海賊王におれは・・・・・ならないから! 作:ダーク・シリウス
河松と出会いから数日も経たある日のこと。またカイドウの部下の一人があることを言ってきた。
「そろそろ『火祭り』の時期なんですけどイッセー様は参加なさるんで?」
「火祭り?どこでやるんだ?」
「花の都と鬼ヶ島です。ワノ国の将軍オロチ様と侍衆や忍者衆が鬼ヶ島にやったきてその日一日は明日まで飲み明かすんですよ」
「へぇ、今時の海賊は祭りもやんのか。それ、楽しい?」
「そりゃあもう、楽しい以外言葉はないですって!」
海賊の祭りか。興味があるな。
「てなわけでカイドウ。おれも火祭りに参加していい?」
鬼ヶ島に訪れて酒盛りしてるカイドウがよく使ってる瓢箪に入れた酒をプレゼントしながら聞いてみたのだった。
「わざわざおれに聞かずとも、お前は勝手に参加するだろうが」
「念のためにな。あと、個人的に仲がいい海賊も連れてきていい?」
「プハァ~・・・・・うぃっく、どこのどいつだ・・・・・まァ、骨のあるやつなら構わねェよ」
ん、あとはあっちの都合を聞くだけだな。
レイリーside
私の目の前に小さく丸い円陣に描かれた紋様が突然現れたかと思えば声が聞こえて来た。
『久しぶりレイリーさん』
「イッセーくん?キミかい?これは通信が出来るもののようだね」
『そ、驚かせたらごめんな。誘いの話をしたくてさ』
彼から誘いの話とは。一体なんだろうね。
『近い内にワノ国を支配しているカイドウが祭りを始めるらしいんだ。飲み放題の酒と食べ放題の料理が振る舞われるっぽいから、レイリーさんとシャッキーさんは―――』
「勿論行かせてもらうよ」
昔の旧敵カイドウとはいえ、酒が飲み放題とならば無礼講なのだろう。ふふ、まさか想像にもしなかったことをすることになるとは。これもイッセー君の不思議な力なのかな。
ハンコックside
イッセーのことを想って肉料理の特訓中のことであった。わらわの目の前で小さく丸い紋様が浮かび上がった。なんなのじゃこれはと思っていると声が聞こえてきた。
『ハンコック。イッセーだけど今大丈夫か?』
「イ、イッセーっ!?」
『おう、久しぶり。それとこの通信手段は教えてなかったな。驚かせたか』
「う、うむ。よもや、そなたの声が聞こえるとはの。して、わらわに話し掛けてきたのは?」
『ああ、大海賊カイドウが支配する国で近々祭りをするらしいんだ。その祭りにハンコックと一緒に楽しみたいから誘いの話をな』
ドッキーン!!!
「(イッセーがわらわと一緒に楽しみたい・・・・・つまりこれは)」
キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(結婚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
『どうだ?無理ならいいが』
「む、無理なのではないのじゃ。そなたの誘いを無下にはせん」
『それはよかった。それじゃ祭りの日の当日に呼ぶよ。ああ、ハンコックだけじゃなくてマーガレット達も参加させて欲しい。飲んで食べて大騒ぎするだけの祭りだからさ』
了承するとイッセーの声が聞こえる不思議な紋様が消えてしまった。近い内にイッセーと楽しい祭りを過ごす・・・・・イッセーと過ごす夜・・・・・・イッセーと・・・・・あっは~ん❤️❤️❤️
「イッセーさま。誰と話していたんで?」
「ボア・ハンコックって海賊は知ってるか?」
「そりゃあ勿論。今年、王下七武海に加盟した女帝・・・・・って、まさか・・・・・」
「そのまさかだ。海賊女帝ボア・ハンコックを火の祭りに呼ぶつもり」
『『『工工工エエエエエエェェェェェェΣΣ(゚Д゚;)ェェェェェェエエエエエエ工工工』』』
火祭り―――
ワノ国で年に一度行われる死者を祝福する意味も兼ねている祭り。鬼ヶ島もそれに倣い年に一度の金色神楽を十年前から始めた祭りだ。その祭りに百獣海賊団とワノ国の将軍オロチと侍"見廻り組〟と忍び"お庭番衆〟以外の一団が海外からやってきた。
「うぉおおおおおおっ!!?」
「あ、あれが噂に聞く女海賊団・・・・・ッ!」
「女ばっかりじゃねェかっ!うひょーっ!ほとんど服着てねェぜ!」
「女ヶ島って島に住む奴は皆女ばかりだと聞いているが、あいつらがそうなのか・・・・・!」
「う、美しすぎるっ!七武海になった、たった一度で8千万の懸賞金になった女傑・・・・・」
「ボア・ハンコック・・・・・この世の美しさを嘲笑うかのような絶世の美女・・・・・!」
「おい、知ってるか。あの集団を呼んだのってイッセーさんらしいぜ」
「マジかよ!!!」
「海外の男達がこんなにいるところに来るなんて初めてだわ」
「あっちの男共もこっちに興味深々みたいね」
「色んな男達がいて面白い!」
「今夜は飲んで食べる祭りだってイッセーから説明されてるし、今日は楽しもう」
「あ、無理矢理迫ってくる男がいたら攻撃していいって言ってたよね?」
「海賊同士の初の交流だ。力を示す一環でもあるのだろう」
ライブフロアを一望できる上階の一室に訪れ、カイドウや懐刀のジャック達とハンコックたちを引き合わせた。
「カイドウー連れて来たぞ。王下七武海の海賊女帝ボア・ハンコックと特別ゲストに―――海賊王の副船長を連れて来たぞ」
「・・・・・お前らは」
「やぁ、何十年振りかなカイドウ」
「元気にしてるみたいね」
「ええええ~っ!!!め、冥王レイリィーっ!!?」
「海賊王の元副船長シルバーズ・レイリー」
「何故ここに」
ふふん、驚いている驚いている♪さすがのカイドウもレイリーを凝視して目を離さないでいるな。
「どこぞの海賊を連れてくるのかと思えばお前が来るとはな。この場で捕らえて
「ふふふ、今日は祭りだと聞いて参加させてもらいに来たのだよ。私から全てを知りたいというならそれ相応の対応をさせてもらう」
「因みにレイリーさんを捕まえようってんなら、俺がこの場に連れて来た手前だから守らせてもらうぞ」
〝閻魔〟と〝天羽々斬〟の柄を触れながら言う。
「知りたいなら酒を飲ませつつ話をすればヒントぐらいは教えてくれると思うぞ」
「イッセー君の言う通りかもしれないよカイドウ。今日は無礼講なのだろう?お互い仲良く酒を飲み明かそうじゃないか」
「・・・・・」
しばしの見つめ合いがされる間、カイドウの部下達におれ達の分の酒と料理の手配を頼むとハンコックから話しかけられた。
「イッセー、海外の男は大きい者もいるのじゃな」
「おれは男も女も3メートル以上の身長の人間が当たり前のようにいるこの世界に驚かされてばかりだ」
「そなたの元の世界にはいないと申すのか?」
「巨人族ならともかく、人類はいないな。昔は3メートルの人間ぐらいはいたらしいけど現代の人間の基本的な身長は2メートルぐらいなんだ」
神ならいるけど人間のカテゴリー別だからカウントはしない。それから、何時まで見つめ合っているんだ?
「カイドウ、レイリーさんが好きだからってそんな熱い眼差しを送っちゃあ困るだろ?」
「あら、カイドウって男が好きになってしまったのかしら?昔の貴方とは思えない子になったわね」
昔の貴方・・・・・?
「シャッキーさん。カイドウのこと知ってる?」
「ええ、実は私その昔海賊だったのよ。その時に今の大海賊のカイドウやビック・マム、白ひげと同じ海賊船に乗ってた仲なのよ」
「・・・・・若さを保つ秘訣は?美人過ぎるだろ」
「うふふ、内緒♪女の秘密をそう簡単には明かせないわ」
魔法で若くしたレイリーさんですら白髪白髭だった初老の男なのに、シャッキーさんは皺が一つもないこの差は一体・・・・・。というか、元海賊だったのが意外過ぎた。
「来たぞカイドウよ!」
そこへチョンマゲ頭に王冠を被った、大きな顔と2本の出っ歯が特徴の男が現れた。カイドウのことを気の知れた中気の知れた間柄のような言動でこの部屋に入ってきて直ぐに絶世の美女であるハンコックを一目見て。
「ムッハー!な、何という美しい女子がおるんじゃ!カイドウ、その者は誰なのじゃ!」
鼻息を荒くハンコックの美貌に魅了されたとして目玉がハートになっている。こいつ、あとで石化されるな。
「カイドウ、どちらさんだ?」
「オロチと言えば覚えがあるだろ」
オロチ・・・・・ああ、将軍オロチのことか。
「この女はおれの部下が連れて来た―――」
「誰がお前の部下だァッ!!!」
一瞬でカイドウの頭上に移動して鋭い蹴りを放って床に叩きつけた!まったく、フザけんな!
「おい将軍オロチ!!俺が連れて来た連れに手を出したらバックにカイドウがいようと容赦はしないからな!!」
「何という無礼な奴め!このワノ国を支配するワシに逆らうというならばこちらも容赦はせぬぞ!貴様を処刑した後はその女子をワシの正妻にする!」
無知とは罪だということはこのことだな。
「サンダーソニア、マリーゴールド。ハンコックを妻にするってよ」
「そんなこと私達が許さないことを知っているでしょう」
「お前みたいな男が姉様の伴侶に務まらないわ」
「ワシは将軍であるぞ!」
だから何だと、言いたげなサンダーソニアとマリーゴールドは嘲笑う。
「自分の思い通りになる女がいいなら他をあたりな。ハンコックは絶対に思い通りにはならないから」
「先程から生意気な・・・・・!!ワシが一言申せばお前ひとり等直ぐにあの世に葬れる―――!」
「イッセーを殺すじゃと?」
あ、怒気のオーラを放つハンコックが怒りの形相を浮かべだした。
「この不届き者めが。わらわの愛しき人を亡き者にするならば容赦はせぬ!!!」
初めて出会ったときに問答無用で放った技―――両手でハートマークを作り、そこから放つ光線で、相手を石化させる能力を使った。
「〝メロメロ
ハート型の光線がオロチを通り抜け―――一瞬で石化した。
「邪心を持った者の末路は、こういう感じか。おれ、邪心持ってなくてよかったよ」
「純粋が一番だよイッセー君」
「ええ、その通りよ」
オロチ様!!?と縦長の禿げ頭、胸付近まである長い耳たぶなど、七福神の福禄寿のような容姿をしたサングラスをかけ袈裟を着ている男がどこからともなく石化のオロチの傍に現れた。
「邪魔者はあのままにして祭りを楽しむのが吉だな」
「もとより、イッセーを亡き者にする男など万死に値する」
「おいおい、心配してくれるのは嬉しいけどおれは死なないぜ?」
頼んできた酒と料理がカイドウの部下達が持ってきてくれた頃合いを見計らったかのように、フロアでも大層賑やかな雰囲気を醸し出した。
「んじゃ、カイドウ。乾杯しようぜー」
「オロチはあのままなのか」
「ハンコックしか解除できないかもしれないけど、どうせ何時かカイドウがオロチを殺してワノ国を支配するだろうからあのまんまでいいんじゃないか?死んでなきゃ永遠に石化したまま生きれるんだし。ああ、ワノ国の侍と忍者を丸ごと手に入れるなら尚更いいか?」
「・・・・・ウォロロロ。お前、俺の部下になれ」
「だーかーらー、ならないって言ってんだろうがこのボケ!」
ゲシッ!とカイドウの脚に蹴りを入れる。こいつ、何時になったら諦めてくれるんですかねェ!?
将軍オロチの漬物石と化したそんなこんなになってしまった中、火祭りは問題なく始まった。九蛇海賊団の船員達とお近づきになりたいという邪心を持つ者達の頑張りが実を結んだのかは定かではないが、フロアを見下ろせば楽しそうに笑みを浮かべていた。喧嘩も祭りの醍醐味として受け入れられ、九蛇海賊団の女戦士と揉め合い=力の勝負をしても更に大盛り上がりしてた。
「はっはっはっ。カイドウ、まだ飲めるだろう。私を酔い潰させるにはこの程度の量では足りんよ」
「ウォロロロ・・・当たり前だ。まだまだ飲めるに決まっているだろう馬鹿野郎」
すっかり飲み仲間となっている二人は見ているだけで胸焼けがしそうな量を湧き水の如く飲んでいく。他クイーンは縁の方にダンスをして祭りを盛り上げているし、ジャックとキングは静かに飲食をしている。
「ハンコック、どんな気分だ?他の海賊とこうして同じ空間でお祭り騒ぎの中にいるのをさ」
「何とも言えないの一言だ。じゃが、わらわはイッセーがおればどこでも幸せを感じれる」
「愛しき者と言ってくれたしなー」
からかいを含んだ意味合いで言えば、はうっ!?と今更恥ずかしがって林檎のように赤面した顔で羞恥でいっぱいなハンコックを見て、とても微笑ましく感じた。
「ははっ、ハンコックほどの美女に好かれるのは男として冥利に尽きる。俺の為に怒ってくれてありがとうな」
「イッセー様、アップルパイをお持ちしました」
「おーっ!無理難題か作れないなら仕方ないと思いつつもマジで作ってくれたのか!ありがとう!」
カイドウの部下が持ってきてくれた見紛うことのない俺の好物。海賊時代にもアップルパイが作れる人がいることも、アップルパイも存在している時点で不思議なものだがこの世界でも食べられるなら凄くありがたい!ってことで早速食べる!
「~~~うま~いっ!!!!!」
「っっっ!!!」
「なんだ小僧、珍妙なその姿は」
「ほう、何と可愛らしい姿にもなれるのだな」
「可愛いわイッセーちゃん」
ショタで九つの尾と頭に獣耳を生やす姿になって、周囲の声など聞き流して一心不乱に数か月ぶりのアップルパイを食べる。う~ん、美味しい!
「ん、ちょっとトイレ行ってくる」
しばらくして皆にそう一言述べてトイレへ行ってくる。場所なんて知るはずもないからそこら中にいるカイドウの部下に訊けばいいか。と、思ったけど・・・・・。俺と同じ目的でトイレに行く酔っ払い達がトイレの前で列を作っていた光景を見て、部下が多すぎるのも考えものだなと思ってしまった。仕方がなく海で済ませることにした。
「・・・・・酒くさ」
身に染み込んでいる酒気を感じ取り魔法で手と一緒に清潔する。中に戻るからまた臭いが染みついちゃうだろうがな。
「・・・・・君は」
「ん?」
城の中に戻り通路を歩いていると白髪の乱れ髪をなびかせる角を二本生やす両胸に紋が入った上着、帯を腰に巻いた仁王襷、下駄和装の出で立ちの―――般若の面を被った人物と出くわした。
「どちら様?」
「僕はヤマト。カイドウの息子だよ」
「へェ、カイドウの・・・・・カイドウの息子ォΣ(Д゚;/)/ッ!?」
思わず二度見してしまった!え、カイドウに子供!?
「あのデカブツに子供がいたのか!?初めて知ったぞ!絶対家族がいないと思ってたから!」
「僕もあんな父は、好きではないからね」
「え、なに突然のカミングアウト。おれにどうしろと?」
「いや、城の中で君の話が持ちきりだったから直接会いたかったよ」
ヤマトは仮面を外して素顔を見せてくれた。うわァ・・・・・あんな顔の親にこんな綺麗で美人な娘が生まれるなんて、生命の不思議さを垣間見た・・・・・って。
「え?お前息子って言ったよな!?」
「昔ある侍を見て憧れたんだ。だから僕はその侍のように男になったんだ」
憧れを抱くならまだマシも、女なのに男だなんて・・・・・これ、流した方がいいのか?
「今暇だよね?よかったら退屈している者同士、話をしない?」
「まぁ・・・いいぞ。ヤマトのことも気になったし話し合おう。因みに聞くがおれの話の内容って?」
「あの父を倒したとんでもない強さの男が―――って」
「どうでもいい内容だな。カイドウは俺より弱かった。ただそれだけだし。また戦うなら、今度はこの刀も使ってやる」
腰に佩いている刀を触れる。釣られてヤマトも刀を見る。
「お前の父親を斬ったおでんの刀だ」
「えっ!おでんの!?本物なの!?」
「複製した物だけど、本物と遜色のないぞ」
凄い食いつき。なんだ、おでんの何なんだ?
「おでんのこと気になるのか?」
「僕はおでんに憧れているんだ。十年前、父とオロチに釜茹での刑で一時間も耐えた伝説の処刑は今でも瞼の裏に焼き付いているぐらいだ」
憧れているある侍っておでんのことか。それに直接処刑の現場にいたのか。
「だから僕はおでんになりたいと父に言ったらぶっ飛ばされて手錠を嵌められているんだけどね」
「手錠?」
両手首を見せてくるヤマト。視線の先に鎖が千切れた手錠がしっかりと嵌められている。だけど、どうして取ろうとしないんだ?
「僕はこの島から離れられない。閉じ込められているんだ」
「どうしてだ?」
「この島から離れたらこの錠が爆発する!正直ウソかもしれないとも思っている・・・!!だって実の子を親が爆発するか!!?」
愛情があればしないだろうが、ヤマトの父親はアレだからなぁ・・・・・。
「―――でも万が一のことを考えると足がすくむんだ・・・・・!!僕の親はあいつなんだから!!」
どんな性格なのか熟知しているから言える発言か。
「取ってやろうかそれ」
「え!?いや取るって僕これに10年も自由を奪われて・・・・・」
戸惑うヤマトの錠を触れる。
「大丈夫だ。できる。外すだけでいいな?」
「いや・・・・・!!念の為!!一応!!遠くへ投げてくれ!!たぶん爆発はしないんだと思うんだけど」
深呼吸して錠を握り締めると壊れてヤマトの手首から外れた。直ぐに通路の奥へ投げた。
「外れた!!」
信じられないと錠が無い己の手首を見つめる彼女―――一拍遅れて投げた錠が数人の人間を優に巻き込む大爆発した。その爆発で生じる衝撃波はおれ達にも襲い吹き飛ばされた。これには悲鳴を上げた!
「うおおおおおおおっ!?」
「わあああああああっ!!畜生あの・・・牛ゴリラめ~~~!!!僕を殺す気だった!!!」
吹っ飛ばされる身体の姿勢を共に立て直して、俺はヤマトの憤怒の叫びを聞く。
「よくわかった!!!あいつはもう親でも何でもない!!!僕の敵だ!!!」
「あー、その気持ちだけはおれも心からわかるよ。おれも昔、クソ兄貴に殺されたことがあるからな」
「君もか!?でも嬉しいよ。僕の気持ちを共感してくれて、ありがとう!!!」
ガシッ!と手を掴んで握り締めてくるヤマト。えーと、どういたしまして?あー、宴会を楽しんでいた大勢の連中が何事だと爆発現場に集まってきたな。周囲一帯は爆炎と黒煙に包まれて元凶の俺達だということはまだ気づかれていない。
「これからどうする気だ?」
「勿論、海に出るよ!!!僕もおでんみたいに自由に生きてみたいんだ!!!」
断言するほどヤマトの決意は固く意思も強い。ようやく縛られていた自由を解き放たれて心底から喜々として言う彼女におれは止めるつもりはない。彼女の人生は彼女のものだからだ。
「そうだ。ねーねー、君も一緒に僕と海に出ないかい?きっと楽しいよ!」
「おれもか?」
「うん!」
「んー、海賊になるつもりはないぞ?」
「大丈夫!海で自由に生きるだけだからさ!」
絶対にその過程で海賊になってしまう可能性があるんだよ!その辺の考慮もしてくれっ!
「―――ともかく、おれは連れがいるところに行かないといけない。一緒に行くか?」
「うん、いいよ」
この黒煙に紛れて転移魔法で一旦城から出て外から入り直す。うう、罪悪感が・・・・・後で直しに行かないと。ライブフロアへ顔を出して上階に上がる。すると、ヤマトはカイドウの所だとは思わなかったのか、しかめっ面の表情になった。カイドウも自分の子供が現れて見つめた視線はヤマトの手首にある筈のない物が無くなっていることにも気付き、おれに訊いてきた。
「小僧、ヤマトの手錠を外しやがったのか」
「悪いか?というかだな。自分の娘に爆発する手錠を嵌めて殺すつもりだったのがいただけないぞカイドウ!」
「そのバカ息子がバカなことを言い出してきかないのが悪い」
「おでんに憧れるのが何が悪いってんだ。もしかして父親じゃなくて赤の他人に憧れるのが許せない嫉妬か?残念がったり寂しいからこの島に閉じ込めて父親の自分を見て憧れるようにしたのか?もしそうなら酌量の余地はあるけど?」
え、そうなの?という目で父親を見上げるヤマトの隣でカイドウの返事を待っていると。徐に金棒を振るい落としてきた!軽々と避ける。
「フザけたこと言ってんじゃねェよ!!!」
「ははは、照れるなって。ちゃんと口で伝えないと思いが伝わらないぞヤマトのお父さん!」
「ブチ殺してやるっ!!!」
「だってよヤマト!一先ず共闘でもするか?」
笑って提案するとヤマトも笑って俺の隣で一緒にカイドウに向かって金棒を構えた。
「この牛ゴリラ!実の子供を殺す気だったなんてもう僕の敵だ。絶対に許さないからな!!」
「黙れバカ息子!」
こうして親子喧嘩+αの戦いの幕が開いたことで祭りは別の意味で大騒ぎと化した。まぁ、その際?石化してしまった石像が戦いの余波に巻き込まれて砕けてしまったのは仕方がないよな?
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
火祭りの翌日―――。
訃報―――火祭りの最中に将軍オロチ死す。という看板やチラシがワノ国の国民達の目に入り一同騒然と化した。将軍無き従者達である忍者軍お庭番衆と侍衆見廻り組は百獣海賊団に吸収され、ワノ国は実質カイドウと百獣海賊団が支配することになった報せも一緒に。
「小僧、お前がワノ国の将軍になれ」
「は?理由は?」
「我が息子ヤマトと夫婦の契りを結んでもらうためだ」
「おいこら。実質俺とお前は義父と義理の子となって百獣海賊団の仲間入りになるだろうが。断る!」
「このクソオヤジ!僕とイッセーは海に出て冒険をするんだ!イッセーのことは嫌いじゃないけど僕の人生をお前が決めるな!」
鬼ヶ島にて、祭り後の後片付けが忙しなくしている百獣海賊団。カイドウに告げられたヤマトとの婚姻話におれとヤマトは真正面から否と言い返した。この野郎、別の方からおれを引き込み始めやがったな。
「お前が将軍となれば支配するワノ国のことはお前の好きなようにさせる。おれ達百獣海賊団への発言力も更に高まる」
「それ今までと変わりないだろ。それがお前にとってなんのメリットになる」
「今後もお前の創る異世界の武器の提供をしてもらうためだ。無論、お前が造る兵器もな」
そういうことか。異世界の武器とおれが作る兵器は百獣海賊団にとって魅力的なんだな。
「国を好きなようにねェ・・・・・」
カイドウと手を組む結果になるだろうが、九里の住民達の事もある。いまさら放置なんて良心が痛むからしないけどさ。
「本拠地を〝花の都〟に移さないのか?もうワノ国はお前の国みたいなもんなんだろう?」
「ああ、いい都になるだろうな」
となると、この鬼ヶ島から離れるのか?
「鬼ヶ島はどうするんだ?」
「鬼ヶ島ごと〝花の都〟に移す」
「いやいや、冗談言うなよそんなこと・・・・・」
「つまらねェ冗談をおれが言うかよ」
マジでできるのか?島一つ分をどうやってかは判らないけど、本当にできるのなら脱帽ものだ。
「場所は?」
「光月の象徴があるオロチが住んでいた城のところだ」
ああ、あそこ・・・ってこの島丸ごと移したら死人が出るじゃないか!
「今すぐってわけじゃないよな?」
「ああ、今日中にするつもりだ」
それを聞いて俺は、ヤマトを連れて脱兎のごとく〝花の都〟へ駆けこんだ。
「イ、イッセーどうしたんだい!」
「あんのバカの尻拭いをするために大改造をするんだよ!ちくしょう、時間がねェー!」
時間がないと言っても一瞬であの規模の島を転送するなんて無理だろう。ならばおれがその間にやれることと―――大改造しかないだろ。よし、辿り着いた。空から見ても・・・・・うん、確実に数人死ぬ程度じゃすまされないな
「あの島を丸ごとここに落とすなんて正気の沙汰じゃないだろ」
「だけど止めることは無理だよ」
「なら、受け入れ態勢を整えるだけだ」
手の中に現れる金色の錫杖を握り締め、無限の創造の能力を使い始める。
カイドウside
小僧がバカ息子を連れてどこかに行ったがおれの決定は変わりない。奴らがいなくなったあと、〝焔雲〟を発生させて『花の都』へ飛ばし始めた。「鬼ヶ島」の屋上からゆっくりと迫って行くワノ国の光景を眺めていれば俺の懐刀の部下共が話しかけて来た。
「カイドウさん、あの小僧を本当に将軍に・・・ヤマトぼっちゃんと婚姻させるのですか」
「お前達は反対か」
「おれ達の傘下に入るわけじゃねェんでしょう?別に関わっているだけ邪魔ってわけじゃねェんですけど」
「奴の行動は我々の利益になっていますが、最後まで油断できない事実があります。何を考えているのか理解に苦しみます」
キング、クイーンはともかくジャックの言い分は同感だ。
「ワノ国の為におれ達を倒すつもりならとっくの昔にしているぞあの小僧は。おれを倒すだけの強さがあるにも拘らずにもな」
「「「・・・・・」」」
興味と感心あれど深い所までは首突っ込む気が無い。小僧は本気でワノ国を救うつもりはねェってことだ。浅い部分、愚民共の命と不自由のない生活を守っているだけでそれ以上の事はするつもりはない。奴に付けた監視からの報告でおれはそう認識している。
「小僧がヤマトと契りを結ぼうがしまいが奴らはつるんで行動をするつもりでいる。直ぐにおれの考えに見抜かれたが問題ねェ。奴に権力を与えているのも懇意の関係を築いているだけだ。敵対するよりも俺の利益になる関係でいる方が合理的だ」
話している間に「鬼ヶ島」はワノ国に到達、その上に飛ばし続けた。そして「花の都」に辿り着いたと思えば・・・・・この島を載せても問題ねェとばかりな滝のように溢れる膨大な水が流れ落とす龍の手を彷彿させる巨大な桜の木を視界に入った。
「小僧・・・・・!!!」
奴の考えを悟り「鬼ヶ島」を収納できる空間に潜り込んだ。上から桃色の桜の花弁が舞い落ちて「鬼ヶ島」を彩る。ここで飲む酒はまた格別に美味しいだろう。ウォロロロ・・・・・!と思っていたら小僧が現れた。
「悟ってくれてありがとうよ。花見酒と月見酒が同時にできる場所を用意してやったぜ」
「ウォロロロロロ!!!最高の眺めといい都が手に入った。お前おれの幹部になれ」
「幹部にもなるつもりはねェよ!それと将軍の件だが、ワノ国を開国していいなら引き受けてやって良いぞ」
「海賊の楽園にするつもりだ。開国は構わねェ」
なにそれ、見てみたいと感想を口にする小僧にウォロロロロと笑いだす。
「なら、お前も海賊になれ」
「御免蒙る」
その日のうちにヤマトを九里の郷に連れてきた。おでんに憧れてるなら当然知ってるよな。
「僕をどこに連れてくれるんだい?」
「おれの城。元はおでん城だったものだけどな」
「っ!!?」
それともう一つ。
「おでんって家族はいたか?」
「うん、いたよ。子供も二人。だけど、父達がおでん城を焼いたからもう死んでしまってるけどね。おでんの妻トキも射殺されてる」
おでんと違って遺体はどこかにあるか?
「遺体、というより遺骨があるなら甦らせることはできるな」
「えっ?冗談でしょ?」
「おれは隠し事はするが嘘は吐かない。勿論冗談も言わないぞ。試しにやってみせようか?」
え、いや、そんなことしなくてもいいよ!と慌てふためくヤマトをおでん城があるおこぼれ町へ案内するおれだが・・・・・。えびす町や編笠からやって来た人達との協力あって広大な畑から阿鼻叫喚が聞こえてくる。どうしたんだとヤマトと駆け出した先に。
「お頭!こいつらこんなに食い物や酒、金まで溜め込んでいましたぜっ!」
「返してくれっ!それはイッセー様からいただいた物なんだっ!」
「邪魔だ!老い先短いジジイが!」
「ああっ!畑を荒らさないでおくれ!」
「やめてくれぇっ!」
「うるせぇっ!」
盗賊とおぼしきみすぼらしい格好の男達が畑を荒らし、畑を守ろうとするおこぼれ町の人達の慟哭。
「・・・・・」
「・・・・・」
語るまでもなく、おれは畑を荒らす輩を許すつもりはないから刀を抜き放って静かな怒りを露にする。
ヤマトside
ゾクッと悪寒をイッセーから覚えた。昨日であったばかりの男だけどイッセーが怒ると感情が消え失せた途端、彼から覇気が放たれたのが判ったあと瞬きした瞬間に殆どの野盗達全員が地面に倒れていた。
「ったく、畑を滅茶苦茶にしやがって。囚人にしてやろうか」
倒れてる野盗達の中でたった一人、立っている山のような形の桃色の髪に肥満体の大男・・・・・えっ。
「お前ェはだれど」
「この畑の主だが?よくも人の作物や九里の人達に手を出したな」
二振りの刀を前に構えて彼に攻撃しようとするイッセーだけど、慌てて僕はイッセーの肩を掴んで静止の行動を取った。
「待って!彼を攻撃しないでくれ!」
「なんでだ?知り合いなのか」
「彼はおでんの家臣だった人だ」
「この畑泥棒が・・・・・?」
胡散臭そうな目付きをするけど本当なんだ!
「盗みをしてるのは彼がおでんの家臣だからだ。いまこの国は父とオロチが支配しているから『光月』やおでんの関わりある人達は皆粛清されているんだ。彼もその一人だから花の都には入れないし、食料や飲み水がろくに手に入らない生活を強いられてるんだよ」
知っている情報を打ち明けてなんとか事情を知ってもらうけれど、収まってくれることを願うばかりだ。
「事情は理解した。だが、それと畑荒しの件は別の話だ」
「でも、イッセー!」
「ここまで畑を豊かにしてきた苦労を蔑ろにする奴等は謝罪で済ませろと言いたいのかヤマト」
それは・・・・・!
「だから、こいつらを全員捕まえて―――」
そう言うイッセーはその後・・・・・彼等を全員、あろうことか。
「おら、荒らした畑とその分を直して耕せ!その後は飯食べてまた畑仕事だ、いいな!」
農作業の労働力にしてしまった。えっと、平和的なのかな・・・・・?それにあの人は・・・・・。
「カッパッパッパ、久しいな。まさかおぬしも畑仕事させられるとはなアシュラ」
「河松、あの小僧は一体何なんだ」
「一先ず、カイドウ オロチの手先の者ではないと申す。拙者と日和様の援助をしてくれておるからな」
「日和様は生きて!?今どこにおるど!」
「後で案内いたす。今はおぬしが荒らした畑を元通りにしなければ」
「・・・・・わかった」
何やら話をしているけれど、まさかもう一人のおでんの家臣と会えるなんて・・・・・。
「河松のことも知ってるようだな」
「釜茹での処刑をされたおでんとその家臣達の顏は忘れられないよ」
「家臣って何人いるんだ?」
「九人。でも、殆どが死んでしまっている―――そう思っていたよ。あの二人を見るまではね」
赤鞘の侍達が生きていた・・・・・!だとしたら、彼等が父を倒す機会を窺っているのかもしれない!!!イッセーに振り返ってある事を願った。
「イッセー、海に出たら行きたいところがある」
「どこだ?」
「幻の島『ゾウ』!!その島にはおでんの家臣、赤鞘の侍がいるかもしれない。何せその二人はミンク族だから!!」