ボンジュール、バニヤンです。
アラバスタへの指針を無視し、医者探しを始めてから1日後。肌寒くなってきた今日この頃である。
私はというと基本的にナミのそばで看病もといスキルによる体力回復を行なっていた。あれから魔力が溜まったらスキル、魔力が溜まったらスキルと繰り返しているのだが、一時的に体温が下がっても数分ですぐ上がってしまう。
どうしたものかと汗を拭うと、一瞬立ちくらみを感じた。魔力不足か寝不足か、何が原因かは分からないがそんな事で休む暇はない。
「…ふぅ」
「…バニヤンちゃん、一旦休憩にしようぜ? そうだ! 飲み物でも持ってこようか」
いつの間にか部屋に入ってきていたサンジが声をかけてくる。
んーそうだな…。今めっちゃ眠いからコーヒー淹れてもらおうかな…。
「じゃあ、ホットココアが飲みたいな。マシュマロを浮かせてくれるともっと嬉しい!」
「注文承りました、お嬢さん。最高のココアを用意しましょう!」
ナミが起きない程度に声を張り上げて外に出ていくサンジを見送り、魔力の回復に専念する。…ん? 今なんか違和感が…。
「バニヤンちゃん、やっぱり顔色悪いよ? ナミさんの看病をして貴方まで倒れたら元も子もないわ…」
心配そうに覗いてくるビビちゃんに大丈夫だよと伝える。
しかし2人もこの部屋に入ってきてたなんて…。全然気づかなかったな、これは本当に疲れてきてるかも。
「ほら、私の膝を貸すよ? まだ島には着きそうにないから少しでも休みなよ」
床に正座し自分の膝を叩くビビ。その姿はまるで防寒具を着た天女のようだった。
…そうだな。そこまで言われたら寝るか…。眠くて思考が定まらないしもう瞼が自重に耐えきれないし…。
「んーわかったよ…。何かあったら起こしてくれる?」
「もちろんよ。その間のナミさんは任せて頂戴!」
「よろしくね……。おやすみなさい…」
ふあぁ……! びびのあしやわらかい……ねむ………
○
『母さーん!!今日の晩御飯何ー!!』
『今日はお父さんが帰ってこないから昨日の残りで済ませるわよ!』
…これは俺の前世の記憶か? 目の前に広がっている光景は顔に影のかかった俺と俺の母親。あぁ、懐かしいな…。
『お前ONE PIECE見てないの!? うっそ、今最高にアツいよ!?』
『お、おう。今度見てみるわ』
あー、この時にONE PIECE見始めたんだよなー。内容はよく覚えてないけど面白かったのは覚えてるな…。
『……輩! …先輩!! 何してるんですか!?」
お?聞いた覚えのない声だな…。
『うどんの生地を触媒にしてサーヴァントの幼生を生み出しました』
『サーヴァントってそうやって生まれるんでしたっけ…』
…ん? この光景は見たことないぞ? オレンジ髪に茄子頭なんて一度見たら忘れないと思うんだけど…。
いや、思い出せ…。このキャラは絶対見たことあるぞ。この、このオレンジ髪の狂気的な目は…。
『わ、私と仲良くしましょ!ジャックは死んじゃったけどきっと私とは仲良く…ギャアアアア!!!』
ヒェッ!? ゴ、ゴスロリ幼女が…巨大な手で…バ、バラバラァ…あ、あ、あ、アアアアアアアア!!!
○
「わあっ!!!?」
ぬわああぁぁあああ!!?
「きゃっ!? ど、どうしたの!? 急にうなされたと思ったら…」
目の前にはビビちゃんのドアップ
あっれぇ? さっきまでヤバい夢を見てた気がしたんだけど…。うーん…、思い出せない…。
「大丈夫だよ! ん、んーーどれくらい寝てたんだろう」
「そうね、1時間くらいかしら。…そうだ、島が見えたのよ! 島が!」
嬉しそうに声をかけるビビ。島が見えてきたのか、どんな島なのかな…。いや、見たいけどナミの看病もしないと…。
「へ、へー。島が見えてきたんだ! これでナミの病気も治せるね!」
しかし冬島、冬島かぁ〜。雪ってのはシティボーイな俺にはあまり縁が無かったからなぁ。
「ふふっ。一緒に見に行く?」
いや別に見たくないけどね! 見たくないけども! そこまでビビが言うなら! 見に行こうかな!!
「み、見に行こうかな! せっかくだしね!」
○
「ふーーーッ! こりゃすげェ!! なんだあの山は……!!」
「こんなにゆきが……。しやわせだ…おれ…」
「私も…。こんなに沢山の雪はじめて……」
目の前に広がる一面真っ白な雪景色、そしてその奥に見える特徴的な雪山。俺たちは医者を求めにとうとう冬島に着いたのだ。
いやー圧巻だね! 前世でもこんなに雪が積もっているとこ見たことなかったからWAKWAKが止まらないぜ〜〜!
そんなことを話しながら上陸をしようとした時ーーー
「そこまでだ、海賊ども」
そこらにある木々や窪みの影から、銃などで武装した男たちが現れてきた。おそらくこの島の住民たちなのだろうが…、どういうことだこの敵意は。まるで親の仇かのように睨みつけてくる。
「おーおーひどく嫌われてんなァ…。初対面だってのに…」
「口答えするな!!」
ドォン!!
発砲音と共にサンジの足元には銃痕がついていた。こちらに対する威嚇射撃だ。
「やりやがったな…!」
「まって! サンジさん!!」
とっさにサンジを抑えようとするビビ。そこへーーー
ドォン!!
またもや銃声が響き、ビビの腕から血が噴き出る。
「お前らあ!!」
「ビビ!? 大丈夫!?」
ふらりとよろめくビビを咄嗟に支える。…酷い。弾は残ってないみたいだけど女の子に銃口を向けるなんて…。
「あ、あいつら、許さない…」
体を巨大化させビビを守るように背後に隠す。
デカくなっていくごとに相手さんは顔を真っ青にさせていく。
「ちょっと待って!!ただ戦えばいいってわけじゃないわ!!…きずなら平気、腕をかすっただけよ!!」
そう声をあげて俺の足に抱きついてくるビビ。
いや、そんなこと言ったって…。撃たれたのはビビなんだぜ?
「…皆さん、だったら医師を呼んで頂けませんか!!仲間が重病で苦しんでます。助けてください!!」
がばっと甲板に額をつけるビビ。そばにいるルフィに聞こえる程度の声で何かを伝えた後、ルフィまで頭を下げて頼み込んだ。そんな2人の姿が彼らの思っていた海賊像と違ったのだろう。
困惑の声がちらほらと広がっていく。その誠意が伝わったのか、緑色のコートを着込んだ大男が1歩前に出てきた。
「村へ…案内しよう。ついてきたまえ」
素の大きさに体を縮めていく。…前世も含めて俺の方が年上の筈なんだけどなァ…。いったい俺は何やってんだか。
○
雪の降る村"ビックホーン"
俺たちはこの島の住人たちに連れられて、この村までやってきた。ナミはあったかくしておくのが一番ということで体を大きくして胸ポケットに入れている。
ゾロとカルーはお留守番をしてもらい、この国のリーダー格であるドルトンという大男の住む家に案内してもらった。
「そこのベッドを使ってくれ、今部屋を暖める…」
ナミを胸ポケットから出して家の中にいるサンジに渡す
「いや、それにしても驚いた…私も巨人を見るのは初めてだからね。まさか大きさを変えれるなんて知らなかったよ」
「いや…私は能力者なんだけど…。まぁ、その話は後でするよ。それよりもナミは大丈夫なの!?」
「おっと、そうだったな。熱が四十二度…これ以上上がると死んでしまうぞ…! だがすまない。この国には先程話した"魔女"しか医者がいなくてな…」
「この際その"魔女"でもいい!! どこにその医者はいるんだよ!!」
ドルトンは捲し立てるサンジに窓の外を見るように促すが…
「"ハイパーゆきだるさん"だ!!」
「雪の怪獣"シロラー"だ!!」
「てめェら!! ブッ飛ばすぞ!!」
窓の外にはウソップとルフィが作った雪の作品が並んでいた。
「"
「「ぎゃああああああああ!!!」」
2人を引きずりながらドルトンの家に戻る
「窓の外に…山が見えるだろう? あの山々の名はドラムロッキー。真ん中の一番高い山の頂上に城が見えるか? 今や王がいない城なんだが…」
「ああ…たしかに見えるな」
「あのお城が何か…?」
「人々が"魔女"と呼ぶこの国の唯一の医者"Dr.くれは"があの城に住んでいる」
おいおい、嘘だといってよドルトォーン…。あんな直角に近い雪山登れるわけないだろぉ…
しかもドルトンの話によると、遠いところにあるにもかかわらず通信手段がなく140近い高齢らしい…。あと、梅干しが好きなんだと。
「でもそんなおばあさんがどうやってあの山から…?」
「妙な噂なんだが…月夜の晩に彼女がそりに乗って空を駆け降りてくる所を数名が目撃したという話だ。それこそ、彼女が"魔女"と呼ばれる所以だ。…それに、見たこともない奇妙な生き物と一緒に居たという者もいる…」
「ぐあっ!?やっぱりか! 出た!ほら見ろ!雪男だ!雪山だもんなー!いると思ったんだ!魔女に雪男だと!!?あぁどうか出くわしませんように!!」
騒ぐウソップを無視して考える…
ナミは急患、俺は医者が全然いなくて頭カンカン…いかんいかん、焦りすぎて韻を踏んでしまった。
…今の現存魔力からしてあの山ぐらいの大きさにはなれないが、そこまでの道のりを楽にできるくらいの魔力は残っているはず…
「ナミ!ナミ!!」
「おいおい、バニヤン!寝かしといてやれよ!」
ウソップに止められながらもナミに話しかける。
「あの山を登んないと医者がいないんだって。だから少し待ってて、私がナミを連れて登っていくから」
「バニヤンちゃん、正気かい!?」
「サンジさんの言う通りよ!ナミさんの体の負担になるし、あの絶壁と高度は落ちたら健康な人でも即死よ!?」
「でもよ、あそこ登んねェと医者いないんだろ?なら俺もいくしかねェよ」
サンジとビビは反対のようだがルフィは俺の意見に賛成のようで、行く気満々だ。
するとナミがのそっと起き上がる。
「ふふっ…。2人ともよろしくっ…!!」
そう言いながら手を出してくるナミ。
「そうこなきゃな!任せとけ!!」
「メリー号よりも安心な旅路を約束するよ!!」
「おいっ!!それどう言うことだよ!!」ビシッ
ウソップのツッコミは無視してナミとハイタッチをする。
そのまま外に出て、今の魔力で行けるところまで体を大きくして胸ポケットにナミを入れる。大きさ的にはドリーより気持ち大きいくらいだ。
「おい!バニヤン。お前が一度でも転べばナミが死ぬと思え!前なんかに倒れたらお前の胸で潰れるんだからな!!」
「
「お、おう!何いってんのかわかんねェが気合い十分なのは伝わったぜ!!」
ウソップの激励を受け、気を引き締める。ルフィはすでに俺のベレー帽の上に乗っかっている。はしゃいでいるのかちょっとうるさい。
「よし、俺もいく!バニヤンちゃんがいるから大丈夫だとは思うが、ルフィが色々と心配だからな…」
そう言いつつ俺の横に並ぶサンジ。肩に乗るかと聞いても頑なに乗らないのは何でだろうな。
「…本気なら…止めるつもりはないが、せめて反対側の山から登るといい…ここからのコースには"ラパーン"がいる…!肉食の凶暴なうさぎだ…集団に出くわしたら命は無いぞ!!」
「うさぎ?平気だろ、急いでんだよ俺たち。なァ、サンジ」
「ああ、蹴る!!」
「うさぎ?かわいいよね」
所詮はただのウサギよ。首切りバニーくらいじゃないと脅威でもなんでもないわ。
「じゃ、行くか!!サンジ、バニヤン!!ナミが死ぬ前にっ!!」
「縁起でもねェこと言うんじゃねェ!このクソ野郎!!」
「…ルフィ落とすよ?」
目的地であるドラムロッキー頂上に向けて走り出した俺たち。
走りながらルフィの叫び声が聞こえた気がするが気のせいだろう。俺は落としてないもんね、落ちてたとしてもわざとじゃないから。