悪な代わりに、老人たちの間では「くまちー」という人物を深く好印象を抱いている。
「革命軍? それなりに新聞に載っていたな」
「そんな人がこの国で牧師として暮らしているなんて意外だねー」
「それよりもイッセー殿。現国王は天竜人の手先だとか。如何致しますか?」
一番重要な事を言わずともいいことを敢えて問うワオウに。地面に転がっている小石を摘まんで、人差し指と親指で圧砕してみせた。
「潰す。それ以外の選択はないだろ。『奴隷政策』なんて馬鹿馬鹿しい政策を実行する王は天竜人と同レベルだ」
「ってことは・・・・・暴れていいんだな?」
「民間人にまで被害は絶対に出すなよメガロー。下準備をしてから暴れていい」
ニヤリと凶悪な牙と獰猛な笑みを浮かべる魚人さん。老人たちが教えてくれた「くまちー」のいる教会に赴くと、賑やかな声が聞こえてくる。
「すみませーん。ここにくまちーって人はいるって聞いたんだけどー」
外から呼び掛けてすぐ、俺達より圧倒的に身長が大きい大男が教会の中から出てきた。
「私がくまだ。何か用か」
「・・・・・」
「どうかしたか?」
「あ、いや・・・老人たちから訊いてない特徴に、こんな大きい牧師だとは思いもしなかったから驚いていた。巨人族の子供とか?」
「いや、私はいたって普通の人間だよ。ところで、君達は海外から来た者だね?」
「世界中を冒険し回っている愉快な者達だよ!」
「冒険!?」
うん? 子供の声が聞こえたな。教会の奥から桃色の髪に目元に青い石みたいなものがくっついている幼い少女が駆けてきた。
「お父さん、海を冒険している人が来てるの!?」
「こら、ボニー!」
「あはは、ボニーったら冒険をしている人と会うのは初めてだもんねー」
さらに別の女性が現れた。少女の母親か、彼女にも体に青い石がくっついていていた。
「・・・・・えっ、あなた」
「うん?」
素顔を晒しているからか、俺を見てびっくりしている。元四皇の男だと気付いたのなら問題ないが・・・・・くまの身体を強く叩きながら指を差してくるのは何故なんだ?
「く、くまちー!! この人だよ、私を助けてくれた!!」
「えっ!?」
「・・・・・ん?」
彼女を助けた? いつどこで? 人助けをする時は大体、天竜人の奴隷解放ぐらいなんだが・・・待てよ?
「もしかして、天竜人の奴隷になっていた?」
「そうだよ! 竜の蹄の焼印も消してくれたじゃん!」
・・・・・覚えてねェー。何百何千の人間を助け、竜の蹄の焼印を消したから一々人の顔を覚えちゃいないぞ。
「悪い、助けた奴隷の数が多いから全然覚えはない。だが、お前がそう言うんだったらそうなんだろうな。あれから幸せに暮らしているようでよかったよ」
「うん、本当にありがとう!!」
笑う彼女はジニーと名乗り、子供はボニーと教えてくれた。そして・・・・・。
「ジニーを助けてくれてありがとう!!!」
思いっきり泣いて俺より大きい顔をくっつけながら抱きついてくるくまちーことくまに押し潰されそうだっ。・・・・・けど、俺が助けた一人が本当に幸せに暮らしてくれて嬉しいのは確かだ。
「お父さん泣き虫!」
「嬉しいあまりに泣いているんだよボニー」
「そーなの?」
「うん。さ、くまちー。中に入ってもらおうよ」
「あ、ああ・・・そうだな」
助かった・・・・・くまの涙でずぶ濡れだけども。魔法で服を乾かす様子をボニーにキラキラと見つめられ、どうしたと聞くと。
「一瞬で乾いた! どうやって?」
「魔法だ」
「魔法ー!? もっと見せて魔法!!」
あらやだ純粋で可愛い反応。ボニーの要望に応え水で作った数々の動物たちにおおはしゃぎしては、触れようと乗っかろうとして逆に全身ずぶ濡れとなり、魔法で乾かすともう一度濡れに触りに行った。
「すごーく楽しそう」
「ああ、ジニーとボニーは外に出せないんだ」
「理由は?」
「病気のせいだよ。日の光や月の光を浴びると全身に石が出来て死んでしまうんだ」
母親のジニーも同じ病状ってことか。ああ、だから教会なのに窓という窓を木の板で塞いでいるのか。
「この島の医者・・・・・いや、手の施しようも、か」
「そうなんだ。・・・もしよかったらでいいんだ。二人の病気を治せる医者を知らないか?」
くまの嘆願におれはセルバンテスに知っているかと目で訴えた。彼はボニーの青い石を触れてとても難しい顔つきとなった。
「見たことも聞いたこともない病状です。おそらく体の細胞から石になっているのではないかと」
「細胞レベルの話か。そこまでなると科学の力を借りないと治せないだろうな」
「科学・・・・・」
「薬も科学で作られているからな。天才的な科学者がいればあるいは。そう言う人間は知ってる?」
くまに科学者の人間に心当たりがあるかどうかの話になる。さて、どうだろうか?
「・・・・・海軍の科学者『Dr.ベガパンク』という人物なら知っている」
「知っているんだ。じゃあ、後は居場所さえわかれば連れて来られるな」
くまがギョッとおれの発言に目を見開いた。
「本気か!?」
「嘘は言わないぞ。居場所を知っているか?」
「それはもちろんだが・・・・・とても簡単に会えるような男ではないぞ」
「問題ない問題ない。俺達なら余裕だ」
ベガパンクの居場所を教えてもらおうと口を開きかけたが、ボニーがもっと魔法が見たいとせがまれた。
「もっと!!!」
「・・・・・ははは、いいだろう。疲れて眠ってしまうまで魔法を楽しんでもらうか」
「やったー!!」
ベコリ王は夜になってからだな。まぁ、元々そうするつもりだったがな。
「くま、数日はこの島にいるつもりだ。よかったら夜に俺達の船にこないか? 月の光の対処もするから」
「キミの船に? そう言えば名前を聞いていなかったが、名前は何て言うんだい?」
俺はその言葉を待っていた。ニヤリと悪戯っ子の笑みを浮かべ手配書を見せるとくまは腰を抜かして倒れるほどビックリしてくれた。
「よ、四皇の天龍!!?」
「天竜人が大嫌いな元四皇、イッセー・D・スカーレットでーす」
ジニー!? と俺のことを知っていただろう彼女に動揺して叫んだくまにジニーはお腹を押さえてケラケラと笑っていた。この女、ワザとだなー?
「ボニー、夜になったらお前と同じ女の子を紹介するよ。きっと友達にもなってくれると思う」
「本当!? わーい!!」
教会の中から滅多に出られない生活を強いられて、同年代の子供と遊んだことはないだろう。大喜びをしてその場で小躍りをするボニーを見て。
「セルバンテス、シャッターを閉じて今夜三人を案内してくれ。俺達は夜に決行する」
「かしこまりました」
声を殺し、老執事に囁いて頼んだ。
・・・・・だが、そうすることが叶わなくなるとは俺達は思いもしなかった。その日の夜、くま達を迎えにまた教会に向かう途中だ。南部の村が大規模に燃えていたんだ。炎に焼かれる人間や村に火を放つ兵士に襲われる人間が目の前に。
「なんで!?」
「老人達の救助が優先だ!! 兵士は捕まえて吐かせろ!!」
火の鎮火に村の上空に展開した巨大な魔方陣から雨を降らして燃え盛る火災を消化していく。
老人達が逃げる先には、朝おれ達が訪れた教会だ。くまに助けを乞いに向かったんだろう。
「大丈夫か!!」
「あ、ああ・・・ありがとう・・・・・痛みが消えていく・・・・・」
「どうしてこうなったのかわかるか?」
出血がひどい、老人の怪我を癒しの力で治しながら事情を訊く。老人は泣きながら教えてくれた。
「ベコリ王がまたやりやがったんだ・・・・・!! 天上金が払えないわしらを国の足手まといを燃やすって16年前の悪夢の再来を繰り返しやがったんだ・・・・・!!」
「―――」
ガっと俺の服を掴んで老人は叫んだ。
「あいつは人間じゃない!!! 人を大量に殺し始めた!!!」
傷を癒したのにその思いを俺に強くぶつけた後、老人がこと切れた風に全身から力が抜けた。・・・・・気を失ったか。
「イッセー」
火災も大量の雨で消えていく最中、ギリューが集めた情報を教えに来てくれた。
「・・・・・以上だ」
「わかった。悪いがギリュー、おれは今“キレ”ている」
「っ・・・」
ギリューから緊張を感じた。おれの怒りを感じ取ったからかな。だが、止めれない感情は抑えきれないばかりか溢れ出る一方なんだよ。
「今まで殺しはしてこなかったが、天竜人の手先だろうと殺さずいつもの通りしようと思ったが・・・今回はダメだ」
―――龍化
『ベコリ王とその配下の兵士を皆殺しにする』
巨大な真紅の龍に久方ぶりに変化した俺は、驚愕するギリューを置いて北部へと飛んだ。
『オオオオオオオオオーッッッ!!!!!』
ソルベ王国の王城はあっという間に着き、王に抗議している民間人が多い。しかも銃声が聞こえた。ますます許せない王に怒り。
「な、なんだあのバケモノはぁああああああああああああああっ!!?」
「国王、お逃げ下さい!!!」
『逃がすか!!! ここで悉く死に晒せ!!!』
城の真上に移動し、そこからドラゴンブレスを放った。城が丸々と呑み込み包まれる。
ボカァアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!
爆砕した城に降り立ち、咆哮を世界に轟かせる。
「イッセー・・・あんな姿になれるなんて、今まで知らなかった」
「城を軽々と破壊しやがった・・・・・すげェ」
「・・・・・怒っている、ロビン、イッセーが」
「それだけ許せなかったのよ彼は」
「ガシャシャシャ!! やっぱりあいつは最高につえェな!!」
「これで世界の平和から害悪が一つなくなりました」
「「・・・・・」」
「あいつにしてはハデにやりやがったな」
まいったな。あのクソ王が死んだのかこれじゃわからないな。まぁ、生体反応は感じられないから死んだと思うべきか。民間人も城から離れて逃げ惑ってちゃってるわ。
「・・・・・ん? あれは・・・・・」
おれを見上げるくまと目が合った。元の人型の姿に戻り、くまのもとへ降りた。
「キミだったのか。さっきの巨大なドラゴンは」
「まーな。おれ自身も色々と事情があってな。それよりも城、壊して悪いな」
「いや・・・私も壊していただろう。キミほどではないと思うけど」
本当にごめんな!!
「今回の一件、どうなると思う? ベコリ王は殺したと思うけど」
「生きていなければ、巨大な怪獣に島を襲われたと思われるだけだろう」
「それがおれだとは思いもしないだろうけれど、海軍が動くと思う?」
「動くと思うよ。島にまだ怪獣がいたらね」
その怪獣がおれだから、さっさといなくなった方がいいかね。
「一先ずは怪我人の対応に戻るよ」
「わかった。イッセー、ありがとう」
「ははは、怪獣にお礼を言ってどうするんだよ」
後に「ソルベ王国」であった事件は「一人革命」と呼ばれる。さらに後日、「国の村を焼き尽くし大量に国民を殺した怪獣を使役し、暴力で王位を奪った悪の支配者」としてくまが新聞の記事に大きく載った。