開拓者、海に出る   作:消波ブロック

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怪物とバケモノ

 ボンジュール、バニヤンです。

 

「なぁーバニヤン、知ってたか?雪国の人達は寝ねェんだぞ」

 

「え、どうして?」

 

「だって寝たら死ぬんだもんよ」

 

「バカいえ、そんな人間いるかよ!!」

 

「本当だよ、昔村の酒場で聞いたんだ」

 

 現在「ナミの病気治し隊」は山の頂上にある城に住む"魔女"と言われる医者に会うために登山をしている最中であります。

 

 この山、上に登れば登るほど雪の深さは増していってる気がするんだよね。実際に何回も雪に足を取られて転びそうになっている。

 2人はというとルフィが俺のベレー帽の上。サンジはダッシュで俺に並走している。いや、バケモノかな?

 

「それにしても風が強くなってきたなァーー。おいバニヤン! 腹減ってねェか? さっきドングリのおっさんから肉もらってきたんだけどよ」

 

「バカ言ってんじゃねェよ、ナミさんが苦しんでるっていうのに肉なんて食ってる場合か!? あとバニヤンちゃんから降りやがれ!! 男は自分で歩いてなんぼだろうが!!」

 

「いや、私は別に気にしてないけど…。じゃあお肉はもらうね」

 

 あの山の頂上まで目指すなら少しでも魔力は大事にしとかないといけないもんな。俺の記憶が確かなら食事でも魔力補給が出来たはずだったから肉を食べることで回復の方を…。いや、俺がお腹空いてるって訳じゃないぜ? ほんとだぜ?

 

「おう! ちょっとまってろ……あり? カチカチなんだけど」

 

 うぇ!? それじゃあ食べれないじゃねェかよ!!

 

「あったりまえだろ!! 今気温何度だと思ってんだ! …それに」

 

 そういうと、サンジは足元に飛びかかってきた白い物体を

 

「うっとうしんだよ、さっきから!!」

 

「何なんだろうな、あいつ」

 

 蹴っ飛ばした。

 

 

 

 さっきから足元を飛び回ってたなあの白兎。一体全体なんだったんだ…?

 

 

 

 

 

 

 

 いや〜。それにしても寒すぎる!! 顔に吹雪いてくる雪が凶器に感じるくらいには痛いぞォ!?

 

「バニヤンちゃん。ナミさんの様子は大丈夫かい?」

 

「うん。今は大丈夫だけどいつ悪化してもおかしくないと思う…」

 

 胸ポケットに目を向けると先程よりか顔色が良いナミが見えた。雪山では体力消耗が更に激しいだろうなァ、と考えてスキルを使いまくったのが良かったのかな。その分魔力残量がヤバめな気もするが。

 

 

「ん?お前ら、前見てみろよ」

 

 ルフィに声をかけられ前を見ると…。ん〜? 白い雪に混じって赤ーい瞳が1、2…とにかく沢山見えないか?

 

「おいおい…なんて数だよ…」

 

「あれがドルトンさんが言ってた"ラパーン"かな?」

 

「へぇ、おれ白熊見るの初めてだ」

 

「いや…白熊じゃなくて兎な」

 

 アレがウサギか…可愛くないな…。毛並みと体格でプラマイゼロどころかマイナスに振り切ってるぐらいにはムキムキだ。

 

「それでどうする? 一匹残らずすりつぶす?」

 

「いや物騒だぜバニヤンちゃん、そう全部相手する必要もねェ。バニヤンちゃんに襲いかかってくるやつだけ俺とルフィが片付けてあとは避けていこう」

 

「わかった!!」

 

了解(ウィ)!」

 

 掛け声と共にルフィが俺のベレー帽から飛び出していき、それに続きサンジが襲い来るラパーンを蹴散らしていく。俺はその後ろを続いて行く様に走り出す。

 

 それにしても素晴らしい暴れっぷりだ。2人とも足場の悪い雪道なんてモノともせずにラパーン達の処理に回っている。撃ち漏らしがこちら側に来るかもと準備もしておいたのだが杞憂そうだ。

 

「よっしゃ! おいサンジ、大体片付けられたんじゃねェか?」

 

 ルフィの言う通りさっきまで無数にいたラパーンは少なくなっており、楽に進めそうになっている。この魔力の残量なら山登りに十分足りそうだね。

 

「…待てルフィ。あいつら上の方でなんか始めやがった…」

 

「何やってんだ?あいつら…」

 

「何か可愛いね。お見送りかな?」

 

 さっき撃ち漏らしたラパーンたちがピョンコピョンコとその巨体をものともしないジャンプを見せていた。

 ほほう。アレがいわゆるギャップ萌えというやつですかな? あの兎たち…。中々人間たちの文化を学んでいる様ですね…。

 

「…おいおい、嘘だろ。やりやがった、あのクソうさぎ共…!!」

 

 どしたんサンジ、声震えてるぞ? 兎のギャップ萌えジャンプでも見て落ち着けよ。

 

「おいサンジ、どうしたんだ」

 

 よーく見ると声を振り絞ったサンジの目元には涙が溜っており、冷や汗まで流していた。

 

ゴゴゴゴゴ…

 

「おい…!! 逃げるぞルフィ、バニヤンちゃん」

 

「逃げるってどこへ…」

 

ゴゴゴゴゴ…

 

「どこへでもいい…!! どっか遠くへだ…!!」

 

ゴゴゴオオオオオ

 

 

「雪崩が来るぞぉ!!」

 

 

 凄まじいほどの轟音と共に巨大な白い壁が目の前に広がっていた。

 すでにラパーンたちは姿を消しており、大量の雪が木々を薙ぎ倒しながら俺たちに迫ってくる。

 

「きゃああああああ!?」

 

 ぎゃあああああ!? おま、これは反則だろォ!! に、逃げ場がねェぞあのクソ兎がコンチクショーー!!

 

「あのうさぎ共、絶対ゆるさねェぞ。畜生ォ!!」

 

「どうしたらいい!?どうしたらいいんだサンジ!?」

 

「知るかよ!! とにかく! 1にナミさん2にナミさん! 3にバニヤンちゃん4にバニヤンちゃん、5にナミさんとバニヤンちゃんだ。わかったか!! 死んでも守れ!!」

 

「わかった!! だけどどうやって!」

 

「あれだ!! あの崖っ!!」

 

「がけ!!?」

 

「走れ!! 少しでも高い場所に登るんだ!!」

 

 サンジが降った先にある崖を指さすが、ちょっと待ってくれ。あれじゃ高さが足りないんじゃないか…?

 もし助かったとしても、しばらくの間はそこに待機しなくちゃいけないだろうし。何よりナミの体力が心配だ…。なら、他に何か…。この状況を切り抜けるアイデアを…。

 

 

 

 

 

 何とかしようと記憶を漁っていると、脳裏には先日の光景が浮かび上がってきた。

 

 

 

 

 

ガババババババババ!!

 

ゲギャギャギャギャ!!

 

 

 

 

 

 

 …そうだ。

 

 

「ルフィ!ナミをお願い!!」

 

「うおっ!? こんな時に何してんだよ!!」

 

 胸ポケットからナミをつかみ出してルフィに託す。ルフィが驚いた声を上げているが、そんなの気にしてる時間はない。

 

「みんな。私の後ろに隠れていてて…」

 

「おい、バニヤンちゃん。何をするつもりなんだ?」

 

「おい! そこまできてるぞ!?」

 

 魔力を練りオノを作り出し構える。そうだな…持ち手はヒッコリーの木にしよう。

 

 今の残り魔力ではこの後倒れてしまうのは目に見えている。だけど、それでも。

 

「雪崩を割る」

 

「「雪崩を割るゥ!!?」」

 

 魔力をオノと自分の体全体に回す。オノからは怪しげな橙色のモヤが出てきていた。

 

 

 ナミのためなら、こんな雪如き…。

 

 

「うおおおおお!!!」

 

 

「"驚くべき偉業(マーベラス・エクスプロイツ)"!!!」

 

 

 

     ザバッッ!!!

 

 

ーーーー雪崩が割れる

 

 まるで名刀で切ったかのような、滑らかであり美しい断面。切ったところだけではなく後に続く雪崩までもが切れていった。

 

「うおおおお!? すっげぇえええ!!!」

 

「こりゃあ、雪崩の中に一本道ができちまったな…」

 

 ハァ…ハァ…しんど…。これもう、めのまえもまっくらで、あたまもくらくらする…。あっ、もうむり。

 

 

     どすぅぅぅん!!

 

 

 

「バニヤン!? おい、どうした!!」

 

「うおっ! びっく…り…バ、バニヤンちゃん!?」

 

 

 

 あとは、たのむ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…。ふぁあああ」

 

 ん………。あれ…? なんか寒くない…。

 

 だんだんと意識がハッキリしてくる。確か…雪崩を切った気がする…。 ぶっちゃけアドレナリンどばどばだったからよく覚えてないけど、現状助かってるし…。成功したのかな?

 

 周囲を見てみる。気品を感じる作りからどうやら此処は城の中のようだ。ということはルフィたちはドラム城に着いたってことだな。

 それはよかったんだけど…、ナミはどこにいるんだ? どうやら同じ部屋にはいないみたいだが無事なんだろうか…。まだダルいが探しに行くか。

 

 

「どっこい…しょ…?」

 

「!! ……………」

 

 寝ていたベッドから体に鞭打って起き上がらせると、部屋の入り口からこちらを覗き見る生物と目があった。体を隠す方向が逆な気がするが、そんなことより…そんなことよりもだ…。

 

「お前…調子はだ 『がわ"い"い"〜〜〜〜っ!!!』 ぎゃっ、ぎゃあああああ!!!?」

 

 英霊ステータスをフル活用して謎の生物に飛びかかる。

 

 なんだこの罪深き生き物はぁ!? 可愛すぎるしふっかふかすぎんか!? は、はふぅ…。食べちゃいたいぐらいカワウィんだけど…!

 

「ぬ、ぬわーーーーーっ!? は、離れろっ、人間!!」

 

「ちっちゃいねェ〜〜! かわいいねェ〜〜〜!!」

 

 謎の生物を俺の膝に乗せて撫でまくる。思う存分、心のままに撫でまくる。若干ケムリが出てきたる気がするがこの気持ちは止められない。

 

「かわいいかわいいかわいいかわいい」

 

「あちい! あちいよ!! ド、ドクトリーヌ〜〜!!」

 

「あんたら何してんだい…」

 

 おっと、いつのまにかこの部屋に入ってきていたファンキーおばあちゃんに呆れられた目で見られていた。恥ずかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい、反省しました。でもあの可愛らしさは凶器でありバニヤンの狂気を表に出すのには十分だと思うんですよ。え?つまんない?あ、そうですか。

 反省してるのは本当だよ?まぁ、反省虚しく謎生物はガタガタと震えながら扉の影に隠れちゃってるんだけどね。

 

「お、お前今まで会った人間で一番目がイってたぞ!!」

 

 いやここまで言われるとは…。ごめんって! 本当ごめん!! だから!その毛皮を! もう一度!!

 

「ひっ!?」

 

「ヒーーーッヒッヒッヒッヒ! 随分と元気になったようだね。小娘、ハッピーかい?」

 

 そう俺に聞いてきたファンキーおばあちゃんが俺の方へ靴を鳴らしながら歩いてきた。酒をラッパ飲みしながら手際よく俺の熱を測ってくれてる。

 

「…ふむ。どうやら熱の方は既に下がっているようだね。まぁ、アンタはどっちかというと貧血の症状の方が酷かったがね」

 

 え、なに俺熱出てたの? 貧血の症状は…まぁ、魔力切れはそうともとれるか。と思ったらミスファンキーがこっちを見ていた。

 

「あたしゃ医者さ、"Dr.くれは"ドクトリーヌと呼びな。あっちはチョッパー、あたしの弟子だよ。さて、本題なんだがね、症状を見る際少しばかりアンタの体を見させてもらったんだが…」

 

 き、急に深刻そうな雰囲気だすじゃん…。なに、おれ病気だったの? 「残念ながら余命数ヶ月です…」 みたいな!?

 

「あんた、何者だい?」

 

 まるで俺が人間ではないかのようなミスファンキーもといドクトリーヌの物言いにチョッパーが首を傾げた。

 

 ふぇ? 何者? 何者って言われても…。まぁ、人間とは言えないな。

 

「最初は貧血かと思ったんだよ。だから血液型の問題でね、アンタを調べさせてもらったのさ。すると血液量が原因ではないことが分かった」

 

 自分の恩師のいつになく真剣な顔に自分が聞いてはいけないことだと感じたチョッパーが去ろうとするが、ドクトリーヌが手で制する。

 

「さらに調べていくとアンタの体には普通の人間が保有しない器官が存在したことがわかった。そこから生成したものがアンタの体中に回っていることもね」

 

 鼓動が高まる。この世界に転生してから初めての状況に置かれ、どうすればいいかわらなくなっていく。

 

「わ、私は巨人だよ! それで悪魔の実の力で…」

 

「いや、巨人も私たちと同じ体の構造をしている。違うのは大きさだけさ。悪魔の実というのも違う。検査の折りに海水を使わせてもらったからね」

 

 逃げ道が塞がれていく。

 どうする…。考えろ、考えるんだ俺…。やっと手に入れることのできた俺の居場所を奪われる事だけは避けないと…。

 

「…それで、アンタは何者だい?」

 

「わ、私は…」

 

 チョッパーがアワアワしているのが目に入る。さっきまであんな酷いことをしたのに心配してくれてるのかな? やっぱ可愛いな…。

 

「わ、私は!!」

 

「いや、言いたくないなら言わなくていいさ」

 

「へ?」

 

 

 

 

 へ?

 

 

「あくまでもあたしとアンタは医者と患者の関係さ。そんなプライベートなことまで聞く義理はないからね」

 

「じゃ、じゃあ何でさっきはあんなに!?」

 

 そうだ! まるで刑事の尋問みたいだったぞ! 心臓止まるかと思ったわ!!

 

「ヒーーーッヒッヒッヒッヒ! さっきあたしの可愛い弟子に散々やってくれただろ? その仕返しだよ」

 

 ニヤリと笑いを見せてくるドクトリーヌ。

 

 や、やられた…。それ言われたら何も言い返せないじゃねぇか…。

 

「さて、あたしは隣にいる小娘の様子を見てくるよ。チョッパー、あとは任せるけど大丈夫かい?」

 

「う、うん。大丈夫だ」

 

 隣にいる小娘? …あ! ナミは大丈夫なのか!!

 

「ド、ドクトリーヌさん! ナミは、ナミは大丈夫なの!?」

 

「ん? あの小娘ならもう心配ないさ。死ぬところだったがね」

 

 それを聞いてホッとする。思わず力が抜けてベッドに座り込む。

 

「それじゃあね。その病気(ハッピー)忘れるんじゃないよ」

 

 そう言ってこの部屋から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

○○○○○○○○○○

 

 

 

 

 

 

 ドクトリーヌが去っていき静かになった部屋にチョッパーが恐る恐る入ってきた。

 

「な、なぁお前」

 

「なぁに?」

 

 そんなビクビクしなくてももう撫でないよ。

 

「さっきのあの話…」

 

「あー…。そうだよ。私ね、怪物なの」

 

「!?」

 

 驚いた顔をするチョッパー。驚く顔も可愛いね。

 

「お、俺も実はバケモノなんだ。トナカイなのに二本足で立ってるし…。喋るし…青っ鼻だし…」

 

「ふふふっ それなら私の方がバケモノだよ。でっかくなるしオノだせるし、不思議なパワー使えるし…」

「私はチョッパーのこと好きだよ? 可愛いし頭は良いし。なにより誰かの為に頑張れる人がバケモノなわけないと思うの」

 

「そ、そうか…?」

 

 目尻に涙をうっすらと溜めた顔を見せるチョッパーにニコッと笑いかける

 

「そうだよ!」

 

「エッヘヘヘヘヘヘ! そうか! おれ、こんなこと言われたの初めてだ…」

 

 そんなチョッパーの笑い声についついつられてしまう。

 

 

 

「俺の名前はトニートニー・チョッパーだ。よろしくな!」

 

「私の名前はポール・バニヤン。仲良くしようね!」

 

これで少しはチョッパーと仲良くなれたかな。可愛いは正義だからね

 

 

 

 

 

 

 

 

 




バニヤンちゃんの口調ってちょっと難しいんですよね…
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