久しぶりに書いたので少々駄文になっているかもしれませんが、多めに見ていただけると幸いです!
巨人の義娘"ポール・バニヤン"を仲間にした麦わらの一味。彼らは巨人島リトルグリーンを出港し、静かな海を進んでいる最中である
「「エ〜ル〜バフバフ〜♪エ〜ル〜バフバフ〜♪みんなでかいぞ〜巨人だし〜」」
海風に乗ってルフィとウソップによるエルバフの歌(オリジナル)が聞こえてくる。どうやらさっきの興奮が覚めきらないようだ。
まぁ、その気持ちはよーくわかる。なんなら俺もそのエルバフソングに混ざりたいぐらいだ。
「元気ねあいつら…わたしなんかさっきのでどっと疲れちゃたわ…。ビビ、指針見ててくれる?」
「わかったわ」
…そういえばこの世界の方位磁石って見たことないんだよね。ちょっと見せてーやビビちゃん! ほんのちょっとだけだから!
「…? バニヤンちゃんも一緒に確認する?」
ちょっと背伸びしながら覗こうとしている俺に気づいてくれたらしい。こちらに笑顔を向けながらエターナルポースを見せてくれた。 …なんだこれ。指針が糸にぶら下がってるのか? 磁場を記録するなんて一体どういう原理なんだろ…。
「ほぇ…。これがエターナルポースかぁ…」
「…まぁ、これでアラバスタに帰れるわね!」
「ええ、私はきっと帰らなきゃ…。必ず生きてアラバスタへ……!」
「そう力む事ァねェよ、ビビちゃん。俺がいる!!」
そこにおやつを持ったサンジがやってきた。どうやらプチフールとかいうお菓子らしい。自分の知らないお菓子にドキドキしながら口に入れる。
ンゥ!? めちゃうまなんだけど! いちごジャムが口の中に入れた瞬間に広がっていくのだが、それを甘さ控えめな生地が包み込んでくれてる感じがたまらん!
うめぇよ! と視線を送るとニコリと微笑み返してくれたサンジ。おいおい、なんだよその仕草。ドキッとしちゃったよ。
そんな事を考えながら口にプチフールを詰め込んでいると、急に俺の方にナミがもたれ掛かってきた。
「 ? ナミどうしたの……ッ!? 熱っ!? すごい熱だよ!?」
「え………っ? ナミさん!? しっかりして!?」
素人目から見てもわかるほどの異常な体温、体表でこの体温ということは軽く四十度はいっているかもしれない。
「ど、どうしよう!?」
「バニヤンちゃん!すぐにベッドをお願い!!」
「わ、わかったよ!!」
○
「ナビざん死ぬのがなァ!!なァ、ビビぢゃん!!」
船室の中にサンジの泣き声が響いた。
1人も見張りを置かないという訳にもいかないため、現在ゾロを除いたメンバーが倒れたナミのもとに集まっている。
「おそらくーー気候のせい。"偉大なる航路"に入った船乗りが必ずぶつかると言う壁のひとつが、異常気象による発病………!!」
なんでもこの世界の海での病はだいぶやばいものらしく、どんな屈強な海賊でも途端に突然死なんてこともザラにあるらしい。
ビビの話を聞いて全員の顔もこわばっていく。
「…そうだ! この中に少しでも医学をかじっている人はいないの?」
そうビビに言われ、一斉にナミを指すルフィたち。
俺も前世では風邪をひいたら処方された薬を飲む程度だからな、人に披露できるような医学の知識はない。しかも今の自分は英霊ボディだ、病気もシュメル熱でもなければかからないだろう。
「でも肉食えば治るよ!! 病気は!! なァ、サンジ!」
「そりゃ基本的な病人食は作るつもりだがよ…。あくまで"看護"の領域だよ。それで治るとは限らねェ。まぁ、俺がこの船のコックになったからには普段の栄養の摂取に関しては一切問題を起こさせねェ。だが病人食となると種類がある。どういう症状で何が必要なのか、その診断が俺には出来ねェ」
「じゃあ全部食えばいいじゃん」
「そういう事する元気がねェのを"病人"っつーんだ」
…実はひとつだけナミの病気を抑える方法に心当たりがある。
英霊ポール・バニヤンが持つスキルの一つ『豆スープの湖』のことだ。スキルの効果としては味方全体の体力を回復することができるというものなのだが…。能力は巨人化と言った手前、スキルなんて使ったら怪しまれるのでは…?
「よ……四十度!? また熱が上がった……!」
ビビが焦ったように声を上げる。
…この際仕方ないか。これ以上ナミの苦しむ姿なんて見たくない。
「少しだけなら熱を下げられるかもしれない…」
「本当!?」
俺の影から青い牛が飛び出してくる。その青い牛『ベイヴ』にリュックを持ってくるように頼む。
「今から使うのは私の国に伝わる特別な治療法なの。だから席を外してくれると嬉しいんだけど…?」
流石にこの言い訳は苦しいか?ちらっとみんなの顔を見ると、みんなは期待した顔でこっちを見ていた。
「「治せんのか!?」」
「バニヤンちゃ〜ん!!流石できた子だぜ〜!!」
「じゃあ、ナミさんは任せるけど大丈夫?」
さっき仲間になったばかりの俺をここまで信用しちゃうか…。嬉しい反面簡単に騙されそうで心配になるな。
●
全員が退出しこの部屋には俺とナミ、そしてリュックを持ってきたベイヴのみとなった。
俺はというとナミの目の前に立って魔力を貯めている。何しろスキルはこの体になってから初めて使う手段だ。もしかしたら失敗するかもしれないし、別のスキルが発動するかもしれない。
この状態のナミに『ポップコーンの吹雪』なんて発動してしまったらトドメを刺す結果になるだろう。
「…バ…バニヤ…ン。私は、大丈夫よ?」
「ナミ…そんな辛そうな顔で言われても信じられないよ」
「…そこのデスクに新聞が入ってるでしょ、ビビに渡してきて…」
ナミに言われた通りにデスクの引き出しに入っていた新聞を取り、ベイヴに渡してくるように頼む。
「じゃあ、ナミは寝てて? ここは偉大なる航路、あなたが万全じゃなきゃアラバスタに着く前に全滅することになっちゃうかもよ?」
ベイヴに持ってこさせたリュックからリトルガーデンで取れた栄養満点の果実で作ったジュースを飲ませ、水分補給をさせてからベッドに押し倒して目を瞑らせ額に手を当てる。
外にいるビビたちの声から察するに、アラバスタがピンチなんだろ? ならナミがいないと更にまずいだろ。
心の中でスキル名を唱えると額に当てた手が鮮やかな緑に輝く。
病気自体を治すのは無理かもしれないが、少しでも熱を、苦しみを和らげるようスキルを使い続ける。
「…ありがとう。少し楽になったわ」
突然、ナミが上半身を起こした。
「ダメだよ、今は体力を回復させただけで病気自体は治ってないんだよ?」
「あなたも、ビビたちの反応で大体の予想はついてるでしょ? なら少しでも急がなくっちゃ…。医者にかかっている時間なんてないわ」
ナミはふらりと立ち上がり、赤い顔のまま甲板に向かっていった。慌てて俺もナミの後を追い部屋を出たのだった。
○
ナミからの指令により、ゾロがみんなに舵を取るよう号令を出す。なんでも真正面から大きな風が来るらしく、回避するために船の進路を南へ曲がるらしい。
「なぁ、バニヤン。一応ナミに治療したんだろ? あれ…治ってるのか?」
「私は体力を回復させて病気の進行を遅らせることしかできないから…。あのレベルの病気なら早く医者に見せたほうがいいと思うんだけど…」
「ほら! 話してないで行動して! ウソップはシートについて、バニヤンはロープを引いてちょうだい!」
「ウ、ウィ!了解したよ!」
「お、おう…なぁ、ナミ。お前やっぱり」
「いいから早く船を動かしてッ!!」
そんな事を話していたら、悲痛な顔をしていたビビが立ち上がった。その顔は覚悟を決めた顔に変わっている。
「皆にお願いがあるの。船にのせてもらっておいて……こんなことを言うのも何だけど。今、私の国は大変な事態に陥っていて、とにかく先を急ぎたい。一刻の猶予も許されない!! だから……これからこの船を"最高速度"でアラバスタ王国へ進めてほしいの」
「…当然よ! 約束したじゃない!!」
そう意気込むナミの顔はまっかっか。息も荒く柵に掴まっていないと立てないぐらいだろう。
「だったら、すぐに医者のいる島を探しましょう。一刻も早くナミさんの病気を治して、そしてアラバスタへ!!それがこの船の"最高速度"でしょう!!?」
「そぉーさっ!それ以上はでねェ!!」
「いいのか?お前は王女として国民100万人の心配をするべきだろう?」
にっと笑うルフィに、純粋な疑問をぶつけるウソップ。
「そうよ!だから早くナミさんの病気を治さなきゃ!!」
「よく言ったぜビビちゃん!俺はホレ直したぜ!」
「……いい度胸だ…」
「私もホレ直したよ!!」
ビビの宣言に不適な笑みを見せるサンジとゾロ。思わず俺もホレ直しちゃったぜーー!!
「ごめんなさい気を遣わせて…! ムリしないでナミさん…!」
「……! 悪い…ビビ…。やっぱわたし…、ちょっとやばいみたい……」
そう言って倒れそうになるナミを、巨大化して抱きかかえる。
「ビビ! 私はナミを船内に連れて行くね!」
「わかった! 頼んだわ!」
ビビにそう伝え船室に戻っていき、ナミをベッドに寝かせ、額に手を当てる。
「さて、後はあったかくして寝てね?寝てる間に私も頑張るから!」
ポール・バニヤンはあくまでもバーサーカーの星1英霊。スキルを使ったり体を大きくするのにも魔力が必要だが、予想通りこの体の魔力の許容量はそこまで多くはない。
それにこの世界ではどうなるか分からないが魔力が底をついた時、現界できなくなるかもしれない。だからこそ、スキルを使うのにも気合と勇気が必要なのだ。
「…待っててね、ナミ。もう少しの辛抱だから…!」
「バ…ニヤン……」
ナミのぼんやりとした視界には右手が鮮やかな緑色に輝いているバニヤンの姿が写っていた。