海賊王におれは・・・・・ならないから! 作:ダーク・シリウス
「じゃあ、ボニーとジニーを先に治療してもらおうかベガパンク。くまの方はその後からでも遅くはないだろ?」
「確かにそうじゃが、それではくまと2人が長らく離れて暮らすことになるぞ。よいのか?」
ベガパンクは気持ちを確かめる問いをジニーに投げた。ジニーは苦笑しながら頷いた。
「ボニー1人だけならともかく、私も一緒だから大丈夫だよ。それに会えなくても手紙のやり取りだってできるし、早く治して三人で外に出てピクニックがしたい!!」
「ジニー・・・・・」
「大丈夫だよくまちー。ちょっとまた長く離れて暮らすことになるけどこれが最後だから。心配しないで? ほら、ボニーも」
娘を抱き上げるジニー。ボニーはくまに抱き着き、くまもボニーとジニーを抱きしめ合って次に会うまでの挨拶を語った後。教会の中でベガパンクの研究所の中の空間を繋げて、母娘とベガパンクと戦闘丸を研究所に送った直後。他の科学者から監視用の電伝虫が途絶えた異変でか、その日の内に海軍が冬島に来たことを知らせに来てくれた。
「ベガパンク、やっぱり海軍が来たそうだ。不審人物のおれと政府の電伝虫からの通信が途絶えたからだろうな。どう対応する?」
「ま、何とかなるじゃろう。海賊の頼みを断ったと言えばな」
「まーた監視用の電伝虫を仕掛けられてるし、今度は内通者も紛れさせるだろうから気を付けろよ。あと、くまのことは一切漏らすな。ボニー達もだ」
「わかっとるわい」
「わかった。ジニーもお父さんのこと今は内緒にね。誰にも言っちゃダメだよ」
「はーい」
口裏合わせを決め合う間にこの場にやって来た一人の海兵・・・・・あらまぁ、お久し振りなお人だった。
「失礼するよォ~・・・・・」
「先手必勝!!」
扉から入って来た背が高い海兵ことボルサリーノさんの腕を掴んで両腕に海楼石の手錠をはめた。油断大敵過ぎやしないか? まァ、この人は自然系の悪魔の実の能力者だから物理はほぼ無効にするし警戒する相手ではないと無防備をどうしても晒してしまうもんか。
「んんんー? 今の声・・・・・おっかしぃねェ~? ここにいる筈がないんだけどもしかして天龍、君かい?」
「ははは、声だけで判別できるほどお互い長い付き合いも仲良しこよしした覚えはないんだがなボルサリーノさん?」
認めればボルサリーノは「驚いたねェ~」とサングラス越しで見えないが目を丸くしたと思う。
「おいおい、じゃァあっちの君は何なんだァ~?」
「インペルダウンを丸ごと爆発するための偽物だよ。いやァ、四皇の肩書を捨てたいからわざと偽物に捕まってもらって晴れておれはただの冒険者として海を航海で来たよ。初めて海軍と政府に感謝したぜ」
「肩書を捨てるだけで海軍を利用するんじゃないよまったく」
「利用できるもんは利用する。そっちだって海賊同士が潰し合えば楽でいいだろう?」
「否定はしないよ~」
ボルサリーノさんから離れ、ベガパンクの横に立つと質問を投げてきた。
「それで、ベガパンクをどうする気だい天龍。まさか誘拐しようってわけじゃないだろうねェ?」
「や、この二人の病気を治す依頼をしていた」
「ん~? 本当にそれだけかい? 君と何の関係があるのかわからないねェ~」
そりゃそうだろうよ。一切交流していないし、おれは覚えちゃいなかったんだからな。
「ぶっちゃけ言えば、こっちの母親は初めて天竜人から解放した元奴隷で、こっちの子は・・・言わずともわかるだろ?」
「なるほど・・・・・でも、だからって君が母娘を助ける義理はないじゃないかい?」
「確かに義理はないな。払う手術費だって莫大で馬鹿にできないし、母親に借金返済を求めても一生でも払えきれないさ。―――だからって自分が出来ることを誰かにしてやらないのは個人的に嫌だ。これはおれの身勝手な正義だよボルサリーノさん」
帽子を取って頭を掻くボルサリーノさんは、ベガパンクに話しかけた。
「こっそり“海賊”と交渉はマズイよベガパンク」
「誰が海賊だァー!!! もう俺は海賊じゃないぞ!!!」
怒るおれを他所にベガパンクは呆れ口調で言いながら息を吐いた。
「私はこいつのこと海賊とは一切知らなかったんじゃ。だから知る前は手術をする事を約束した。莫大な費用も用意するともな」
「しかも、彼女は確か革命軍の軍団長の・・・・・あァ~なるほど、ソルベ王国の悪の支配者と『革命軍』のくまと繋がっているなこりゃ~」
あっさりと身元がバレてしまった!!?
「だったら尚更、交渉しちゃいけないよベガパンク。“軍の科学者”が犯罪者の家族を助けるのは。今すぐその二人の身柄を拘束しなきゃいけない状況だよ今。さもないとベガパンク、君も犯罪者を加担する者として捕まえなくちゃならないよ」
間違ってはいないがボルサリーノさんよ。今の状況判っているのか?
「能力を封じられてるのにどうやってだ? 寧ろ、今拘束されているのはボルサリーノさんの方だぞ」
「・・・・・」
ジャラと鎖の金属音が寂し気に鳴った。
「何度もおれに負かされて、総大将相手に勝ったおれにボルサリーノさんが勝てる道理あるのかな? 引き連れた海兵もおれの敵じゃないし」
闘気で具現化した剣をベガパンクに突き付けた。
「政府と海軍にとって天才科学者を失うのはかなりの損失だともおれは認識している。違わないか?」
「・・・・・そうだねェ~」
「インペルダウンにいる偽物のおれも大爆発して囚人を閉じ込める機能が無くなってしまえば、大変なのも政府と海軍だ。違うか?」
「・・・そうだねェ~」
「んでもって、能力を封じられたボルサリーノさんを今なら深海一万メートルにまで沈めることもできる。違うか?」
「そうだねェ~」
詰んだ、そう考えに至ったのか降参の意を示す両手を上げたボルサリーノさん。
「わっしは何をすればいい」
「全ての黙認と黙秘。それと政府にはおれがベガパンクを無理矢理従わせようとしたことと、それを阻止したこと、またベガパンクを狙いに来る理由でしばらくベガパンクの護衛につくと言え」
「おやァ? バラしてもいいんだね君のことを?」
「何すっ呆けてんだよ。報告する気でしょボルサリーノさん」
「当然だよ~」
「だからだよまったく。ああ、それとこの二人が完治するまでボルサリーノさんもここで過ごしてもらうから」
決定事項、異論は言わせない姿勢のおれに逆らえない状況のボルサリーノさんは、指示通りに動いた。政府と連絡している時もおれの言ったとおりに言ってくれた。
「―――ってことで、ボルサリーノさんをしばらく大人しくしてもらった」
「・・・・・(呆然)」
研究所に集まってもらってボルサリーノさんの件を皆にも伝えることも忘れないおれの話に、開いた口が塞がらないくま。そして何故か何人か呆れているおれの仲間達。
「とうとう大将までか」
「今更ではありませんか。天竜人を笑って暴虐する方ですよ」
「「「ああ、確かに」」」
鎖は外しているが、手錠は着けたままなボルサリーノさんを隣に置いてそう説明したところ、反応がイマイチだった。
「おォ~こいつ等が天龍のお仲間達か、初めて見るねェ~・・・・・」
「愉快な仲間達だよ」
「そうかい。それに“鷹の目”もいるとはねェ・・・・・ボア・ハンコックと違って現“七武海”のお前さんがどうして天龍といるんだァ?」
ボルサリーノさんが黒い刀剣を背中に差す男に問い詰めた。“鷹の目”ジュラキュール・ミホークは淡々と答えた。
「食客の身だ。今の俺はそれ以上でも以下でもない」
「つまり、“七武海”の称号と地位を剥奪されても構わない。そういうことかァ~?」
ほらみろ。大将がそう言うんだからその未来の可能性が出たじゃないか。
「ボルサリーノさん、それだよ」
「んんん?」
「ベガパンクが現在の“七武海”よりも意のままに動かせる強い兵器を作り政府と海軍がそれを手に入るなら、ミホーク達はいらなくなるだろ。正義の味方が海賊を雇うなんて『海軍』として面目が立たないからな」
おれの推測の話を聞き沈黙するボルサリーノさんに向かってまだ言い続ける。
「さっきベガパンクと少しばかり話したが、血の提供があればクローンが作れると聞いたんだ。ということは、他の“七武海”の強いクローン兵だって作れるだろうよ。はは、ミホークと同じ姿をしたクローン兵か。単純な強さだけなら遜色はないと思うぞミホーク」
「そうか。だから“七武海”加盟時に血の提供を求められていたのか。このおれのクローンを作るために」
ベガパンクへ鋭い眼差しを向けるミホーク。てか、そうなのか? ということはハンコックも自分の血を提供しちゃった?
「だからおれはミホークに“七武海”撤廃後の身の振り方を問うたんだ。そして今現在、ただおれ達の船に乗り有事の際は手助けすることで衣食住を提供する、そう言う約束を交わしているんだ。ま、俺の予想が現実に帯びたな」
何時現実になるか分からないが、確実に厄介な人類を作り出すぞベガパンクこいつは。
「ねぇ、イッセー。結局はこれからどうするの? 大将を放置はできないよね?」
「できないな。どうせ今頃海軍は―――」
「―――なんだと、インペルダウンにいる天龍は偽物だと!?」
「本物は、相も変わらず海の上おったってことかい・・・・・!!」
「はっ!! 今はベガパンクを狙っている様子で黄猿さんが単身で護衛に努めておられます!!」
「いや黄猿だけでは無理じゃ。今頃捕まってベガパンクの身柄も確保しておるわぃ」
「ああ、大将を全員相手に勝つ男だ。動かせる船を全て出せ、天龍を探し出しベガパンクを救助する!!」
「―――って、躍起になってボルサリーノさんよりもベガパンクを助けに精を出す海軍が、冬島に集まるだろうからな。だからしばらくベガパンクはジニーとボニーの治療の為に専念している間におれ達はこの島から離れて次の島に行くぞ」
「え、まさか・・・・・黄猿を連れて?」
「うん」
「「おい!!」」
ガンヴァとヴェージがおれの精神が信じられないと怒鳴って来た。
「まぁまぁ、今のボルサリーノさんは能力が封じられた生身の人間だ。海楼石の手錠の鍵はベガパンクに渡してあるから、どうしたっておれ達には敵わんよ。その上、海軍大将だ。交渉材料にも使えるから手元に置いても損はしない」
「生身でもつェーのはいるぞ」
「承知の上だ。ということでもう少しくまとベガパンクに話すこと話したら出航するから準備してくれ」
分身体にボルサリーノさんに見張りを付けて、皆と船に向かってもらった間にくまと話し合う。
「くま、あの二人と過ごしたいなら方法はあるぞ」
「何だいそれは」
「この数珠を付けて別人に変身する事だ」
「別人に・・・・・?」
数珠を手に取るくまに頷く。
「それは別人に変身する魔法を込めてある。外せば元の姿になるから身体に変化はない。だから新聞の記事で知られたくまの姿が別人の姿なら誰にも気づかれることはほぼ無いようになる。試してみろ」
わかったと頷くくまが大きな手首に俺が作った数珠を通すと・・・筋骨隆々でスキンヘッドの大男に変わった姿を鏡で確認すれば驚愕の色を浮かべた。ベガパンクも超ビックリ。
「こ、これが私なのか・・・!!?」
「そうだ。それが別人に変身した姿だ。絶対にわからないだろ」
「あ、ああ・・・・・凄いなこの魔法の道具」
「本当にお前さんは何者なんじゃ。魔法の道具とやらは一体なんじゃ。すぐに解明してみたい!!」
出来る物ならやって見ろ、と挑発的にベガパンクへ言った。
「そう言えばさ、『革命軍』のトップってドラゴンだよな? フルネームとかある?」
「確か・・・モンキー・D・ドラゴンだ」
「モンキー・D? ・・・あれ、もしかしてルフィの父親か?」
当の本人も父親が誰なのか知らないと言い切るほどだったから詳細は不明だったけれど。そうか、革命軍のトップが・・・・・。
「え、あの子が!?」
「なんと、ドラゴンに子供がおったのか!!」
こっちはこっちでどっちも驚いているし、革命軍のトップと知り合いだったベガパンクにまた意外だった。
「うんそう。今はゴムゴムの実を食べたゴム人間だ」
「ゴムゴムの実? そのような名前の悪魔の実はないぞ」
「え、ない? 実際にゴム人間になってるぞ」
「いや、それは間違ってはおらん。私が言いたいのはゴムゴムの実という名の悪魔の実がない、という点じゃ。悪魔の実の図鑑にも載っておらんからな。あれには本来の別の名が付けられておる。それは―――」