バニヤンが気を失ってから数分後……
「ガババババ! お前たちには助けられてしまった、何か礼をしたいが…」
「ゲギャギャギャ! 我ら己の首にかかった賞金のことなどすっかり忘れておったわ!」
そう豪快に笑うのは赤鬼のブロギー、そして青鬼のドリー。長き戦いで武器の方が先にダメになっており、そのおかげで奇跡的に助かったのだ。
「だけどあいつらがこの島に来たのは元はと言えば私が…」
「そういうことは言わなくていいの!」
落ち込み始めたビビを慰めるナミ。ゾロは足の簡単な治療、ルフィにウソップ、カルーはせんべいパーティなるものを開催していた。
「ゲギャギャギャ! それにしてもバニヤンに助けられるとはなぁ」
「ああ。…麦わら小僧、助けられてなんだが頼みがあるのだ」
さっきまで号泣していた顔を引き締め真剣な顔をするブロギー
「ん?改まってどうした、丸いおっさん」
「ドリーと話し合ったんだが、お前たちにはバニヤンを海に連れ出して欲しい…。この通りだ!」
「わしからも頼む」
ズシンと響く鈍い音。巨人ブロギーが頭を地面につける音だった。続けてドリーも頭をつける。
「おいおい! 丸いおっさんも巨人のおっさんも頭を上げてくれよ!」
「その通りだぜブロギー師匠! 何も頭を下げなくても…」
「もちろんバニヤンのことは愛する娘だと思っている。だがな、あいつは巨人ではない人間だ。寿命は我らに比べて短い! ならばこんな島で生を全うするより広い海に出て欲しいと思っているんだ」
「ゲギャギャギャ! アイツには知って欲しいんだ! 国、種族、文化に歴史。ここには無いものを山ほどな!! だからこそお前たちに連れ出してやってほしい!」
「お前らだからこそ頼める願いだ! ガババババ!」
そう豪快に笑うドリーとブロギーとは反対にルフィはむすっとした表情を浮かべていた。
「おれもバニヤンのことは仲間にしてぇよ? でもよーあいつはおっさんたちと離れたくねーんじゃねぇか? ならよ、おっさんたちに言われてもおれは連れてけねぇよ」
「ゲギャギャギャ! バニヤンの口から直接聞かないと納得出来ねぇってことか」
「おう」バリバリ
煎餅を齧りながら答えるルフィ
ドスドス
「ガバババ! そりゃあ当然だ!」
ドスドスドス
「あールフィ? ブロギー師匠たちが頭まで下げたんだぜ?」
「それでもやなもんはやだ」
ドスドスドスドス…
その時凄まじいスピードでブロギーたちに巨大な影が飛び出してきた
「ドリーさーーん!!ブロギーさーーん!!」
〇
「うあああああああああああああん!!」
ボンジュール、号泣中のバニヤンです。
いやさっきの話が偶然聞こえて…。精神がバニヤンよりになってきているのか知らないが涙が止まらねーんだよおおおお!! 聞いた!?『我らの娘』だって!!
「ゲギャギャギャ! 痛てて…。涙が傷にしみるぞバニヤン」
「ガバババ! もしかして起きてたのか?」
「う"ん"、も"う"う"れ"じぐで…」
グズッ…。落ち着け、中身が男の号泣を見ても…グスッ、気持ち悪いだけだ…。それに話もできなくなってるから…深呼吸だ深呼吸。
「なぁ、バニヤン。お前俺の仲間になれよ! いい奴だし。俺ァお前のこと気に入った!!」
ニカッと白い歯を見せ笑うルフィ。…ふぅ、落ち着いてきた。さて返事だが…。ドリーとブロギーの話を聞いてもう決心してある。
「ウィ!!これからよろしくね船長!!」
もちろんOKだ!! これから末長ーくよろしく頼むぞ、麦わらの一味!
○●○●
ドリーの家で身支度をしてから皆がいる場所に戻ってくると、なにやら異様に騒がしい。どうやらルフィたちの仲間と合流できたらしい。
すると向こうから黒いスーツを着たまゆげの人が近寄ってくるのが見えた。
「ボンジュールお嬢さん、俺の名前はサンジ。麦わらの一味のコックを勤めさせてもらってる。話は船長から聞いているんだが、直接お名前を伺いにきました…」
おぉ、前世で聞いてた人物像とはだいぶ違う…。もっと女性に貪欲な感じだと思ってたんだが、これは変な偏見を改めなければいけないな。
「ア、アンシャンテ、サンジさん。私の名前はポール・バニヤン。さっき麦わらの一味に加入させてもらいました。よ、よろしくお願いします!」
「こちらこそどうぞよろしく。そうだバニヤン嬢、お好きなデザートとかはございますか?」
デ、デザート? 俺はあんま甘すぎるのは嫌いだからな。コーヒーゼリーとかかな?
「デザート、デザートかぁ…。ならねー、私はパンケーキが好きだな」
「注文承りました! 後ほど船にてご賞味いただきますゆえ楽しみにお待ち下さい…」
そう言い残すとビビたちのいる方向へ去って行くグルグルまゆげ。
…あれ? 今パンケーキって言ってた? たしかコーヒーゼリーって言おうとしたはずなんだけどな。まぁ訂正に行くのもなんだしパンケーキでもいいか。
「おーーい! バーニヤーーン! エターナルポースが手に入ったからアラバスタまだいけるぞーーーっ!」
向こう側から笑顔のルフィが呼んでくる。確かビビちゃんの故郷の国を救いに行くんだっけ?ウソップから説明を受けていたことを思い出した。
「本当にありがとうサンジさん!」
「いや…いや…。どーーーいたしまして…。テヘッ」
ルフィの奥でらビビちゃんに褒められてデレッデレになっているサンジが見えた。さっきの紳士的な人物と同一人物とは思えないほどのドロドロフェイスになっている。おい、偏見を改めた気持ちを返してくれ。
「じゃあ丸いおっさんに巨人のおっさん!!おれ達行くよっ!!!」
そう言い残すとその場を後にする麦わらの一味。俺はというとドリーとブロギーとの別れの時が近くなっていくのを感じて、皆の後ろをついていけないでいた。
「おい、バニヤン」
…ブロギーさんに声をかけられる。
「オノは忘れてないか?」
「持ったよ」
後ろは振り向かずに返事だけを返す。
「あの青い牛はどうした」
今度はドリーさんが声をかけてくる
「大丈夫、連れて行ったから」
「野菜もしっかり食うんだぞ」
「ブロギーさんもね」
「怪我には気をつけろよ?」
「ドリーさんの方が大怪我してるじゃん…」
「「…バニヤン、いつでも帰ってこい。お前は我らの自慢の娘なのだから」」
「ゔ…ん"!」
去り際にそんなこと言うなよ
俺はルフィ達の背中に追いつくように走り出した。
「さて、別れは済んだな」
「ああ…友と娘の船出だ」
「…放ってはおけん、東の海には魔物がいる」
「ドリーよ、貴様傷は?」
「なに、死にはすまい」
「未練でも?」
「未練ならあるさ、100年以上共に戦った戦斧だ…だが、あいつらのためならば惜しくはない!!」
「決まりだな」
○●○●
どうも、バニヤンです…。
感動の別れを迎え、麦わらの一味の船であるメリー号に乗ってるところです。
目の前にはこちらを見る2人の船員。緑頭の剣士に青髪セクシーダイナマイツだ。
「アンシャンテ、剣士さんに王女さん。私の名前はポール・バニヤン。よろしくお願いします」
「おれはゾロだ。まぁよろしく頼む」
「初めましてバニヤンちゃん!あなた…とっても可愛いわね!! ちょっとこっちに来て来て! 髪を結んであげるから!!」
あ、ちょっと…。離し…あうあうあ!頬っぺたを揉むな髪を触るなぁあああぁ。
○●○●
「…お! あれおっさんたちだ!」
「見送りに来てくれたんだな」
島の川から海に出ようというところで左右にドリーさんとブロギーさんが分かれて立っているのが見えた。
「この島に来たチビ人間達が…」
「次の島へ辿り着けぬ最大の理由がこの先にある」
ん〜? その話ってドリーさんから聞いたことがあったはず…。えーっと、確かデカキンがどうたらこうたらって…。
「お前らは決死で我らの誇りを守ってくれた」
「ならば我らとて…いかなる敵があろうとも」
「友の
「我らを信じてまっすぐ進め!!たとえ何があろうともまっすぐにだ!!」
「お別れだ、いつかまた会おう」
「必ず」
直後である。海の底から金魚のような巨大魚が航路を塞ぐように現れたのだ。この船ぐらいなら簡単に飲み込めてしまえるだろう巨大な口を開き、此方をじっと見据えていた。
「出たか"島喰い"」
「道は開けてもらうぞ、エルバフの名にかけて!!」
思い出した…。
その怪物金魚の名は"島喰い"。名前の通りその辺の島を食い潰してしまうことが由来の巨大魚である。
最大の特徴はこの巨大魚の出すフンのデカさと長さ。"何もない島"という名で過去何人もの海賊が上陸したという。
自分の想像していたサイズを軽く凌駕している。
気づいた時には既にこの船は島喰いに飲み込まれそうになっている最中で若干暗くなってきた。
舵をとれとナミが要求するも、ウソップは震えながらまっすぐ進もうとしている。ルフィはウソップに賛同してまっすぐ進む気満々だ。
ゾロはいつものことだと割り切っているのか知らないが、未だに舵をとれと叫んでいるナミに「諦めろ」と言っていた。
「ナミさん」
「グスッ。な、なに? どうしたの?」
「安心していいよ。だってあの金魚を相手にしてるのは…」
そしてもう島喰いがメリー号を飲み込む、というときであった。
「「"覇国"っ!!」」
「私の最高のお父さん達だからね」
2人の巨人の戦士が放ったのはエルバフが誇る最強の槍。その太刀筋は真っ直ぐに怪物金魚"島喰い"を貫いた。
友と娘の旅立ちを祝福するために100年共に戦ってきた武器を犠牲にした最高の一撃を放ったのだ。
「「さァ、行けェ!」」
「ガババババババババ!!」
「ゲギャギャギャギャ!!」
その日、太古の孤島には2人の巨人の笑い声が響き渡った。
かくして目覚めた開拓の巨人は海へと旅立った。彼女の存在がこの物語にどの様な影響を与えるのか…。どうだい? ワクワクするだろう?
そんな彼女の旅路に聖杯の加護があらんことを…
リトルガーデン編終了です