海賊王におれは・・・・・ならないから!   作:ダーク・シリウス

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百獣海賊団カイドウ

天竜人が住む聖地マリージョアを壊滅させてから一週間が経過した。人間以下の奴隷に堕ちた者達の体に刻まれた焼印を消して前半の海『偉大なる航路(グランドライン)』、後半の海『新世界』の東西南北の町まで送り天竜人から強奪した財宝を渡しその後は自己責任として放置した。流石に一人一人の故郷まで連れて行けなど、今のおれには到底難しい事だから申し訳ないと言ったが、元奴隷の人達は「解放してくれただけで一生の恩です!」と笑って許してくれた。そんな行いは更に一週間もかかったおれは、新世界にいて我が物顔で空を遊泳中とあることに今巻き込まれた。

 

ドゴンッ!!!

 

「―――――」

 

『ッ―――!?』

 

まさか―――空から人が降ってくるように落ちてくるとは思いもしないだろ!

 

最初は頭と頭が衝突して例えようがない痛みも一瞬で一気に襲ってきて、頭にぶつかってきたそれを掴みながら睨み付ける。大きな龍の指に摘まれてるのは鬼のような2本の大きな角に腰まで伸びる長いナマズ髭を蓄え、通常の人間がが見上げるほどの常人の数倍はある体躯をした筋骨隆々の大男。左腕に髑髏と鱗のような刺青、右腹部に大きな十字傷がある。大男は手で頭を抱えて唸っていた。

 

「クソォ、頭痛ぇな・・・・・」

 

『それはこっちの台詞だ!なんなんだお前、いきなり空から降ってきやがって!』

 

ぶつからず落下地点だった下へ見下ろせば、名も知らぬ島に落ちていたかもしれない。なんだって空から降ってきやがった?そんな疑問を抱いている俺に謎の大男が言葉を投げてきた。

 

「おいお前・・・・・悪魔の実の能力者か」

 

『違う。信じちゃくれないだろうがこの世界とは別の世界から来た』

 

「別の世界だと?何言っていやがる」

 

『別に信じてくれなくていい。それよりも何で空から墜ちてきた?てか、その前提でどうやって空に昇ったんだ?』

 

「おれの趣味は自殺だ」

 

趣味は自殺だって言う人間は初めて見聞したよ。しかし、大男の巨人と見紛う強靭な肉体を注視して『下に墜ちてもお前、死にそうな感じしねぇなぁー』と感想を抱いた。

 

『アホだろ。趣味が自殺なんて。お前のことは自殺願望者って呼んでいいか?』

 

「ふざけるな。おれの名は―――カイドウ、百獣海賊団のカイドウだ」

 

カイドウ・・・・・ただ者ではないと思ってたけどまさかあの海賊の船長だったとはなー・・・・・。

 

『仕方ないから家まで送てってやるよ。場所はどこだ』

 

カイドウの家まで送ってやろうと方角を教えてもらい、猛スピードで空を駆ける。

 

何時間もかかったのかわからないがカイドウの家もといナワバリに辿りついた。島は・・・・・なんだか鬼の顔を彷彿させる建造物?があって一瞬鬼ヶ島かと思った。その島とは別の島があったけど今は目前にしている島へと近づいた。

 

『あそこか?』

 

「ああ」

 

訊ねると肯定するので真っ直ぐ仮称鬼ヶ島に降り立った。同時に何故か騒がれた。

 

「敵襲ー!!敵襲ー!!!」

 

「キング様達を呼ぶんだぁ!」

 

ワー!ワー!ワー!ギァー!ギァー!ギァー!

 

・・・・・まぁ、そんな反応をされるのは無理もないか。

掌の中のカイドウを地面に降ろすや否や、頭の存在に気づく部下は安堵で胸を撫で下ろしたりそういう気持ちを醸し出してカイドウに追求しだした。

 

「カ、カイドウ様。この化け物は」

 

「酒を用意しろ。それと飯もだ」

 

「は、はい!」

 

開口一番でそれかよ。命令された何十人もの部下達は、弾かれたように鬼のような顔をしたドクロの建造物の中へ駆けていく様子を見ていた俺にカイドウが話し掛けてきた。

 

「お前も酒盛りに付き合え」

 

『いいのか?じゃあ遠慮なく。飯は中でか?』

 

「その無駄にデケェ身体をどうにか出来るもんならな」

 

なにも知らないカイドウに言われたくはないが、龍化から人化になって見せるとカイドウに睨み付けられるような眼差しで見下ろされる。

 

「本当は悪魔の実の能力者じゃないだろうな」

 

「ちげーよ。なんだったら泳いで見せたろうか」

 

ウォロロロロ・・・・・と独特な笑いかたをするカイドウが歩き始め、おれもついていく。なんつぅか、恐竜と歩いている感が凄まじくするな。相手はある意味では恐竜だけど。

 

 

???side

 

カイドウ様が戻ってきたかと思えばどこぞの馬の骨ともわからない若造を連れてきた。カイドウ様が連れてきた海賊かと思って部下に聞いてみたが、そうではないらしい。名を馳せてる海賊でもなく正体不明の奴かと思ったら。

 

「ですが、どうやら悪魔の実の能力者らしいです。カイドウ様並みのバカデケェ怪物で」

 

「カイドウ様はどうする気なのかわかるか」

 

「さ、さぁ・・・酒と食事を用意するように言われていましてそれ以上のことは」

 

食事?戦力に加えるために盃を交わすのかカイドウ様は?

 

 

 

 

「おー」

 

運ばれてきた料理の数々。中には故郷の食材の料理を使った料理もあって感動的だった。結構な数の料理だが、カイドウの胃袋の大きさを考慮すればこのぐらいでなければ満足しないだろう。流石異世界。

 

「すげーな。特にお前の瓢箪。何だよその大きさ、初めてみたぞ」

 

「ウォロロロロ・・・・・やらんぞ。これは俺の酒だ」

 

「酒かよそれ。胸焼けどころじゃない量を飲む気すらないから」

 

小さな湯船に入れられる量を超えた酒をがぶ飲みするカイドウを見ただけでも胸焼けしそうになるから飲むところだけは見ないようにして、盃を持ってカイドウと乾杯する。

 

「これでお前の傘下に加わったことにはならないよな?」

 

「俺の部下になるなら幹部にしてやってもいいぞ。歓迎する」

 

「出来ればお友達からよろしく」

 

ざわめく周囲を他所に手短な料理を食べ始める。カイドウも酒八割飯一割の感じで食べ、聞いてきた。

 

「おい、お前の名はなんだったか」

 

「ん?ああ、言ってなかったな。イッセー・D・スカーレットだ」

 

「・・・・・ここ最近、億超えのルーキーが手配されたばかりの名前だな。お前なのか」

 

「おれに手配書?見せてくれるか?」

 

最近飛んでばかりだったから世間の情勢は疎い。カイドウが手配書を部下に持ってこさせ、直接俺に渡してくれたから内容が把握できた。

 

イッセー・D・スカーレット

 

500000000

 

 

「・・・・・5億?いつの間にこんな額・・・・・天竜人を全員半殺しにして大将の一人をぶっ倒したからか?」

 

「それが本当ならばその額は納得のいく数字だ」

 

「カイドウには負けるよ。人生の先輩でもあるんだから当然だけどさ」

 

骨付き肉を食いながらあることを疑問に抱く。あ、うまっ。

 

「世界貴族に関する情報とかはないのか?」

 

「知らねぇな。海軍や世界政府が情報操作をしてるんだろうよ。お前の手配書だけが加えられていたからな」

 

ふーん、と気のない返事をして改めて自分の手配書を見る。億超えの賞金首になるには長く海賊や海軍相手にしながら生きていくか、格上の相手を打破、もしくは島や国を何度も滅ぼすほどのことをしなくてはならないのだと、ハンコックから教えられたが・・・・・。

 

「少なく感じるな。また天竜人と海軍大将を倒せばあがるのか」

 

「世界を敵に回すか。海賊になるつもりはねぇんだろ」

 

「懸賞金が懸かるのは何も海賊だけじゃないと思うんだがな。だけど、もっと悪戯に賞金を上げてみたくなるな」

 

不敵に笑いながらそう言うと、カイドウが口の端に零れた酒を腕で拭きながらあることを言ってくれた。  

 

「なら、手っ取り早く他の海賊の首を取ればいい」

 

「カイドウ的に認めている海賊は?」

 

「リンリンと白ひげのジジイだな」

 

「誰だ、リンリンって」

 

「ビック・マムっていうババアだ」

 

教えられた海賊の名前が出て来たけど、居場所がわらかないんだよな。

 

「居場所は知ってるのか?」

 

「何だ、行くのか」

 

「一度は顔を拝んでみたいからな。もしも何かの拍子で戦いになったらその時にでも倒してみるよ」

 

「だったらババアのところに行ってみろ。もののついでに奪ってきてほしいもんがある」

 

それを聞くとデカい石と言われた。カイドウが石を欲しがる理由はあるだろうけど、それが何なのかわからないが軽く了承した。相手は良心的な人間じゃないなら心を痛まずに奪えるな。

 

 

カイドウside

 

 

出発は明日にすると言って外で野宿をする奴がいなくなったのを見計らい、三人の俺の部下が顔を出してきた。

 

「カイドウさん、あいつをどうするおつもりで」

 

「何もしねぇ。ひとつ頼み事をした程度だ」

 

「戦力にもしねぇんですか。それなのに飯を一緒に食ったのかよカイドウさん」

 

「ウォロロロロ・・・・・。俺の傘下に加えたらあいつをお前らと同格の扱いにしてやるつもりだ」

 

「そこまであの男を買っているのですか」

 

「ああ、世界を敵に回すことを当然のように言いやがるからな。その証言通りに奴は天竜人を半殺しにして大将の一人を倒したと言う」

 

こいつらは信じられねえとぼやきやがった。俺の言葉を信じられねぇのか。

 

「奴がそんなことを?無名の輩が?」

 

「いや、現実的に奴も懸賞金が掛けられていた。お前らよりかなり低いがな」

 

奴の手配書を見せてやり無名の輩ではないことを教えた。

 

「たったの一度で5億?何かの冗談では」

 

「そう思うのはお前らの自由だ。だが、あいつに頼んだことを成し遂げたらその考えは改めておけ。足下をすくわれるぜ」

 

ウォロロロロ・・・・・と笑いながら酒盛りを続ける。頭の隅でどうやってあいつを取り入れようか考えながらな。

 

 

 

 

 

一泊させてもらった早朝時に誰からも見送られる前にとっとと旅立ってビック・マムのナワバリへ直行する。教えてもらった方角へ一っ飛びして果てしない大海原を越え続け数時間。目的の島を肉眼で捉えることができた。何だか馬鹿デカいドラム缶のような形状をした元の世界でも上位に誇るものが聳え立っている。カイドウの話だとあの中にデカい石があると言うが、はてさて・・・・・どこにあるのやら。カイドウが認める海賊の一人が統べる島だから幹部も居座っているだろうし、できるだけ物静かに探そうかね。町中を探索しながら。

 

 

―――拝啓。父さんと母さん。俺は今、お菓子の家もといお菓子だらけの町に来てしまったようだ。チョコレートの噴水にお菓子の建物。至る所から甘い匂いがする他にも出店でも見たことも聞いたこともないお菓子が販売されている。そして島民たちもおかしい。手だけ長かったし足だけ長かったり、この世界にもいるとは思わなかった獣人には目を疑った。他にも奇妙な人種がいっぱいいて目を奪われがちだ。特にナヴィの能力で調べたら巨大なドラム缶もどきは『ホールケーキ(シャトー)』、城だったことが驚きだ。

 

「(ニーズヘッグ。ここ、お前の理想郷かもしれねぇぞ。食い物ばかりの国だ)」

 

《たまんねぇな!な、なぁ、俺を召喚してくれよぉ~!》

 

「(ああ、お前の出番が来るだろうから必ず出してやる。この国に住んでいる人間には手を出さない条件付きでな)」

 

『それならニーズヘッグを囮兼陽動に出せば探し物もスムーズにできると思うが』

 

「(異世界とはいえできるだけ海賊じゃない人間に被害を出したくないのが心情だ。まぁ、それもアリなのは否定しないが・・・・・うん、敵の戦力を知るためにもするか。悪魔の実の能力者とやらがお前らに通用するのか興味あるし、弱点は海だってわかってる。水の中に閉じ込めれば力も振るえないだろう)」

 

身に宿るドラゴン達が笑った。

 

「(と、いうことでお前ら。非戦闘員の民間人に手を出さず暴れまわれ)」

 

次の瞬間。俺は皆を龍門(ドラゴンゲート)を開いて一斉に現世へ解き放った。当然、突如現れた怪物達に民間人は阿鼻叫喚を巻き起こした。暴れ始めた家族を他所に俺は悠然と歩きながら大きい石があるだろう巨大なドラム缶みたいな数多の人の気配が感じる城へと向かう。

 

 

???side

 

 

町で未知のバケモノ共が暴れている報告を受けた。部下や弟たちは偶発的な襲撃を収拾するために動き回っているが俺の出る幕はないだろう。どこから現れたか知らないがこの国を襲ったバケモノは憐れだな。理知を備えていればここはどこで誰が治めている国なのか知っていれば死なずに済んだだろう・・・・・。だが、そう思っていた俺はその予知を裏切られた。こっちに通信が入り弟からの助力を求められた。どうやら桁違いな強さを有していてペロス兄でも困難を極め、モンドールの能力ですら納めきれないデカさのバケモノらしい。助力を了承し俺も騒動の中心へと向かうべく現場へ赴き―――そいつと出会った。

 

 

 

この世界は異様に色んな人間がいるようだ。チェスを模した格好の人間がこの城の警備兵『ホーミーズ』。他者の魂で擬人化した存在とか、元の世界にもそんな存在はいるかどうかもわからないけれど・・・・・。

 

「まぁ、さほど強くはないな」

 

腕を振るって悠璃の大鎌の能力を駆使して一掃する。悲鳴を上げながら倒れていくホーミーズから魂が出てきて、天に召されたか起き上がる気配はなく沈黙した。幹部以下はこの程度ならわざわざ戦う必要もないな。何となく力試しをしたかったから透明を解いた今、再び透明になって歩いた。透過にもなって天井や壁、床に沈んで赤い石を探す。城にいる人間達は町で暴れているバケモノの鎮圧に駆り出されて警備も薄いと思うから、透明人間になったことも加味して楽々と探索ができる。―――だから、目的の石を発見することが叶ったわけだ。城の中の構造なぞ全無視して移動しまくったから今どの位置にいてどの辺りにいるのかは分からないけれど石造りの空間に数え切れない箱に囲まれ、上階には金庫の役割をしてる檻の中に大きな赤い石があった。

 

「宝箱みたいなものも持っていけばいいか?」

 

入ってこられるのも面倒だから重厚な木製の扉を施錠して、空間に穴を開けて鬼ヶ島に直接行き来できるようにする。そんで檻を取っ払って赤い石や数多の宝箱を魔法で浮かせカイドウのところに持って行った。途中、擦れ違う百獣海賊団の船員達におっかなびっくりした顔をされたけど、気を辿って酒盛りをしているカイドウと会えた。

 

「カイドウ、持ってきたぞー。これでいいんだよな?」

 

「・・・・・本当にリンリンを出し抜いてそいつを持ってくるとはな。しかも宝まで持ってきやがったのかお前」

 

「海賊なんだから喜ぶかなって。でも、お前って酒の方が喜びそうだけどな」

 

「ウオロロロロッ!ああ、確かに俺は酒の方が宝なんぞよりいい。しかし、お前は直接それを持ってくるとはぁ俺の幹部達ですらできもしねぇことをしたな。称賛に値する。だが、リンリンの幹部共と戦わなかったのか」

 

「頼もしい家族達が城下町で暴れまわってくれている。警備が薄いところを狙ってコレを持ってきたから誰一人戦ってないよ」

 

「家族ぅ?お前ひとりだけお前の世界から来たんじゃないのか」

 

「それは追々教えるよ。んじゃ、一先ずこれらを表に置かせてもらうよ」

 

皆を迎えるためにこれは置いていく。絶対に百人でも持てそうにないこれは一体どうやってあの城の中に置いたのか疑問が残るが、鬼ヶ島の出入り口から少し離れた場所に置いてホールケーキ城の中へ戻り外に躍り出た。

 

「おーおー、暴れてるなー」

 

城下町は地獄絵図に等しい状態になってた。ニーズヘッグが食い荒らしただろう見える範囲の建物が滅茶苦茶になってて今もなお暴れているアジ・ダハーカ達はビック・マムの海賊団員と戦っている。・・・・・三人ほどか、戦闘狂のグレンデルとかなりいい勝負をしていて、あいつが押されている。飴や餅のようなもので動きを封じられ、口も塞がれたらいかにグレンデルでも反撃は難しい。他の皆は俺が戻ってくるまで暴れているつもりでいるが何度かフォローして対抗していた。

 

「ま、そろそろ終わりにしようか」

 

遥か上空に飛翔して太陽を彷彿させる巨大な火炎球を十個ほど作り地上に落とす。ドラゴン達が空から落ちるおれの火炎球に気付き、空へと飛んで回避した直後。町が真っ赤な光に包まれた。鈍い地響きと共に生じる轟音、一つだけでも直径百メートルの範囲まで広がりそれが十個。爆発が収まる頃には町は殆ど消し飛んでいて無事な人間は殆どいないだろう。

 

『我が主、目的は果たしたか』

 

「ああ、終わった。お前らはどうだった」

 

『グレンデルが苦戦を強いられていた以外は程々であったな。ニーズヘッグは無限に菓子を生み出す者を嬉々として相手をしていたが』

 

『ケッ!悪魔の実のとかの能力があそこまで厄介だったとは思わなかったんだよ!』

 

おれの周囲に集まった家族達が口々に感想を述べる。やっぱり悪魔の実の能力者には一目を置くようだ。それを知れただけで充分。皆をおれの中に戻しとっとと退散しようとしたが強い眼差しを感じたから下へ見下ろす。

 

屈強な肉体にジャケットを羽織り、カウボーイブーツを履いた短髪の男。左腕の刺青、ベルトのバックル、ジャケットの背面などにドクロの意匠が施されている。顔側面から口元に渡る傷があり、口元はファーによって隠されている。明らかに身長は五メートルはあるか。クレーターだらけの地面にまで降りて宙に漂いながら対峙した。

 

「あの攻撃で生き残ってるとか運がいいんだな」

 

「よくもやってくれたな。おれの家族を、この国を滅茶苦茶にしてくれた罪は死罪すら生温い・・・・・!!」

 

「じゃあ極刑?」と問う間も無く男が飛び掛かってきたが軽くかわしてアジ・ダハーカ達がいる上空まで舞い上がった。―――それでもこっちに飛んできた、というか筋斗雲のように白い雲の上に乗っている巨人と見紛う巨大な老婆が二角帽から生やしたサーベルを振るってきた。

 

「てめぇの仕業かぁ~~~!!!」

 

「・・・・・」

 

見切って一撃をかわしながら魔人化して、片腕だけ巨大な異形にした手で巨体な老婆の体を掴み体力を奪いとった。

 

「うっ・・・・・!?」

 

「「「ママッ!?」」」

 

雲の上に膝をつき、俺に背中を跨がれたまま体力を奪われ続ける。

 

「大海賊だろうと、人間として生まれた限り体力を奪われちゃどうしようもないよな」

 

「お前ェ~ママから離れろォっ!」

 

喋る小さな太陽が炎のように激しく身体を燃え上がらせて、俺に炎を吐くがその炎に対して空気中から集めた水分で具現化した水龍で対抗し炎を消しながら太陽に噛みつかせた。

 

「炎なら水だよな」

 

「ぎゃあああああああああああっ!!?」

 

「プ、プロメテウス!?」

 

・・・・・生き物なのか?痛みを感じるみたいだけど、何とも言えないな。でもまぁ、もうここに長居をする理由もないな。

 

「悪いけど目的を果たしたからには、これ以上は戦う気はない」

 

「目的だと・・・・・!」

 

「・・・・・うーん、教えてやってもいいか?」

 

不敵な笑みを浮かべ、ある虚偽を告げた。亜空間から取り出した白いコートを取り出し、それを目の前で羽織った。コートの背中に書かれている『正義』の文字を見せつけて。

 

「おれは海軍の人間だ。お前らが保有していたあの石を頂戴すべくこの国を襲撃したまで。しかし―――たった一人の海軍の海兵相手に国を蹂躙された気分はどうだ?お前ら海賊は罪のない人々を脅かす存在だ。ある意味因果応報だよな。フハハハハッ!」

 

アジ・ダハーカの頭部に乗り、ついでにこの巨老婆も捕まえてもらいここから離れてもらうようお願いした。

 

「面目丸つぶれの大海賊。次に会う時は世界の覇権をかけた頂上戦争の時だ。さらば!」

 

「ふざけるな、ママを返せっ!」

 

腕を変形させて伸ばしてくる男に目を妖しく煌めかせ、動きを封じた最中、空間に穴を開けて、信憑性を増すために海軍本部と繋げた。海軍と書かれたデカい要塞へ向かうおれ達の姿を目に焼き付けてもらった後は空間を閉じ海軍相手に前回の白銀の能面と天使の姿になって海軍の前に現れた。

 

「よォ、ボルサリーノさんいる?」

 

 

???side

 

 

 

「セ、センゴク元帥!センゴク元帥ィ~!」

 

一人の海兵が汗を流しながら大慌てで元帥の事務室へと駆けこんだ。彼の慌ただしさに怪訝な表情をして報を催促した。

 

「何だ騒がしい、何事だ」

 

「い、一大事です!あのビック・マムが!湾岸内に連れてこられております!」

 

「な、何だとっ・・・・・!?それは一体どういうことだ!いや、誰がそんなことを仕出かした!」

 

「聖地マリージョアを壊滅、天竜人達を半殺しにしたあの男です!」

 

なっ・・・・・!と絶句したセンゴクと呼ばれた海軍総司令官は条件反射で立ち上がり、すぐさまこの目で確認をするべく事務室から飛び出して駆けだす。彼が湾岸内に辿り着いた頃には数多の海兵や将兵が武器を構え、空中にいる片手では数えきれないドラゴンと先の大事件を起こした張本人がビック・マムを連れて来た者に警戒していた。

 

「・・・・・信じられん光景だ。本当にビック・マムを捕えているのか」

 

一体どんな手を使って可能にしたのか気になるところだが、世界的犯罪者がどんな目的で厳重に鎖で縛って連れて来たのか問い質せねばならない。センゴクは誰よりも前に出て、警戒を最大にしながら口を開いた。

 

「貴様、ここに何の用だ」

 

「この海賊の引き渡し」

 

「それだけか」

 

「それだけ」

 

・・・・・短いやり取りで終わってしまった。嘘を言っているわけでもなさそうだが、不安が払拭できないでいて目を細めるセンゴクは更に訊く。

 

「七武海の座を狙っているのか」

 

「・・・・・七武海?いや、大海賊の一人でも捕まえれば俺の首に掛けられてる懸賞金がもっと上がるかなって感じに思ってるだけだな」

 

理解に苦しむ理由だ。

 

「聖地マリージョアを壊滅、天竜人たちを半殺しにした上にビック・マムを捕らえる・・・・・貴様は何を考えている。海賊でもない男がこれだけの所業をして一体何がしたいのだ」

 

「うーん。前者は奴隷解放をするために襲撃しただけで、この老婆に関しては今さっき言った理由だ。あんま善悪の判断でしたつもりはないな」

 

「・・・・・貴様は敵か味方なのか、どっちなのだ」

 

「さぁな。時と場合によったり、状況や理由によって敵にもなるし味方にもなる。まぁ、敵対するような真似や行為をしない限りはこっちから手を出さないでいるつもりだ」

 

静かに宙に浮き、ドラゴンの頭の上に乗って一言告げる。

 

「ああ、天竜人に関しては人間を奴隷にする考えをなくさない限りは何度でも襲うつもりだ。―――人の人生と人権を奪うのはこの世界で一番嫌いなことだからよ」

 

「貴様・・・・・ッ!」

 

「そこにお前ら海兵もいたら、容赦しないからよろしく」

 

ドラゴン達と共に光となってセンゴクたちの前で姿を消した。まるで魔法のようにビック・マムを残していなくなった状況の中でセンゴクは苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる。

 

―――後日、おれの懸賞金が一気に数10億も跳ね上がり暫定であるが新たな大海賊の誕生!と世界中に知られることになった。それを知った時にはカイドウのナワバリに住み着いていて。

 

「カイドウさん、カイドウさん。何か俺が新たな大海賊になっているんだけど?」

 

「リンリンを失墜させたお前にそうなるのは当然だろう」

 

「俺は別に海賊として名乗ったわけじゃねぇ!」

 

「海賊相手に戦う奴は海賊以外誰がいる」

 

「ここにいるけど」

 

「おれの部下になれ」

 

嫌でーす、と言い返してカイドウから離れる。鬼ヶ島の城の中を歩けば百獣海賊団の団員達とすれ違う。すると横一列に並んでおれに頭を下だしてきた。

 

「イッセーさん、お疲れさんです!」

 

「「「「「お勤めご苦労様です!」」」」」

 

「や、おれ何の仕事もしてねぇから。てか、居候のおれに挨拶なんて」

 

過剰な反応でなくてもそんなことする必要はないと思って言ったら、彼等は焦った風に言ってきた。

 

「いやいや、とんでもないでしょ!あのビック・マムを倒したお人に無視なんてできないですって!」

 

「そうですよ!それに新聞見ましたぜ!今世間じゃアンタのことで大盛り上がりだ!」

 

「もしもイッセーさまとカイドウさまが手を組んだら世界の海は制したも当然!」

 

ってな感じで、ここしばらく自分達の頭のように敬語で話しかけたり畏敬の念を抱いて接してくるようになってしまった。海賊になるつもりはないからカイドウの敵になることも味方になることもないけれど、個人的な付き合いをしている方がお互い絶妙な距離感を保っていられる。向こうもそれが望ましいからかおれを勧誘することもあまりない。まぁ、その代わりに百獣海賊団の権限をくれたな。

 

 

カイドウのナワバリの地をいくつかおれの支配地にする権限。

 

船長のカイドウを除き以下の海賊団員に命令できる発言権。

 

百獣海賊団に何らかの貢献をすれば他にも権利を得られる。

 

 

ビック・マムを地に引きずり落とした褒美としてカイドウが何でも願いを叶えてやるというから、こんな権限を貰った。ここ鬼ヶ島から離れた『ワノ国』という江戸時代を彷彿させる国の土地をいくつか直接下見して自分の領土にした。ワノ国を支配しているのはカイドウともう一人であるが、俺の許可なしに俺の土地で暴力・戦闘は固く禁止にして、今は土地を耕している。

 

「はぁ~まぁいい。今日も畑を耕すからな。食料をもっと育てて増やせることができたなら『九里』の住民たちが働く意欲が増して今より九里の上りはちょっとでもよくなるんだ。それがあの土地の元締のジャックのためにもなる」

 

「「「「「かしこまりました!」」」」」

 

と、こんな感じでここしばらく俺は下見して知った荒れ果てた荒野の地で、畑を耕すことにしている。そんで朽ち果てている城を再生して荒れ地に移し替え居を構えた。そうしてしばらくたった現在では、荒野に緑を取り戻しておいて城の周囲には無事に野菜や穀物の芽が出てきている段階にまで至っている。こいつら団員達の協力の甲斐もあってようやくな感じになったわけだ。

 

彼等と別れて外へ赴く途中でまた誰かに声をかけられた。振り返れば長い2本の角を持ち、金属製の大きなマスクをつけた長髪の男。他の百獣海賊団の団員達と比較にならない威風と体格は他の連中と逸脱しているのは当然とばかり、カイドウの懐刀の一人がいた。

 

「なんだ?」

 

「まだ意味のないことをするつもりか」

 

「あのなぁー。別にお前のためにしているわけじゃないけど、九里の上りが悪いのは住民達の士気と意欲が低すぎるからなんだぞ?ちゃんと食糧を配って仕事をやればそれなりの成果と結果がでるんだ。問題はない筈だぞ」

 

「お前のすることに理解できん。何故カイドウさんはお前を好き勝手にさせているのかもだ」

 

「お前らができないことをおれがしてみせて貢献したからだろ?そのおかげでおれは海賊の一人に数えられそうになっているがな。それにおれに文句があるならカイドウに言えよ。ここに居候を許しているのだってカイドウなんだからな」

 

あの人にそんなこと言えるか。と言いたそうな顔を向けられても気にせず九里へ赴くために歩を進める。

 

 

―――九里 おこぼれ町―――

 

 

「さぁ、お前ら。今日も畑仕事をしてもらうぞ。仕事が終えたら美味い飯の時間だ!」

 

『オオー!』

 

老若男女の貧民達のやる気ある声が響き、農具を持って形に整っている田畑へ移動した。高い台の上に座って彼等の監督を勤める俺に報せる数人の男の話を耳にする。

 

「イッセーさん。他の所からもここの噂を聞いて仕事を参加をしたい人達がいるって話だが・・・・・」

 

「人が多いに越したことじゃない。誘えるなら誘ってくれ。来てくれる人数がこの地を豊かにしてくれるんだからな」

 

「ああ、わかったぜ!」

 

笑顔を浮かべて仕事に戻る男を見送り、視線を変えてこの田畑を作ってから3ヶ月が経過した結果を見て感慨深く視界に入れる。

 

「今月もこんなに作物が育ってるな!」

 

「新鮮な食べ物だから丁寧に扱ってちょうだいよ!」

 

「おーい、また鶏たちが卵をたくさん産んでくれたぞー!」

 

「新しい雛も無事に生まれておるのぉ」

 

と、そんな明るい声が聞こえてくる。3ヶ月前とは比べて生気が溢れている彼らの様子が伺えて微笑ましく見守るおれに子供達が収穫した野菜を笑って見せに来てくれた。これらを都や百獣海賊団に売り込みすれば九里の人達の収入となり、九里の上りが増えていく。そして飢饉に遭っている人達の腹にも収まって好いこと尽くめの筈だ。もう百獣海賊団からおこぼれを貰わなくてもいい生活になるまであともう少しだろう。皆にはもっと頑張ってもらわなくちゃな。

 

「皆さーん、お茶の時間ですよー!」

 

時は過ぎ休憩の時間になると仕事を一時中断、各々と用意されたお茶や料理を持ってきてくれた女性達の下へと向かって歩いていく人々。配膳を受けた人から地べたに座って食べ始め、美味しい団子やうどんを口にして笑みを浮かべる。口々に美味しいという姿は地獄で仏に出会ったようなものだった。

 

「はい、イッセーさん」

 

長身の艶やかな長髪の見た目が大和撫子風な人からうどんを持ってきてくれた。この畑の収穫で得た代金から経費として都へ買い出しに行って買えた、と喜んだ当人から受け取りきつねうどんをずるずると食べる。よもや、異世界でもうどんを食えるとは思いもしなかったあの日の感動が昨日のように美味しい。

 

「ん、美味いな。店に出しても恥ずかしくないぞ」

 

「これもイッセーさんが私達のために働きかけてくださったおかげです。こうして皆が満足な食事ができるようになったのですから」

 

「そう言ってくれるとこっちも頑張った甲斐があったってもんさ。この九里に住む他の人たちも噂を聞きつけてやってくるし、田畑も相応に増えて作物もさらに育てれるようになる。そうすりゃ、昔のように食べ物が困らなくなるだろう」

 

コクリと首を縦に振って同意する女性に俺の視線は、カイドウの部下たちが俺の領地にやってくる様子を釘付けにしながら空の器を手渡す。

 

「また都への売り出しを頼んだ。お前の顔が綺麗だから声をかければ客も来てくれるからな」

 

「お任せください。売れ残った物はいつも通りでいいんですね」

 

「新鮮な内に食べたほうが食材のためにもなる。処理はそっちで任せるよ」

 

 

 

 

 

カイドウ様がお呼びです。その伝言を聞き鬼ヶ島へ一っ飛びして直ぐにカイドウがいるところに訪れた。そこは百人は軽く余裕で居座れるフロアであって、塔や渡橋がある大広間。ここに来るのは初めてだな。大勢の部下たちも至る所にいて視線を浴びながら要件を問いただす。フロアの上階の部屋からおれを見下ろす懐刀三人衆を傍らにいさせてるカイドウに。

 

「どうした?また頼みごとか」

 

「そうじゃねぇ。聞きたいことがある」

 

「聞きたいこと?」

 

「異世界から来たって眉唾を吐くお前は一体何ができるっていう話だ。戦闘以外でだ」

 

藪から棒にどうしてそんな質問をしてくるのか不思議な思いであっけらかんと言った。

 

「何でもできると言ってもカイドウが期待している答えにはならないよな。何が出来てほしいことがあるかあるのか?」

 

「おれの海賊団の戦力の増強を望んでいる」

 

「戦力の増強・・・・・人員と武器か?」

 

「そうだ。何が出来る」

 

「うーん、人員は・・・・・まぁ、武器ぐらいは作れるよ」

 

「異世界の武器か。どんなもんだ」

 

「うん、『魔剣創造(ソードバース)』」

 

何でもなさげに言う俺の周囲に床から無数の刀剣類が飛び出してきて、それを見せびらかすように柄を握り構えて見せた。百獣海賊団の団員達はおっかなびっくりして愕然の面持ちで開いた口が塞がらないでいた。

 

「こんな感じに俺は武器を作れる能力を持っている」

 

「ナマクラの武器じゃねぇだろうな」

 

「失礼な!ちゃんとした本物の武器だよ!」

 

ダンッ!と足を強く床に叩くと更に数多の武器が飛び出してきて壁際にまで迫って団員達の顔の間近で止まった。

 

「無限に武器を作り出せれるのか」

 

「無限は流石に無理」と答えながら指を弾き、膨大な数の武器を自壊させて消したけど、滅茶苦茶な床に手を触れて綺麗だった頃の床に戻した。

 

「後は今床を直したように壊れた物を修復できるぞ。大きさは関係なくだ」

 

「他は」

 

こいつ、くだらねぇと思って催促しやがっただろ絶対。

 

「・・・・・マーキングした場所ならどこでも行くことができる。ここから直接海軍本部に繋げることがそうだって言えば分かるか」

 

「嘘だろう」

 

「嘘つくな」

 

「信じられん」

 

懐刀三人衆に即座否定された。

 

「よし、今否定したお前らを海軍本部のところに転移してやる。貴重な体験をしておれに感謝するんだな!」

 

あいつ等の足元に転移系の魔方陣を発動してこの場から本気で海軍本部のところへトばした。急に消えていなくなった三人衆にカイドウを除いて団員達は大きく目を見開いた。続いて大きな立体的な魔方陣の映像を発現してこの場の皆に今頃何をしているのかわからない三人の様子をテレビのように映した。

 

「あ、本当にあそこ海軍本部だ!ジャック様達もいるぞ!」

 

「海軍の連中ともう戦っているし」

 

「イッセーさんの能力は本物だ!すげー!」

 

褒めてくれてありがとうそこの人。その顔を忘れないでおこう。

 

「カイドウ、これでも信じられないか?」

 

「あいつらをここに戻せるな」

 

「然りだ」

 

指を鳴らせば海軍と戦っていた三人があの場から姿を掻き消してまたこの場に戦闘態勢の姿勢で舞い戻ってきた。

 

「「「・・・・・」」」

 

「なぁ、どんな気分?突然敵地にトばされて驚いた?驚いたよなぁ?」

 

いやらしいおれの質問に完全に無視して戦闘態勢を解いた三人衆。反応がつまらん奴らだな。

 

「いい能力だ。そいつは物でもできるのか」

 

「時間と手間をかければ島や国ごともできる方だ」

 

「なるほど・・・・・他はあるのか。お前の自慢な能力とかだ」

 

まだ追及してくるのか・・・・・うーん。

 

「自慢な能力って言われるとおれの世界にいる異種族に転生させることかな」

 

「転生、異種族?どんな種族が嫌がる」

 

「ぶっちゃけ言えば半永久的な寿命を持つ種族とバケモノ。転生するなら人間を止めなくちゃいけなくなるけど、おれみたいに」

 

「お前、人間ではなくてバケモノだったか」

 

「はっはっはっ、人の皮を完璧に被ってる龍だ。カイドウと初めて出会った時の姿以外にもなれるけどな」

 

「寿命が半永久的なのは本当なのか」と問われれば肯定してやった。

 

「おれはまだ若輩者だし、本当にそこまで生き永らえれる証拠もない。ま、百年も千年も生きたいって奴がいるなら転生してやってもいいよ。悪魔の実の能力と異なる面白い能力も得られるからな」

 

「どういう能力だ」

 

「いわゆる魔法だ。ただし、魔法を振るうには自身の体に宿る魔力っていう不思議なエネルギーを消費しなくちゃならない。消費して魔力がなくなったら魔法は使えないけれど、戦い方次第では悪魔の実の能力者を倒すことができる」

 

炎と雷に水の魔力を操って部屋いっぱいの大きな龍の形に作り上げて魔法の凄さを伝える。

 

「さっき三人を飛ばした能力も魔法でな。その他にも無機物や有機物を浮かしたりできて、電伝虫いらずの通信も可能だ。まぁ、魔法の説明はざっとこんな感じだ」

 

「―――お前、おれの部下になれ」

 

「海賊になるつもりはねぇって言ってるだろ」

 

魔法の凄さを伝わったようで嬉しいが、おれを抱え込もうとするな。魔力を消しながら呆れた風に溜息を吐くおれにカイドウがまた訊いてくる。

 

「その魔法とやらをおれの部下たちに与えれるか」

 

「与えることは可能だ。でも、過剰使用をする事でおれの精神が蝕まれて廃人になってしまうんだ。無論、使いものにならなくなるということだよカイドウ」

 

「・・・・・この場にいる部下十人ぐらいは問題ないか」

 

「その程度なら問題ない」

 

カイドウは周囲の部下たちに目を配り一部の団員に指を差して顎を動かした。不安そうな彼等は絶対的な強者に逆らえず恐る恐るとおれの前に立った。

 

「こいつらか?」

 

「そうだ、やれ」

 

「転生する種族はおれに判断させてもらうからな」

 

胸から浮かび出てきた意匠が凝った聖杯を手に取り、彼ら十人を転生してやった。聖杯は眩い光を放ち十人の体を包み込んで静かに消失した。

 

「終わったぞ」

 

「へ?・・・・・何ともないんですが」

 

「痛い思いをしながら身体が変化すると思ったか?それとも、こう、身体の奥から力が湧いてくる!?的な感じを期待してた?」

 

自身の体に何の変化も起きていないことに当惑している彼等に手を突き出して魔力で操る。

 

「残念。もう変化はとっくになっているんだよ」

 

『ぐ、あ、ああああああっ!?』

 

自分の意志でなく体を変化させられる彼等は慣れない痛みに悲鳴を上げ、人の形を崩して異形の姿へと変わっていった。俺達を見守るカイドウ達は静観を保って成り行きを見守る最中、目の前では体で息をしてようやく変化して落ち着いた彼等。俺の判断で彼等は五メートル級のグリフォン、キマイラ、フェンリル、ワイバーン、ケルベロスに転生してやった。

 

「ざっとこんな感じだカイドウ。お気に召したかな?」

 

「ウォロロロ・・・・・強ければ文句はねぇよ」

 

「じゃあ問題ない。おれの世界のバケモノだ。強く育てれば軍艦一隻は沈めることもできるよ」

 

「ほぉ、確かか。なら、そいつらの面倒はお前に任せる。好きに使え」

 

「そうやっておれを海賊の一員に組み込むんじゃねぇよ?こいつら幹部クラスまで鍛えてやるからよ」

 

色々と警戒しなくちゃならないことができたが、専属の部下を得られたおれであった。

 

「その他にお前しかできない能力はあるか」

 

「後は・・・・・そうだな。デカい島の規模ぐらい物が作れたり情報を収集することができるかな。あのデカい石を改めて見せてくれれば、多分翻訳することができるかも」

 

歴史の本文(ポーネグリフ)の古代文字を読めるってのか?」

 

ポーネグリフ?

 

「あの石に特別な価値でもあるのか?」

 

「文字は読めねェが、歴史の本文(ポーネグリフ)の中には『ロード歴史の本文(ポーネグリフ)』という赤い石がある。おれはそのロード歴史の本文(ポーネグリフ)に刻まれた古代文字、新世界に存在する最後の島『ラフテル』に辿り着く情報が知りてェ」

 

「『ラフテル』。確か、海賊王ゴール・D・ロジャーとその一団しか辿り着いていない島だったか?」

 

肯定するカイドウ。

 

「読めるかどうかはこれから調べてみる」

 

「ウォロロロ・・・・・なら、あとで連れて行ってやる。その前にお前にはしてもらいたい事がある」

 

不意に視線が懐刀の一人に変えたカイドウ。

 

「おいジャック」

 

「は」

 

「あいつと戦え。実際にどの程度か確かめてみろ」

 

え、ここで?と目を丸くする俺の前まで上階から飛び降りて来たジャックという男。巨体故に俺が見上げなきゃならないので、見下ろすジャックの目は睨みつけているように見えてしまう。

 

「手加減はしない。いいな」

 

「おれの意思は?」

 

「ない」

 

臨戦態勢に構える俺に合わせてジャックも拳を構え戦闘態勢に入った。互いが睨み合い、この場が緊迫に包まれ団員達が息を呑み、顔に緊張感が浮かんでいるがそんなの気にしない。するのは相手との勝負のみだ。

 

「ふん!」

 

「はぁっ!」

 

衝突した拳同士。鍔迫り合いをしているように押し合う力は拮抗して、同時にジャックの力量を感じ取った。手加減して勝てるような相手ではないことを。真正面から殴り合いをする明らかに不利な体格の差なぞ問題ないとばかり拳を打ち付け殴打の連続と鈍重の音が二人の間から響き渡る。全身を使って殴り合い続ける。

 

「じゅ、十億の男と渡り合っている・・・・・!!!」

 

「ビック・マムを倒したって話は嘘じゃなかったか・・・・・!」

 

団員達からどよめきが生じている。そっか、こいつも懸賞金かけられていたんだっけ?だったら当然・・・・・。

 

「懐刀の称号は伊達じゃないか。なら、さらに気合を入れてみようかなっ」

 

「・・・・・っ?」

 

俺の足元の影が異様に広がり、黒い異形や獣たちが這い出てくるように創造されて現れた。中にはジャックの巨体を上回るサイズの異形の獣もいる。

 

「何だ影から出てきたそれは・・・・・」

 

「悪魔の実の能力的なものだと思ってくれて構わないよ。実際は似て非なる俺の能力だけどな。解説してやるとバケモノを創造、産みだすことができる能力だよ」

 

指を突き出して指示を出せば異形の怪物たち、魔獣は一斉にジャックへ牙を剥いて襲い掛かる。ジャックは応戦して両肩に身につけていた白い角と思しきそれを掴み取り、被せていた白い布らしきものを外したことで露になった曲がりくねった刀、剣?ショーテルみたいだな。それを振るって魔獣たちを一掃して屠り始める。黒い靄と化して消えていくもまだまだ創造し続けるのでジャックにとっては埒が明かないだろう。攻撃の趣向を変える。控えていた魔獣たちは口を開いて光線を放った。迫りくる攻撃に反応しジャックの八メートルは優に超えている巨体で光線をかわされて、「ぎゃあああああ!?」と上階にいた団員に当たりそうになったあと爆発が生じた。

 

「あ、ごめ」

 

「てめーこの野郎!どこ狙ってやがる!?」

 

「避けたジャックに文句を言ってくれ」

 

金色の弁髪に口ひげを生やし左腕は機械化していて、サングラスをかけた顔にはX字のタトゥーがある肥満体の大男から怒声を浴びせられた。巻き込まれた一人だったんだろう。

 

「でも、自分の身も守れないようなら弱いって事だよな?」

 

「ああ!?」

 

「弱くないならかかってこいよ。相手になってやる」

 

「フン!ジャックを倒せてねぇお前の挑発なんか乗るか」

 

それもそうか。魔獣を消失させて俺自身が前に出ながら闇の力を解放した。

 

「悪いな。今度じっくりと勝負をしようか」

 

両腕を広げ両手を巨人の手のように大きく変えた状態で勢いよく左右に振るい、ジャックがショーテルで斬りつけようと左右へ鋭く振るったが、物体ではないので斬れず黒い半球状に包まれ捕まったジャック。

 

「はい、終わり」

 

闇の手を消せばジャックが俺の目の前で鈍重の音を立てながら倒れこむ。それ以降ピクリとも動かないので周囲の一同におれの勝利を窺わせた。

 

「何をした」

 

「ジャックの体力を全部奪った。全身に力も入らない状態だから今日一日はこの状態だ」

 

「その姿がそうさせるのか」

 

「そうだ。生きし生ける全ての生物の体力を奪う力だ。これでビック・マムも倒した。奪った体力は俺の糧となるからかなり有り余っているよ体力は。―――ということでクイーン、勝負!」

 

意気揚々と戦闘態勢で勝負を望む俺に「しねぇよアホ!」と即座否定された。が。

 

「やれクイーン」

 

「ええええええええええええええええええええええ!?」

 

ジャックの体力を回復している俺を他所に、逆らえない命令による決定が行われていた。魔法で大男の体を浮かして塔の壁際に押し込んでやれば、クイーンがやってきたものの気乗りしない様子であるのが明白だ。

 

「お前、覚えてろよ」

 

「それは言っちゃならないセリフだ。やられた悪役、チンピラが最後に言うやつだぞ」

 

「誰がチンピラだ!俺を一体誰だと思っていやがる!」

 

「それも言っちゃ駄目だって!自分から負けフラグを立ててどうするんだよ!」

 

「ごちゃごちゃうるせぇ!最初から叩き潰してやる!」

 

肥満体の体が変化していく。首が異様に伸び始め、筋肉質の四肢へと人型から変わり一瞬・・・・・龍になるのかと期待していたが、そうではなく恐竜の姿のブラキオサウルスであった。

 

「恐竜?悪魔の実って恐竜の能力もあるのかよ?」

 

「ムハハハ、驚いたか!」

 

「普通に驚いた。でも、俺も変身できるよ。―――龍化」

 

クイーンより何倍も大きな八つの頭を持つ黒いドラゴンへと変身した。

 

『―――ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

八つの口から大咆哮。空気が衝撃波となって団員達が鼓膜が破らんとする声量に耳を押さえたり、吹っ飛び壁に叩きつけられたりと二次災害に遭ってしまった。クイーンは巨体で踏ん張るが、余裕がなくなったのか緊張の面持ちで俺を見上げてくる。

 

「な、なんだそりゃっ!?てめ、本当になんなんだよ!」

 

『教えてやってもいいが、降参したほうが良いぞ』

 

「は?」

 

『おれの牙には俺しか解毒がない猛毒がある。喰らったらお前は数日以内で死ぬぞ?』

 

ポタリと牙から垂れる禍々しい液体が落ちるとジュワッと一部の床が腐敗した。それが戦闘の合図として全頭を近づけ大顎を開き、長い鎌首をクイーンの首や胴体に巻き付け動きを拘束した状態で尋ねた。

 

『草食恐竜の体って美味そうだよな』

 

「グオオオオオオオオ!?」

 

軋むクイーンの骨を聞きながら力いっぱい締め付けたあと、ジャックと同様に天井へ放り投げ押し上げるように打ち上げた。頭をどかせば重力に逆らえず床に落ちるその巨体に鼻と口先で突き刺して床へ叩きつける。何度も、何度も何度もだ。そうしてしばらく経った頃に止めると恐竜の姿の身体はボロボロでクイーンが意識を失ってるからか人の体に戻っていく。

 

「ジャ、ジャック様とクイーン様が立て続けに敗れた・・・・・!?」

 

「ま、まさか・・・・・キングさんまでも・・・・・?」

 

団員達の震える声がざわめきとなっても、三度目の戦いが始まるのかそうでないのか恐る恐ると見守る姿勢は変わらない中、カイドウに話しかける。

 

『これぐらいで十分だろ』

 

「お前、おれの幹部になれ」

 

『お断りするって。海賊になるつもりはないんだから。それに―――おれを配下にしたいんならお前の力を見せてもらわんとな。弱い奴の下でコキ使われたくないし』

 

挑発染みたことを言えばカイドウは徐に酒を呷ったあと、巨体を動かし巨大な棘付きの金棒を手に降りてきた。

 

「そこまで言ったんだ。相手になってやる。お前を負かしたらおれの傘下に加わってもらう」

 

「―――やれるものなら、やってみな!」

 

立て続けに三度目の闘いを繰り広げる俺は人型に戻り、封龍剣を取り出して構えば金棒を上段から振り下ろしてくるカイドウと激突して―――視覚外の空(天)が真っ二つに割れたことを知らないまま、激しい戦いを臨んだ。

 

―――†―――†―――†―――

 

 

「オァアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

「オオオオオオオオオオッ!」

 

豪快に振るう巨大な金棒に爪楊枝のような大剣が何度も激突して火花を散らす。内心、壊れやしないかと冷や冷やするがそんな心配をする暇もなくカイドウとの戦いは激しく苛烈だった。

 

「ハハハ!異世界の海賊はこんなに強いのか、面白い!」

 

巨大な火炎球を生み出して前に突き出しカイドウにぶつけると、あの男は紫電帯びる金棒一振りで火の粉を散らすように火炎球を掻き消した。

 

「雷鳴八卦ィ!」

 

「マジかっ!?魔力に干渉すんのか!」

 

次に俺に振り下ろす金棒での一撃を避けカイドウの頭上に瞬間移動し、炎を纏い腕を黒くする武装色の覇気で殴ろうとする。拳に一点に集束させ体内に直接攻撃するようなイメージで―――。

 

「川神流 無双正拳突き!」

 

殴る拳を巨大なドラゴンにして見上げるカイドウの顔面を突き刺して殴り倒す!

 

ドォン!!!

 

「!!?」

 

殴られるのは理解していたが、殴り倒されることは想定外だったのか信じられない顔を上げる。

 

「カ、カイドウ様が殴り倒されたァ!?」

 

「ウソだろ!あの最強で無敵のカイドウ様が!」

 

絶対的な自分達の頭目の見たことが無い光景に百獣海賊団の団員達はどよめいている。そんな彼等に向かって一言。

 

「最強?無敵?そんな概念を信じているのかお前等。俺達人間は死ぬ運命から逃れられない以上は最強も無敵も死を前にすればそんなの無意味だぞ」

 

『・・・・・ッ!』

 

「おれもカイドウも死は絶対に避けられねェ。死を超越しない限りは絶対に最強にはなれないし、無敵にもならない。そいつは生きている間の期間限定の話だ。よーく覚えておきな」

 

「小僧・・・・・!」

 

「この程度で倒れるなよ?拍子抜けだからな。お前も悪魔の実の能力者なら、能力を使って見ろ」

 

「ウォロロロ・・・・・だったら望み通りに叶えてやる。ついて来い!」

 

―――カイドウの身体が別の身体へと変わっていく。肌が青色に、顔が東洋の龍に、身体が極太で蛇のように長くなった。

 

「龍!?」

 

迫りくるカイドウの手に鷲掴みされフロアから遠ざけられていく。天井に向かうカイドウは岩盤など物ともせず顔から突っ込んで屋上へ躍り出た。

 

「ウォロロロ・・・・・ここなら思う存分に戦えるぞ小僧。あの時の龍の姿にもなれる」

 

「この島の頂上か」

 

周辺を一瞥して封龍剣を構え直す。そんなおれを不思議そうに首を傾げる思いのカイドウは話しかけて来た。

 

「どうした、龍にならないのか」

 

「いや、それだけデカい巨体になれば攻撃が当たりやすいだろって話だ。その誘いには乗らないぞカイドウ」

 

かかってこいと指を動かし挑発するとカイドウは大きく口を開いて膨大な熱を集束させた。そして―――。

 

熱息(ボロブレス)ッ!」

 

龍に相応しいブレスを放ってきた。それが嬉しくて笑みを浮かべたおれは足に力を入れて爆発的な脚力で前へ、ブレスへと自ら跳び封龍剣を振るった。

 

「龍滅斬!」

 

「!!!」

 

ブレスを真っ二つに切り裂きそのままカイドウの腹部に刻まれている十字の傷跡になぞって力強く切り刻んだ。

 

「ウァアアアアアアアアアアア~ッ!」

 

「お前が龍なら、この龍を封印、滅することに長けた封龍剣の力だって効くはずだよな」

 

下にまで届くカイドウの悲鳴と共に巨体が屋上に倒れこんだ。傷跡が開いたか滝のように大量の血が流れ戦場が赤く染まり池のように溜まっていく。

―――さて、どうするかな。このままカイドウを倒して賞金を上げてもいいんだがな。

と思考していたら変身を解いて人の姿に戻った脂汗を浮かべるカイドウ。金棒を杖にして膝をつく姿勢で開いたキズを片方の手で押さえおれを睥睨してくる。

 

「龍に対して絶大な力を発揮する剣を、どうして龍のお前がそれを持つ・・・・・」

 

「おれの敵には龍にもいるってだけの話なのさカイドウ」

 

おれ自身を数多に分裂させカイドウを取り囲む。

 

「!?」

 

「そういえばおれの戦い方を知らなかったよなカイドウ。この機に教え込んでやるよ。お前の敗北と共にな」

 

その時だった。この屋上に通じる木造の大きな扉が開いてカイドウの部下たちが、屋上の大穴から黒いプテラノドンが飛び出してきて現れた。

 

「っ!?カイドウさんの傷が開いているぞ!」

 

「まさか、カイドウさんがやられているのかよ!」

 

「待て、なんだありゃ・・・イッセーさんが増えているぞ!?」

 

ギャラリーが集まってきたな。これ、どうすればいい?

 

「まだ戦うか?おれの実力を知るための戦いをこのまま完封してやってもいいが。おれ、まだお前の全力を味わってないしおれも全力を出してもないし」

 

「・・・・・」

 

カイドウは近づくおれの問いに返さず立ち上がると、おれに向かって金棒で攻撃してきた。封龍剣で受け流しながら笑った。

 

「ウァアアアアアアア!!!」

 

「オオオオオオオオオオオオオオッ!」

 

それからおれ達は三日三晩も戦い続けたのだった。

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